豆焼沢
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年09月の天気図 |
写真
感想
中央道から雁坂トンネルを経由して行った。雁坂トンネルはひたすらまっすぐだった。40km制限のところを、Nさんは少なくとも倍の速度を出して走ったので怖かった。Nさんにはいつも車を運転していただいて非常に助かっているが、たぶん私はいつか死ぬとしたら山の中ではなくNさんの車の中だと思う。
「出会いの丘」に到着すると雨は止んでいた。きれいな駐車場と東大の展示施設があり、大塚と私は施設の階段の下で眠った。寝ている間、便所コオロギが顔の上に乗ってくることを除けば快適だった。それも防虫ネットを被っていたので問題なかった。コオロギくんたちはいくら追い払っても、見るたびに数が増えて近づいてくるゾンビみたいなやつらだった。暗くて黒い物体の影にしか見えなかったので、あの気持ち悪い姿を見ずに済んだ。
なんとなく調子が出なかった。頭が働かず集中力が散漫になっていたのか、何度も転倒した。滝を登るとき、思ってもみなかったところで滑って釜に落ち、びしょ濡れになった。
5mほどの滝の上に黄色い雁坂大橋がかかっていた。滝の先で沢が左に折れると水勢の強いゴルジュになっており、橋を左上に見ながら進んだ。先のほうにホチの滝が見える。橋のちょうど真下である。ホチの滝の手前に釜のある小滝があり、滝の下まで行くのが面倒に思えたので、手前のほうから右岸を登った。上部は木がまばらに生えた岩盤になっていたので、左のほうへ避けながら登ると、橋脚のコンクリートの土台の上だった。落ち口からだいぶ離れてしまい、懸垂で一度中ほどまで降りてから滝のほうへトラバースする。ここまでの苦労と時間はまったくの無駄だったようで、滝のすぐ右側は簡単に登れるようになっていた。滝の下まで行って見ていれば簡単にルートを見つけられたのに、横着した結果である。
すぐにゴルジュになり、いくつか滝がある。壁はつるつるで、ホールドは残置された切れたシュリンゲだけだ。一段目は無理やり力で登れたが、二段目は無理。戻って高巻いた。
「大高巻き、中高巻き、小高巻き
赤高巻き、青高巻き、黄高巻き」
腐った木や細い根っこにつかまりながら泥壁を登っているときは何も信じられない。指を泥に突き刺しながら登るので小さい傷だらけになる。そんなときは、なぜ自分はまた沢に登っているのかと疑問に思う。登り終わった後には、緊張したときの記憶はほとんど残っていないのだ。
無駄な高巻きの迷走やザイルのトラブルでかかった時間を取り戻すように、中間部はノンストップですっとばした。こけたり落ちたりして濡れてしまったので、日の当らない沢の中は寒かった。
大滝と4段の滝は踏み跡に従って高巻き、ぴたりと落ち口に出た。落ち着いてやればできる。二俣には両側から美しいナメ滝がかかる。おそらくこの沢の最後にして最大のハイライトだろうなと思い、「ありがたや」と呟きながらナメ滝を登った。だいぶ詰めも近くなってから、芸術的に苔生した小さいゴルジュ状が出てきた。切り取って家に持ち帰りたい景色だった。美しすぎる苔は触れることすら申し訳なく感じられた。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する