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記録ID: 138026
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無雪期ピークハント/縦走
祖母・傾

祖母山

2000年05月02日(火) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
7.4km
登り
1,089m
下り
1,076m

コースタイム

2000/5/3
神原一の滝駐車場下 7:40 五合目小屋 8:04 国観峠 9:15 祖母山 10:15-10:45 国観峠 11:35-11:40 神原一の滝駐車場下12:55

アクセス
利用交通機関:
自家用車
祖母山から久住山方面
祖母山から久住山方面
祖母山山頂
祖母山山頂、写真は3枚だけ。
祖母山山頂、写真は3枚だけ。

感想

祖母山 (1758m)  



祖母山へ 2000・5・3

 五月三日。大分から早朝六時に竹田市につき、滝廉太郎の「荒城の月」に歌われた岡城に立ち寄った。城へ入るには有料なのだが、早くきたのでそのまま城に登った。石垣から察するとかなり立派な城で、山城としては、規模も大きい。本丸跡近くに滝廉太郎の銅像があり、写真を撮った。早朝のこの城から、九重山と祖母山と双方の山々が一望にできる。九重山の方が間近に見える。竹田は昔、大分藩よりも石高が高く、豊かなところであったという。私が、城を残しておっいたらよかったのに」と、言うと、妻が「その時には『荒城の月』は生まれなかったわ」と言うので、それももっともだと納得したりする。

    朝空に九重の峰のひとつよりま白いけむりたちのぼりゆく

 城から藍色にかすむ祖母山と傾山への稜線の山群れを眺める。傾山とあいまって、姿がすぐそれと分かるほど美しいほどの三角形をしている。独立峰である。早朝の静寂のなかにしばし見とれている。早起きは三文の徳というが、まさにこれがそうであった。
    ふるさとの城荒れてなお祖母山は夜明けの空にしずまりてあり
                    こうはら
 妻と二人、この岡城にいたく満足をして、神原にむかう。祖母山へのコースを深田久弥と同じ道をとることにした。深田久弥は祖母山を登った帰りにこの城に立ち寄っている。『そこから再び祖母・傾を眺めた。祖母は品のいいゆったりした金字塔で傾山はやや傾き加減の突兀とした姿で、私の眼を熱くした』と、祖母山への文章を結んでいる。
 この山がなぜ「祖母」なのか。この山の祭神は「豊玉姫命」で、この「とよたまひめのみこと」は神武天皇の祖母にあたるところからこの名がついた、のだそうだ。宮崎県の高千穂町の天ノ岩戸や高千穂の地名からして、その地域と係わった山として見なした方が親しめる。ウェストンが登った五ヶ所からの道が本来の登山路なのかもしれない。この地域は神話と結びついた謂れ因縁があったほうが面白い。


神原一の滝駐車場下 7:40 五合目小屋 8:04 国観峠 9:15 祖母山 10:15~10:45 国観峠 11:35~11:40         神原一の滝駐車場下12:55

 道に多少迷いもしたが祖母山の神原登山口、一の滝駐車場まで車ではいったが、すでにいっぱいのようで、林道の傍らに駐車して、身仕度をした。妻は大分ではよく眠れなかったというので、車のなかでゆっくりと寝て、私の帰りを待つということにした。午後一時の下山を予定に一人で登り始めた。こちらは裏登山口になるわけだ。
 祖母山は、今回の計画のなかで尤も登山らしい雰囲気のある山で、当初は尾平から計画したが、登山に一日かかってしまうので、神原口からの往復にした。ぶなの木の自然の森のなかをひちすら登った。何組ものパーティを追い抜き、二時間半ほどで山頂に着いた。

    汗音たてて落ちれば青春いまこの時にあるかもしれず

 5月3日は祖母山の山開きで、山頂は立錐の余地もないほど混雑していた。午前11時半から神事を執り行ない、記念品を配ると言われたが、山頂にそんなに長く留まれない。登山者の名簿に記念に記帳する。東京方面からの登山者はいないだろうと思っていたら、横浜方面からきたという三人のオバサングループがいた。百名山めざして九州の山を続けて登っているという。いまの女性は、特に山であう中年女性は元気だ。

    祖母山の頂にて白装束の神主が祝詞のたまう山開く朝

 山頂で、一ノ瀬さんから頂いたミカンのような柑橘類の果物を食べて、水分補給をする。山頂からの眺めは残念ながら霞んでいて、遠くの眺望がえられない。登頂したことだけを土産に下山することにした。記念品はバンダナであったが、もらわずに下山。
 国観峠で五ヶ所からの登山者が休んでいたので、私も少し休んだ。五ヶ所のコースが一番やさしいという。走るように下る。ぶなの木の若葉の緑がほんとうに美しい。自然のままの森の緑は未来のためにも大事にしなければならないと思う。

    脇目ふらず一筋の路を追えば ぶなの若葉に癒されている

途中で東京から来た人と一緒になり、下山した。その人は一人で来ているといった。四十代だから、足は私より早い。自分も歳取ったと痛感する。
 深田久弥は三月に登っている。その時期はベストかもしれない。そして尾平にくだっている。祖母山の東面の景観を称えている。ガイドブックにもそう書かれていた。次回は必ず尾平から登って見たいと思う。
 駐車場で東京の人と別れ、林道を走り下る。どうにか一時前に戻ってきた。裕子の顔を見て私も一安心する。林道の木陰に車を置いたので、涼しかったと思うが、よく眠ったようだ。


高千穂町の神楽
 午前中で祖母山を終えたので、阿蘇高原にでようと思っていたが、このまま高千穂町に入り、神楽を見て、夜行で鹿児島に入り、開門岳・霧島山・阿蘇を経て東京に帰る計画に変更した。神原から高千穂への国道は途中林道のような心細いカ所もあったが、迷うこともなく宮崎県に入った。大分と宮崎の県境の山奥の集落を越えていく。
 高千穂町に入り、天の岩戸神社をまずだずねた。たまたまお祭りの日で、大変ににぎわっており、駐車に一苦労した。長い棒をもって二人一組で舞う神様への奉納の舞いがあり、それを先頭に神主や神楽の面をつけた舞い手が行列をなして、町を練り歩く場面に遭遇した。司祭はわからないがにぎやかであった。それから高千穂狭に行こうとしたが、駐車できないので高千穂神社に参拝して、夜神楽を確認すると、夜八時より観光神楽を毎晩開催しているとのことであった。高千穂町営の温泉があるというので、そこで時間を過ごすことにした。
 この日佐賀県の高校生が、高速道路でバスジャックをしたという事件が飛び込んできて、尾風呂から出たあと、長いことテレビを見ていた。
 町営の音節施設の食堂で、私は高千穂産の牛肉のタタキ定食を、裕子は地場産の鳥の唐揚げ定食を食べた。牛のタタキはおいしかった。7時半、高千穂神社にむかった。神社では夜神楽の見物料一人500円なりを払い、新しく建てたという神楽の舞台の設えてある建てものに入る。劇場とは言わない。神楽殿。畳敷きの六十畳くらいあるだろうか。開演前には部屋一杯の客であふれている。私の前には背の高い男性の外国人が陣取っていた。休日なので九時からの二回公演だそうだ。神楽は天ノ岩戸の出しものを三番と、イザナギ、イザナミの大変ユーモラスな神楽で四番が舞われた。
 高千穂町は印象としてとても豊かな町のように感じられた。神話をいまも大切にして、都会のせせこましい生活に追われる様子がない。ただ素通りする者としての印象に過ぎないが、神楽の季節にじっくり来てみたいと思った。
 神楽がおわって、我々はまた流浪の旅にでる。車の荷持室部分にマットを敷き、シュラフで即席の寝台車にしたてる。このまま夜の国道を熊本にでて、国道3号線を鹿児島に向かう。明日の朝、開門岳を登る。


<山と短歌>
祖母山を詠った短歌
  
    波野高原いろかはるところおのづから祖母ぞ起れり群山を裾に  持田勝穂
    遠き野は見えわたりつつまな下の深谷に日のかげれる寂し     〃
    
 持田勝穂という歌人については、今は詳しいことはわからない。ただ九州の人で、九州の山を多く登り、詠っている。山岳短歌集に祖母山を詠ったのは、この二首だけである。現代の歌があれば、おいおいさがしたい。
 祖母山をはじめて目にしたのは、早朝、竹田市の岡城跡からであった。
 滝廉太郎の「荒城の月」で有名な城の石垣の上から見た祖母山は、はじめの一首「祖母ぞ起れり群山を裾に」に表現されるように、ひときわ高く三角形の形にそそり立っている感じを受けた。まさに「おのづから」と、その意志あるように九州の背骨に立ち上がっている。この歌の表現にはいたく納得している。波野高原というのは、阿蘇山の広範囲な裾野を言うのであって、その裾野が祖母山系の麓まで及んでいるのだ。
 二首目の歌は山頂近くからの歌で、これは尾平からの登山道、または天狗岳への稜線から詠まれたものだろう。深谷という表現は、神原コースや五ヶ所のコースではできないものだと思う。一番険しい道を踏んで詠まれた歌だと思う。九州の他の山に比べて文学的には損をしている山である。それは周辺に阿蘇や九重や霧島のような高原をもたず、また位置的なも山深く、交通の便も悪いというような条件が揃っているからだろう。有名な歌人の目に触れることのない山であったようだ。深田久弥もその位置の不利さを指摘している。目につきやすい山のわりには歌がすくないのは、北アルプスの奥山が、日との目にふれていないからというのとは違う理由によるものだろう。古来より九州第一の高峰として知られていたと言うのに。

祖母山に登る
朝空に九重の峰のひとつよりま白いけむりたちのぼりゆく
ふるさとの城荒れてなお祖母山は夜明けの空にしずまりてあり
汗音たてて落ちれば青春いまこの時にあるかもしれず
脇目ふらず一筋の路を追えば ぶなの若葉の陽に透けており
祖母山の頂にて白装束の神主が祝詞のたまう山開く朝

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