記録ID: 50578
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ハイキング
九州・沖縄
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)56・野間半島周遊
2006年12月25日(月) 〜
2006年12月27日(水)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 70.8km
- 登り
- 1,204m
- 下り
- 1,202m
コースタイム
12/25 野間半島、小池浜へ。
12/26 黒瀬へ。
12/27 枕崎へ。
12/26 黒瀬へ。
12/27 枕崎へ。
過去天気図(気象庁) | 2006年12月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
12/25 昨日は夜が遅かったので、さずがに朝はのんびり。数日ぶりの曇った空。中学生っぽい奴らがぴーひゃらひゃらと浮かれ騒ぎながら傍らを通りすぎて行く。なんだよ、見てんじゃねーよ。公園の清掃係のおじさんもやって来る。 「ここはキャンプ禁止だよ。」 だってさ。うるせーっつーの。ささやかに、うどん啜って出発。 大きな橋を渡って行く。親子が三人で仲睦ましく、自転車乗りに興じている。昨日の砂浜はどの辺だろうか?ここからだとよく見えない。どんな所を歩いてきたのか一目見ておきたい気もするが、わざわざ海岸に降りてみるやうなガッツはないな。多少後ろ髪を引かれつつサイクリングロードをどんどん行く。退屈な道だ。サイクリングロードってのは自転車で走るものであって、歩くものではないのかもしれない。 小湊というところを過ぎて、しばらく行くと産地直売所がある。地味な店だがあれこれと安くて美味しそうなものが並んでいる。「ふくれ菓子」なるものを食してみる。なんでも黒糖蒸しパンみたいな感じの食べものだ。いとうまし。下北半島を歩いているときに、3日ほどみそパンばかり食べていたのをふと思いだす。「おふくろの味」的な佇まいが似ていると言えなくもない。 公衆電話があったのでフェリーの予約をしておくことにする。実はまだ予約を取っていなかったのだ。さっさと済ませておけば良さそうなものだが、僕はこういった事務的な手続きが苦手で、出来るだけ後回しにしてしまう質なのだ。大晦日の便なんてもう満席だろうと思っていたのだが、意外にも空席があった。年末年始の忙しい時期だし、普通の人はヒコーキで移動するものなのかも知れない。何にしてもラッキーだったな。キャンセル待ちする覚悟でいたのでうれしい。これでいよいよケツの日程が決まった。うふふ、あとは歩くのみ。心配事は何もない。ウレシイネ。 大晦日までまだ日があるので野間半島を回ってみることにする。野間半島には杜氏集団で有名な「黒瀬」がある。芋焼酎好きを標榜する手前、一度訪れておくべきであらう。笠沙という町を通りかかると、変なスーパーを発見。年の瀬感を微妙に滲ませつつ、妙な活気を発している。ちらと覗いてみると、「タチウオ3尾100円」とか「鯖1尾100円」などとある。鮮魚以外の品物も兎に角安い。元気に野良犬までウロついている始末。折角なんで、少し早いが晩のオカズを購入することにして、店内を物色。お正月の飾り用に「だいだい」なども売られている。さすが九州。柑橘類が豊富だ。札幌のスーパーじゃ見たことない。レジのおばちゃんはお調子もので、このだいだいを買う人がいると必ず、 「はい、先祖代々。」 などと言っている。誰も一切突っ込まない。それでもまるでへこむ様子もなく、 「おつり、520まんえーん。」 などと、ダジャレを連発しながら盛んに売りさばいている。つ、強い・・・。などと思っていると、そのうち僕の順番が来る。おばちゃん、僕が首から提げていたカメラに気付いて、何故か爆笑しながら何か言っている。訛りがキツいこともあって、残念ながら何を言っているのか一切分からない。「いやー、マジっすか?」などと言って、適当に誤魔化しておく。日本語って難しい。 大当という景気のいい地名の港に海水浴場があるようなので、今夜の寝床としてアテにしていたのだが、行ってみると砂浜にはなっていない。やられた。トイレと四阿があるにはあるが、道端の狭苦しい場所で、寝ようという気は起きない。今夜は雨かもしれないので、もう少しシュッとした所に寝たいものだ。 それはそうと、ここ大当は石垣で有名な所らしい。なるほど、見上げると、急な斜面に軒を連ねた民家の軒下を、石組の塀が続いているのが見える。天場のことはひとまず置いておいて、しばし石垣見物にいそしむことにする。ああ、こういう地形って楽しいなぁ。 ひとしきり写真など撮ってから出発。さて、今夜の寝床はどうしたものか。野間半島は急峻な地形が続いており、砂浜でのんびりなんてのはあまり期待出来そうもない。これは笠沙恵比寿の港まで行かねばならないかも知れないぞ?時刻は4時を30分ほど回ったところ。距離にして6km程度。暗くなる頃には着くだろう。ということで、頑張って歩くことにする。強い風が頭上を吹き抜けていく。いやぁな天気になってきやがった。急ぐに越したことはない。 高崎鼻という岬を回り込んでいくと、凄い急斜面に段々畑が広がっているのが見えてくる。これもすべて石垣で仕切られているようだ。野間半島は石垣の多い所らしい。僕はこれを「野間石垣文明」と勝手に名付けた。 夕闇の指先が背中に触れようかという頃、ようやく笠沙恵比寿の漁港が見えてくる。さあこれで一安心、とホッと息を付いたのも束の間、夜空を低く被った雲の彼方から冷たいモノが落ちて来る。野郎、おいでなすったな?何であと15分待てないかねぇ・・・。雨具を出すのも面倒なのでそのまま急ぎ足で漁港に入っていくと、すぐに大きい四阿を発見。かろうじてずぶ濡れは免れた。やっぱり雨の神様は女だね。それも相当に性悪だ。 12/26 朝のうちは風が強い。雨は概ね上がったが、時折バラバラと四阿の屋根を打つ音がする。いくじなく出発を遅らせて、お茶など啜りつつ様子を見る。そうするうちにも、みるみる雲は風に千切られて、遠くだつたん海峡の方へ飛ばされていくらしい。こりゃ、行くしかねえでしょ?時こそ今は、花は香炉にうち薫じ・・・。などと中也の詩篇を口ずさみつつ、重い腰をあげる。70%年の瀬モードで出発。 港を後にするとすぐに急な斜面の登りが待ち受けている。ああ、しんどいけど気持ちいいな。紅葉が綺麗だ。振り返ると野間岬に何台もの白い風車が元気に三本の腕をぶん回しているのが見える。絶好の風日和ってやつ? 峠を越えて行くと、険しい山道はやがて海沿いに出る。不思議なもので、海の青さも道の静かさも北海道に似てきたやうだ。切り立った崖の上を続く道を辿っていると、松前半島を歩いているやうな、妙な気分に襲われる。昼頃「杜氏の里」に到着。 杜氏の里は、芋焼酎関連の資料を豊富に揃えた資料館であるとともに、本格的な酒造りを行っている。どこかの道の駅かなんかで情報を得て来たのだが、「焼酎テーマパーク」みたいなことが書かれていたのであまり期待はしていなかった。しかし来てみてビックリ。ここで造られる焼酎は麹の仕込みからすべて手作業なのだそうで。「いっどん」という銘柄は、すでにプレミアが付いていて、応募ハガキによる抽選でないと買えないらしい。うーむ、そうであったか。まるで知らない銘柄だ。資料の方も仲々充実している。さつまいもの伝来は江戸中期だそうで、黒瀬杜氏の歴史も僅か五代、明治までしか遡れないのだそうで。ちょっと意外だ。他にも蒸留酒の伝来ルートは対馬経路と薩摩経路の二つが考えられるとかって話は興味深かった。非常に気分が盛り上がったので、記念に一本焼酎を買っていくことにする。ここの受付のおばちゃんは異常に無愛想。アンタにゃ酒造りの熱さってもんが分からんのか?別にいいか。俺的にはいたく満足した。もちろん「いっどん」は買えないので別なのを選んだ。たしか「黒瀬杜氏」だったと思う。 杜氏の里に荷物を置いておいて、黒瀬の村まで歩いてみる。何があるって訳じゃないが、一応記念に。黒瀬の町はこぢんまりとした佇まいだが、昼間っから結構人が歩いている。みんな気さくな人たちだ。何言ってるのか殆ど分からんかったけど。カメラを見てうれしそうに笑ってた。思い切ってレンズを向けてみても良かったかも知れないな。僕はポートレイトというのはどうも苦手なのだ。ちなみにここも石垣の町。野間石垣文明の圏内と見える。 一時過ぎ、杜氏の里を後に。坊津を目指してせっせと歩いていく。この辺りの海岸線は「神渡」と呼ばれているらしい。険しい山肌がツヤツヤと光るわだつみへ躍り込んで、その、海と山との境に細々と道が続いている。くゎんこう地としてのハクみたいなモノに今ひとつ欠けるところがあるが、実に綺麗なところではある。 秋月の漁港でフィルムが尽きてしまった。僕は普段、予備のフィルムを2~3本ウェストポーチに忍ばせているのだが、今日はそれも使い切ってしまった。まだストックはあるが、背中のザックの奥深くに眠っている。今更取り出すのも面倒だ。沈み行く夕日が美しさを増していくようで心残りだが、写真を撮るのは諦めよう。むしろカメラなんかに煩わされず、身軽に歩けて良いかも知れない。 久志の町に入る手前に、海へ降りて行けそうな小路があったのでそちらに入ってみる。緩やかな下り坂が、夕陽を浴びて祝福されているやうだ。ああ、やはりフィルムがあれば良かったな。やがて道は侘しげな漁村へ入っていく。何という名の村なのか、僕の地図には載っていないので分からない。誰もいない砂浜で野営。 夜、FMを聞いていたらゲストで長渕剛が出ていた。「鹿児島サイコー。」みたいなことを仕切りと繰り返している。さすがアニキ、分かってらっしゃる。 12/27 暑くて目が覚めた。頭上には晴れ渡った朝の青空。風は相変わらず強く、西の空からどんどん雲を送ってよこす。気温が高かったのでカッターシャツを脱いで出発。まったく鹿児島は南国だね。今日は枕崎まで、半日行動ということにしてのんびり出発。ちなみに後日調べたところ、一泊お世話になったこの海岸は末柏という集落の馬込浜という所だと判明したゾ。 相変わらず険しい海岸線が続く。道路脇の法面工事のおっちゃんが 「旅行ですか?」 なんて声をかけてくる。僕はかつて法面工のおっちゃんにヒッチハイクで乗せてもらったことがあるが、その時聞いた話では、法面工事というのは相当危険な作業らしい。なんでも人が一人死んだくらいじゃあまり騒がないような現場だという話だった。法面工事って見るからに危険そうだよな。あんな崩壊地形にロープでぶら下がってるなんてロッククライミングの常識では考えられないだろう。大変な仕事だ。声を掛けてくれたおっちゃんも気をつけてほしいものである。 やがて眼下に坊津の港が見えてくる。海岸線が入り組んでいて風光明媚なところである。トンネルを抜けて、もう一山越えれば枕崎の町である。後ろから来た車が目の前で止まった。世にも珍しい山形ナンバーである。乗っているのは40歳前後と見えるアニキ。 「昨日も見かけたけど何処まで行くの?」 などと話しかけてくる。何となく同族の雰囲気を漂わせていたので少し話してみる。どうやら釣り師らしい。僕は釣りのことは殆ど分からないが、「この辺ならやっぱ磯釣りなんですか?」とかって適当に話をあわせてみる。彼の専門はフライフィッシングだそうで。フライというと渓流で、ヘンテコなベストにグラサンという出で立ちで、ひゅうひゅうぱちっとラインを振り回す遊びを想像するが、海釣りでもフライが使えるそうである。潮の流れなどを読みつつ、時間帯によって仕掛けを変えたりしながら遊ぶものらしい。色々説明してもらったが、詳しいことはみんな忘れてしまった。何でも奥の深そうな世界だった。山形あたりと鹿児島では潮の満ち引きからして全然違うんだそうで、こっちは干満差が2メートル近くあるんだと言って驚いていた。なるほど、言われてみれば、九州は干満差が激しいような気もする。天草の海岸では干潮で小島が地続きになったりしてたもんな。緯度によって干満差に違いがあるのか、その辺のメカニズムはよく分からんが、なんか納得してしまった。ちなみに山形での干満差は30cm程度だとのこと。この人は釣り好きが昂じて、とうとう仕事も辞めてしまったそうだ。鹿児島まで大物を求めてやって来たんだとか。僕が言うのもなんだが、いい歳して何やってんだろうね。大丈夫なんだろうか?将来のこととか。しかし釣り人にとって鹿児島というところは天国みたやうな場所らしく、 「いやぁ、来てホント良かったぁ。」 などと充実の笑顔をしておられたので、まあ良かったんじゃないだろうか。何とか鹿児島で職を探してこちらに永住したい望みを持っているとのことだった。楽しそうな人生だね。たまにこういう人に会うとホッとする。 やがて眼下に枕崎の漁港が見えて来る。遥か彼方には開聞岳。開聞岳ってなんてことない低山だけど、妙に愛嬌あるんだよなぁ。大きい町に入るのは串木野以来だろうか。やっとゴミ捨てれる。 枕崎には「さつま白波」で有名な薩摩酒造がある。その薩摩酒造でも「明治蔵」というのを一般に公開しているらしいのでさっそく見学に行く。薩摩酒造では「白波」みたいな量産品とは別に手作りにこだわった焼酎を造っているようだ。やはり麹造りから手作業である。そういうこだわりの銘柄は、みんな明治蔵で仕込まれている。「白波」というとなんとなく安っぽいイメージがあるが、「坊津」や「黒瀬」などはキレがあって美味しい。今回も色々試飲してみたが、「酒の手帳」なんかは美味しいと思った。気のせいか最近妙に白波が美味しくなったような気がするんだよなぁ。気のせいかも知れないけど。あなどるまじ、薩摩酒造。 枕崎はカツオの水揚げでも有名である。ハラカワというものがあるらしい。どんなものか分からないが、語感からハラミの脂の乗った部分の切り落としなんじゃないだろうか。なんでも酒のアテに抜群なんだとかって情報が何処からともなく入って来る。今夜はハラカワで一杯と洒落てみようとスーパーを物色してみるも売られていない。ホルモンが安かったので、何の脈絡もなくホルモンを購入。別にハラカワにこだわらなくてもいいか。何なのかよく分からないし。ホルモンだって上等なつまみだ。港の公園で野営。 |
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大分県だぁよ。「秋目」ぢゃぁねえかよ。
そうか、干満の差が激しいから「神渡」なのか。
前から訪れてみたかったんよ、坊津。「坊津」は癖の強い酒だったなや。
「薩摩茶屋」の麹は白か?黒か? アサヒは白でオイシイネ。
フォントのせいで「目」が「月」に
見えるんと違うか?違うか・・・。
薩摩茶屋にも黒があるのか、困ったもんだな。
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