寧比曽岳


- GPS
- 04:45
- 距離
- 7.4km
- 登り
- 456m
- 下り
- 452m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
冬は冬用タイヤの装着が必須です |
写真
感想
寧比曽岳 雪晴れの山行記
雪が降った翌日、私の心は自然と寧比曽岳へと向かっていた。春を目前にしたこの季節に、まさかここまでの冷え込みに出会うとは思わなかったが、それもまた山の魅力のひとつだ。登山口に着いた時、車の窓はうっすらと凍り、吐く息は白く濃く、山全体が静寂のヴェールに包まれていた。風はほとんどなく、木々に積もった雪がときおり枝からふわりと落ちる音だけが、森の空気を優しく震わせていた。
序盤は落ち葉の上に薄く積もった雪を踏みしめながらのスタート。地面は凍みていて、足の裏から冷気がじわじわと伝わってくる。だが歩を進めるごとに体はじんわりと温まり、凍えた手先もようやくほぐれていく。時折、木々の隙間から陽光が差し込むと、雪面が一瞬きらめくように輝き、それがまるで宝石のように感じられた。寧比曽岳の自然は、いつもながら静かで、そして深い。
中腹を越えるころには、空の青がより澄んで見え始めた。空気の透明度が高く、振り返れば遠くの街並みまで見渡せた。そしてついに頂上へ。冷たい空気が頬を刺すように吹きつけるが、その先に広がる光景に心を奪われた。南アルプスの峰々が、雪をかぶって静かに連なり、その壮麗な姿がまるで絵画のように浮かび上がっていた。寒さも忘れるほどの感動だった。
そして、お楽しみの山頂ランチ。今回は味噌煮込みうどんに追い肉という、まさに贅沢な一杯を準備していた。バーナーで湯を沸かし、味噌の香りが風に乗って漂い出すと、山の寒さが逆に食欲をかき立ててくる。麺が煮える頃には、体はもう待ちきれない状態。そこにたっぷりの追い肉を投入し、ぐつぐつと煮込む。味噌のコクと肉の旨味がしみ出し、あたたかさが体の芯まで染みわたっていくのを感じた。冷えた指先も、胃袋も、心も、この一杯で満たされた。
食後は、しばらくただ風景を眺めながらぼんやりと時間を過ごした。都会では決して味わえない、静けさと開放感。そして、自分自身と対話できるような不思議な感覚。山はただそこにあるだけで、私たちに多くのものを与えてくれるのだと思った。
下山の途中、雪はゆっくりと溶け始め、登りとは少し違う風景を見せてくれた。雪解けの雫がぽたぽたと落ち、木の根元に小さな水たまりを作っていた。それもまた春の兆しだ。
今回の寧比曽岳は、単なる登山ではなく、一冊の短編小説のような時間だった。自然と向き合い、冷え込みと戦い、そして味噌煮込みうどんに癒される――そんな一日を私は、きっと長く心に留めておくことになるだろう。
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