記録ID: 44744
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ハイキング
九州・沖縄
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)50・佐世保へ。
2006年12月02日(土) 〜
2006年12月05日(火)
- GPS
- 80:00
- 距離
- 105km
- 登り
- 1,141m
- 下り
- 1,118m
コースタイム
12/2 日比ー船唐津ー御厨ー江迎ー鹿町
12/3 鹿町ー歌ヶ浦ー神崎鼻(本土最西端)ー楠泊ー畑瀬ー運動公園
12/4 運動公園ー長崎山ー立石崎ー小佐々ー相浦ー佐世保
12/5 佐世保ー針尾(引揚げ記念公園)
12/3 鹿町ー歌ヶ浦ー神崎鼻(本土最西端)ー楠泊ー畑瀬ー運動公園
12/4 運動公園ー長崎山ー立石崎ー小佐々ー相浦ー佐世保
12/5 佐世保ー針尾(引揚げ記念公園)
過去天気図(気象庁) | 2006年12月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
12/2 朝のうち一時雨。テントから様子を伺う。冬型の気圧配置で大気の状態は不安定。風が強く、どんどん雲が流されていく。なんとも寒々しい天気。四阿の下に荷物をまとめて、取り敢えずダム湖を一周してみる。ダムっつっても小さい池みたような奴。昨夜は真っ暗だったんでよく分からなかったけど、こうなってたのね。適当な頃合いを見計らって出発。 鷹島は小さい島だが山が多くて平地が少ない印象。主要道は山の稜線上を続いている。歩いていると幾つかの枝道が海に向かって降りてゆくのが見れる。地形の関係で港まで見渡せる訳ではないが、時折海岸が見え隠れする。どんな所なのか興味はある。しかし大した目的もなく寄り道をするにはチト遠すぎるな。おぢさんはね、こう見えて忙しいのだよ。尾根筋沿いの幹線道路は専ら移動用のものと見えて、沿道に人影はまばら。陰気な気候も相俟って、何ともさみしい、さみしい風景。島を南西の端まで歩くと、船唐津の集落に着く。青島経由で九州島に向かう船がここから出るはずだ。侘しげな集落をスナップしながら港へと地味な坂道を下って行く。 港にはフェリー乗り場が見当たらない。券売所や待合所の姿も見えない。小さな港なのでグルリと一周、散歩がてら回ってみることにする。漁港でボンヤリしていたじいさんに尋ねたところ、フェリー乗り場は港の反対側なんだそうで。行ってみると、ゴミステーション的なコンクリートの粗末な小屋があるだけで、券売所などはない。その中には高校生くらいの男子が独り座っていて、俯いて頻りとケータイをいぢりまわしている。傍らにはギターケース。バンドでもやってるんだろうか。何処へ行くつもりやら?このへんじゃ、九州本土へ船で渡ったところで大きな街はなさそうだが。 程なくして船がやってくる。こんな桟橋もロクにない港にフェリーなんて来るのか不安だったが、ちゃんと来るから不思議だ。青島経由で九州本島の御厨まで520円也。船は結構揺れる。この風だから、まあ当然だろう。青島には寄らずに、九州本島の御厨まで行くことにする。 御厨の港に着くと、乗り合わせた地元の人たちは砂にまかれた水みたいに何処かへ消えて行った。僕は土地勘がないのでどっちへ行っていいかどうも定かでない。適当に右手の方を選んで歩いて行ってみるが、何かピンと来ない。良くない予感に襲われて、クルリと踵を返すと左手の方へ進路変更。これだってさした根拠はないのだが、どうやら正解だったようで。港のすぐ裏手から県道を使って鹿町方面へ抜けてみることにする。平戸方面へ行くのは止めて、佐世保へ急ぐことにした。そう言えば、何時の間にやら、長崎県に突入したようだ。てっきり佐賀の北部を歩いていると思い込んでいたのだが、鷹島から既に長崎県だったようで。 61号線という地味な県道を辿って行く。今日も軽い峠越え。この辺は小規模な棚田が随所に見られる。あまり平野らしい平野がないので、この辺のお百姓さんは昔から苦労したのだろう。途中、銀杏の綺麗な神社を見付けた。 夕方、江迎の町に到着。丁度アヴァンティの時間だが、如何せんFMの電波が入らない。それはそうと、微妙に日が長くなったような気がする。冬至って何時だったかな?単なる気のせいか。温泉があったので思わず入ってしまう。何かヌルヌルしたアルカリ性泉だった。7時頃までウダウダしてから、おもむろに夜の路上に出て行く。なんか真っ暗だなぁ。今夜は何処で眠ろうか?まるで良いアイデアが浮かばない。とりあえず海沿いの道を歩いてみる。夜の海はやけに静かである。町を大分離れた辺りに、干潟のような所がある。暗いので良くは分からない。静かそうだったのでそこで野営する。どこか遠くの方でしきりと犬が騒いでいることよ。まさか俺様の気配を察したんじゃあるまいな? 12/3 相変わらずの曇天。風が強い。たうたう長袖の下着を着込むことにした。 今日はこの辺でマラソン大会があるらしく、朝から賑やかに宣伝カーが走り回って交通規制のことなどをやかましくアナウンスしている。わりと本格的にやってるみたいだ。 埋立地に沿った寂しげな道を歩いて行くと、やがて展望が開けてきて海らしくなってくる。遠くに見えるのは平戸だろうか?緩やかな坂道を越えて歌ヶ浦へと歩みを進めていると、坂の下に牛が二頭、路上でボンヤリしているのに出会う。短角黒毛和牛である。うし?白昼堂々、ノラ牛かよ。地元のおばちゃんが二人、心配そうに話し合っている。 「牛が離れとっと。◯×さんとこの牛だろか?」 「大丈夫なんね?」 仕方ないので恐る恐る、傍らを通りすぎる。僕はこう見えて都会派なもんで、牛なんて見るとビックリしてしまふ。でもまあ、大人しくしていてくれる分には円らなお目々が可愛らしい。自慢の90mmで写真など撮っていると、背後から一台、何やら騒がしい車がやってくる。例のマラソン大会の先導車である。「ランナー様が通るから道を開けろ」といった事をスピーカーでしきりとアナウンスしている。成程、見れば車の後には血相を変えてひた走るランナー達が続いている。これはバッドタイミング。先導車をキョトンとして見送っていた牛が、迫り来るランナー達の集団に気付いてビックリ。マラソンというのは過酷なスポーツであるが故に、競技者のそれにかける意気込みというのも僕などに計り知れないものがあるのだろう。特に先頭集団を走る人たちなんかはそうだと思われる。路傍のノラ牛などに構っている余裕はないのだ。しかしその辺の事情が牛に分かるハズがない。単に暴徒と化した人間が、狂乱の津波となって押し寄せたとした見えなかったであろう。ビビった牛はカツカツカツと蹄の音も小気味よく、一目散に逃げ出した。牛って生き物は普段のんびりと草を食んでいる印象しかないが、こんな時意外な俊敏さを発揮するものである。でも、ちがーう、そっちじゃない。ランナーと同じ方に逃げてどうすんだ!などとハラハラして事の成り行きを見守っていたが、ノラ牛は無事道端の草むらに逃げ込んで行った。傍観者には面白い見物だったが、牛としてはとんだ災難だったろう。それにしても、ランナーって、牛ぐらいじゃ一切怯まないのね。凄いよね。 そこからしばらく行くと道の真ん中に「折り返し地点」のコーンが立っている。こちらは中学生だかのマラソン大会である。丁度先頭集団がやって来たところ。沿道にはチラホラと応援に駆けつけた父兄と覚しきおっちゃん、おばちゃんの姿も見える。こんなところをデカいザック背負って歩いてたら目立ってしょうがない。「がんばれー」なんて応援されちゃったりしたら恥ずかしいだろう。ということで、ガードレールに腰かけてしばし観戦。体育教師風なおっちゃんが、「モタモタしてっと女子に抜かれっぞぉ。」なんてハッパ掛けたりしている。大人になってから見ると、たかがマラソンって言っても興味深いものだ。この競技に対するスタンスに個性が現れている。マラソン大会なんてものは所詮人から与えられた課題だから、ただがむしゃらにやれば良いってモノでもないだろう。しかし、真面目にやるにせよサボるにせよ、ホドホドにしか出来ない奴等ってのはホドホドの人生しか送れないんじゃないだろうか?格好ばかり気にしてる奴等は格好だけの人生しか・・・。いや、たかだかマラソン大会ごときで人生を云々されても困るよね。 最後尾が行ってからボチボチ歩き始める。海沿いの穏やかな道だ。沖合いには幾つもの小島が見える。九十九島の島影であろう。美しいところである。歌ヶ浦を過ぎると道は一度海を離れて、緩やかな峠越えになる。再び海に出て、神崎という所まで来ると九州本島最西端がすぐそこである。といってもすぐ目の前に五島列島などが見えている訳で、端っこ的な有り難味には少し欠けるが、近いようなので行ってみる。ぐねぐねと続く漁港を抜けていくと駐車場に出る。最西端の碑はもうすぐそこだ。この辺は一際風が強い。端っこだからね。遮るものがないのだ。こんな天気の日に好んでこんな所に来るのは釣り師ぐらいなものである。空は鈍色、沖合いには神々しい光の矢が幾筋も落ちている。水平線に霞んで見えるのは五島列島だろうか?寒いせいか、蜃気楼の様にユラユラと揺れて見える。本当に幻なのかもしれない。この感じ、写真に写るんだろうか?駐車場に戻って来て、缶コーヒーで一息つく。とにかく寒い。缶コーヒーじゃちっとも暖まらん。駐車場ではさっきから子供がボール投げして遊んでいる。子供は元気だよなぁ。おっちゃんは寒くてやりきれんよぉ。 最西端の碑のある神崎の半島には「神崎天主堂」なる教会があるそうで。「ラジヲ深夜便」で遠藤周作の「沈黙」の朗読をやっていたことから、僕はこのところ遠藤周作のキリシタン物を読んだりしていた。そのせいでちょっとキリシタン文化にも興味がある。折角来たので帰りがけに見ていこうとするも、何処だか分からず。 「ぱ、パードレ。オイはさっき夏みかん盗みよったとですよ。パードレ、オイのコンヒサンば聞いてくれんとですか。パードレ・・・。」 などと、キリシタン風に大袈裟に嘆いてみる。ま、あまり熱心に探したわけでもないのだが。 南楠というところにコンビニ風のリカーショップがあったので入ってみたが、品揃えが今ひとつ。もう少し行ってからにすることに。何故か店の奥では母娘がカラオケに興じていた。どういうシステムなんだ? この先、長崎という小さい半島を回ってみようかと思っていたのだが、間違えて一本手前の道に入ってしまう。ここも小さな半島状の所だが、先端を回り込んだところで急に道が途切れた。俺は何処に居るんだろう?今更地図を見ても、ちょっと訳が分からない。小さな入江の向こうには小さなボートが二艘、三艘繋がれているのが見える。あそこまで行けば取り敢えず道は続いていそうなものだ。なんとなく岩場をへつったりして道なき道を行ってみると、はたして小さい漁港に出る。ここから急な坂道を登っていくと運動公園があった。こんな辺鄙な所にしては立派な施設だ。野球場には観覧席だってある。三塁側ダッグアウトにテントを張って野営。残念ながら、付近には買い物出来そうなお店がない。南楠のへんなリカーショップで買い物しとけば良かった。ま、一晩くらい我慢するか。 夜更けになって、犬が一匹騒ぎ出して辟易した。たぶん近所の犬なんだろう。放し飼いになっているのだ。そいつが、僕の寝ているダッグアウト前まで来て執拗に吠え続けている。犬としては変なよそ者を見付けてお手柄という気分なのかもしれない。鬱陶しい。俺が何をしたっていうんだ?大体おめえんちの庭じゃねえだろ。なんてことを犬相手に言ってみても詮ないことで。手なずけようとすると逃げるし、追いかけても捕まらない。やっかいのゎー。犬が人助け、みたいな美談は全部何かの間違いだと思うよ。とっ捕まえて半殺しにしてやろうと思って追いかけ回す。当たり前だけどそう簡単に捕まる訳はない。夜の運動公園をひたすら走り回る。ああ、なんで俺はこんな夜更けに犬なんて追いかけ回しているのだらう?大体俺にはここが何処なのかだって定かではないんだ・・・。などと思いながら、走った、走った。 12/4 昨夜は性悪犬のせいでロクに眠れもせず、明け方にも再び同じ犬の襲撃を受ける。ほんたうに、殺してやらうか?と思った。飯は不味いし、イラつく朝だぜ。 今日は長崎山のある半島をグルリと一回りしてみるつもり。そもそも、昨日はその半島を回ってるつもりでこんな所に来てしまったのだ。地図で見た感じだと大抵2〜3時間もあれば回れるのではないか?半島への分岐に差し掛かった時、さわぁっと俄雨。めげそうになるが、ここは妥協せずに初志貫徹。半島を南へと回っていくと海が綺麗になって来る。いい感じのところだ。 やがて商業港っぽい雰囲気のところに出る。資材置場のフェンスの向こうでデカいセパードが狂ったやうに吠え騒いでいる。柵越しとはいえ迫力だ。この辺の犬はみんな頭おかしいんだろうか?商店があったので、カップラーメンにお湯を入れてもらう。サンドイッチにデザートのブラックサンダーを付ければ立派な食事ってものだ。昨夜からロクなものを喰ってなかったので、やっと人心地つく。(ちなみにブラックサンダーは一個30円の駄菓子。「若い女性に大人気」などとユルいキャッチフレーズを謳っているチョコレートである。) 後になって思い返すと、この時早くも臼之浦という町に到着してたのだが、何故だか今日は地図を見ようって気持ちが湧いてこず、よく確認もせずに南へと向かう細い道に迷い込んでしまう。これが間違いのもとだった。ここから18号線はすぐそこだったので。なんか変だなあとは思っていたのだが、間違っていたとしても、それはそれで良いような、風情のある道だったのである。そんな訳で未だ長崎山の半島を回ってるつもりだったのだが、実は一つ隣の浅子岳の半島に入り込んでしまった。こちらは地図では道が付いていないのだが、そんなことは知らずに呑気に歩いていたのである。 やがて立石崎に到着。半島の突き当たりが細長い砂浜となって小さな島に繋がっている。その向こうには静かに輝く海。実に綺麗な所である。砂浜の手前に畑があって、大きな黒犬が放し飼いになっている。大人しい奴だったんで良かったけど、この辺の犬はどーかしてるのが多いから緊張しちゃうよね。飼い主と覚しきおっちゃんが近くで野良仕事に精を出している。聞けばこの辺はボートの練習なんかで、夏場には賑わうんだそうで。今、こうして見た感じでは、そんな片鱗は微塵も伺えない。ひょっとしたら、マリンスポーツに縁のない、僕のような人種にとっては今時季がベスト・シーズンなのかもしれない。とにかくすンげえキレイなんだ。 更に半島をグルリと回って東海岸に出る。やがて湿地帯に出て、道が極度に頼りなくなる。未舗装でいつ行き止まりになってもおかしくない。変だなあと思いつつも、先へ進んで行く。いい加減、地図で確認すれば良さそうなものだが。まあ、間違いに気付いたとて、ここまで来たら進むしかないよなあ。浄水場を過ぎると、再び舗装道になる。しめしめと思ったのも束の間、今度は通行止めの看板が出て来る。 「この先地すべり危険。通行禁止。」 などとイケずなことが書いてある。ナニ言ってんだよ。今更引き返せるかっつーの。ということで無視して進む。結果、特に危険そうな箇所もなく無事通過。急に道が平坦になって、工業地帯に踊り出る。コンビニでオニギリ齧りつつ、地図を確認。漸く間違いに気付く。どうりで4時間もかかる訳だ。変だとは思ったんだよね。ま、ステキな間違いだったということにしておく。 夕闇迫る道を佐世保へと急ぐ。この先相浦という所もちょっと道が分かりにくくて危うく自衛隊駐屯地に迷い込みそうになった。県道11号には家路を急ぐ車が連なっている。鹿子前というところからちょっとした峠を越えていくと、眼下に佐世保の港が見えて来る。折しも太陽は西の空へ消え、満月近い月が西の空にぶら下がっている。 「月はおよそ見当違いな方角にあって、それでもやけにまん丸く、黄色く濁っているのであった・・・」 などと詩情溢れる独り言を口中に弄びながら、急な丘の中腹に付けられた道を進んで行く。家々は斜面にへばりつくようにひしめき合っている。激しく入り組んだ町並みだ。軒先を透いて造船所のクレーンが巨大な恐竜のやうに何本も首を伸ばしているのが見える。いい風情だ。この密集具合、九龍か軍艦島に迷い込んでしまったかのやうな錯覚を覚える。もちろん九龍も軍艦島も行ったことはないんだけど。 道は緩やかに丘を伝って、佐世保市街へと続いていそうな気配だが、ここは敢えてやけに狭い路地を選んで急な斜面を下ってみることにする。下から買い物帰りのおばちゃんでも登ってきたらすれ違えそうにもない。こういうゴチャついた町並みはなんか楽しい。坂を下りきって平坦地を中心街へと歩いて行くと、米軍基地に行きかかる。米軍っていうと沖縄のイメージが強いが、そうか、佐世保にも基地があるんだなぁ、と実感させられる。ものものしい雰囲気だ。 右も左も分からぬまま、真っ暗な道を道なりに辿って行くとやがて駅前のアーケードに出る。さて、今夜の泊まりはどうするか?米兵もいることだし、野宿は嫌だな。サウナかカプセルホテルでも探そうか。それよりまずは晩飯か・・・。などと思いつつアーケードを右往左往していると、風変わりなオバチャンに呼び止められた。志茂田景樹風のおかしなファッションに身を包んでいる。強いて言えば女装した山崎努に似ている。ま、山崎努の女装を見たことがある訳ではないのだが。なんか、飯を奢ってやるからこの店に入れ、とかって騒いでいる。見れば、そこにはいけす割烹風の料理店。確かに腹は減ってるんだが、ものには順序ってもんがある。いきなり見ず知らずの人に理由もなくご馳走になる訳にはいかない。アンタに奢ってもらう筋合いは無いし、俺は乞食じゃないんだよ?とは思ったが、押しの強いオバチャンで断るのが極度にめんどくさそうだったので、黙ってご馳走になっておくことにする。大体このオバチャン、自分は食事を終えて今まさに店を出てきたばかりなのである。さっき帰ったばかりのお客さんが、変な若者を連れて戻って来たので、店の人もキョトンとしている。 「バッテラを喰え。それからチャンポンも美味いから喰え。」 と言われるがままにバッテラとチャンポンをオーダー。この店は、客席のど真ん中に巨大な生け簀が設えてあって、それをカウンター席が囲んでいる、という造り。生け簀には活きの良い地魚が元気に泳ぎ回っている。折角だから自腹でも海の幸が食べてみたいものだ。しかしオバチャンにはそんな思惑は通じるハズもない。 「あとは酒か。酒も飲むか?」 と畳み掛けてくるので、あざーすなどと適当に答えていると、熱燗も一本付けてくれる。このオバチャン、なんでも、死んだ旦那の遺産で旅行三昧の楽隠居なんだそうで。この風貌でチベットあたりにも出没したらしい。一通り注文を済ますと、オバチャンはお代を払って慌しく立ち去って行った。きっと世話好きな人なんだろう。悪い人ではないんだが、どっと疲れた。程なくしてバッテラとチャンポンが出て来る。どちらも美味い。これがセットで520円というから驚きのコストパフォーマンスだ。カウンターに居合わせた恰幅の良いおっちゃんが、隣の中年増を口説こうとさっきから一生懸命だ。 「良かったらこの後ワインバーでもご一緒しませんか?」 とかって、今にも始まりそうな気配。佐世保のいけす割烹は何でもアリかよ?この際何だってあるさ。だってみんな一人旅なんだもの。僕はというと、熱燗にチャンポンという妙ちくりんな取り合わせのせいか、僅か二合の酒でヘロヘロになってしまった。酔いの周りがキテレツだ。駅裏にサウナを見付けて、早々にシケ込む。 12/5 昨日の夕景があまりにもファンタスティックだったので、今日は半日かけて佐世保の町を散策してみることにする。例によってロクに寝付かれもせず、9時頃サウナを後にする。駅のコインロッカーに荷物を突っ込んで、港へ繰り出す。取り敢えずフェリー埠頭に行ってみる。近くには卸売市場などもあったが、シンとしていた。取引は終わった後だったのだろう。ターミナルで確認した所、五島列島までは3000円ほど掛かるようだった。実の所、未だに五島列島に足を伸ばそうか、迷っていたのだが、やはり長崎へ向かう方が素直なやうな気がする。 海沿いに米軍基地の方へ歩いて行く。もちろん敷地内には入れない。それどころか、入り口のゲートにカメラを向けると「NO!」とかって言われた。キンチョーするよね、そういうこと言われると。 米軍基地に隣接して造船所が広がっている。函館のどっくなんかと違って大規模で凄い活気だ。しれーっと中に入っても文句言われなかったかもしれないが、止めておいた。国道からフェンス越しに写真など撮ってみる。ああ、楽しそうだ。無数の巨大アームが忙しなく働いている。これぞインダストリア。見応えのある風景だ。ぐるりと湾を回り込んでみる。まあ、近づけはしないのだが、それなりに満足。帰りは丘の上を回ってみたが、昨日のやうな感銘は受けない。あれは夕闇のマジックだったのだらうか? 昼頃駅前アーケードに戻って来る。さて、ランチは勿論佐世保バーガーだらう。ここ佐世保は知る人ぞ知るバーガー激戦区なのだ。先日の唐津バーガーなんかは、佐世保の真似をしているのに違いない。昼時とあって、雰囲気の良い店は何処も満員。テイクアウトにして、その辺の公園で食べようかと迷っていると、時ならぬ俄雨。降水確率0%の予報だったのに。この天気で野良バーガーはキツいだらうということで、空いてる店に入ってみたが、これが大失敗。なんかモスバーガーに毛が生えた程度のもんが出て来る。佐世保バーガーってのはわりと高い食べ物である。ファーストフード的なものに登場してもらっても困るのだ。うっかりこういう店を選んでしまうというのはよそ者に有り勝ちなんではないだろうか。例えば、札幌に来たくゎんこう客がなんちゃってスープカレーを見事に引き当てて、 「スープカレーって訳分かんない。」 とか言ってるのに状況としては似ているんじゃないかと思われる。佐世保バーガー、正体見えず仕舞い。残念。 反省の意味合いも込めつつ、駅前のスタバ風のコーヒーショップでうたた寝してから出発。時計は3時を回ったところ。針尾に大きな公園があるみたいなので、その辺にアタリを付ける。大塔という町で日も暮れて、コンビニのヤキソバパンなど物憂げに齧りながら真っ暗な道をとぼとぼと歩く。引揚げ記念公園とかいうところで野営。結局8時頃までかかったろうか。両手を広げた女人の巨大なモニュメントなど屹立している。満月を背後に浮かび上がったシルエットが不気味だ。なんなんだろう、この公園。 |
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