記録ID: 38907
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ハイキング
中国
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)38・日本海、ひたすら〜2(夕日ヶ浦のことなど)
2006年10月22日(日) 〜
2006年10月24日(火)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 72.5km
- 登り
- 831m
- 下り
- 829m
コースタイム
10/22 京丹後、八丁浜
10/23 夕日ヶ浦
10/24 城之崎
10/23 夕日ヶ浦
10/24 城之崎
過去天気図(気象庁) | 2006年10月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
10/22 例によって夜中から明け方にかけて釣り師が何人かやって来る。ほんとにマメな人種だよな、釣り師って。何処にでも現れる。 9時ころ出発。海沿いの遊歩道をてきとーに歩いて野田川へ。丹後半島を廻っていると3日くらいはかかりそうなので網野へ向けて峠を越えることにした。山側に入っていくにしたがって柿の木が目に付き始める。あちこちの軒先に柿の木があって、たわわに実を付けている。あんなに一杯付いてたんじゃさぞや重かろう。あれだけあれば一個ぐらい失敬しても、何も言われそうにもなかったが、生憎僕は柿って果物にさほど深い造詣がある方ではない。干してある奴は好きだが生の奴は別に好きでも嫌いでもない。柿って食べ物はわりと好き嫌いの分かれる果物なんじゃないだろうか。僕は人様の軒先に手を伸ばしてまで食べたくはないかな。ミカンなら話は別だよ。ミカンがありゃあなぁ。 峠を越えて峰山の市街に入っていくと、「王将」の黄色いくゎんばんが目に飛び込んで来る。その刹那、無性に餃子が食べたくなってくる。ついさっきまで餃子なんてまるで頭に無かったのに、不思議なものだ。先日岐阜でトライして以来、癖になってしまったのかもしれない。折角なんで餃子三枚に天津飯という太っ腹なオーダーをしてみる。といっても千円前後。王将だからね。やがて運ばれてきた餃子は一皿にてんこ盛りにされている。仲々の迫力だ。食べ物ってのは度を過ぎて大量にあると食欲を減するもので。どうしよう、天津飯まで頼んじまった。王将って店はチェーン展開しているが、店舗によってカラーが違うようである。ここの店は先日入った所に比べると随分小綺麗である。50人くらいのキャパだが、鍋場の兄貴はこれを一人でまわしている。圧巻である。僕は中華料理店の鬼料理長の下で働いたことがあるので、中華屋の鍋場に立つってことに関しては、一種独特の気分を持っている。ここのうちの兄貴は火口二つに鍋三つを自在に操って次々とオーダーをこなしていく。一度聞いた注文は決して忘れない。むしろホールの奴等が間違えたりしている。そのうち11人の団体さんが入って来る。日曜の草野球を終えてきたおっちゃん達である。気前よくあれこれと単品でオーダーしている様子。これは見ものだ。はたしてどうやって捌くのか?「おお、エビチリを仕上げながら回鍋肉の火入れか。」「よく見るとあちらには既に酢豚の準備が・・・」「チンジャオなんてオーダー入ってたか?いや、違う、これは4番テーブルの2名様の追加オーダーだ!」などと見ていて飽きない。一時間くらい見ていたかも。実に見事な仕事っぷりだ。 すっかり堪能して店を出る。食べ過ぎたせいか下痢をした。慌てて近所にあった“ファッションセンターしまむらぁ”に駆け込んでトイレを借りる。俺って頭おかしいんじゃないかと不安になってくる。 今日中に夕日ヶ浦まで行くつもりだったが、妙なところで時間を食ったので網野に着く頃には早くも薄暮の気配である。漠然たる残照の道が海へとまっつぐに続いている。網野の海岸も砂浜になっているみたいだし、それならそれでいいか。砂浜を外れの方まで歩いていくと、「静の里」という温泉施設がある。もちろん試してみる。日曜なので家族連れが一杯だ。なんてことない湯だけど温泉ってのはいいよね。極楽湯みたいな雰囲気のところ。湯上がり、足ツボマッサージ機など試して悶絶していると、受付のおばちゃんに声をかけられる。なんでも支配人が僕の荷物を見て興味を惹かれたご様子。札幌から歩いて来た事など正直に説明していると、気に入られたらしく、住所と名前を教えるように頼まれる。そんなもん、どうするんだろう。職質でもあるまいし。この支配人さんも若い頃には随分旅をして歩いたとのこと。人間誰しも、昔は旅をしていたりするものだ。外では小雨が降り始めた様子。「今夜はここで泊まって行きなさい」みたいな展開になるかと甘い期待を抱いてみるも、空しく終わる。 小雨のパラつく中、砂浜に戻って野営。すぐ側には旅館街があるが、ここは至って静か。 10/23 昨夜の雨は本降りにはならず、朝には上がっている。どんよりとした低い曇り空には、所々晴れ間も見える。雨ならサボろうかと思っていたのだが、仕方ない。歩くとするか。 網野から浜詰に向かって、主要幹線道は“タンゴ鉄道”とかいうローカル線に沿ってやや内陸を続いているが、あえて海沿いの怪しげな道を攻めてみる。急なアップダウンの続く道である。結構なことで。 小一時間も行くと最初に現れるのは、「磯」という名の小さな漁港である。この辺に義経伝説で有名な静御前の生地があるんだという。昨夜訪れた温泉の「静の里」という名前もここから採ったものらしい。歴史上の人物と繋がりがあるとは思えないやうな、侘しげなたたずまいの集落である。こういう場所を見て歩くのが、裏道の醍醐味ってものだ。狭っ苦しい急斜面に木造家屋がひしめき合うようにして立ち並んでいる。意味もなくうろついてみる。デカいザックを背負っていると軒先に支えてしまいそうだ。僕はこういった狭い路地裏が大好きなので。 Oh! It's a very nallow street. I like such a nallow street, very much. Thank you. などと架空の金髪女に英語で説明を試みたりしつつ、このささやかな風景を堪能。デカい荷物を背負った変な男がうろついてるんで、付近のおばちゃんもさぞやびびったことだらう。 ここから道は海沿いをはなれ、さらに傾斜をまして山を登っていく。やがて八竜峠に到着。ステッキを突いて散歩中のおじさんが、「あれが小天橋だよ。」などと教えてくれる。なるほど、遥か行く手の海岸には天の橋立みたいに外海と内海を隔てて細い陸地が延びているのが見える。このおじさんは“風流人”なのかも知れない。絵を描くんだとかって、写真を撮らせて欲しいなどと言われた。普通、そういうのは若いお嬢ちゃんを口説く時にでも使う台詞なんじゃないだろうか。まあ、断る理由もないので写真を撮ってもらう。まさか本当にこんなムサい奴の肖像など描いているんじゃあるまいな?風流人ってのも、何を考えてるのか今ひとつ掴めない人種だ。 峠からしばらく下っていくと、右手に五色浜へ続く自然歩道がある。案内によればこの道は夕日ヶ浦まで抜けていけるようである。折角なので辿ってみることに。五色浜は入り組んだ海岸線に砂浜の点在する景勝地である。トイレや四阿なんかもあって、公園としてちゃんと整備されている。仲々素敵なところではあるが、如何せん、道のアップダウンが激し過ぎる。こういった遊歩道ってのは効率を度外視したルート取りをしていることが多いと思う。重荷では結構堪える。しかも、五色浜を過ぎると、道は急激に荒れて来て、藪が生い茂り心細くなってくる。今更引き返すって言っても相当下って来てしまったし、困ったな。ガサガサと藪を掻き分けて踏み跡を辿っていくと無事塩江という集落にたどり着く。一安心だ。 この小さな漁村では機織が盛んらしく、あちこちの窓辺からカタカタカタと機を織るらしい物音が聞こえてくる。中にはオツベル宜しく、新式の機織機械、六台も据え付けて、のんのんのんのんやっている家もある。 この村からは再び車道に戻って浜詰まで。迂闊に遊歩道に飛び込むのも考え物だ。緩い坂を一つ越えていくとすぐに浜詰に到着。まだ12時を回ったばかり。浜詰には“夕日ヶ浦”という砂浜が広がっていて、温泉旅館が立ち並んでいる一角がある。例の如く日帰り入浴を試みようと2,3軒のホテルに飛び込んでみるも、悉く断られる。代わりに共同浴場を紹介されたが、パンフを見た感じ、パークゴルフ場など併設された温泉テーマパークみたいなものである。ちょっとああいうのは苦手なんだよな。温泉入浴は半ば諦めかけたが、最後にもう一軒だけ温泉旅館の門を叩いてみる。「本陣粋月」というちょっとお高い感じの名前の宿であるが、入り口に掲げられてた「お気軽にどうぞ。」という看板を鵜呑みにしてみる。駄目で元々だったが、 「火を落としてしまったから、沸かし直すまで少し時間がかかるけど、それで良ければどうぞ。」 と案外親切な対応。女将さんがお茶など出してくれて、湯の沸くまで話をして過ごす。聞けば、この女将さん、ぷらぷらしてる旅行者の面倒を見るのがわりと好きなんだそうで、バイクで日本一周を試みている輩などがよくやって来るんだそうで。玄関の看板は余程旅人の心に訴えるところがあると見える。あれこれ話しているうちに、寝床がないなら今晩泊まっていけば?ということになる。 「どうせ今夜はお客さんいないし、ゆっくりしてったらええよ。」 予想外の展開である。ご好意に甘えさせて頂いて一晩お世話になることにする。仕事が欲しいのであれば二、三年面倒見たってもええよ?という雰囲気すら漂わせている。これが“自分探し”の旅だったりすると、ここで修行しながら“ほんたうのじぶん”って奴を探したりするのも一興なのかも知れない。生憎と僕は“自分探し”とかするタイプじゃないんだよなぁ。 湯を使わせて頂いたあと、客室に案内してもらう。海に面しためちゃめちゃいい部屋である。ついでに洗濯もさせてもらう。世話になりっぱなしという訳にもいかないので、何か手伝おうかと思ったのだが、ほんとになーんもやることないみたいだった。 夕方まで辺りを散歩。浜詰の漁港の方まで足を延ばしてみる。戻ってくると丁度、女将さんが車で出かけるところ。久美浜まで買出しに行くとかで、ご一緒する。帰りに食堂で晩飯をご馳走になる。 夜、佐津というところで民宿をやっているおっちゃんが来て色々話していく。仕事の片手間に週末だけ民宿を営業しているんだとか。料理のことやなんかに関して女将さんに厳しくやり込められている。 「アンタ、まさか松葉ガニの刺身なんて出してないやろなぁ?」 「はぁ、それが、実は・・・。」 「生で出しとるんか。」 「お客さんが食べたいゆうもんで、つい・・・。」 この辺りは松葉ガニが名産である。話を聞いていると、なんでも、松葉ガニというのは一度冷凍したほうが甘みが増して美味しくなるんだそうで。素人はつい「活」とか「生」を有難がってしまいそうなものだが、女将さんがあれほどけなしているところをみると余程違いがあるのだろう。 「アンタはそんなことだから何時までも・・・。そろそろ民宿一本に絞ってやってやろうって根性はないんか?」 「それを言われるとなんとも、はや、女将さんには敵いまへんなあ。」 おっちゃん、防戦一方であるが、あんまり堪えている風でもない。何時もこんな調子なんだろう。この人も若い頃は旅行ばかりしていたそうである。人間誰しも、昔は旅をしていたものなのだ。 10/24 昨夜は久しぶりに深夜のバラエティ番組など見て夜更かししたが、朝はちゃんと目覚める。コーヒーを頂いて少しのんびりしてから9時頃出発。Ryuが海岸まで見送りに来てくれる。Ryuは粋月本陣の飼い犬である。歯並びが悪いので怒っているやうにも見えるのだが、付き合ってみると案外いい奴である。彼は相当な自由人である。放し飼いにされていていつも勝手気ままに出歩いている。今朝も見送りを口実にして、じつは自分が勝手に彷徨い歩きたかっただけなのかもしれない。僕には軽く会釈したくらいにして、脇目もふらずにぴゃーっと砂浜を一直線に行ってしまった。 箱石からは僕も砂浜に下りて、波打ち際をヒタヒタと歩いていく。なーんにもない、ほったらかしの海岸。打ち寄せる波が高い。時折小雨がパラついて儚げな風情を醸し出している。小天橋まで歩いてくると、サーファーがいたので聞いてみると、今日の波は全然ダメなんだとか。荒れてればいいってもんでもないようだ。サーファーってのも、ああ見えて結構気難しい人たちだよね。 小天橋から久美浜湾という内海に沿って進む頃になると、晴れ間が見え隠れ。天気は回復に向かっているようだ。アスファルトがどんどん乾いてユラユラと陽炎が立つ。河内というところから、三原峠を越えて城之崎へ向かう。この峠道は車の通りが少なく、素敵な感じの道だった。山間の村落の風情も好ましい。畑上からもう一踏ん張り、飯谷峠を越えていくと、漸く円山川の岸辺を見る。城之崎温泉は橋を渡った対岸である。いわずと知れた文豪の短編の舞台となった温泉街である。 城之崎の温泉街は運河に沿って旅館が立ち並び、柳の葉が風に揺れている。かなりのくゎんこう地ではあるが、俗に流され過ぎず、風流な印象を保ち続けている。城之崎には幾つかの外湯があるが、その内の“柳湯”というのを試してみる。新築の綺麗な施設で入浴料は600円と、共同浴場としてはちと高い。番台で“一番札”というのを貰った。ロッカーの番号か何かを指定するものかな?とも思ったが、よく分からない。番台で聞いてみると、これはその日最初のお客さんにのみが手にすることの出来る記念品なんだとか。思いがけず一番風呂となった。ラッキー。最近ツキがまわってきたかな。しかし、何とした事か、湯船には既に別の人が。加納典明風の角刈りで、立ち振る舞いも玄人っぽい事から、多分温泉街の関係者であろうと想像される。なんとも興醒めな話だ。俺の一番風呂がぁ〜。 汗の引くのも待たずに、ファンタ・グレープを一気飲みすると、慌しく出発。今日はもう一つ峠を越えて竹野の海岸へ抜けるつもりだ。時計は4時をまわったが、急げば日没に間に合うんじゃないか? 鋳物師戻という変な名前の峠を越えて竹野の町に着いたのは丁度日暮れ間近で、スーパーには買い物の奥様の姿も多い。と、ここで時ならぬ雨。天気、回復傾向という訳ではなかったようだ。結構雨脚が強い。テントを設営するには消耗の天気だ。こんな時は温泉だろう。丁度いいことに砂浜の近くに“北前館”という温泉施設があったので、湯に浸かって小止みを待つことにする。ま、あれだ、峠を一つ越えてきた訳だし、お風呂入っても不思議はないよね。 雨があらかた止んでから砂浜に出てテント設営。海上では風が強いらしく、闇の中に白い波頭が浮かび、防波堤に砕けた波が不気味な咆哮を上げている。 夜、かなり遅い時間になって、若者が一人やって来てびっくりさせられた。どうやら酔っているみたいだった。寒そうに体を震わせながら、「旅行っていいっすよねぇ。」などと言っていた。あまり脅かさないで欲しいものだ。 |
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のライン取りは、偶然にも先月の出雲行の際に我が家でも採用したところよ。竹野から岩美の浦富海岸までの行程がハイライトだったが、根津郎殿の見解や如何に?
正直、この辺の海岸に関しては記憶がこんがらがっている。
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