槍ヶ岳 北鎌尾根とボッチさん


過去天気図(気象庁) | 2023年09月の天気図 |
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コース状況/ 危険箇所等 |
すこぶる危ない |
写真
感想
数年前からチャンスを伺っていた槍ヶ岳は北鎌尾根。
今年の7月の連休にも計画を立てていたが天候不順により断念していた。
今年最後のチャンスとして、9月の連休を当て込んだ。
初日は午後から雨予報であったが、多少の犠牲は致し方がない。
かと言ってここは普通の登山道ではない。雨に降られる前に北鎌尾根の稜線に上がり、宿を構える事を最優先課題とする。
いつものアカンダナ駐車場から上高地行きのバスに乗るためチケット売場に行くと、トンでもない光景が目に入って来た。
今まで見たこともない長蛇のバス待ちの列が出来ていたのだ。
午後から天気が崩れる為、今日は空いているだろうと余裕をかましていたのが仇となり、始発は当然に乗れず5台目ぐらいの臨時便にようやく乗車して上高地入りする。
上高地に入り、ふと梓川に目を向けると水量が異様に少ない事に気が付いた。
そう言えばえつこさんのレコで水貧乏。
貧乏沢までわざわざ水を汲みに行ったとか書いてあったのを思い出した。
先日のキレット小屋もしかり、今年の夏は異常に暑くてどこも水不足に見舞われているらしい。
同じ轍を踏まないように横尾で水を満載し先を急ぐが、これはリスクもあった。
早々に水を満載すると言うことは、その分体力も削られる。
何とか昼過ぎに天井沢出合いまで到達し、ここで一息入れて北鎌沢を登り上げる。
途中、水源を探しながら登って行くも見るからに沢は枯れている。
これはダメかと思っていた矢先、僅かな水源を発見し消費した分を補給した。
しかし、この水源もいつまで在るのかは不透明なぐらい細かった。
これ以降、ここに入る人は注意した方が良いだろう。
水を補給して暫く登ると何処からかコールが聞こえてくる。
何と言っているのか解らなかったが、不自然な場所でのコールに???となる。
そして大きな音とともに何かが樹林帯を落ちて行く。
人が落ちたか?
一瞬そう思ったが落石だったようだ。
だが、事態はそれで済まなかった。
どうやらコールは救助を要請している声だと言うことが分かり、間を詰める。
間を詰めた瞬間、察知した。
ここは紛れもなく「クライマーズホイホイ」だと。
自分の目からしてもあからさまに違うだろと直ぐに判る地形だった。
視界が悪い時なら兎も角、昨今これだけ情報が溢れているのに今時クライマーズホイホイに掛かるなんてあり得るのか?
他の登山者も同じ事を口にしていた。
結局、要救助者は自力での行動が不能と言うことでその場でヘリの助けを待つことになる。
ここで思った事は、救助が来るまで付き添うか否か。
付き添って要救助者がピックアップされた後の問題。そこからビバークポイントまでの行動時間や天候の事を考えると、我々もはっきり言ってそこまでの余裕は無い。
例え放置する事によって死に至る事があったとしても、それはどうしようも無い事だったと言うこと。
北鎌尾根とはそう言う場所だと言うことを改めて認識した。
時間も天気も押して来たが、前半の暴走と横尾からの歩荷が効果を表し初め、次第に脚が言うことを聞かなくなってきた。
目的地の「天狗の腰掛け」まではまだまだ暫く登りが続く。
そしていつしか雨も降りだした。
死にたくなければ前に進むしかない。
先ほどの事が頭をよぎり必死で登った。
何とか目的地に到着した頃には救助要請したヘリが飛んできた。
が、ポイントが分からず旋回を繰り返す。通報者とヘリのパイロットがダイレクトで連絡をやり合い何とかピックアップをしたようで、ニュースで生存を確認できた時には安堵した。
雨の中、一晩放置すれば低体温で命を落としていたかも知れない事例だっただけに気になって仕方が無かった。
北鎌尾根2日目。
昨日は疲れきって夕飯もろくに喉を通らず、夜半まで雨も降っていたのでひたすら寝て体力の回復を試みた。
完全ではないが朝には何とか復活。
カップ麺Bigを朝食とし後半戦に備える。
天候は雲一つ無い快晴、申し分無い。
まずは独標を目指す。
今回、時間の関係で独標は登らず巻いて先を急ぐ。
噂の独標トラバースは普通に通過。
巻き道の先には、この日初めて槍ヶ岳三世代が姿を見せた。
振り返って独標方面を見ると何やら見覚えのある人物が後ろに続いている。
あのパンツ、あのザック、あのヘルメット。そして小柄な女性。
遠目に見ても確信できた。
あれは・・・ボッチさんや。
まさかのボッチさんが北鎌尾根に居る。
何でまたこんなタイミングで・・・こんな所に。
一応確認の為に遠くから呼び掛けて見ると、やはり本人だった。
P13まで進み一息を入れ、ボッチさんに道を譲る。
再会の記念撮影も忘れずに。
その後は順調に歩を進め、4時間弱で無事槍ヶ岳へ登頂。
その後は南岳方面まで縦走し天狗原分岐から天狗池の逆さ槍を観光して槍沢に戻る。
ここでバスの最終便の事を初めて意識した。
「あれ?このまま普通に降りるとバス間に合わないんじゃね?」
徳澤園でコーヒーソフトを食べたいし、小梨平で知人家族と顔を会わせたいし。
となると実質4時間で天狗原分岐から上高地に降りねばならない。
Yさんにその事を告げると、「大丈夫やろ」とあっさり返される。
修行はまだまだ終わらなかった、
上高地に着くまでは。
----あとがき----
一種の憧れであった北鎌尾根。
登山を始めた時に加藤文太郎氏の本を読んでからずっと「いつかは歩いてみたい」と思っていた場所であった。
個人的な感想として、技術的に難しい所は無かったが、山小屋も無くエスケープが出来ない事が最大の難点であると感じた。
今回もそうだが、ロングの縦走をすると最後は体力切れで死にそうにな状態で歩いている。
陸上で言えば自分は短中距離ランナーなのだろう。
10km程度の山であれば3倍速で行動出来るが、20kmともなると後半は人並みにしか歩けなくなる(下りは除く)。
北鎌尾根はそこそこの登山レベルがあれば誰でも歩けるだろう。
ただ長時間安定した行動が出来る体力と
何か起きたときに対処できる知識と技術。そして見てはならぬモノを見てしまった後でも最後まで歩き通せるメンタルの強さが必要だと思う。
2日目、お隣のテントのパーティーは暗い中、一足先に出発するがその後事故に遭遇したことを下山中に聞かされてビックリした。
何でも独標を越えた辺りの岩場で、掴んだ比較的大きな岩がまるごと剥がれて滑落したそうだ。
滑落したのは女性だったが、チムニーに引っ掛かり身体は静止したが、岩が脛に当たり流血負傷。靴も吹っ飛びヘルメットもボコボコになったと言う。
それでも最後まで槍を登り上げたメンタルと根性は流石、北鎌に来るだけはあると感心させられた。
そして我々の下山中にも後続のパーティーが穂先の登攀中に滑落した事も後に報道で知った。
初日からクライマーズホイホイでの滑落騒動で始まり、二日目も相次いで北鎌尾根で事故が多発。
穂高に目をやれば滝谷でもクライマーが落ちたなどヘリが絶えず飛んでいるという騒々しい連休だった。
山は逃げない。
逃げないが自分がいつまでもチャレンジ出来るとは限らない。
今暫くハードな山を堪能出来るように精進しようと思う。
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