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Yamareco

記録ID: 43326
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ハイキング
九州・沖縄

トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)47・博多へ

2006年11月22日(水) 〜 2006年11月25日(土)
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GPS
--:--
距離
---km
登り
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下り
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コースタイム

11/22 小倉ー若戸大橋ー芦屋
11/23 停滞
11/24 芦屋ー神湊ー白石浜
11/25 白石浜ー新宮ー海の中道ー西戸崎ー博多
過去天気図(気象庁) 2006年11月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
11/22 
 船着き場のすぐ隣が卸売市場だったので寄ってみる。築地を二回りくらいちっちゃくしたやうな小規模な市場である。10時をまわった場内は既に取引も一段落付いたらしく、人影もまばら。くゎんこう客の姿も見えない。もっとも、くゎんこう客が集まってくるやうな所では無いのかも知れない。唐戸のくゎんこう市場と違って、マッチョで実用的な場所なのだ。
 乾物等を扱う一角付近に食堂が並んでいる。ああ、築地の場内に似ているな。「ゆたか」という店の、店先に据えられた立看板には日替わりの天ぷら定食が500円などと書かれている。市場内とはいえ、なんぼなんでも安すぎだろう。紺地に白く「ゆたか」と染め抜かれた暖簾を思わず潜ってしまう。今朝も横着をして朝食を作らなかったので丁度良い。例によって、問われるがままに、札幌から歩いてきたことなどを恥ずかしげもなく白状していると、店の大将、労ってくれて鯵の刺身をサービスしてくれる。何時もながら恐縮な話だが、こういう親切は断らない方がいいと思う。復路も徒歩で北上するつもりだと告げると
「帰りにもまた寄ってよ。」
などと声をかけてくれた。でも復路で小倉を通ることはまずないと思う。一応旅程については、僕にもザックリしたイメージみたいなものはあって、極力一度通った所は通らないつもりなのである。復路では国東半島から船で周防灘を渡ってみようかと思っている。
 高速道路の高架下を西へ向かってトボトボ歩いて行く。ありきたりな都市郊外の道。札幌の環状線付近を歩いているのと気分としては殆ど変わりがない。いつしかこうした風景も憧憬の対象になったりするのだろうか?
 この先、一時間も行けば「若戸大橋」という橋に出るはずだ。橋を渡って対岸を行った方が情緒的なんじゃないかという気がする。しかしこの橋は一応高速道路と繋がっているので、徒歩で渡れるかどうか定かではない。「九州工大前」という駅の前の駐輪所に暇そうな管理のオッチャンがいたので、そのあたりのことを訊いてみる。どうやら歩いて渡るのはムリらしい。その代わり高架の下を渡し船が出ているんだとか。10分に一本くらいあるらしい。そいつはいいや。船好きには堪らないアトラクションだ。高速道路沿いは道が狭くて危ないので一度戸畑に出た方が良い、というオッチャンの忠告を無視して、高架下をまっすぐ船着き場へ急ぐ。なるほど、なんか歩道がはっきりしなくてボンヤリしてると轢かれそうだ。俺ってばスゴイ邪魔なのね。
 無事川縁に辿り着くと、果たして、高速道路の高架の真下に渡船場がある。いや、川縁というのは間違いか。眼前に横たわっているのは、川ではなく海らしい。「洞海湾」という名前からして、いかにも海だ。それにしても、どうだ?この風情は。なんとも言えんな。外回りのサラリーマン風の男が、船着き場のオヤジと何やら真剣な面持ちで話し合っている。何気に聞き耳を立ててみたところ、どうやら待合室に何かのチラシを置くような事を相談しているようだ。利用客の年齢層などを調査しているらしい。
「それじゃ、利用者の客層というのは、やはり・・・」
「そうじゃね、ま、半数が学生さんといったところじゃろ。」
などという会話がチラホラと聞こえて来る。そうこうするうちに船が来た。昼下がりの渡し船は閑散としている。乗客は数えるほど。買いもの帰りのオバチャンとか、仕事中の人とか、地元の人ばかりである。自転車に乗った娘さんもやって来る。高校生だっている。こんな時間に、学校はどうしたんだ?明日が休日なので半ドンなのかもしれない。たんにサボタージュしてるのかもしれない。
こんな何気ない生活感の滲み出た航路ってのは、不思議とうれしい気分になるものだ。落ち着きなくあたりをうろついて写真など撮ってみる。そんな浮わついた輩は俺ぐらいなものよ。やがて厳かに船は岸を離れる。なんてこった、楽しすぎるぞ。
 5分足らずのクルーズを終えて対岸の若松に到着。しばらく海沿いの道を行く。ちょっと小奇麗に整備されたりしている。海を挟んだ向こう側には、デパートのアドバルーンなどが賑やかに見える。遠くから見てる分には楽しげでもあるな。僕は北九州というところを意味もなく敬遠して博多へと急いで足を向けてしまったのだが、遠くから眺めた感じでは賑やかで楽しそうなところだったな。いつか機会があったら訪れてみたい気もする。そんな機会は二度とは巡って来ないのかも知れない。
 さて、今日は何処まで行こうか?明日は雨らしいので、停滞を決め込むつもりである。今夜の寝床は、買い物出来る街がある程度近くにあって、そのくせ、一日中ゴロゴロしてても誰にも見咎められないような、そんな物静かな海岸が良い。芦屋の海水浴場あたりが手頃かと思う。
 199号線沿いの退屈な道を行く。途中見つけた酒屋で焼酎をゲット。明日は朝から飲んだくれる予定だから、こいつはマストアイテムだ。「北薩摩」という銘柄をチョイス。植園酒造のものがさり気なく置かれているあたり、さすが九州という感じがする。
 夕暮れ頃、芦屋に到着。途中スーパーなども見かけたのだが、ひとまず海岸へ向かう。まずは寝床を定めて、買出しはその後だ。と思ったのだが、海岸近くには買い物出来る店が見あたらない。困ったな、さっき見かけた店まで戻るとなると結構な手間だぞ?
 芦屋の海岸はやたらとだだっ広い砂浜である。砂丘って感じだ。これだけ広いと何処にテント立てて良いか分からなくなる。明日は天気が崩れるハズだから、一番隅っこの風の当たらなそうな所に寝床を定める。それから買出し。郊外のスーパーまで往復で一時間余り。鳥の胸肉など買ってみた。こいつをネギやエノキと一緒に蒸し焼きにして、細かく裂いてみるつもりだ。酒のアテには良いハズよ?こうなってくると明日はちゃんと雨が降ってくれないと困るな。
 
11/23
 予報通り夜半より雨。こんな日に海に来る物好きもおるまい、と思っていたら、朝っぱらからサーファーが数人やってくる。サーファーという人種は己れの欲望に貪欲なのだ。実に律儀な人たちである。アホだとも言う。
 午前中から、昨夜作っておいた蒸し鶏を相手に酒を嗜む。植園さんの焼酎はキレるよね。蒸し鶏も良い出来。ポラーノの広場など読みつつ、終日テントでゴロゴロして過ごす。西浜田でHere's That Rainy Dayな一日を過ごして以来、停滞が好きになってしまった。こういうのって結構楽しい。ある意味贅沢な一日といえなくもないだろう。ラジヲのチューニングを福岡のローカル局に合わせる。休日の特番をやっている。なんともゆるいトークが旅情をそそりやがる。
 ポラーノの広場は改めて読んでみると実に面白いなぁ。僕は宮沢賢治をイノセントな作家とは思っていない。人間のダークな部分に関する描写こそ、宮沢賢治の真骨頂なのだ。実に端的で、象徴的で、的を射ていると思うよ。

11/24
 芦屋からは海岸沿いのサイクリングロードを走破して、波津の漁港に抜ける。そのままろくに休みもせずに鐘崎の漁港まで。我ながら惚れ惚れするやうな健脚だ。お茶を購入して、ザックの天蓋に残っていた干し柿を齧りながら一息入れる。お茶と干し柿ってのはどうも相性がいいね。
 漁港を横切っていくと渡船待合所がある。地島っていう小島まで300円で行けるらしい。待合室の中を覗いてみると、誰もいなくてヒッソリ閑としている。壁には健気にくゎんこうマップなど貼られている。旅情を誘われるままに、ふらりと船上の人になってみたいやうな気持ちになるが、ここはグッと我慢。僕ももう大人だからね。軽はずみな行動は慎まなければならない。
 さて、この辺からグッとペースが落ちる。どうも此処までが少々オーバーペースだったと見える。どう踏ん張ってみたところで、一向にペースが上がらない。ヨチヨチとした足取りで神湊の漁港へ入っていくと、ここにまたしても渡船待合所が。ここにはちゃんと券売の人が詰めている。大島という島まで500円。くゎんこうマップで見たところ、この島には温泉が湧いているらしい。今夜はこの温泉でひとつ湯治と洒落てやろうか?などという良からぬ考えがふつふつと湧いてきて困る。止めてね。いたづらに旅情を誘うのは、止めてあげてね。しかし、よく見るとこの温泉は改装工事で閉鎖中との旨を知らせる張り紙がされている。なーんだ、それじゃしょうがないな。残念なような、ホッとしたような気分。
 明日はいよいよ博多に突入だ。今日は適当な所まで進んでおけば良い。なるべく国道に出ないように辺鄙な裏道を選んで歩いてきたのだが、それにしたって、やけに辺鄙な所が続いている。博多がもう目と鼻の先だっていうのに何たるザマだ?
 白石浜という海水浴場に出てみる。民家の脇の頼りない踏み跡を辿って雑木林の下を抜けて行くと、ちょっとした丘の上に出る。眼下には広々とした砂浜。神湊の方からずぅっと弓なりに続く砂浜が一望出来る。車で入って来れないせいか人影がない。釣り竿担いだオヤジが一人いたくらいか。なんて気風の良い景色なんだろう。ちょっと早いが今日は此処で寝ることにする。
 久々に焚き火をせんとて、夕暮れ頃より薪を集め始める。しかしどういう訳かロクな流木がない。あるのは材木の残骸ばかりだ。材木ってパチパチ爆ぜるから余り好きじゃないんだけど、この際文句も言えないか。そうこうするうちに日が暮れてしまった。昨日の雨で薪が濡れているしどうなることかと思ったが、いざ火を点けてみるとわりといい感じで燃えている。材木ってのも捨てたもんじゃないね。

11/25
 あまりよく眠れず、珍しく早起きする。空は曇天。予報通りだ。降り出す前にさっさと博多に突入することにしよう。
 都市郊外のダルい道を、トボトボと辿っていく。一向にペースが上がらない。最前から前方を土方風のオヤジが歩いている。ボロボロの防寒具に安全靴。ズタ袋みたいなバックを肩から提げている。ひょっとしたら浮浪者なのかも知れない。方角が同じなので、しばらくこのオヤジの背中を見ながら歩く。そのうち追い越してしまった。向こうもこちらの様子を伺っているような気配。コンビニでおにぎり買って朝食にしていると、オヤジも追い付いて来る。オヤジはひとしきり灰皿のシケモクなど物色した後、話しかけてきた。何でも佐賀から小倉に出稼ぎに来たが期待した職にありつけなかったらしい。僅かに稼いだなけなしの金もみんな使ってしまった。仕方ないので佐賀まで歩いて帰る途中なのだという。はあ、そうっすか。そんな不景気な話には別に興味はねえんだけど・・・。
「オニギリ一個くんね?」
とせがまれた。結局それが目的なのである。僕もこれを断るほどガッツ溢れる人間ではない。一個分けてあげたけど、メゲるよなあ。ボロボロのなりをして野宿を繰り返しながら、徒歩旅行なんて続けていると、浮浪者への道を着実に歩んでいるやうな気分になることがある。お巡りさんに追っ払われてテントの撤収なんてしていると、世の中に自分の居場所なんてないような、惨めな気分になったりもする。でも、なんか違うよなぁ。俺をあんたらと一緒にすんな。あんたには同類に見えたのかも知れないけど、俺はあんたらとは違う。
 新宮あたりまで来ると流石に博多の郊外という雰囲気になってくる。このまま真っ直ぐ国道を辿っていくのもダルい。嫌いなんだ、この都市郊外の没個性な街並みが。ということで、西に進路を変更して、海の中道を歩いてみる。西戸崎から船で颯爽と博多に突入してやろうという寸法である。こういったイベントでも企画しないと気が滅入ってやってられん。まあ、海の中道にしたところで歩いてみたところで別に楽しい所ではない。まばらにレジャー施設が点在する、殺風景な一本道である。
 西戸崎の船着き場は地図とは違う場所にあるので少し迷った。地図では半島状の部分に道が尽きる所にあるが、実際には駅のすぐ裏手にある。遠回りしているうちに一本乗り損ねてしまった。次の便まで一時間程の待ち時間を利して、電話帳で博多の宿などを物色してみる。僕は都市では野宿はしないことにしている。なんせ、浮浪者とは違うからね。ウィークリーマンションが1万5千円と安い。でも一週間も滞在するつもりもないしなあ。海員会館が安いって話を聞いたことがあるけど、博多にはあるのかな?などとあれこれ思案しているうちに、船がやって来る。いざ、博多へ。しかし下関や若戸の渡船の時の様には気分が盛り上がらない。何故だろう。この航路は半ば観光向けで、生活感が希薄だからかもしれない。空は青春の如く鈍色に垂れ込めて、今にも泣き出しそうな気配。
 5時頃博多港着。夕暮れの道を中心街へと歩いて行く。博多という街は実にコンパクトにまとまっている。空港も港も歩いて行ける距離にある都市なんて他に無いんじゃないだろうか?いや、普通は歩かないのかも知れないけど、歩いたって大した距離ではない。
 博多駅に着く頃より案の定雨。今夜はカプセルホテルにしけこむことにする。駅前にも何軒かあったが、あえて中洲のカプセルホテルを選ぶ。地図を頼りに、早くも日の沈んだ夜の町を歩いて行く。博多駅周辺は案外暗くて寂しいところである。見知らぬ町の夜の道ってのは寂しいものである。
「今日は吉原堀之内、中洲、ススキノ、ニューヨーク。」
などと歌っていると、程なくしてまばゆいネオンの街が現れる。週末のせいかやたら人出が多い。黒服のホスト風なやつらも一杯いる。すごい雑踏だ。このゴチャゴチャ感はススキノにはないな。取り敢えずホテルにチェックインして、一風呂浴びてから改めて夜の街に繰り出す。中洲は騒がしいので天神の方へ行ってみることにしてみる。橋の上ではサックスを持ったミュージシャンがジャズをやっていたりする。どす黒い夜の川面にネオンが映って綺麗だ。中洲はその名の通り、那珂川の中洲にある繁華街である。
 天神周辺はどうもショッピング街という感じのところのようだ。一杯やるならやはり中洲界隈の方がいいのか?あてもなくうろついてみてもどうも要領を得ない。中洲に戻ってきて適当な居酒屋で軽く飲んでみる。しかる後に屋台でラーメン。川沿いに沢山の屋台が並んでいる。どこもサラリーマン風の人達で一杯だ。空いている席を探すのも大変。しかしお味の方は…なんとしたことか、下関で食べたラーメンの方が美味いんじゃないか?そんなバカな…。念のためもう一軒行ってみるもやはり、負けてる気がする。そもそも中洲でラーメンってのが間違ってるのかも知れない。例えば、札幌でラーメン横丁に行ってしまうやうな、よそ者特有の勘違いなのかもしれない。隣に居合わせたサラリーマン風の一団にビールをご馳走になった。何処かでしこたま飲んできたらしく、皆いい感じで出来上がっている。何故か僕も一緒になって乾杯したりした。
市場の食堂。
楽しすぎるぞ、若戸渡船。
楽しすぎるぞ、若戸渡船。
中洲の夜景。
市場の様子。
食堂「ゆたか」
ゆたかの大将。
郊外の道は何処へ行っても同じ。
郊外の道は何処へ行っても同じ。
若戸大橋。
これが若戸渡船だ。
これが若戸渡船だ。
芦屋の砂浜にて。
芦屋の砂浜にて。
鐘崎の漁港にて。
鐘崎の漁港にて。
白石浜の夕暮れ。
白石浜の夕暮れ。
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