御在所岳

天候 | 【山上公園】西の風風力2〜3/晴時々曇/24〜27℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
感想
山行記録679-1
令和6年7月21日 (日) ナントナント! 〜ございしょ自然学校赤とんぼマーキング山行
単独 地図:御在所山 登路:中道 下山路:表道
「夏」と言えば赤とんぼ。今年もございしょ自然学校の赤とんぼマーキングに通う夏が始まる。
先週木曜日、梅雨明けが発表されたが、今年は太平洋高気圧の張り出しがイマイチ弱く、雷が鳴るリスクが大きめである。この土・日もそんな予報が出ている。どっちにしようか。雨が降るだけならノン気にシャワーを浴びる感じで居られるが、発雷してしまうとそうはいかない。
20日と21日の高層予想天気図を並べてみる。気圧配置に大差はないが、日曜日の方が上昇気流や湿数の条件の悪い範囲が日本海を北上している。そして最も気になる発雷確率も日曜日の方が低い。そんなわけで日曜日に登ることに決めた。ただし、発雷についてはあくまで「確率」なので、雲行きと相談しながらトンボを追いかけることに変わりはない。
日曜日の朝、少しばかり寝坊してしまった。朝陽を背にしてスカイラインを上がる。山に雲は懸かっていない。昨日の朝と比べても驚くほど天気がいい。
毎年、赤とんぼの1発目は中道を上がることが多い。今日もその予定であるが、出足が遅くなってしまったこともあって一ノ谷まで車で上がってしまうことにした。
5:22一ノ谷を出発。気温22℃。思ったより空気もスッキリしていて気持ちがいい。入山届をポストに放り込んで登り始める。この春から意識している鼻で息ができるペース。今日もそんなペースで登り始める。
とは言え、夏である。たちまち汗が噴き出してくる。時々森を抜けてくる風に人心地付きながら、ペースを守ってゆっくり登る。それでもオバレ岩まで35分。普段のペースよりも若干遅いぐらい。息が弾むか弾まないか、ホンの紙一重の差なのかも知れないと最近分かってきた。さらに、ほんの少し力を抜いただけで足のダメージが全然違うことも。ガツガツ登るようなトシでもない。どうせ登るなら涼しい顔をしていたい。
見晴らし台から地蔵岩への登り。1ヶ所足元が抜けたところがある。岩に張り付いていた表土がはがれて陥没した状態で、踏み抜かないように少し大股で岩を飛び移ることになった。まだ抜けきっていないからさほどでもないが、完全に抜けるとちょっと怖いかな。こうやって、岩が少しずつ露出して、鎖が渡されたりルートが付替えられたりする時期が来るのかな。
6:28、中間点のキレット東ピーク到着。普段のペースに比べて5分ほど余分にかかったに過ぎない。かなり遅めのペースと感じるが、時間の差はそんなものらしい。小腹が減ったワケではないが、いつものようにジェット燃料なるヨウカンをついばみながら空を見上げる。空には広い範囲にウロコ雲が広がっていて、「秋か?」と思ってしまうが、梅雨が明けてからまだ3日しか経っていない。そうやって見上げる空にはアキアカネの姿。先々週もハライドや青岳で飛び交っているのを見ているから、「飛んどるな〜」ぐらいで感慨などはないが、夏のお馴染みさんを目にするのは、やはり楽しい。
6:35出発。このペースなら8時までには十分着けるだろう。
休憩後に早速キレットの下り。もう何年も前から感じてはいるが、トシを重ねてくるとバランスが徐々に悪くなってくる。また、いかにマラソンやスクワットなどで維持を図っていても、知らず知らず足が上がらなくなってきているのにも気がつき始めている。動き始めは特に注意!。そんなことをつぶやきながらキレットを通過する。
キレットを抜けると毎度お馴染みの急登。口を開かないと決めて登ってみる。ハシゴの下まで来る頃には少し息苦しくなってきてはいるが、ソレナリのペースだったら大丈夫のようである。いつも少し息が弾む登りだったが、どうやら鼻息だけで登れるペースもあるらしい。
ハシゴを過ぎて岩を回り込み、年々段差が大きくなる階段状を過ぎて一段落。いつも上がった息を落ち着かせる場所ではあるが、今日はわりに平気である。
見晴台から少し落ち着いた区間に入ってくる。ペースが上がってしまうと息が上がってしまう。力を抜いて登っていくと、いつの間にかヒノキのラセン階段。昔はもっと明確にラセン階段だったが、年を追うごとに根元が掘れてラセン階段に見えなくなってきている気がする。
7:15鎖場手前の見晴台に到着。今日はそれほどノドが乾かない。しかし、しっかり汗をかいているので水分を補給して5分ぐらいの小休止。そして鎖場にかかっていく。
十字の鎖を抜けてその下のハシゴに降りると、目の前の岩に夏の常連さんの姿。ヤマキマダラヒカゲか、サトキマダラヒカゲか。最近は山も気温が上がってきているので「サト」が居るかもしれないと思ってここ何年か気にしている。目印となる翅の付け根の3つの紋の並びが比較的まっすぐに見えたので、ソ〜っと近づいて見る。飛び立たないので撮影を試みる。じっくり見てみると、まっすぐに見えた紋は曲がって並んでいると見ることができる。まあ個体差かな。それに前翅の先端近くに白い紋があるから、ヤマキマダラヒカゲであろう、と言うことにしておく。
7:37富士見岩に到着。キレットから1時間。ペースはほとんど落ちていない。一ノ谷からでも2:15なら、少し調子の悪いときのペースぐらいかな。疲れたという感覚もほとんどないこの登り方、今のワシに合っているのかもしれない。マラソンでも「ゆっくり走れば速くなる」という言葉もあるし、毎年、赤とんぼの初回よりも3回目、4回目の方が登るタイムもよくなる傾向がある。今後トシを取っていく中でどう変わっていくかはわからないが、このやり方を続けてみるのも得策かもしれない。
自然学校に向かう。歩きながら「な〜んか静かやな〜」。「エゾハルゼミの声が少ないせいかな」。風は北西。ヒンヤリして気持ちがいい。しかし、この時期にこの風は、下界に吹き下ろせば猛暑になる。天気さえよければ「降りたないな〜」と言いながら下山することになるかもしれない。
自然学校前のベンチに腰を下ろし、オニギリをついばみながら一息つく。朝から日射しは強いが、吹き抜ける風が心地よい。
8時になった。マーキング開始。風があるからトンボも落ち着かないだろう。マーキング数はそれほど期待せずに行こう。
ところが、園路を歩き出した途端、次から次へとアキアカネの姿を見つけるから、タモに集めるペースも早い。朝はお食事タイムで多くが飛び上がっている時間のはずなのに、これだけ集まるというのは、やはり風があるから茂みに避難しているんだろうか。最初の一網をマーキングして見ると♂の方が多い。餌を追って舞い上がっているヤツが非常に少ないと推測できる。
国定公園の記念碑に回ってみる。風はあるものの、たくさん集まっている。記念碑下の四阿で二網目をマーキング。やっぱり♂の方が多い。まだ1時間経っていないのに、マーキング数はすでに80。自然学校に戻りながらの一網で、早くも100を超えそうである。
9時。始発前の従業員専用便で自然学校の面々も到着して店開きの最中。受付の机を運んでいると、シャボン玉おじさんが現れた。今日のメインイベントはシャボン玉のようである。
1時間であっさり100を超えた。相変わらず♂の方が多い。100を超えてきても♂の方が多いというのは初めてではないだろうか。
二巡目。相変わらず♂の方が多く、先に100を超えてきた。天気も好く、風もあるが尾根に遮られた斜面には、ほとんど風のない場所もある。大多数が茂みに降りて翅を休めているんだろうか。
トンボを集めながら園路を歩いていると、イブキザサの葉の上にまだら模様の蝶か蛾か…。そーっと近づいて見る。ウラギンヒョウモンかな。タテハチョウ科の蝶は、留まっていないと「あなたはだあれ?」状態のことが多い。せっかく留まっているから写真を撮って、あとで図鑑を見ることにする。
10時。お馴染みさんとあいさつして、三巡目に出る。今日は三角点入口の少し東側の園路のすぐ近くでウグイスがよく鳴いている。用心深いヤツなので、何も考えずに近寄ると、たちまち「ケキョケキョケキョ……」と谷渡りの声を上げて飛び去ってしまう。声はしょっちゅう聞いているにもかかわらず、なかなかお目にかかれない。今日は絶好のチャンスと言える。トンボを集めながら歩いて行くと、声も高らかに「ホーーホケキョ!」。なので…そ〜っとのぞいてみてごらん。ゆっくり近づいて声のする樹のてっぺんが見えるところへ行くと。「居った!」。空がバックなので色はよくわからないが、思ったより大きい。
試しにカメラを向けてみると、やはり視線には敏感と見えて、谷渡りの声を上げながら飛び去ってしまった。朝から同じ場所で鳴いているので、今度通りかかった時を期待しよう。
昼近くになってきた。赤とんぼのタモを持った子供たちも時々園路を歩いてきているので、満タンにしたタモを見せながら世話を焼いてみたりしながら…。
12時になった。午前の部を終了としてメシにする。ここまで♂…236、♀…199、合計435。この分だと、天気が悪くならない限り、目安としていた500は堅い。
それにしても、この数になっても♂の方が多いというのは驚きしかない。受付にタモを返しに来たパーティーの中には、♀しか居なかったという人も時々いる。雲の向こうから太陽が顔を出せば、一斉に飛び上がる餌を追ってアキアカネも飛び上がる。そんなときは、より高く飛び上がってタモが届かないところに偏りがちになる♂の率が下がる。そんなタイミングも増えてくるはずではあるが…。ワシのタモは相変わらず♂率が50%を超えている。風の弱いところも多いのに、なんでかな〜。
さて、今日の昼メシは災害用ローリングストックの中に埋もれて賞味期限を半年ほど過ぎてしまった釜飯のパック。人が多い山なのでどうにも落ち着かず、加熱が足りずにパラパラのままパックを開けてしまった。仕方がないからフライパンに湯煎の湯を少し注ぎ、そこへパックメシを投入して炒めて出来上がり。釜飯なのかチャーハンなのかわからなくなったが、山なので何でもアリである。
午後の部を開始。園路を三角点方向へ歩いて行くと、階段の辺りまでにたくさん集まった。そのまま長者池入口の四阿へ移動してマーキングを始めると、タモの中で小さなカメムシが交尾している。体長が1cmもないぐらいで、全体的に茶色で、肩の部分(前胸背)に角のような突起がある。調べてみると、たぶんセグロヒメツノカメムシではないか思う。その名前で検索してみると、ノリウツギ、タニウツギ、キブシなどに寄生するとあるから、ここに居ても不思議はない。タモに入っていてもロクなことにはならないので、マーキングを終えたところでお引き取り願った。
一回りして戻ってみると、ザックに干してあったシャツに蝶が留まっている。まだ乾ききっていないので、「汗で塩っ辛いぞ」と思いながらカメラを近づけてみる。後でお馴染みさんが「アカタテハ」が居ましたね、と言って見せてくれた写真がまさにコイツ。この人がが言うぐらいだから、御在所でもそんなに見ることのないヤツなのかな?、と思って、ウィキペディアをのぞいてみる。「個体数は夏に少なく秋に多い」とあったから、時期的に珍しいと言うことだったのかな。さらに面白いのは、「幼虫の食草はイラクサ科植物で、食草の葉のつけ根をかじって葉の表を内側に左右を糸でつづり、綴じ合わせた「巣」を作る習性がある」とある。さらに「蛹になる際は、羽化を見越して葉の下端を3分の1ほど開けた巣をつくり、その中で蛹になる」ようなので、そんな目で探してみるのも面白いかもしれない。
2時を回った。一応3時で打ち止めと決めているから最後の一回りになると思う。朝からよく飛んでいるテングチョウがトンボを集めるタモに留まったり、ムギワラトンボやミヤマアカネにカメラを向けてみたり、すでに500を超えているから「600行っとこか」ぐらいの感じである。
今日の最後なので三角点に行ってみる。観覧車の台座前の茂みにアキアカネがたくさん集まっているが、ここのヤツらは相変わらず落ち着きがないから、いつ来てもそれほど集まらない。欲張らずここまでに集めたトンボにマーキングして、国定公園の記念碑の前へ移動。ここも多い場所ではあるが、風があるので落ち着きがない。それでもそれなりに集まったので、長者池の入口の四阿でマーキング。すでに14:45。ここから自然学校までが最後の一網になるだろう。
トンボを集めながら自然学校に戻る途中、例によって同じ場所でウグイスが鳴いている。今度こそ…。枝の隙間から姿が見えているから、欲張らずにまずは1枚。その後もう少し近づこうと思った瞬間、谷渡りの声も高らかに、谷へ飛び去った。
自然学校に戻ると15時。早速マーキングを済ませて、カウントしてみる。今日の結果は、♂…352、♀…323、合計675。♂率約52%。ナントナント最後まで♂の方が多かった。午後だけを見ると、♂…116、♀…124と♀の数が上回ったが、数字だけ見ていると同数とも言える程度の違いに思える。その♂率は48%である。
マーキングを打ち止めにしてマッタリしていると、受付にタモを返しに来た人が「これ、オニヤンマですか?」。今の時期、大型のトンボと言えばオニヤンマのはずであるが、見てビックリ。「オオルリボシヤンマですね!」。例年、オオルリボシヤンマを見るようになるのは8月になってからのはず。盆の時期になると、縄張り意識が強いのか?、オニヤンマを追いかけ回すところを目撃することがあるが…。「今年は早いですね!」。そんな話をする。
集計を手伝うことにする。今日の結果は、♂…855、♀…966、合計1821。やはり♂率は約47%と高い。
朝はハッキリした風が吹いていたが、少しずつ弱まって来たから、トンボも徐々に飛び上がるんではないかと思っていた。ところが今度は雲が日射しを隠す時間が多くなって、日が陰るとエサ(小さな虫など)が地上に戻ってくるからトンボも舞い降りてくる。午後になると、雲と雲との間隔が開き始めた。風が少し弱まったこともあって、日が射すとエサが舞い上がり、それを追ってトンボも飛び上がる。このとき♂は♀よりも高く舞い上がるから、マーキング数としては♂率が下がると思われた。しかし今日は、日射しに風の影響を混ぜ合わせてみたとき、一日を通しての♂率を引き下げるには至らなかったのかもしれない。
思ったよりも天気の好い一日だった。朝は静かだったセミも、この時間になるとヒグラシの声で、静かな賑わいとなっている。「下界は暑いんやろな〜」と思いながらも、登ってしまった以上降りなければならない。
16:07下山開始。さて、下りはどちらかと言えばキライであるが行程が短いからよく使う表道。こんな遅くまで山の上に居る不良山屋としては、日曜日の最終に近い時間に人気のないルートを単独で下山するわけだから、仮にアクシデントが発生した場合、間違いなく山の中で夜を明かさなければならない。分かってはいるが1発目でもあるし、ノン気な中にも気を引き締めて下山にかかることにする。見上げる空も、ヒグラシの声も、ノン気な夕暮れの風景。ヒザを言わしてしまわないように、「足下に神経を集中して、心の中では鼻歌を歌っている」。新田次郎の小説の中でずっと記憶に残っている言葉のひとつ。こんな歩き方をイメージして、ノン気に降りて行こう。
旧YH下の東多古知谷源頭の徒渉点を過ぎると急降下が始まる。ただでさえ登山道の中でもオフロードに分類したくなるようなルートが、さらに雨で荒れていて、見るからに石車に乗りやすそうである。
気の抜けない下りではあるが、30分ぐらい降りてジグザグを切ると、百間滝展望所までは、どこにでもある普通のルートである。先週、まとまった夕立が降ったからか、西多古知谷の大滝が落ちる音を間近に聞きながら、百間滝展望所のお不動さんの前に着く。ジガバチ(かな?)が飛び回っているので、一応は気にしながらザックを下ろして水を一口。すると、右手をチクッとやられた。攻撃されたと思われてしまったのかな。「ゴメンナサイ」。スズメバチなどではないのでヨシとしよう。とりあえず水分も補給できた。そそくさと退散する。
表道の中で一番キライな下りにかかる。スカイラインの落石防止ネットの上の逆落としの斜面。しかも、しばらく通っていない間に、最上部のちょっとした岩場に朽木が倒れていて、いつも足をかける岩が使えない。「ウムム、どう下る」。岩溝状のいつもの反対側の岩に足場を求め、その次の1歩は岩と朽木との間に足場を求め、まあそれほど不安定感もなく抜けることができた。もっともこれは、朽木が朽ち果てて来ると状況は変わってくると思うが…。何となく通りやすくなった感じもするが、おそらく倒れた朽木が岩溝状を狭めているせいで、真下が塞がってスカスカではなくなったような「感じ」になったからかも知れない。いずれにしても「感じ」だけの気分的な問題には違いない。気を抜けばハードなことになりかねない場所である。
17:07東多古知谷出合到着。「ありがとうございました。また来ます」。山にあいさつして湯の山街道を一ノ谷へ向かう。ヒグラシが賑やかな、ノン気な夏の夕方である。
帰り道、山を振り返る。山の向こうのカナトコ雲に夕陽の筋が映し出されている。やがて陽が当たらなくなると、グレーになった雲も空に溶け込んでいった。
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