佐武流山


- GPS
- 17:09
- 距離
- 25.6km
- 登り
- 1,814m
- 下り
- 1,959m
コースタイム
- 山行
- 12:50
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 13:10
- 山行
- 4:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:50
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
10月6日から木曽駒ヶ岳へ出かける予定で、すっかり準備も整った。パンパンに膨れたザック。久しぶりの遠征。天気予報もばっちりで気がせかされる。ところが台風接近で天気予報は雨に変わった。女心と秋の空、とよく言うが、男心と秋の空ともいう不安定な秋の天候だ。中止も止むを得ないか、と思い始めたら天気予報は再び晴れに戻った。計画は、行き帰りの移動で二日、山中テント泊で一泊二日の全4日間だった。しかし、天気予報に合わせて出発を一日遅らせて、全3日間で行けるところということで佐武流山に変更する。
当初計画の木曽駒ヶ岳には伊那小学校の引率の先生や生徒たちが遭難死した歴史があり、遭難慰霊碑が建立されている。新田次郎の小説「聖職の碑」が上梓され映画にもなった。小説も読み映画も拝見したが、その時の思いはどんなものだったのか。少しでもその思いに触れてみたかったのだが転進はやむをえない。
出発は前日6日午後、下道を走る。道路の局部改良や新道開通もあり津南までは順調に進む。津南から左折して秋山郷へ入る。苗場山・鳥甲山や志賀高原への入り口にもなっており、温泉も多い。切明温泉には河原を掘って入る温泉もある。私も山行の帰りにお世話になっている。しかし、津南からこんなに奥だったかなあ、と記憶はあいまいだ。薄暗くなってきて、くねくねした道を必死の運転で登山口に着いた時は薄暗くなっていた。先着車は一台。車の中で光が見えたのでご挨拶。それから、あれやこれやでバタバタと、しょうもないことで時間が過ぎて、眠りにつく。
私は先着車の方より一足遅れて出発となる。ほんとは一緒に出発したいところだが、私は歩くスピードが遅いのでマイペースの出発である。針葉樹の林の中に道は続いている。丈は短いが草が繁茂していて路面は見えないところが多い。ヒバかヒノキだと思うが樹木には疎いのであやふやだ。登山道は溝状に掘れていて、草が覆っているので油断していると足が滑ってそこに落ちてしまって歩きづらい。一回滑って太腿を強打、ズボンに泥がこびりついた。油断していると登山道と離れて藪へと誘われてしまう。下りに歩きたくない道だ。懐電では絶対に下りたくないと思う。
雨で濡れた林道に出て道なりに進む。ダートだが泥濘は気になるほどではない。約一時間で檜俣川右岸に出る。谷は深い。道なりに進むと崩壊地の上に出る。その先に通行禁止の柵が有る。崖崩れの前に柵が有れば、ここから入るな、ということだろうと思うが、その先に柵が有るのはどう理解すればよいのだろうか。柵を越えて行って見ると、右手に沢方向に下る道がある。立ち入り禁止の標識も無ければ柵もない。注意喚起の標識なのだ、と判断し道なりに下っていく。道は崩壊地を越えて沢に出る。そこが渡渉点だ。白色の太いロープが二本渡してある。ロープの下にはこんもりと石がある。誰かが渡渉用に置いたものであろう。それを利用して対岸に渡る。私の靴はローカットだが濡れずに渡れた。
渡ってP1870までは、ほぼ登り一辺倒。霧がかかって展望は無い。休み休み登っていると霧が動き出し、青空がわずかに顔を見せるようになる。奥が深いなあ。紅葉が始まっていて赤い葉っぱのナツハゼには黒い実がついている。実をまとめて頬張ると酸っぱさが口中に広がる。秋の味。故郷では"鉢巻小僧"なんていっていた。名は体を表す。いいネーミングである。灌木の中を行く道というより針葉樹林の中の道である。「西赤沢源頭(苗場山との分岐)佐武流山まで70分」の標識に出る。まだ一時間以上かかるのか。長い道のりだ。
歩き出そうとしたら山頂方向から人が降りてきて、曰く。標識には山頂まで70分と書いてあるが「20分で行ってきた」という。なんだ自慢話かよ。と思えばあちことスマホが通じるところを調べたら、そこが見つかって「午後は雨になり、夕方まで持たない」という情報を教えてくれた親切な人もいる。人それぞれだがお天気情報を教えてくれた人に感謝したい。少なくとも暗くなる前、雨が降り出す前に檜俣川は渡渉しなければならないと気を引き締めたのだから。
分岐からの道は、少しぬかるむ個所もあるが、比較的なだらかな道が続く。樹木が生い茂っていて見通しはほとんどない。多少のアップダウンはあるがなだらかな道を進むと小広い山頂に出る。三角点がありここが佐武流山山頂である。見晴らしは無い。白砂山方向は笹に覆われているが踏み跡が確認できる。行動食を頬張り一息入れて下る。檜俣川の渡渉は何としても明るいうち、雨の降りだす前に終えたい。慌てずに急いでの気分で下る。この峰の登山道は、小さなアップダウンがあり、ロープの下がる箇所もある。何よりも木の根が張り出していて滑りやすいのが難点だ。沢が見えてこれで安心と思った瞬間、足が滑ってひっくり返ってしまった。このあたりの地形は分水嶺にあたり、太平洋と日本海側から湿った空気が吹き付けるから土の水分が多くて滑りやすいのだと思う。
心配した渡渉は難なく越え林道へ出る。やれやれ、と思ったら雨がポツリ、ポツリと落ちてきた。夜になったらドロノキ平のコースは歩かない、と決めていた。それに加えて雨までもでは是非もない。林道の小広い箇所でビバークと決めツエルトを張る。雨は完全には防げないが、上下雨合羽にエアマット。これでかなり保温は可能だ。ヘルメットを被っているので頭を雨水が直撃することは無い。後は寒さが問題だが、10月初頭だからそう問題ではないだろう。とにかく先ず腹を満たす。それでも体がガタガタ震えた。遭難死はこんなところから始まるのかもしれないなあ。木曽駒ヶ岳への慰霊登山から転進して、私が遭難したなんてことになったら身もふたもない、なんて思っていたら目が覚めた。雨はやんでいて体も濡れてはいなかった。
後は林道を戻るだけだ。しかし、いくら歩いても昨日見た集積された材木が現れない。ドロノキ平登山口の降口も出てこない。そのうち広い舗装道路に出る。車がやってきたので聞いてみると、佐武流山の登山口などは知らないという。ナビを見ても良く分からない。ただ、切明の位置は分かった。その前の道路を東側に進めば登山口だ。とりあえず切明を目指して歩いた。道路は丁字に突き当たる。左へ行けば登山口に出る。これは間違いない。昨日、通った道だから。ついでだから切明温泉雄川閣まで行って見る。雄川閣には一度は行ったことがあり、河原の湯にも入った。しかし、今はコロナ対応で休館である。
一息入れて、後は登山口目指して一直線。山道で道幅は狭いが舗装されている。立派な道路だが実は林道ではなく国道405号線。立派なものである。いずれは他県と結ばれるのであろう。道迷いの原因はドロノキ平へ右折するところを直進してしまったのだ。右折だ右折だと念じていたのに道迷いとは情けないが、無事に登山口に戻ることはできた。車のエンジンをかけ、ヒーターをつけて人心地つく。振り返ってみれば、行き先変更からビバーク、道迷い。話のネタ満載の山行である。
コメント
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妙高さん、こんにちは。
ハラハラしながら山行記録を読ませてもらいました。
怪我なく無事に戻られて本当に良かったです。
危機対応の準備の賜物ですね。
お疲れ様でした。
harunonekoさん ご無沙汰しています。
沢を渡って、あとは林道分岐を右折で楽勝と思ったのがいけなかったです。ビバーク後、歩き出したら知らないうちに真っすぐ進んでいたんですね。目標にしていた集積した材木が出てこないのに漫然と歩いてしまいました。
ナビでも確認したんですが間違っていないと思い込んじゃってるんですね。狐につままれる、というのはこういうことかと思いました。未熟です。いい教訓になりました。
ではまた。
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