活火山世界最高峰 コトパクシ5897m (Cotopaxi 5897m The world's highest active volcano)
コースタイム
23:45駐車場発〜レフュージ0:15〜5:05コトパクシ山頂5:40〜7:55駐車場
天候 | 12/30 雪のち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2014年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
飛行機
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コース状況/ 危険箇所等 |
[エクアドルの登山について] 以下は私の経験からなのであくまでも参考程度に。 登山期間が前泊+1日と非常に短いのがエクアドル登山の特徴。カギはまず天気。その次に高度順応と行動時間が長く全般にわたり斜度がきついので十分な体力が必要である。旅行会社に手配をするとコトパクシを登る前に四千、五千m級の高峰を2つくらい登ることを勧められるが、これは高度順応に大変良いプログラムなのでお勧めである。コトパクシ・チンボラソ両方を目指すなら計4つの山を11日間(日本発、日本着で13日間)くらいで登る予定で組めば大枠問題ないだろう。コトパクシだけなら9日間(日本発、日本着で11日間)で事足りる。 登山の手配会社は星の数ほどある。どこの会社も登山装備はレンタルしてるので日本から重い装備を持ってゆく必要はない。会社はどこも大差はないかもしれないが、私はGulliver社(http://www.gulliver.com.ec/)を使い日本からおおよそ手配した。特徴はキトの南40キロの田舎にパパガヨという農家民宿を持っており、ここを拠点に様々なツアーを取り扱っている。高度順応向けの軽い登山はここのツアーに入ることで安くあげることができる。また、パパガヨの標高は3200mとキトより高いので高度順応の点でも有利。なおエクアドルではGulliverはガリバーでなくグリバーと言った方が通じるようだ。 エクアドルは12〜1月が登山のハイシーズンだが、実はこの期間は山は雨季に当たるので天気はあまり安定しない。私がパパガヨで会ったアメリカ人は私の2日前に登ったが吹雪で山頂まで行けず途中撤退したそうだ。シーズン中でもコトパクシの登頂確率は7割くらいだそう。一方で乾季はすさまじい強風のことが多いので、これでも登頂確率は雨季の方が高いそうである。では12月〜1月はダントツにベストかというとそうでもない。ハイシーズンの上、クリスマスや元旦はガイドも休むことが多いのでガイド確保がままならないという問題がある(英語を話すガイドは更に人数が限られる)。私は今回はこのためにチンボラソに登れなかった。上記色々考えると、多少日程に余裕を持たせた上でガイド確保しやすく我々も夏休みの7〜8月当たりを狙うというのも悪くないと個人的には思う。ちまたのガイド本にも年中登山は可能との記述も見受けられる。 人によって意見は違うだろうが、私は高山病対策にダイアモックスは必須と考えている。ただ日本で購入すると処方箋も必要だし高いので、だいたい現地で購入している。キト市内には薬局は無数にあるが、何軒か当たってヒルトンホテルの北隣にある薬局で1錠$2でバラ売りで買えた(通常半錠ずつ一日2回だが、私は1/4錠ずつ一日2回服用。エクアドルでは「ディアモックス」と言った方が通じた)。その他の一般的な高山病対策として、昼間に寝ないこと(たとえ時差ボケでも)、食べ過ぎないこと、などが重要だと思う。 |
写真
感想
2014/12/25(木) 曇りのち雨
今日より3日間、ツアーに入る。今日はラグーナ・キロトアという火口湖のツアー。標高3900mのクレーターリムから湖まで往復2時間のハイキングで、20人くらいのマンモスツアー。途中サキシリという村のマーケットにも寄り、動物や野菜、民芸品などを見ることが出来た。前日よりダイアモックスを飲み始めたが、富士山と同じくらいの標高ということもあり、高山病の症状は出なかった。
ツアーの宿はキトから40キロほど南に行ったマチャチという町の郊外のパパガヨという農家民宿。ここは牧場の中にある一軒家ですごく居心地が良かった。標高が3200mと高いので、良い高度順応にもなった。
2014/12/26(金) 曇り時々晴れ
この日はキトの西にそびえるリク・ピチンチャ4696mに登る。ゴンドラで4050mの高さまで一気にいけることもあり、キト市民はハイキング感覚で登る山だが、4000m峰ということもあり、昨日から一気に参加者が減り自分含め3人だけだった。私以外の2人は昨日キロトアでも一緒だったコスタリカ人の女性二人。ガイドはマルコ。なかなか軽薄な感じのエクアドル人だが、実は彼はエクアドルで最年少でエベレストに登頂したというものすごい経歴の持ち主だった。マナスルやチョ・オユーなど他の8000m峰にも登頂している。
テレフェリコという名前のゴンドラで4050mまで一気に上ると、草原上の緩やかな起伏のルートが岩山までずっと続いている。景色もいいので気持ちよいハイキングだが、標高が高いので息が上がりなかなか大変である。途中何回か休憩を取りながら進む。山頂部はかなり急な岩場で、まず北側をトラバースしてから取り付くが、ロッククライミングであり転落すればただではすまないので要注意。レベルは初級であり確保が必要なほどではないが。
山頂からはキトの市街が一望。ほんと市民の裏山的な雰囲気だが、標高4696mはとんでもない高さだ。ピチンチャは3つのピークから成るそうで、中には活発な噴火を続けているものもあるので要注意火山だそう。遠くに噴煙を上げているピークも見えた。帰りも岩場に注意して下るが、途中からは砂走りで下れるので早い。見る見るうちに下ってテレフェリコまでたどりついた。高山病の症状もまったく出ず、体も快調そのものだった。
この日はコスタリカ人たちと楽しく登れたのが良かった。彼女らは最後までテンションが高く、こちらまで巻き込まれてテンションが高くなった。うち一人AnaとはFacebookのアカウントを交換したが、世界中を活発に旅行していた。今年はタンザニアに行ってキリマンジャロを登るという。コスタリカにはチリポという富士山と同じくらいの高さの山があり、これについても色々情報が仕入れられた。
2014/12/27(土) 曇りのち雨
この日はイリニサ・ノルテ5126mに登る。ツアーの予定だったが一緒に参加するカナダ人カップルの男性のほうが腹を壊して参加不能になり、結局自分ひとりだけだった。
登山口は3950mの駐車場まで車で入れる。途中4700mの小屋までは潅木が点在する草原でハイキングレベルである。ただこの日は天気が悪く、風が強くて時々雨も降ってきた。小屋からは岩場が連続するので確保用にハーネスをつける。だが、実際確保したながら登ったのは山頂直下のみで、それほど大変ではなかった。天気にもよるが、この山は確保は無しでもいけると思う。
山頂はあいにくのガスで何も見えなかったが、スムーズに登れて満足だった。帰りは小屋には降りずに直接下山するルートを取ったのでものすごく早く下りてきた。しかし途中からは結構な雨になり、何もかもずぶぬれになってしまった。結構急いで上り下りしたので、往復5時間ほど。ガイドの最速記録は4時間だそうだが、これはスイス人の山岳ガイドをガイドしたときだそうなので、異常に速かったとのこと。でも良いペースだったと褒められた。
3日間のツアー参加を終え、順調に高度順応できている実感があった。いよいよコトパクシであるが、その前にキトに戻り、一日休養する予定にしていた。
2014/12/28(日) 晴れ
この日はキトでOFFであるが、旧市街の観光と赤道に行ってみることにしていた。この日は日曜日のため旧市街の多くの教会は礼拝のため開放され、自由に入れた。祭壇や天井やステンドグラスのデザインは教会により様々で、どれも美しかった。その後タクシーでパネシージョの丘に登ってキト旧市街を上から眺めたあと、丘のバス停から路線バスに乗って赤道(MItad del Mundo)を見に行った。赤道は公園になっており、すごい人出だった。家族連れやカップルが赤道をまたいで写真を撮りまくっていた。赤道上には立派な碑が立っているのだが、実はこの場所は本当の赤道から240mもずれており、偽物なのである。本物の赤道は歩いて10分ほどのMuseo inti nanという野外博物館のような所にあり、こちらはGPSで計測したとの看板があり場所はおそらく本当。こちらでは赤道で起こる様々な現象をわかりやすく実験もしてくれて面白い(内容は眉唾物だが…)。
2014/12/29(月) 曇り時々雨
今晩からコトパクシ登山であるが、この日は山小屋まで行って寝るだけである。午前中はパパガヨで装備あわせをした。エクアドルの登山では手配会社が装備一式(プラブーツ、クランポン、ハーネス、ヘルメット、ゲイター)を貸してくれくことが多いので、日本からわざわざ重いものを持ってゆく必要が無く楽だ。昼食はパパガヨでとり、午後から出発。ガイドのファビアンは若いころヘビメタにはまり、派手なコスチュームとメイクで街を闊歩していたが、数年前に反省して山岳ガイドになったという異色の経歴の持ち主だ。また、一昨日のピチンチャのガイドだったマルコも一緒に登る。彼は昨日イリニサ・ノルテに一緒に登る予定だったカナダ人のカップル(ケヴィンとティファニー)のガイドをする。ケヴィンのおなかの調子は回復したようだ。
コトパクシの山小屋は登山口のカーパークよりも30分ほど手前にある。標高は3900mくらいで、とても綺麗で快適だ。食事も出す営業小屋で、味もとても良かった。キャンプサイトも豊富にあるため、キャンプしている人も多かった。ファビアンの弟や親戚も一緒にコトパクシに登るとのことで、合流してキャンプを張っていた。18時には就寝。22時に起床し、軽く食事をして出発した。
2014/12/30(火) 雪のち一時晴れ
標高4500mのカーパークまで車で行き、そこからスタート。ガスがかかっており時折雪も降ってくるが晴れ間もあるようで悪くはない天気だ。30分ほどで標高4700mの避難小屋に到着。ここまでは富士山のような赤い砂の上の道だった。小屋から登ること20分ほどで氷河の末端に付く。ガイドとロープをタイアップして進むが、いきなりとんでもない斜度なので驚く。50度はあろうかという斜面をトレースを頼りにジグザグに登ってゆく。昨日までに積もった新雪のためクランポンがあまり効かず、足元が安定しないので注意がいるが、標高はみるみるうちに上がってゆく。
所々氷河が荒れている場所やクレバスも通過するが順調に進み、体調も良いので先行している登山者をどんどん抜かしてゆく。いつの間にか先頭に立っていた。あれよあれよという間に山頂に到着、意外とあっけなかった。時刻は5時。天気は吹雪。まだ真っ暗であり。硫黄のにおいが時折漂ってきて、この山が現役の活火山であることを改めて認識する。ファビアンがこっちに噴火口があるよと教えてくれるが、暗くて判別つかず。記念写真も撮ってみるが、暗闇の中で何が何だか判らなかった。それでも会心の登りに満足だった。やがてファビアンの弟と親戚も登ってきて一緒に登頂を喜びあった。しかし高度障害も全く出ず、5000mを超えてからもそれほどペースも落ちず、5時間20分で登り切ってしまった(標準タイムは7時間だそう)。コトパクシは自分が登った山で2番目に高い標高。今までの経験からもこれほど順調に登れるとは思っておらず、我ながらびっくりであった。
30分ほど山頂でウダウダしていたが寒くてかなわないので夜明けを待たずして下山することにした。続々と登山者が登ってきてあとどれくらいだと質問してくる。ケヴィンとティファニーも登ってきて、あと40分くらいだと言ったらずいぶんと落胆していた(しかしその後彼らもちゃんと登り、おまけに山頂でケヴィンは彼女にプロポーズした。なんと指輪まで持ってきていたのだ!)。やがて夜が明け、天気も回復して見事に晴れ渡った。カヤンベやア○○○○○○○○などの高峰も雲海に浮かんでおり、実に爽快な眺め。 ただ斜度がきついので滑落には十分注意せねばならない。自分は大丈夫だったが、ファビアンの弟が少し滑落し、アックスで滑落停止して事なきを得る場面があった。アックスでの滑落停止の現場を実際見たのは初めて。クランポンが脱げてずいぶん下まで落ちてしまい、ちょうど良い位置にいた私が取りに行った。ファビアンが前回ガイドしたときにもクライアントが滑落しかけて危なかったそうだ。上から見ると恐怖を感じるほどで、こんな斜面はスキーでも体験したことはない。メキシコのオリサバの斜度も凄かったが、山頂直下だけである。コトパクシは全域が危険地帯と言って良いだろう。
恐ろしく速く、2時間15分で下ってしまった。結局駐車場を出て8時間10分で戻ってきたことになる。ファビアンや弟にJapanese machineとかYou are a monsterとか言われたが、自分としてはいつも通り登っていただけでそれほど飛ばしたという印象はない。高度障害が出なかったのは予想外で、ある程度の頭痛や吐き気は覚悟していたので、それが全く出なかったのがラッキーだった。今回は高度順応に関してはかつて無いほどうまくいった。
無事パパガヨに戻り、この日はご褒美にステーキを注文した。パパガヨの食事は値段が張るが味はとても良く、毎日食事が楽しみだった。
2014/12/31(水) 雨
この日は完全にオフ。翌日からチンボラソの登山を計画していたが、日本で手配している最中からガイドが確保できず、登山できない可能性が濃厚だった。この日も各所にメールを打ってみたが、ハイシーズンの上、元旦は家族で過ごすガイドが多いのでやはりNGだった。もちろんファビアンも。
結局ガイドは確保できず、チンボラソには登れないことになった。遠く南米まで来て、さらには高度順応もとてもうまくいっている中で大変残念だが仕方がない。今回はコトパクシの我ながらのbeautiful accentを胸に帰国することとした。
パパガヨの大晦日は特別メニューで豪勢だった。この日はパーティーのようになり、楽しく過ごした。ピチンチャに一緒に登ったコスタリカ人たちコトパクシを登るためにこの日パパガヨ入りしており、再会を喜び合った。ブラジル人の学生カップルが隣の席で、色々面白い話が聞けた(彼は超イケメン、彼女は超美人でビックリ)。彼らはバニョス、リオバンバとエクアドルを南下し、ペルーに入ってサルカンタイトレッキングをしてマチュピチュまでに行くそうだ。3週間ののんびり旅行。なんともうらやましい…
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