天人峡ダイレクト(フェローズフォール〜大ルンゼ)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 8.4km
- 登り
- 623m
- 下り
- 623m
天候 | 雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
2017年に奈良さんたちが初登した天人峡ダイレクト(天人峡フェローズフォール(3p 115m WI5) + 天人峡大ルンゼ(3p 180m))。
当時そのニュースを聞いたときは、何だか別世界の出来事のように思えて、まさか自分が登りに行くとは思っていなかった。
しかし、それから4年経ちそれなりにクライミングをやってきて、今回YDさんに誘われその天人峡ダイレクトの第2登に行こうという話になった。
一番頭を悩ませたのはそのアプローチだ。初登の奈良さんたちはほとんど支点のない大ルンゼを80m以上のロープを繋いでFixして下降してフェローズフォールに辿り着いている。しかしながら僕達は長いロープも持っていないし、同ルートをFixするよりも、別アプローチからFix無しで下降して、グラウンドアップでトップアウトする方がより良いスタイルなのでそれを目指すことにした。
対岸からの写真と地形図と奈良さんからのアドバイスから、天人峡ダイレクトの左岸側は緩く、木も生えていそうなのでそこを懸垂、あわよくば歩いて下降できるのではないかと目星をつけた。
2/10
あわよくばワンデイで登ってしまおうと目論み早出をする。ラテルネつけて旭岳ロープウェイから地図とコンパスとGPS を頼りに忠別川右岸・1322まで。スキーでラッセルはずっと膝。泊まり装備とスキーを岩陰にデポし、目星をつけていたルンゼ地形の左岸の上から下を覗くと、多少急だが歩いて降りられそうなので引き返しも考慮に入れつつアイゼンに履き替えて下降する。途中急な木や氷のクライムダウンが2箇所あったが、それ以外は膝〜胸までのラッセルでほとんど前を向いて降りられた。地形図やGPSで現在地を確認しつつ、雪崩に警戒しながらルンゼを降りていくと、ほとんど忠別川に降りきってしまう手前に20m程の氷爆の上に出た。右岸側を覗くとそこにも40m程の氷爆が見えたが、フェローズフォールらしきものは見当たらない。地形図的にはもう崖地形は終わり、ここでなかったらもう下はすぐ忠別川だ。とりあえず氷爆を懸垂して降り、忠別川下流側へトラバースして、試しに小尾根に乗ってみると、その向こうには縦横100mに広がる大氷壁が。間違いない、フェローズフォールだ。小尾根からフェローズフォールに取り付くには、急なトラバースをこなさなければならないが、ここで雪崩や踏み抜きをで流されると、忠別川にドボンして間違いなく死ぬので、とりあえず一段下までYDさんが懸垂で下降して偵察。とりあえず行けそうだが一応ザイル出したほうがよさげらしく、今日は時間切れなので登攀装備を付近の木にデポして下降路をラッセルして登り返し、装備デポ地で泊。夜も雪は降り続いていた。
2/11
暗いうちに出発。昨日と同じ道を降り、あっという間に昨日の懸垂地点まで。成田が懸垂で木まで降りた後、YDさんは確保しながらクライムダウン。そこからスタカット〜途中からコンテで、左岸緩い氷と雪田を登ってからトラバース、雪田を頭ラッセルでフェローズフォール基部に辿り着く。山谷の記述通り雪田の下にもWI3程度の氷壁が続いていた。
・天人峡フェローズフォール 3p 115m WI5
1p目 成田 45m 階段状の氷〜所々垂直を越えて、傾斜の落ちた棚でスクリュー×3でビレー。表面は脆いがそれを破壊すると中にしっかりとした氷がある。
2p目 YDさん 30m 3段ぐらいの垂直の凹角を登る。表面は相変わらず脆かったりして見た目より悪い。
3p目 成田 50m 階段状〜所々垂直を越え、最後は薄い氷を慎重に登ってトップアウト。木でビレー。
落ち口付近は予想以上に平らで、泊まれそう。ここから膝〜腰ラッセルで左上気味に進み、目の前に見えた大ルンゼへ向かう。が、ルンゼが近づくにつれてラッセルが酷くなり、最後は頭ラッセルになったので、トップ空身スコップにして時速100mで進む。ルンゼ内の立っている所の手前の太い木に支点をとってここから登攀開始とする。
・天人峡大ルンゼ 3p 180m
1p目 成田 50m+20mコンテ 最初は薄氷の張った60〜70°の草付きを15m、その上10m程は立っている。左岸寄りのラインが一番弱点に見えたが、登攀中にそこをチリ雪崩が流れていったので、右岸の灌木が生えているラインをいくことにする。が、雪をどけるとそこは垂直〜ハングした岩に剥がれる系の灌木がへばりついているだけだった。まあ一段越えたら快適な草付きでしょうと思い、比較的マシな灌木にスリングをタイオフしてランナーをとり、草付きにアックスをきめてそこを越え、その上を除雪するとまたも同じような感じ…。激しくここに取り付いたことを後悔。もう戻るのも微妙なので灌木でランナーとりながら垂直〜ハングの木登りと草付きダブルアックスで何とか登っていくが、最後はしょぼい灌木すら尽き、スラブにもげそうな草付きが乗っかっているだけになり、思わず吠える。頑張って身体を上げてなんとか安心できる草付きにアックスをきめて一安心。支点となる木を求めて傾斜の落ちた雪田しばらくラッセルしていい感じのやつでビレー。人生トップ3に入る激悪クライミングだった。ちなみに雪崩ラインの右にもっと簡単そうに登れるところがあったらしい。実際に取り付いたらそこも相応に悪かったかもしれないが。
2p目 YDさん 60m このピッチに差し掛かる頃にはもう薄暗く、ラテルネ装着して行く。胸ラッセルに所々草付きダブルアックスや80°の雪壁を枝をホールドにしたり固めた雪にプッシュやステミングで突破。もう終わりな雰囲気のある斜面の太い木でビレー。
3p目 成田 40m 一応ザイル出していく。急斜面をラッセルしてトップアウト。
達成感というより、とにかく疲弊している。ここからさらにテンバを撤収して旭岳ロープウェイまで帰らなければならない。降り続いた雪によってトレースはほとんど消え、再びスキーで膝ラッセル。ザックを下ろして休憩する度に寝落ちしそうになりながら旭岳ロープウェイまで。2日目はテンバからロープウェイまで、19時間半の行動であった。
隔絶された環境でのスケールの大きい登攀は、この上なく素晴らしいものだった。入山前から、そもそも無事に滝に取り付けるかすら不安だったが、完登することができてよかった。
この壮大なルートを初登した奈良さんパーティーと、誘ってくださったYDさんに感謝したい。
コメント
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これはすごい。お疲れ様でした。
イボイボとかワカン持って行った方がいいのかな?
イボイボ一応持っていきましたが、あんまり効きそうにない感じだったので使いませんでした。
大ルンゼは今回登ったラインはトライカムあれば使えたかもしれないです。
ワカン、あったほうがいいかもしれないですね。焼け石に水かもしれませんが…。
天人峡ダイレクトは、3月ぐらいのほうが雪が締まって氷もよく発達するので適期かもしれないです。
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