ダマヴァント(5671m)
コースタイム
8/2(月) 停滞日:New hut(4200m)→4800m地点→New hut (10:00-12:30)
8/3(火) New hut(4200m)→ダマヴァント山頂(5600m)→New hut→登山口(3050m) (6:20-12:20山頂13:00-15:35New hut17:00-19:30登山口)
天候 | 8/1(日) 晴れのち雪 8/2(月) 晴れのち雪 8/3(火) 晴れのち雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2010年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
5300mくらいから所々噴出している硫黄ガスに十分注意。長く留まると倒れるほど濃いガスです。好天時であればそれ以外に問題となる箇所はほとんどありません。 |
写真
感想
【8/1】 晴れのち雪
イランに入国して3日目、この日はダマヴァント山の登山口のポルールまでの移動日の予定だったが、ポルールについたらまだ朝の8時過ぎ。高度順応を確実にするために予定を変更して今日中に標高4200mのNew hut(アタック小屋)まで登ることとなった。ガイドは6月からずっとメールのやり取りをしていたソルタニ。ソルタニはイラン人だが、ヨーロッパに住んでいたこともあり、英語は非常に達者。もう50歳を越えた優しげなベテランガイドだ(イラン山岳会所属)。
今回のツアーは混載と聞いていたが、メンバーはというと、、、なんと自分以外にはオーストリア人一人しかいなかった。昨今のイラン情勢により皆キャンセルしてしまったのこと。ちょっと残念だが仕方ない。オーストリア人のウィリはなんとベンチャー会社の社長さんとのこと。5000m峰を登るのはキリマンジャロ、エルブルーズ、アララットについで4回目だそう。5600mという標高がはじめての自分としては非常にプレッシャーがかかる。
ポルールから登山口(3050m)まではジープに乗り換える。かなりのダートを1時間ほど耐えるとモスクのある登山口に到着。ここから4時間ほどひたすら歩くとアタック小屋に到着する。道中ほとんど変化の無い道が続き、正直あまり面白くは無い。さらに標高4000mを越えてから雪が降り出し、一気に銀世界となってしまった。
途中、イラン人の軍隊(登山訓練中?)とすれ違ったが、カメラを向けようとするとソルタニに止められた。こういうところがイランのちょっと恐いところだ。
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【8/2】 晴れのち雪
昨日New hutまで登ってしまったので、今日は高度順応日で何もしない日となった。しかし昨晩から高山病の症状が出始めて非常に気分が悪い。頭痛もするがそれ以上に就寝時の呼吸の苦しさがたまらない。気が狂いそうになる… 前にも中国四川省の山で4300mに泊まったときに同じ症状になったが、全くの進歩の無さにこの先不安になる。果たして上までいけるのだろうか…
さらに、ガイドのソルタニが多忙のため今日下山することとなった。来週登る予定のイタリア人パーティの各種手配がまだ済んでいないそうなのだ。変わりのガイドが今夜10時(!)に登ってくることになった。
山小屋は2年前に建設されたばかりのとても頑丈で快適な建物だ。4200mという標高ではひょっとすると世界一快適な小屋かもしれない。働いているスタッフもとてもいい人ばかりで、食事もおいしい。毎日ホレシュ(イラン風のシチュー)とご飯だったが飽きなかった。外国人がもっとたくさんいるかと思ったが、95%はイラン人ばかりで、他にはイギリス人のパーティとチェコ人のカップルに会っただけだった。
高度順応を確実にするために、昼前にウィリと2人で軽く上まで登ってくることにした。標高4800mまで2時間かけてゆっくり登り、少し休憩してから小屋に戻った。苦しかったがこれを境に高山病は緩和し、この日の夜は快適に就寝できた。しかし夕方から激しい雪模様となった。尋常ではない。本当に明日は登れるのだろうか?
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【8/3】 晴れのち雪
この朝ガイドと初めて顔合わせとなった。ガイドの名はムシュタヴァ。ダマヴァント最高のスペシャリストだそう。英語がほとんど出来ないので、通訳をかねてもう一人アミールというガイドも付いた。
この朝、雪はかなり積もった。10センチ以上はあるだろう。朝5時に出発予定が大事を取って6時出発に変更になった。ガイドのムシュタヴァ&アミール、クライアントは自分とウィリ、そして飛び入りのイラン人1人の合わせて5人体制で望む。幸い天候はまぁまぁ良く時折日も差すが、いかんせん気温が低い。ペットボトルの水がどんどん凍ってゆく。手足の指先の感覚もだんだんなくなってゆくが、とにかく体を動かして温めるしかない。おまけに吹き溜まりの箇所は膝上のラッセルとなりかなりてこずった。昨日2時間で登った4800m地点まで2時間半以上かかった。
幸いにもここから天気はずいぶん回復し、気温も上がってきた。5400mを越えると景色は一変し、硫黄で覆われた火山地形になる。所々墳気も見られ、地温が高いせいか雪もあまりなくなった。体調も良いので写真も頻繁に撮りながらルンルン気分で行く。しかし所々硫黄ガスが本当にひどく、皆ゲホゲホせきこみながらの登山となった。日本だとこのレベルは即登山禁止だろう。
山頂は厳密な最高点ではないが、便宜上外輪山の一角とされている。我々もここまでで終わりとした。詳細な標高は不明だが、最高点5671mより 50mは低く恐らく5600m程度と思われる。ガイドたちとガッシリ握手を交わし、登頂を喜び合った。高山病の症状は全く出ず、ペースもかなり良く、ムシュタヴァ&アミールにも「Quite good!」と誉められた。ウィリは自分の会社のロゴの横断幕をしょって登ってきており(メチャメチャ重い!)、山頂で広げて記念撮影した。
40分ほど休憩してすぐに下山することにした。この日も午後から雪の予報となっているため、厳重警戒だ。特に雷が鳴った場合ほとんど逃げ場が無いので深刻な事態になる。しかしここからムシュタヴァの本領発揮。実に巧妙なルート取りで雪の斜面を駆け下りるが如くのスピードでの下山となった。砂走りならぬ雪走りである。4900mほどまで降りるとついに雪に捕まった。少しして激しい吹雪になったが我々はもう既に安全なところまで下山した後だった。山頂からNew hutまでわずか2時間半。ムシュタヴァの腕前に感服だった。そしてそのプランを完璧にフォローできたウィリと私も我ながら会心の出来であった。
あとから聞いた話だが、この日はあまりの積雪に他のガイドは全員登頂を中止したそうだ。唯一ムシュタヴァだけが安全に登山できると明言し、そしてそれを実行したのだった。まさにこのパーティだからこそ成し得た快挙。小屋に帰って皆で「This is nice party!!」と喜び合った。
この日、時間に余裕もあることから少々無理をして下山してしまうことにした。最後は足が棒のようになったが、登山口近くで雨上がりの幻想的な虹も見ることが出来、何から何までうまく行った素晴らしい1日になった。ポルールの街でソルタニとも再び合流し、ガイドらも含めて盛大な打ち上げと相成った (ビールはNGなのでノンアルコール・ビールで…)。
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【8/4】 晴れのち曇り
昨晩はポルールのイラン山岳会ロッジに泊まった。この日は何もすることがなくなったので、ソルタニに温泉に行きたいとリクエスト。「いいところがある」と連れて行ってくれたのがダマヴァント山麓のラルジャンという村のホテル・ロータス。ここの温泉はプールのようで、水着を着て泳げるようになっている(レンタル可能)。ソルタニとウィリと3人で1時間以上も泳いで過
ごした。湯温は60℃くらいと熱い。もっとも水で薄めているので実際はかなりぬるめだが。日本以外ではほとんど温泉に入ったことが無かったので貴重な経験だった。
夕方にテヘランに到着。ソルタニとウィリと別れ、自分は夜行列車で次の目的地イスファハンへと向かう…
ダマヴァント、サラリーマンの休みでも行けそうな山であるし、イランの風俗も興味深いので、気になる山でした。記録のおかげで、イメージがわきました。
イランの治安が今のようによく、そのうえ一般の旅行者が少ないうちに、行きたいものだなあと思っておりました。
ff97181さんの記録は、ペテガリ〜ヤオロや猫又毛勝、笈、鉢森と、趣味がかぶっていて、親近感がわきました。
yoneyamaさん
コメントありがとうございます。
ダマヴァント、とてもお勧めです。やはり短期間で登れるのが魅力です。ヒマラヤの高度順応のためのトレーニング場所としてメジャーなようで、どこに登る予定なのか、何人かに聞かれました。この山が目的だというと不思議そうでしたが…
日本発日本着10日間で山にも登り、イスファハンとシラーズとペルセポリスも満喫できました。短期間でこんなに楽しめる国はあまり無いと思います。
イランの観光地は特にイスファハンがお勧めです。あんなに広くて綺麗な広場のある町は世界でそうそう無いと思います。旅行で訪れるだけでもとても興味深いです。国が核開発でおかしくならないうちに是非どうぞ!
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