アコンカグア撤退
shinnosuk
体力度について
- GPS
- 51:41
- 距離
- 69.0km
- 登り
- 2,478m
- 下り
- 1,083m
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- 山行
- 3:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:40
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:40
- 山行
- 9:06
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 9:06
| 天候 | 毎日快晴 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2023年02月の天気図 |
| アクセス | |
| コース状況／ 危険箇所等 |
特になし |
写真
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感想
この山行は自分の芯をへし折られた山行だったのかもしれない。
プラザデムーラスにて常駐の医師にヘリでの即下山を告げられるほどの重症であり、自分の弱さを痛感したからだ。
結論から言えばアコンカグアをBCにて撤退した。ヘリで搬送での下山だった。
今回の登山内容を簡潔に報告したい。
【1日目】
メンドーサにて泊まった後、朝9時にメンドーサを出発した。
今回お世話になった手配会社はINKAであり、ムーラ(登山口〜BCまでの往復）、コンフルエンシア、BCでの食事を合計5泊分手配していた。お値段はだいたい$1280であり、学生であった私にはなかなかの値段であったが、一人ということもあって万全を期して申し込んだ。
メンドーサから登山口までチャーターしてもらい、登山口に到着する。そこで単独でアコンカグアを目指す人と出会う。彼はフランス人の46歳であった。彼はキリマンジャロに登頂したことがあるという。私は彼と同じ目標であったことからしばらく一緒に登山することとした。
ちなみに入山料は外国人の場合、$800かかる。年末年始のハイシーズンになるとさらに$1000かかる。なかなかの高額であるが、諸経費を考えるとこの額は妥当なのであろうか。
さて、入山を始めたもののとにかく乾燥がすごい。かんかん照りの中ひぃひぃ言いながら歩いた記憶しかない。
17時半にコンフルエンシアに到着。日暮れが20時ということもあり、まだまだ明るい。
今日の食事はステーキだった。とてもおいしかった。ただ、ワインがさりげなく置かれていて僕としては困惑した。また、ピンク色の甘い液体もよくわからなかった。
【2日目】
今日は高度順応日であった。アコンカグア南壁を見る日であった。
8時にフランス人の方とともに出発。終始彼のペースが速かった。彼のポテンシャルはすさまじかった。40代とは思えぬ体力、そしてとにかく気力がすごかった。50間近になってこのような壮大な目標が建てられるのはすごいと思うばかりであった。
4時間程度歩くと、アコンカグア南壁に到着する。ここでは4000mを超えており、私は高山病に悩まされた。とにかく頭痛で気持ちを落ち着けるのに必死だった。フランス人の方は余裕で歩けており、高所にめっぽう強いようだ。
登山を終えてコンフルエンシアに戻る。ただ、体調がすぐれずにいた。夕食もあまり食べれなかった。とにかくしんどかったように思える。
血中濃度に関しても記載しておかなければならない。通常、下界にいる際には血中濃度(SpO2)というのは95以上を保っているのがふつうである。80以上が高所登山においては許容値であり、それ以下の場合異常であると診断される。
私はコンフルエンシアにて診断を受け、70という診断を受けていた。私はここでもう少し安静にすべきという判断を下さなければならなかったが、医師が「この値は間違いなんじゃないか」という指摘を受け、BCに上がることを許可してくれたのだ。私はこの許可に従い、登ることを決意した。
【3日目】
7時にコンフルエンシアを出発し、BCであるプラザデムーラスへと向かった。頭痛も治り、快調なペースで進んでいた。登り進めているとなだらかな谷にポツンと孤独に歩を進めている自分がいた。その谷は褐色に染まった無機質な土から構成されていた。とにかく変化がない。自分としては飽き飽きするばかりであった。
平坦な道を進むとムーラの往来がすさまじかった。荷物を60�圓曚姫燭鵑任�り、相当な力持ちであることが感じ取れた。
壮大な谷を突き進むと最後の急登に差し掛かる。ここはかなりの急登であり、高所登山に慣れていない私にとっては息が上がるものとなった。
急登を終えたところで休憩をしているとインド人に声をかけられた。一人できたと伝えると、「brave man」と返され、少し勇気がわいた。
BCに到着したら、日本人二人組に出会った。彼らは前日にアコンカグアに登頂したそうだ。彼らは世界中を旅しており、ボリビアで高度順応を終えたあと、これからパタゴニアに行くという。彼らの行動力には敬服させられるばかりであった。
彼らに別れを告げ、テントを立て、その日は就寝した。
【4日目】
この日はレスト日である。BCに到着すると毎晩のように雪が降る。下界では盛夏であるにもかかわらず雪が降るのは高度の高さを思い知らされる。水を数L飲み、就寝した。
【5日目】
この日はC1に偵察予定であったが、すこぶる調子が悪い。頭痛がしており、体が非常にだるかった。フランス人の方にも励まされたが、今日はC1偵察を取りやめ休養日とした。ただ、とにかく身体がだるく水を多く飲んだ。血中濃度(SpO2)も逐一確認し、80くらいで安定してきた。
夕食を食べ終え、登山許可を与えてもらうために医師のもとへと向かった。実際、血中濃度を確認したところ60程度となっていた。また、医師によると肺水腫の可能性があるという。医師は「一刻も早く下山した方がいい」と私に告げた。私はとても混乱した。自分としては体調は回復してきたはずなのにここで下山することとなるとは。。。私は医師の指示に従わざるを得なかった。「30分でヘリが来るからそれまでに準備するように。」と言われ、慌てながら撤収作業へと向かった。20kg以上の荷物は積載不可と言われたために日本から持ってきた大量の食糧をBCに残置せざるをえなかった。
ヘリに乗り込み、日が傾きつつあったBCを後にした。今までの足跡が見えて虚しさを覚えた。20分後に登山口に到着し、その日のうちにメンドーサに帰着した。
とにかく放心状態であった。何が問題であったのか自分でもよくわからなかった。富士登山も3回程度行い、ミウラドルフィンズにて5000m相当の高度順応も行ったはずである。自分の心の余裕のなさもこの登山で出てしまったのだろうが、それでもかなり不甲斐ない結果となった。
2023年8月、私はこの記録を書き留めた。この遠征の話をすると、一人でよく言ったとか、チャレンジ精神を称賛したいとかいう言葉をいただく。私としてもかなりかけがえのない経験をしたと思う。ただ、私はまだまだ弱い人間であったことを痛感させられた。
この遠征で植村直己が著した「青春を山に賭けて」を読んでいた。初めて読んだ書物であったが、刺激的な一冊であった。彼の不屈なチャレンジ精神、そして行動力に関しては感服させられた。ただ、植村自身はそれを「無謀」だと言っている。
私は他人の挑戦がたとえ無謀な挑戦だとしてもそれを称賛するような人間になりたいと思うようになった。私は遠征を行う前は、無謀な挑戦を行う人に対して嫉妬心を覚えていた気がする。ただ、この遠征を行い、挫折を味わった後は、無謀な挑戦であったとしてもその行動力を大いに称賛したいと思うべきだと考えるようになった。
最初は放心状態でなぜ山に登っているのかを自問自答していた。しかし、今となっては自分はただ自然と向き合うことが大切であると思った。人がどこに行ったということに捉われることなく、これからも自然に対する畏怖を感じながらも、自然の美しさを享受していきたいと思っている。
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