軍荼利山(育玉山) ゴ・ドーハンの山旅 瀧上不動尊巡りと藤太夫牡丹事件
godohan
体力度について
- GPS
- 03:10
- 距離
- 5.2km
- 登り
- 386m
- 下り
- 387m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 2:51
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 3:11
| 天候 | 曇り後晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2021年06月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
自転車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
普通に山頂だけなら特に問題なし。テープも多く、藪も少なめ。しかし、ルートを外れると急な崖だったりします。 |
| その他周辺情報 | 下山後、安田屋さんに行くもお昼の営業は終了していました。店内はたくさんのお客さん。 |
写真
「元文三戊午天二月吉日」(1738)。この数年後、藤太夫は牡丹でしくじってしまい大変な目にあったみたい。江戸のビックネームも登場します。そのお話は後ほど。
3
感想
・軍荼利山往復のみ歩行です。それ以外はMTBと車移動です。
・前日の名主の滝つながりで、あちこちの滝と不動尊巡りをしました。メインは軍荼利山の滝を期待しましたが、前日の雨ぐらいでは話にならないようでした。
・もう一つの目的は軍荼利山頂にある名主の石祠。お気に入りの場所で何度も訪ねていますが夏場は初めて。今回その名主の藤太夫さんの興味あるエピソードを知ったので今年1月以来訪問してみることにしました。
・お話の出典は『吉田家文書の調査』(昭和43年 小鹿野町文化財保護審議員 会長福島幸八)によります。少々長くなるので、時間のある時に少しずつ記したいと思います。
〜上小鹿野村名主吉田藤太夫 御用牡丹事件顛末記〜
『吉田家文書』によれば藤太夫が生まれたのは延宝五(1677)年であり、軍荼利山に石祠を建立した元文三(1738)年当時は51歳ということになります。おそらく代々世襲する名主を立派に務めあげ、その晩節の証としてこの石祠を建てたのではないでしょうか。その自負が祠に刻まれた「吉田和泉守五代 小鹿野住」からもうかがえます。また、村のほぼ真南に位置し、小鹿野の隅々まで一望できるこの山に南方の守護神である軍荼利明王を祀ったことも至極当然のことと思われます。ちなみに軍荼利明王は煩悩除去、息災延命の御利益があるそうで、これがこの後の話に効いてくるのです。
前置きが長くなりましたが、名主として順風満帆で安穏に過ごせるはずであった余生を狂わす人物が「寛保元(1741)年酉」五月七日秩父にやって来ます。それが「青木文蔵殿」、甘藷先生で知られる青木昆陽でした。当時昆陽は薩摩芋の栽培からは離れて、御書物御用達を拝命して、徳川家旧領の古文書を調査研究していました。『吉田家文書』には「林大学頭御組御役人」「古筆御尋」との記述があります。その青木文蔵が村々を巡っている最中、藤太夫が「浅黄牡丹」の花を所持していることを聞きつけ、それを「大岡越前守様」に報告しました。ちなみに牡丹は百花の王、花王と呼ばれ、江戸期に大流行し品種改良も盛んに行われていました。大岡越前も熱心な愛好家だったのか、早速代官に言い付けて七月三日には藤太夫を江戸に呼び寄せ直接詳しい話を聞いています。その際藤太夫は「十二三年已前白牡丹赤牡丹」を植えていた所、「六七年此かた浅黄色牡丹」が咲くようになったと答えて絵図をさしあげました。
(つづく)
話はトントン拍子で進み、藤太夫は翌年の五月に牡丹の切花を江戸に持参し大岡越前守に納めました。すると今度は「御牡丹掘、石台へ植、御上納」する運びとなりました。それは「御用牡丹」として、上小鹿野村の藤太夫方から江戸の代官屋敷まで沿道の村々宿々から人足が差し出されて「大切」に次送りされました。九月三日に小鹿野を出発し、本野上村、寄居などを経由してその日は小前田村泊、翌日は熊谷を経て桶川宿まで、そして五日、江戸下板橋宿に到着しました。翌六日朝、代官方へ届けられ、その日のうちに大岡越前守に納められたようです。藤太夫は十一日まで江戸に滞在した後、「御暇」をもらい「國元江罷帰」りました。ここまでなら、小村の名主があの大岡越前守と交流を持つなどと藤太夫にとっては大変名誉な話であり、名主としての格も上がったのでしょうが、不幸なことにお話はこれで終わらなかったのです。
(つづく)
藤太夫が納めた牡丹は花をつけなかったのです。3年後の延享二年(1745)、その牡丹には疵があって花が咲かなかったことが判り、それは藤太夫が持参する時に花が咲かぬ様に根を切っておいたという伝聞が役人の耳に届きました。そのため藤太夫は江戸に連行され吟味を受けることになりました。本来なら打ち首になってもおかしくない所、何とか助命されましたが、五年以上も江戸宿預かりとなり、その間莫大な借財ができてしまいました。当時江戸には訴訟のため出府した者を泊める宿(江戸宿、公事人宿、訴訟行為の補佐や宿預になった者に対する責任を負った)があり、本人や付添人などの諸々の費用は一日一両も掛かったという話もあります。藤太夫はその返済ができずに江戸宿「秩父屋武右衛門」から訴えられることになります。
藤太夫の跡を継いで名主になった倅の三之丞は親戚縁者と相談して金を支度するようにと申し渡されますが「村方近年困窮」のため金策がつかず、寛延三年(1750)年「三之丞所持之田畑」を質地提供することで解決したい旨を奉行所に願い出ています。
当時、藤太夫は七十三歳。その後彼がどのような人生を辿ったか詳細はわかりませんが、10年後の宝暦十(1760)年、八十三歳で没します。打首寸前にまでなりながらも長寿を全うできたのは、まさに軍荼利明王の煩悩除去、息災延命の御利益だと言えるでしょう。
最後にこの御用牡丹事件で最大の疑問点をあげると、何故藤太夫は牡丹の花が咲かないよう細工をしたのか、ということです。そのあたりの妄想はまた次回ということにします。 (つづく)
何故藤太夫は牡丹の花が咲かないよう細工をしたのか、という疑問ですが、まずは藤太夫が熱烈な牡丹の愛好家で長年掛かって交配した大変珍しい色の牡丹を誰にも渡したくなかった。しかし、相手が相手だけにそんな恐れ多いことができたがどうか。その反対に、たまたま咲いた花があれよあれよと言う間に大事になってしまい、左程栽培にも詳しくなかったので根を掘る際に疵をつけてしまった。それに加えてもてはやされる藤太夫にやっかみを持った者がいて、悪い噂話が流布した。まあ想像の範囲なので何とも言えませんが、大岡越前の浅黄牡丹に対する執着心は尋常ではないように思えました。ネットで調べた限りでは大岡越前が牡丹の愛好家だったいう類の話は見つかりませんでしたので、今最大の関心事は忠相の寺社奉行時代の日記にこの御用牡丹事件の記述があるかどうかということです。いつか調べる機会があればと思います。
また、今回もう一つのサプライズ、大岡越前の母親が何と北条一門の出であったことです。実は藤太夫の先祖である吉田和泉守政重は鉢形城の北條氏邦の家臣だったので、意外な所で繋がっていることが判明しました。御用牡丹事件は忠相が寺社奉行だった時の話ですが、脚色して東山越前のエピソードに取り上げてほしいものですね。もちろんお話は秩父山中から始まります(笑)。
ついでにもう一つ。軍荼利山のほぼ真北に今回スタート地点にした不動尊(五大明王の中心)があります。さらにその北方「大小屋」峰には、これも長年気になっている陀羅尼経の書寫塔があります。こうなると西の大明神山(石尊大権現の祠有)、東の「首部沢」峰(朽ちた社跡有)で東西南北と妄想はふくらむばかりです。 （おわり）
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godohanさん、こんにちは！
リハビリは順調なようで、少し安心しました。
ところで小鹿野スケートセンターの看板があったのには、とっても驚きました。
たまにはリハビリハイクにも誘って下さいね！お疲れ様でした。
bukozan
bukozanさん こんばんは!
コメントありがとうございます。
例の施設ですが、見下ろしている時は何の建物だろう？と気になっていましたが、対岸まで来て看板を見つけた時には、私もi一気に懐かしさがこみあげてきました。スケートはあまり得意ではありませんでしたが、休憩に売店でよく即席ラーメンを食べていた記憶があります。
Cさんとの八ッ岳山行。私でも行けそうなルートだったらお誘いくださいませ。では。godohan
リハビリというか、大分探検モードですね。
67の滝もよく見つけましたね。流石、地元のgさんです。今度大雨の時にでも見に行ってみますか？
そうそう、先日「育玉山」の典拠が判明しました。これは『新編武蔵風土記稿』に記されていて、この付近をそう呼称していたようです。ところがこの史料は誤記や検証不可能なところが多々あります。ですから確定的な軍荼利山で良いと思うし、やはりしっくりきますね。
「吉田家文書の調査」ときましたか…あの難解な書物を読まれるとは驚きです！今度詳しく教えて下さい。探検お疲れ様でした。
montblanc55さん こんばんは
この日も朝は雨模様で何処に行こうか悩んだあげく、軍荼利の滝の塩梅はどうかと確認がてら行ってきました。夏場は適期ではないですが、ルートは意外に歩きやすかったです。緑のカーテンで冬枯れ時の展望はありませんでしたが。滝の方も相当雨が降らないと現われないようです。
「育玉山」の典拠ありがとうございます。やはり軍荼利山がいいですね。この日も石祠と塔がいい感じで佇んでいました。「吉田家文書の調査」もありがとうございました。おかげさまで藤太夫さんの人となりが垣間見れました。まさか大岡越前が登場してくるとは驚きましたが。
この所、沢の方が充実していますね。滝自体もそうですが、鉱石を運んだバケット等鉱山索道の痕跡も大変興味深いです。夢見台に何か鉄骨跡のような物が写っていましたが、あれも索道の施設跡ですかねぇ。
朝練(まだウォーキングですが)も復活しましたので、復帰まで今しばらくお待ちください。
では。 godohan
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