記録ID: 828997
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
北アメリカ
サウス・シスター(South Sister, 3157ⅿ)カスケード山脈三姉妹の長女の山
1997年07月03日(木) 〜
1997年07月04日(金)

- GPS
- 32:00
- 距離
- 17.2km
- 登り
- 2,504m
- 下り
- 2,503m
コースタイム
サウス・シスター(3157ⅿ)はアメリカ西部を南北に走る火山帯、カスケード山脈に属し、アメリカ・オレゴン州中部にある「三姉妹連峰」(スリー・シスターズ)の最高峰です。サウス・シスターは大きな山体をもつ立派な成層火山、ミドル・シスター(3062ⅿ)は高く盛ったご飯のような姿、ノース・シスター(3074ⅿ)は険しい岩山の姿をしています。
三姉妹とはキリスト教の教えにいう、信仰・希望・愛(信・望・愛)の三つの美徳を指し、三つの山が北から順番に信・望・愛に当てはめられ、サウス・シスターは愛(Charity)に当たります。天に向かって聳える山に高い理想を見る、というのはよくあることで、今よりもずっと宗教的だった19世紀のアメリカ人にとっては、仲良く三つならんだ万年雪の山をキリスト教の美徳三姉妹になぞらえるのはごく自然だったのでしょう。敢えて日本に移し替えていえば、薬師・観音・地蔵からなる鳳凰三山みたいなものでしょうか。
1997年の夏、オレゴン州のカスケード山脈を車で巡ったとき、三番目に登ったのがこのサウス・シスターでした。その前に登ったマクラフリン山、セルセン山の記録はこちらです。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828992.html
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828999.html
セルセン山を登った7月2日、車で北上してサウス・シスターの登山口、スパークス湖キャンプ場まで行ってテントを張りました。スパークス湖は標高1500ⅿ。カスケード山脈もここまでくるとかなり冬季の降雪量が多く、そこから見るサウス・シスターにはまだ大量の雪がありました。
7月3日は天気も今一つだったので、サウス・シスターの練習を兼ねて、まずブロークン・トップ(2797ⅿ)に登ってみることにしました。ところが、途中の樹林帯で進む方向が分からなくなり、大事を取って引き返しました。かなり雪があり、またピッケルやアイゼンは持ってきていなかったので、翌日サウス・シスターに登るには不安がありました。そこで、降りてくる人から様子を聞く意味もあって、ブロークン・トップから降りてから、サウス・シスター方面の偵察に出かけました。降りてきた人と話すことで、かなり長い雪渓の登りにはなるが、アイゼン・ピッケルなしでもキックステップで大丈夫だろう、との話を聞くことができました。そこで、テントに引き返し、一旦車でベンドの町に下りて食料を調達し、キャンプ場に戻って翌日の登山に備えました。
7月4日の独立記念日は朝早く出発。スパークス湖からサウス・シスターへのルートは三つの部分に分かれます。最初は1600mくらいの登山口から樹林帯の谷間を詰めて急斜面を登り、2000mの大地の上に出るまでの部分(3kmくらい)。第二は平らでまばらに樹々の生えた溶岩台地を歩く部分(3kmくらい)。そして最後が、サウス・シスターの本体に取り付いて、3000mを超える頂上まで登っていく高山帯の部分(4kmくらい)です。登山道は最初から雪がついています。前日の偵察では、最初の部分の谷間の詰めの部分までで引き返しましたが、この日は谷を詰めて台地上の稜線に出て、正面にサウス・シスターを眺めながら広い雪の大地を歩きます。早いもので、台地上にキャンプを張って、朝早くサウス・シスターに上った人々が早くも下山してきます。
いよいよサウス・シスターの山体にとりつきますが、ここからも1000mほど登っていかねばなりません。あたりは完全な雪山で、スキーをしている人もいます。サウス・シスター本体はプリンを伏せたようなきれいな形をしていますが、少し出っ張った稜線は恐竜の背のような岩尾根になっていて歩けません。そこで、広大な雪田になっている山腹を、スキーストックとキックステップで登っていきます。途中かなり急な個所もありましたが、ひたすら前を見て進むあるのみ。着実に登っていくと、ついにプリンのてっぺんのような平らな山頂に出ました。山頂を右奥へと横断すれば最高点、3157mの頂上です。風は冷たく、7月とは思えませんが眺めは最高。とくにミドル・シスターとノース・シスターがカッコよく見えました。
下りでは、ピッケルを持っている人はグリセードを楽しんでいる人が多かったのですが、持ち合わせがないので斜面を駆け足を交えて下り、もう一度溶岩台地を横切って谷間に入り、湖畔のキャンプ場に戻りました。時間がどのくらいかかったかは覚えていませんが、休憩を入れて往復10時間弱だったのではないかと思います。
降りてきた日はそのままスパークス湖キャンプ場に宿泊。独立記念日ということで、あちこちで花火が上がっていたように思います。翌日は東側のベンドの町にいったん降りた後、車でマッケンジー峠(McKenzie Pass, 1623ⅿ)を越え、その途中ベルクナップ・クレーターという火山(Belknap Crater, 2096ⅿ)に立ち寄ってユージーンの町に下り、カリフォルニアへと向かいました。ベルクナップ・クレーターの記録はこちらです。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828999.html
三姉妹とはキリスト教の教えにいう、信仰・希望・愛(信・望・愛)の三つの美徳を指し、三つの山が北から順番に信・望・愛に当てはめられ、サウス・シスターは愛(Charity)に当たります。天に向かって聳える山に高い理想を見る、というのはよくあることで、今よりもずっと宗教的だった19世紀のアメリカ人にとっては、仲良く三つならんだ万年雪の山をキリスト教の美徳三姉妹になぞらえるのはごく自然だったのでしょう。敢えて日本に移し替えていえば、薬師・観音・地蔵からなる鳳凰三山みたいなものでしょうか。
1997年の夏、オレゴン州のカスケード山脈を車で巡ったとき、三番目に登ったのがこのサウス・シスターでした。その前に登ったマクラフリン山、セルセン山の記録はこちらです。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828992.html
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828999.html
セルセン山を登った7月2日、車で北上してサウス・シスターの登山口、スパークス湖キャンプ場まで行ってテントを張りました。スパークス湖は標高1500ⅿ。カスケード山脈もここまでくるとかなり冬季の降雪量が多く、そこから見るサウス・シスターにはまだ大量の雪がありました。
7月3日は天気も今一つだったので、サウス・シスターの練習を兼ねて、まずブロークン・トップ(2797ⅿ)に登ってみることにしました。ところが、途中の樹林帯で進む方向が分からなくなり、大事を取って引き返しました。かなり雪があり、またピッケルやアイゼンは持ってきていなかったので、翌日サウス・シスターに登るには不安がありました。そこで、降りてくる人から様子を聞く意味もあって、ブロークン・トップから降りてから、サウス・シスター方面の偵察に出かけました。降りてきた人と話すことで、かなり長い雪渓の登りにはなるが、アイゼン・ピッケルなしでもキックステップで大丈夫だろう、との話を聞くことができました。そこで、テントに引き返し、一旦車でベンドの町に下りて食料を調達し、キャンプ場に戻って翌日の登山に備えました。
7月4日の独立記念日は朝早く出発。スパークス湖からサウス・シスターへのルートは三つの部分に分かれます。最初は1600mくらいの登山口から樹林帯の谷間を詰めて急斜面を登り、2000mの大地の上に出るまでの部分(3kmくらい)。第二は平らでまばらに樹々の生えた溶岩台地を歩く部分(3kmくらい)。そして最後が、サウス・シスターの本体に取り付いて、3000mを超える頂上まで登っていく高山帯の部分(4kmくらい)です。登山道は最初から雪がついています。前日の偵察では、最初の部分の谷間の詰めの部分までで引き返しましたが、この日は谷を詰めて台地上の稜線に出て、正面にサウス・シスターを眺めながら広い雪の大地を歩きます。早いもので、台地上にキャンプを張って、朝早くサウス・シスターに上った人々が早くも下山してきます。
いよいよサウス・シスターの山体にとりつきますが、ここからも1000mほど登っていかねばなりません。あたりは完全な雪山で、スキーをしている人もいます。サウス・シスター本体はプリンを伏せたようなきれいな形をしていますが、少し出っ張った稜線は恐竜の背のような岩尾根になっていて歩けません。そこで、広大な雪田になっている山腹を、スキーストックとキックステップで登っていきます。途中かなり急な個所もありましたが、ひたすら前を見て進むあるのみ。着実に登っていくと、ついにプリンのてっぺんのような平らな山頂に出ました。山頂を右奥へと横断すれば最高点、3157mの頂上です。風は冷たく、7月とは思えませんが眺めは最高。とくにミドル・シスターとノース・シスターがカッコよく見えました。
下りでは、ピッケルを持っている人はグリセードを楽しんでいる人が多かったのですが、持ち合わせがないので斜面を駆け足を交えて下り、もう一度溶岩台地を横切って谷間に入り、湖畔のキャンプ場に戻りました。時間がどのくらいかかったかは覚えていませんが、休憩を入れて往復10時間弱だったのではないかと思います。
降りてきた日はそのままスパークス湖キャンプ場に宿泊。独立記念日ということで、あちこちで花火が上がっていたように思います。翌日は東側のベンドの町にいったん降りた後、車でマッケンジー峠(McKenzie Pass, 1623ⅿ)を越え、その途中ベルクナップ・クレーターという火山(Belknap Crater, 2096ⅿ)に立ち寄ってユージーンの町に下り、カリフォルニアへと向かいました。ベルクナップ・クレーターの記録はこちらです。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-828999.html
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South Sister頂上にて。背景はMiddle Sister (左)とNorth Sister (中央)。防寒・防風用に持ってきたレインウェアは全面塩化ビニールで、何の通気性もない
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コメント
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僕も鳳凰三山を思い出しました。19世紀の世界は、山に名前をつけるようになったのと古くからの信仰常識の最後の時代とのタイミングだったのかな。今時山に名前をつけるとなると、ろくな名前が浮かびませんね。合併市町村名や新興住宅団地みたいに
Yoneyamaさん、
古い記録にもかかわらずコメントをいただき、ありがとうございました。
私の通った中学・高校の山岳部(私の頃には残念ながら廃止になっていました)の部歌は、「高く連なる山並みは清き理想の印なり」に始まるのですが、高い山を見上げてそこに神仏や理想をみるのは洋の東西を問わないようですね。先日も富士川鉄橋から雲の上の富士山頂を見たときは神々しいような感じに打たれました。
最近の地名でいうと、「セントレア市」など頭を抱えてしまうものが多いですが、山の名前には少ないので助かります。地名は大切にしないといけません。
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