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Yamareco

記録ID: 5850378
全員に公開
沢登り
近畿

【南紀】黒蔵谷支流・高山谷の左岸点線路探索,そして水遊び

2023年08月19日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
10.8km
登り
1,212m
下り
1,204m

コースタイム

日帰り
山行
5:00
休憩
4:40
合計
9:40
6:30
10
駐車地
6:40
30
大瀬集落
7:10
10
馬頭観音
7:20
30
旧大瀬集落跡(山腹の家記号が散在している箇所。実際は石垣が残るのみ)
7:50
90
稜線の林道
9:20
0
高山谷に降りる
9:20
14:00
60
高山谷をぶらぶら
15:00
60
稜線の林道
16:00
10
大瀬集落
16:10
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年08月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
国道311号線から大瀬集落に入る旧道の入口付近が広くなっているため、そこに駐車。なお,国道311号線の小広峠もしくは大塔川側の小野集落から稜線上の林道伝いに車でアプローチする手もありそうだが,通行止めになることが度々あるようなので,注意が必要。
コース状況/
危険箇所等
 黒蔵谷の支流をつないで周回するつもりが,あろうことか沢足袋を忘れたため,アプローチに使うつもりだった高山谷左岸の点線路(大瀬集落と高山谷を結んでいる点線路)の下見だけに切り替えました。あと高山谷で水遊び。

【大瀬集落と高山谷を結ぶ点線路】
・ 四村川沿いにある大瀬集落から南へ尾根を越え,黒蔵谷支流の高山谷の中流左岸(二俣より少し下流のところ)に降りている点線路が地形図に記されている。おそらく,かつて大瀬集落の人々が高山谷流域に山仕事に入る際に使っていた仕事道だと思われるが,近年,この仕事道を辿った記録は見つからない(見落としがあったらすみません)。もしこの仕事道が現役で使えるのであれば,高山谷をからめた周回沢登りや高山谷からのエスケープが容易になるので,今回辿ってみた。
・ 大瀬集落から稜線までは,道がほぼ点線路のとおりによく残っている。時々使われているようでマーキングもあり。ただし,この道を辿る際の最大の注意点として,稜線上の林道が延伸されていて高い擁壁が作られてしまっており,地形図のとおりに直接高山谷に乗り越すことができない(特に,何も知らずに高山谷から上がってきた場合はこの断崖のごとき擁壁を見て驚愕すると思われる)。稜線の林道を少し南に歩き,擁壁が途切れたところから点線路の通っている鞍部へ迂回する必要がある(稜線上は踏み跡&マーキングあり)。
・ 稜線から高山谷に降りる区間は,ところどころそれらしい道形は残っているものの,ほぼ消失してしまっており忠実に辿ることは困難。むしろこの点線路がついている枝谷の谷底をそのまま歩いたほうが早いと思う(特に悪場はない)。

【その他】
・ 余った時間で高山谷の右岸の尾根(野竹法師から東に伸びている尾根)も少し歩いてみましたが,P768から北に派生する尾根には植林があり,比較的はっきりした踏み跡もありました。野竹法師に登る際,または同山から下山する際に使えるかもしれません。(途中に「之より上四村」と彫られた古い石碑もあり。今では信じられないですが,昔からよく人が入っていた尾根のようです。)
廃屋の目立つ大瀬集落を歩く。レトロなタバコ売り場のひび割れたショーケースから,お人形さんが寂しそうにこちらを見つめている。
廃屋の目立つ大瀬集落を歩く。レトロなタバコ売り場のひび割れたショーケースから,お人形さんが寂しそうにこちらを見つめている。
四村川にかかる橋を渡ってすぐ,この石段があるので登っていく。(地形図のジグザグ点線路の部分)
四村川にかかる橋を渡ってすぐ,この石段があるので登っていく。(地形図のジグザグ点線路の部分)
石段の入り口に立っている看板。大瀬集落には三体月の伝説があるようだ。(※三体月…旧暦11月23日に三つの月が登るのが見えるという熊野地方に伝わる伝説)
石段の入り口に立っている看板。大瀬集落には三体月の伝説があるようだ。(※三体月…旧暦11月23日に三つの月が登るのが見えるという熊野地方に伝わる伝説)
よく手入れされた植林の間を,はっきりした仕事道が続いている。
よく手入れされた植林の間を,はっきりした仕事道が続いている。
山腹にある観音様に到着。すでに建物は倒壊して残されていない。
山腹にある観音様に到着。すでに建物は倒壊して残されていない。
古い馬頭観音像。
古い馬頭観音像。
その他にも様々な石仏・石碑が並んでいる。
その他にも様々な石仏・石碑が並んでいる。
古い墓地も。
さらに道をたどると,小広い平坦地が現れ,杉の植林の間におびただしい数の立派な石垣が残る。今では信じがたいことがだが,現在は国道の旧道沿いにある大瀬集落は,かつてはこの山腹一帯に存在していたのだそうで,これはその跡地。
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さらに道をたどると,小広い平坦地が現れ,杉の植林の間におびただしい数の立派な石垣が残る。今では信じがたいことがだが,現在は国道の旧道沿いにある大瀬集落は,かつてはこの山腹一帯に存在していたのだそうで,これはその跡地。
墓石なのか,石仏なのかは分からないが,ところどころに何かを祀った石碑も立っている。
墓石なのか,石仏なのかは分からないが,ところどころに何かを祀った石碑も立っている。
集落跡を抜けると,次第に藪っぽくなり道がやや分かりにくくなるが,マーキングがけっこうあり,それを辿れば問題ない。ほぼ地形図の通りに道が続いている。
集落跡を抜けると,次第に藪っぽくなり道がやや分かりにくくなるが,マーキングがけっこうあり,それを辿れば問題ない。ほぼ地形図の通りに道が続いている。
稜線に出ると,目の前に立派な舗装林道が現れてびっくり! 地形図に描かれているよりも林道はかなり延伸されているらしい。
稜線に出ると,目の前に立派な舗装林道が現れてびっくり! 地形図に描かれているよりも林道はかなり延伸されているらしい。
そして最大の問題が,林道の延伸により造成された大規模な擁壁に阻まれ,点線路が高山谷側に乗り越している小さな鞍部に直接到達できないことだ。さて,どうしたものか…。
そして最大の問題が,林道の延伸により造成された大規模な擁壁に阻まれ,点線路が高山谷側に乗り越している小さな鞍部に直接到達できないことだ。さて,どうしたものか…。
とりあえず稜線上の林道をそのまま南に辿ると,擁壁に切れ目が。そこから稜線に上がり,点線路が通っている鞍部を目指す。
とりあえず稜線上の林道をそのまま南に辿ると,擁壁に切れ目が。そこから稜線に上がり,点線路が通っている鞍部を目指す。
稜線上にははっきりした踏み跡とマーキングが。植林関係の仕事道だろうか。
稜線上にははっきりした踏み跡とマーキングが。植林関係の仕事道だろうか。
点線路の通っている小さな鞍部に到着。ご覧の取り,北側の大瀬集落側は断崖のごとき擁壁が切れ落ちている。何も知らずに高山谷からエスケープしてきた場合は,これを見たら絶望するだろうな…。
点線路の通っている小さな鞍部に到着。ご覧の取り,北側の大瀬集落側は断崖のごとき擁壁が切れ落ちている。何も知らずに高山谷からエスケープしてきた場合は,これを見たら絶望するだろうな…。
鞍部から高山谷側に下りていくが,点線路は消失してしまったらしく,道らしきものは全く見当たらない。
鞍部から高山谷側に下りていくが,点線路は消失してしまったらしく,道らしきものは全く見当たらない。
点線路はこの枝谷の左岸斜面をトラバースして続いているので,それらしい道跡らしきものを見つけて辿ってみたが,途切れ途切れで,これが本当に点線路の跡なのか確信は持てない。崩れている箇所も多く,かなり歩きにくい。
点線路はこの枝谷の左岸斜面をトラバースして続いているので,それらしい道跡らしきものを見つけて辿ってみたが,途切れ途切れで,これが本当に点線路の跡なのか確信は持てない。崩れている箇所も多く,かなり歩きにくい。
うーん,道のようにも見えるけど…。そう見えるだけかも。
うーん,道のようにも見えるけど…。そう見えるだけかも。
地形図で点線路が谷へと急降下していると思しきあたりで,適当な斜面を下ってみると,地形図のとおり枝谷が二俣になっている地点に下りてきた。ルーファイ的には正解だったことになるが,正直,谷底を普通に下降したほうが早かった気がする。
地形図で点線路が谷へと急降下していると思しきあたりで,適当な斜面を下ってみると,地形図のとおり枝谷が二俣になっている地点に下りてきた。ルーファイ的には正解だったことになるが,正直,谷底を普通に下降したほうが早かった気がする。
ちなみに,高山谷との出合い付近は,点線路の踏み跡は比較的はっきりしている。しかし,少し進むとすぐに不明瞭になってしまう。結局,高山谷側からも,点線路を忠実に辿ることは難しいようだ。
ちなみに,高山谷との出合い付近は,点線路の踏み跡は比較的はっきりしている。しかし,少し進むとすぐに不明瞭になってしまう。結局,高山谷側からも,点線路を忠実に辿ることは難しいようだ。
枝谷を少し下ると,高山谷に合流。黒蔵谷に似て,水量豊富な美しい谷だ。
枝谷を少し下ると,高山谷に合流。黒蔵谷に似て,水量豊富な美しい谷だ。
ここからは高山谷で水遊び。今日は沢足袋を持ってき忘れるという自分史上最大の大ポカをやらかしてしまったので,沢足袋がなくても歩き回れる範囲で,谷をたのしむ。
ここからは高山谷で水遊び。今日は沢足袋を持ってき忘れるという自分史上最大の大ポカをやらかしてしまったので,沢足袋がなくても歩き回れる範囲で,谷をたのしむ。
川幅いっぱいのナメが続く,うつくしい谷。
川幅いっぱいのナメが続く,うつくしい谷。
木漏れ日が差し込むたびに,深い淵が神秘的なブルーに輝く。
木漏れ日が差し込むたびに,深い淵が神秘的なブルーに輝く。
泳がなくてもいいところも泳ぐ。
泳がなくてもいいところも泳ぐ。
長淵50m。
淵を泳いだり,大岩の上で昼寝したり。いいかげん寒くなってきたところで,帰る。
淵を泳いだり,大岩の上で昼寝したり。いいかげん寒くなってきたところで,帰る。
【余談】点線路が右岸に渡り返すあたりの右岸尾根に明瞭な踏み跡を見つけたため,登ってみたら,こんな古い石碑を発見!「之ヨリ上四村」とな。
「四村」は現在は存在しないが,かつては大瀬村も含む村だったので,高山谷の流域の一部は大瀬村の領分だったのかもしれない。大瀬集落から点線路がここまで続いているのもうなずける。
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【余談】点線路が右岸に渡り返すあたりの右岸尾根に明瞭な踏み跡を見つけたため,登ってみたら,こんな古い石碑を発見!「之ヨリ上四村」とな。
「四村」は現在は存在しないが,かつては大瀬村も含む村だったので,高山谷の流域の一部は大瀬村の領分だったのかもしれない。大瀬集落から点線路がここまで続いているのもうなずける。
帰りは点線路でなく枝谷をそのまま登って稜線に登り返したが,特に大きな滝はなく,やはりこの方が容易だった。
帰りは点線路でなく枝谷をそのまま登って稜線に登り返したが,特に大きな滝はなく,やはりこの方が容易だった。

感想

 眠い目をこすりながら夜通し車を走らせ,南紀の奥深い山中にたたずむ大瀬集落にたどり着く。そして車のリアハッチを開け,やおら山行準備を始める。車からザックを引きずり出し,沢スパッツを取り出したところで,まず軽い疑念が脳裏をよぎり,そして急に慌ただしく車中の捜索を始める。ひとしきり捜索を終えた後で,あるひとつの衝撃的な結論に達する。「沢タビ忘れた」
 これから黒蔵谷の支流をからめて周回沢登りをしようとしている人間が,沢タビを家に忘れて,どうしようというのか。野球をしにグラウンドにやって来たが,バットとグローブを忘れたのと同じで,何もできない。いや,何もできないことはないが,沢タビを履かずに滝を登るのは,痛烈なライナーを素手で処理しようとするのと同じで,普通に考えて非常に危険が伴う。
 そこでムリヤリ気持ちを切り替え(何もせず帰るには,あまりにも遠い距離をはるばるやって来過ぎている),今回の山行でアプローチに使うつもりだった,大瀬集落と高山谷をつなぐ点線路の下見をすることにした。この点線路は,昔のガイド本なんかには記されているのだが,近年の沢の記録でこの点線路を使っているのは見たことがない(見落としがあったらすみません)。もしこの点線路が現役で使えれば,高山谷をからめたルートのバリエーションが増えるし,エスケープもしやすくなると考えていた。
 結果,大瀬集落から稜線までは点線路がほぼそのまま生きていたが,高山谷側はほぼ消失しており,完全なトレースは難しいという結論。ただ,点線路がついている高山谷の枝谷は,特に悪場のない谷なので,谷底を詰めるかたちを取ればルートとして問題はない。注意点としては,稜線上の林道が延伸されていて高い擁壁に阻まれるので,若干の迂回をする必要があること。詳しくは「コース状況」や「写真」の欄をご覧ください。
 で,高山谷に降り立ったら降り立ったで,やはりちょっと眺めてすぐ帰るでは満足できず,結局4時間余りもうろついたり泳いだり昼寝したりしてしまった。たまにはこういう山中の過ごし方もいいかもしれない。

【余談: 旧大瀬集落跡と馬頭観音について】
 地形図上では,今回辿った点線路の途中の山腹に数多くの家屋があるように描かれているが,この家屋は現存しておらず,おびただしい数の立派な石垣のみが残されている。現在の大瀬集落は国道の旧道沿いに存在しているが,国道ができる以前は山腹のこの場所に集落があったそうな。現在はうっそうとした植林に覆われた山腹の小さな平坦地に,かつては多くの人家が立ち並び人々の生活があったと思うと,驚きの念に打たれる。
 また,この旧集落跡の近くに馬頭観音があり(社殿自体は取り壊され本尊は近隣の寺院に遷座済みだが,石仏が現存している),むかしはこの境内から三体月(熊野地方の伝説で,旧暦11月23日に三つの月が登ると言われている)を眺める風習があったそうだ。
 沢登りのついでに,この点線路沿いの旧跡を訪ねて歩くのも面白いと思う。

※以下のホームページに詳しく紹介されており,とても興味深かった。
 「みちとおと」本宮町大瀬 http://www.michi-oto.com/kodo-ooze/

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