瓶ヶ森☆西ノ川から東ノ川へ周回
- GPS
- 04:56
- 距離
- 14.0km
- 登り
- 1,563m
- 下り
- 1,566m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
約一月前に石鎚山系を縦走したところではあったが、翌日に松山への出張が入ったので霧氷を期待して再び石鎚を訪れるべく有給休暇を取得する。快晴の天気予報となったのはいいが、12月とは思えぬ温暖な日が続いており、果たして霧氷の稜線に出会えるのだろうか。
山行先は前回、ガスで全く視界が得られなかった冠山〜平家平と迷ったのだが、どうせ冠山に行くのであれば、笹ヶ峰の丸山荘に泊まりたいものだ。しかし丸山荘に電話したところ大将は前回、私達が縦走した時に無理して上がってきてくれた日以来、丸山荘は開けていないとのこと。山行先は瓶ヶ森を選ぶことにした。
京都駅発の7時20分発のひかりに乗ると岡山駅でしおかぜ号に乗り継ぎ、伊予西条からは西ノ川行きのバスに乗り継ぐのだが、西ノ川にたどり着くのは11時半前となってしまう。瓶ヶ森を周回するにはおよそ現実的とはいえない時間になってしまうので、京都駅を5時46分発の東海道線で新大阪に向かい、新大阪始発のさくら号から始発のしおかぜに乗り継ぎ伊予西条からタクシーで登山口に向かう計画とする。しかしこの計画は思いがけないアクシデントで敢なく破綻する。
早朝、東海道線の快速列車が新大阪の手前、茨木駅に入線しようとしたところで突然、急ブレーキで列車が停止する。まもなく聞こえてきた車内放送は非常に不吉なものだった。「ただいま列車がお客様と接触致しました」。それから救急車と何台ものパトカーのサイレンのけたたましい音を耳にするまではものの数分とかからなかった。どうやら即死ではなかったようだ。当事者の救護作業が行われた後は現場検証が行われるようだ。その間。駅を直前にしながら延々と車内で待たされることになる。
結局、列車が再び動き始めたのは50分ほど経ってからはであったが、人身事故としては運転再開までの時間は短い部類だろう。勿論、新大阪に到着したのは予定のさくら号は疾くに出発した後だ。しかし、東海道線の快速の運転再開を待つ間に心は決まっていた。快晴の瓶ヶ森の山頂部の笹原を歩く愉悦を求めた心は簡単には他の山に食指が向かない。短時間でのスピード周回に挑戦するのみである。
伊予西条からのバスに乗った四人の中国人はロープウェイの駅で降りる。一人は驚くほどに流暢な日本語を操る。西ノ川まで乗るのは私一人のみ。普段はここまで乗る乗客はいないのだろう。運転手に興味深そうに尋ねられる。「この時期に開いている山小屋があるんですか?」「いや、少なくともここから歩けるところはないでしょう。日帰りの予定です。」と私の行動計画を運転手にお伝えする。
黒瀬ダムを過ぎると、加茂川の水は淵になると深いエメラルド・グリーン色を呈している。陽光が当たると透明な碧色の水底ではキラキラと光が反射する。
バスを下車するといくつかの民家がある。この山奥で人が暮らしてるということに驚く。名古瀬谷に沿って林道を進むと河原には大きな緑色の岩石が多くみられる。瓶ヶ森の山頂部でも層状の緑色の岩石が多かったことを思い出す。後で調べると緑色片岩と呼ばれる岩石のようだ。
12月とは思えぬ陽気であり、早足で歩くと すぐさま汗ばみ始める。林道が終わると植林地の中の葛折りの急登が始まる。常住にかけて急登を登ると大きな崩落地が現れる。ロープに助けられて崩落地を通過する。
常住からは斜面のトラバース道に入ると急登から解放される。大きな谷を渡るとその先で登山道のすぐ下の岩の下から滾々と水が湧き出ている。冷たい清水を一気に喉の流し込み、喉の渇きを癒すのだった。水場の上では林の中に忽然と大きな石垣の遺構が現れる。かつての住居の跡だろうか。
このあたりからは谷のルンゼに沿って上がってゆく。鳥越の手前でも大きな石垣の遺構が現れる。鳥越からは自然林の尾根の急登となる。落葉した見晴らしの良い広葉樹の樹間からは背後には石鎚山のシルエットが大きく望む。
尾根の上部に達するとなだらかな山頂台地の一角にたどり着いたようだ。左下に小さな沢が見える。瓶壺からの流れ出した沢だ。笹の繁茂する左岸を辿ると見覚えのある瓶壺の光景が目に入る。瓶壺の左手の岩は凍結して白いワックスを塗ったかのようだ。瓶壺は山の影であり、光は届かない。
瓶壺から上に上がるとすぐに瓶ヶ森の男山から女山にかけての広大な笹原に飛び出す。笹の草原を吹き渡る風は穏やかであり、白日夢のような光景の中を歩く。振り返ると正面に石鎚山の鋸歯状の稜線が大きく
笹原の中には疎らに生えるコメツガの樹々が風景を一層、非日常的なものにしている。しかし、樹々には残念ながら霧氷を全く見当たらない。この暖かい天候であれば霧氷を期待するのは無理だろう。
まずは男山の南斜面を目指す。眼下には広い駐車場が目に入るが、石鎚スカイラインが冬季通行止になっているのだろう、当然ながら車も人影も全く見当たらず、一ヶ月半前のこの駐車場の賑わいが嘘のようである。
笹原の中のパノラマ・ロードであり、子持ち権現の鋭鋒の彼方には筒上山、その左手には高知平野が広がっている。右手には伊予富士を経て笹ヶ峰へと連なる石鎚山系の主脈が見える。先日、縦走した際には辛うじて伊予富士までを望むことが出来たくらいであったが、今日はその彼方の赤石山地までくっきりと見える。
男山の山頂に到着する。足元の登山道には雪と落下した霧氷の欠片が積もっている。女山にかけてのなだらかな吊尾根を辿る。通過してしまうのが勿体ないような眺望に恵まれた贅沢な尾根だ。
女山の山頂からは瀬戸内海が大きく視界に飛び込んでくる。瀬戸内を隔てて対岸には広島の山やが見えているようだ。雄大な光景を見ながら瓶ヶ森の避難小屋へと下る。真新しい避難小屋とトイレが作られていた。
台が森を通る下山路へ入ると、途端に山の影に入るせいか、登山路には雪が多い。日中の暖かさで雪の表面が溶けたせいだろう。登山路はガチガチに凍結している。雪の上に飛び出した露岩の上に慎重に靴を置いてなんとか下って行くことができる。チェーンアイゼンを装着しようか迷うところだが、凍結した登山路は長くは続かず地面が露出した箇所も多いので、チェーンアイゼンなしで凌ぐ。登山道が尾根道になると凍結はほとんど現れなくなった。
急下降を尾根を下ってゆくと尾根の先に鋭鋒が見える。台ヶ森のピークのようだ。登山道は鞍部から右手の斜面に下ってゆくがピークに寄り道することにする。こうした寄り道のせいで後で時間がなくなり、ということがよくあるのだが、この時にはそのような可能性は危惧していなかった。
峻険な尾根には岩を避けながら上手く道がつけられており、意外と呆気なくピークに達する。山名標は見当たらなく、三角点の小さな石標があるばかりだ。振り返ると瓶ヶ森の山頂部のなだらかな笹原と対照的な急峻な斜面が目に入る。
台ヶ森から黙々と下りながらふとJRの快速列車と接触事故を起こした人物のことが脳裏をよぎる。自分と近い世代の中年の男性ではないだろうかと思う。大阪の通勤客にとっては「またか!」と思ったであろう。私自身、大阪に長いこと通勤していた時分には頻発する人身事故に対して同様に感じることが多かった。しかし自分が乗っていた列車と接触したとなるとその人物の転帰が気になるところだ。果たして一命を取り留めるのだろうか、或いは仮に取り留めたとしてもかなりの身体的なダメージを被ったに違いない。最近ではJRはアナウンスでは接触という表現を頻用するが、実際はかなり凄惨な事故になったに違いない。(後に自殺ではなく立ちくらみによる線路への転落で、手脚切断の重傷を負ったことを知る。)
新道分岐の手前からは杉の植林地となる。分岐に至ると「新道は崩落のために旧道を通るように」との案内標がある。尾根上の新道は杉の枝葉が堆積しており、長いこと人が歩いていないようだ。
植林地の中を下ると杉の植林地に差し込む傾いた午後の陽光が林の中を黄金色に輝かせる。
東ノ川が近づくとこちら側でも登山路脇に石垣の石津みが現れる。東ノ川に下りると、ここでもいくつかの民家がみられるがこちらは既に廃屋の雰囲気だ。
時間は丁度16時。この日は石鎚山ロープウェイで成就まで上がって、成就に泊まる予定である。ロープウェイの発車時刻は毎時20分おきであるが、次のロープウェイの時間は16時20分のロープウェイには間に合わないだろう。
西ノ川の橋が見えきた時点で16時14分。急げばロープウェイの時間に間に合うかもしれない。ロープウェイの駅まで走ってみるが、改札にたどり着いた時点で20分。すぐにもロープウェイの発車のベルが聞こえる。もう少しどこかで急いでおけば山の上で日没の光景を楽しむことが出来たかもしれない・・・というのはあくまでも結果論である。
ひと気のないロープウェイの駅の構内で静かに次の便を待つ。ロープウェイの索道の彼方では夕陽をうけて雲がピンク・ゴールドに輝き始めるのだった。果たして明日は晴れるだろうか・・・
※懇切なコース・アドバイスを下さったsea1020さんに限りない謝意を込めて
レコ、興味深く読ませていただきました。
瓶ヶ森周回は楽しめましたか?
それにしても速いです。
麓の京屋旅館に泊まるのかなと思っていたのに、ロープウエイの運行時間に間に合うなんて、驚きです。\(◎o◎)/!
今回の周回の計画を聞いた時に、出発時間等を考えるとこの時期は日が短いので、普通の人なら止めるように忠告するのですが、1ヵ月前の石鎚山系縦走のレコを見ていたので、あえて止めませんでした。(笑)
鳥越に通行禁止の標識があったのですが覚えていますか?
標識を無視していくと、子持権現への昔の修験道「ホンガケ道」です。
yamanekoさんにはお勧めのルートです。機会があればぜひ行ってみて下さい。
sea1020さん この度はいろいろと有難うございました。
さすがに東海道線の車内で人身事故のアナウンスを聞いた時にはロープウェイの最終に間に合わないという可能性も考えておりました。
この時期の瓶ヶ森、霧氷は出遭えなかったもののなにがいいかというと、石鎚スカイラインの冬季閉鎖によりUFOラインこと瓶ヶ森林道を走る車やバイクの音が一切聞こえず、他の時期はこの林道から手軽に登れる山がそうではなくなっていることですよ。ただでさえ夢幻的な光景が一層、素晴らしく思えたのは山深さのせいもあったかもしれません。
鳥越の標識、尾根の取り付きを直進するトラバース道ですね。sea1020さんがしばらく前に「ほとんど遭難?」したルートですよね。あのレコも興味深く拝見させて頂きました。sea1020さんにご案内頂けるなら行ってみたいですが、私一人では到底無理です
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