尾瀬沼大江湿原。原一面、波打つ白穂にキスゲ揺れ


- GPS
- 09:14
- 距離
- 25.4km
- 登り
- 959m
- 下り
- 732m
コースタイム
- 山行
- 7:45
- 休憩
- 1:24
- 合計
- 9:09
天候 | 晴れ。夕方にわかめ雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
大清水の駐車場にバス到着時、いったん小降りとなった雨は、再び豪雨となった。 |
写真
装備
個人装備 |
ザック(G/R)
シューズ(low)
ハーフP黒
登山タイツ(M)
TシャツW
アームカバー
夏帽子(M)
ストック夏
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感想
ここ大江湿原がもっとも輝く時節は、ちょうど今頃、この初夏の頃合いだろうか。広大な原には、ワタスゲの白穂がなびき、ニッコウキスゲが色を添え、タテヤマリンドウが地表を蔽う。まったくもってすばらしい眺めで、それがどこまでも連なっていた。ただ……
また、ここ尾瀬沼のほとりで聞くホトトギスの澄んだ囀りは、周囲の森に反響し、深い憂いを帯び、またカッコウの太い鳴き声は、ときおり心痛の表現のようにも感じられる。この場所では鳥の声すら独特の響きを持っていて、その声が今日はいっそう強く悲しく感じられた。
そう、全的にこのすばらしい自然の妙がすんなりと素直に入ってこないのは、二日前にまったく予期もしない、とても痛ましい悲しい事件が発生したから。その余韻がいまだに誰彼かまわず、くすぶっていたからだろう。そんな拭いきれない残滓を無意識にもどのハイカーも携えていた感じが見えた。こんなにもすばらしい楽園の出現に、常ならばきっと奇声や奇矯やらが自然ほとばしり出るのを至る所で目にするのだが、今日は何かしら違った感があったのは、勝手な思い込みだろうか。稀に目にするきれいな風景を前にしても、この場の高揚感は残念ながら少なめで、誰もがその喜びの表出を無理にも無意識にも押さえ込んでいる、そんな感じがずっと漂っていた気がした。
日本中を震撼させるほどの出来事が起こったとなれば、人心がすぐに平常に戻ることは難しいとは当たり前なことだろう。余波は、まったく無関係な人間にも来ているに違いない。ただ同時代に起こったとは疑いようがない。
突如そんな下地が生まれ、こちら側にちょっとした陰りがあったものの、大江湿原は実に見事な眺めだった。自然がこんなにも広大に飾り立てるとはやはり驚きで、またいつかもう一度訪ねてみたいものだと。今度のそのときは波風のない穏やかな心で。
追記:ノート
あまりに悲しすぎて、なんと言ったらいいのだろう、言葉がない、言葉がないでは済まされない。こんなに悲しいことが近来あっただろうか。流れる涙の粒は果てしなく大きい。いったい何があったというのだろうか。
同時代に為されたことは、同年代者の責任ではないのか。ほぼ同世代の人間が本当にあっと言う間に倒れてしまって。こんなことがあっていいのか、悲しすぎる。痛ましい事件の当事者は永遠に喘ぎ続けなければならないというのに、時勢は何事もなかったように進んでいく、これはまさしく現代の不条理ではないのか。と言ってこれをただす方法があるだろうか。
またの日がいつか巡ってくることを信じつつ、ありがとう。
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