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Yamareco

記録ID: 127897
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積雪期ピークハント/縦走
富士・御坂

積雪期富士山撤退(須走口、夜間登山)

2009年11月21日(土) 〜 2009年11月22日(日)
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GPS
09:00
距離
9.3km
登り
1,414m
下り
1,403m

コースタイム

須走口新五合目2300→本八合目0530→須走口新五合目0800
天候 11/21 晴のち曇
11/22 晴のち雪
過去天気図(気象庁) 2009年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
自宅(千葉県佐倉市)→(東関道・首都高・中央道・東富士五湖道路)→須走IC→須走口新五合目
コース状況/
危険箇所等
強風と雪のため、本八合目(吉田口との合流部)で断念し、下山。

雪は6合目手前から出始め、かなりの量が積もっていた。
7合目から先はラッセルきつし。気温がやや高めだったので、
雪が柔らかくて大変だった。
予約できる山小屋

感想

結果は、またしても敗北。今回は身体のコンディションが良かっただけに、
非常に悔しい結果となってしまいました。

22時過ぎに駿東郡小山町の須走口(標高2000m)をスタートしました。
序盤は樹林帯を通りますが、雪はしばらくの間はまったくなく、
ここまでくるのにわざわざスタッドレスに替えるほどではありませんでした。

卸したてのプラスティックブーツが足に馴染まず、間もな両踵に靴擦れ発生。
まあそのうち痛みに慣れるだろうとあまり気にせずに歩きます。

樹林帯を抜けると、だんだん雪の量が増えてきました。
空も開けましたが、一面の星空。ものすごい光景です。

ヘッドライトの頼りない光を頼りに歩いていましたが、
6合目小屋(2420m)近くまで上がるとさすがに地面が滑って歩きづらい状態になったので、
アイゼンとピッケルを装着。

本6合目(2620m)近くになると、雪が深くなってきており、
トーレス(この場合は足跡の意)は2〜3あるものの、
少しずつラッセル(この場合は人力で雪を掻き分けながら歩く意)をしながら
進むケースが増えてきました。

気温はさほどでもなく、体感的には氷点下10度近く。
風はなく、非常に穏やかなコンディション。
ところが、夜間登山なだけにだんだん眠くなってしまい、
休憩のときにコックリやってしまう有様でした。

夜間のフジさんは恐ろしく静かです。無風で、何も聞こえません。
静寂、という違う世界の音があるんじゃないかとさえ思えてきます。
上を見ると、闇の中なのに雪をすっぽりと被ったフジの姿が良く見えます。

7合目(2920m)になると、雪がさらに深くなりました。
こういうときに非常に厄介なのは、柔らかい雪と固い雪が混在していることです。
固い雪であれば、アイゼンの爪で容易にホールド(確保点)を取って上がれるのですが、
柔らかいと膝近くまでズブリと入り込んでしまい、筋力と体力をかなり消耗します。
夏ならなんてことのない斜面ですが、
気温の低下も相俟って、次第にきつくなってきました。

3000mを超えると、風が出るとともに、ガスがかかってきました。
7合目では見えていた下界の街灯りも、フジの姿もすっかりと見えなくなってしまい、
ちょいと心細い心境。
それとともに、ラッセルの機会がさらに増えてきました。
時間は午前3時をくらい。ここまでのペースは悪くないのですが、
ラッセルのせいで明らかに序盤より落ちていました。

本7合目(3140m)では小屋がちょっと埋まっていました。
寒さも相当になり、風が出ていることもあって、
立ち止まるだけで震えて歯がガチガチ鳴ります。

もうちょっとで自己最高標高(南アルプス・北岳の3193m)を上回るだけに、
気合を入れて登っていましたが、
ラッセルが膝近く、という状態が続いたことと、
(原因は、2日前にかなりの雪が降ったからです)
これからさらに気温が下がり、風も強まる可能性が大きいことを考え、
頂上への登頂は厳しい見通しを立てました。

8合目小屋(3270m)。自己最高標高を更新です。
風は頂上から吹き降ろす向きに変わってさらに強まり、
時折身体が浮き上がるくらいになります。
時間は午前5時前。がっくりとペースが落ちました。
頂上から風が吹き降ろすときに一番怖いのは、落石です。
須走口の近辺にもコブシ大の落石がごろごろと転がっていました。
今年、富士宮口の駐車場で落石が車を直撃し、
中にいた方が亡くなった事故がありました。
風向きからして、落石に巻き込まれる恐れも考えられましたし、
闇夜の中でそれを避ける術はあまりないということもあったので、
ここいらが潮時と考え、河口湖口との合流点(3370m)を目的点と定めました。
頂上まで約400m地点で引き返すのは痛恨の思いですが、
身の危険と残りの体力を考えると、引き返すことが最良の選択でした。

強風とラッセルに悩まされながら、本8合目、河口湖口との合流点の小屋に達しました。
頂上は全く見えず、時折どこかでガラガラと石が落ちていく音が聞こえます。
小屋の影に隠れて岩と風を避け、あらかじめ持参してきた
暖かい飲み物を飲みながらしばし休憩。

やがて空が白み始めましたが、真っ白で、とてもご来光を望める状態ではありません。
予想よりも早く気圧の谷が来てしまったようで、風はさらに強まってきました。
この地点であまり長時間滞在するのは危険と考え、
消耗した身体を持ち上げて下山を始めました。

7合目までは自分のラッセルルートをたどるだけだし、
岩もほとんど雪に埋まっているのでかなり楽に下れました。
7合目から登山ルートから外れ、砂走という砂礫を通ります。
ここは火山灰の砂礫で、夏は岩があちこちに出ていますが、
雪に埋まったこの季節では、ほとんど一面が雪の斜面です。

滑落しないように気を配りながら、飛ぶように駆け下りていきます。
(それでも時折転倒し、ピッケルで滑落停止を取りました)
ここは約600mの高度差があります。

砂走を下りきるころには、靴擦れした踵に、もはや痛みを感じなくなっていました。
びりびりと痺れるだけです。
雪がなくなった標高2200mあたりでアイゼンを外し、
岩がむき出しのルートを慎重に下ります。

そして午前8時、ようやっと須走口の駐車場へ戻りました。
無事に生還、そしてまたも撤退。

悔恨の念よりも、とにかく眠くてならず、
須走口から国道まで下って、近くのコンビニエンスストアの駐車場に
車を停めるまでは何とか耐えましたが、そこで限界。
1時間ばかり睡眠をとってから帰宅しました。

----

【撤退の原因】
1.予想以上に雪が深かった
とにかくラッセルで非常に消耗してしまいました。
フジの東側なら、冬の風向きからしてもそう深くならないかと思っていましたが、
2日前に降ったの雪がことのほか柔らかく、
上に行けば行くほど深くなっていったことには相当閉口しました。

2.風向きが変わった
当初、風はほとんどなく、そよ風みたいな南風が時折吹くくらいでしたが、
7合目近くから風が強まり、上に行くと次第に頂上から吹き降ろす西風に変わりました。
これで落石の危険性が非常に高まってしまいました。

3.靴に履き慣れていなかったこと
買ったばかりのプラスティックブーツですが、
開始から数十分で踵に靴擦れを起こしてしまいました。
少し緩かったので、靴下を三重履きにし、それでいけそうな感じだったのですが、
登るとすぐに踵が緩くなってしまいました。
幾度か調整しましたが、結局これで時間を食ってしまったことが、
非常に痛かったです。

4.装備
足元には12本歯のアイゼン(冬期登山ではごく標準のもの)を装着しましたが、
ラッセルに苦しんだ原因は、深雪時に必要な装備がなかったことにもあります。
これは、かんじきがあれば大分軽減できたと思われ、
フジの気温からしてもかんじきは邪魔になりそうだというわたしの予測が、
完全に誤っていたということになります。
むしろ、アイゼンよりかんじきのほうが楽だったかもしれません。

5.睡眠不足
夜間登山は初めてではありませんでしたが、
ちょいと睡眠不足だったようで、休憩中、
いつの間にかコックリと漕いでいる状況になることがたびたびありました。
スタッドレスタイヤに履き替えた後に2〜3時間寝るつもりだったのですが、
ことのほか交換に時間がかかり、ほとんど寝られなかったので、ずいぶんと堪えました。

・・・とまあいくつかが挙げられるわけですが、
今のわたしの実力では、厳冬期の登頂は事実上不可能なので、
できれば春、それも日中の穏やかな晴れのときに登りたいと思っています。

ここまでわたしを寄せ付けないフジさん。
いつになったらあなたにお会いできるのでしょう。

今後もトレーニングに精進します。

※結局、写真を撮る余裕が全くありませんでした・・・。

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