裏妙義・丁須の頭(御岳コース)
zaoluck
- GPS
- --:--
- 距離
- 13.7km
- 登り
- 849m
- 下り
- 859m
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| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2010年05月の天気図 |
| アクセス | |
| コース状況／ 危険箇所等 |
登攀経験がない自分は鎖が頼り、つまり腕力が頼り。ほとんどの鎖場は鎖無しでも通れるが、スリップしたら終わりなので素人は利用した方が良さそう。ルートは赤や黄色のマークに注意すればまず迷わない。なお、山と高原地図のコースタイムは、いくら何でも余裕を見過ぎと思う。こんなタイムの体力なら来ない方が無難では?と感じた。 御岳の南、最初の3連鎖の下段はほぼ懸垂で登る形なので最も腕力がいる。無名岩峰の先、20mの鎖を下りる際も、岩壁に不慣れなので腕力と緊張を強いられた。赤岩のトラバースは、有名な桟道に至る手前のトラバースが危険。桟道の方は尻がムズムズするものの、むしろ通りやすい。 2010年4月10日のyamarecoさんの山行記録「丁須ノ頭」(注:「の」がカタカナ)が、鎖場等の写真を豊富に載せていて参考になった。帰路を楽にとJRバス発着場前の無料駐車場に車を止めたが、収容は20台程度。駐車場はあさお吊橋近くにもある。 |
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感想
高速道の大渋滞をくぐり抜けて横川駅前に着くと、もう釜飯「おぎのや」や鉄道文化むら目当ての観光客が集まり始めていた。軽井沢行きJRバスが横着な止め方で妨害していたおかげで？空いていた市営駐車場最後の区画に小型車をねじ込む。家から予定の倍の時間がかかり、出発が一時間半も遅くなってしまった。登頂が遅くなったら後半の三方境ルートを省略することにして、車のキーをしまうのももどかしく歩き出した（これが後の悲劇の引き金だった）。
鉄道文化むらの機関車群を右に眺めながら国道18号を進み、橋を渡ってあさお吊橋へ。渡った先の登山ポストに登山届けを出す。まずは七福神巡りだかの立派なハイキング道だが、天候不順を口実に１か月半ほど山行をサボったせいか、ペースが上がらない。やっとエンジンがかかったかと思った頃、第一不動の滝に着いた。「滝側壁の鎖」の滝というのはまさかこれか？と怖気づいたが、そんな訳はない。沢をまたいだ先に小滝があって、向かって右に足場が濡れてそれなりに怖そうなシチュエーションの鎖があった。
取り付いてみればどうということはなく、ただ手袋を濡らさないよう気遣いながらヨイショと乗り越す。少し行くと今度は岸壁下の一枚岩に補助的な鎖があった。なくても何とかなるが、念のためつかまりながら登る。そして三たび鎖。これは鎖の位置が高くて取り付くのに岩をよじる必要があり、さらにトラバース気味に進む足元が悪く、高度感もあって少々足がすくんだ。
いきなり妙義らしい岩登りだったが、この先は急な登山道に汗を絞られただけでザンゲ岩に着いた。ここから箱庭のような横川の町を見下ろすのが今回の山行の楽しみの一つだった。鉄道文化むらがまるで模型鉄道のセットのように見える。ただし、ザンゲ岩から下を見下ろすというのは相当に度胸が必要だったが･･･。
汗をふいて産泰山を目指す。尾根道はところどころ赤いテープや雑木の幹に黄色いペンキが付けてあって辿りやすい。スタートが遅かったのでどんどんペースを上げたのだが、気がつくとルンゼ状の難所を過ぎて絶壁の行き止まりに出てしまった。おやおやと立ち戻ると、すぐに斜め上へ向いた矢印の指導標が目に留まった。なるほど、このルンゼをジグザグに詰めるらしい。落ち葉で足場が悪くて難儀するが危険は少ない。標高から見て、産泰山は知らぬ間に通り過ぎてしまったようだ。
また鎖が現れて、あまり力まかせに手繰ると後で腕がへばるので、バランスを取りながらなるべく脚力で登るように努める。標高900m付近で一休み。さらにひと鎖で御岳の石祠のピークに至る。ここまで足場を検討するほどの岩場･鎖場はなく、御岳には予想外に早く着いてしまった。
大休止で英気を養い、山と高原地図に「危」印が三つ並ぶ尾根に踏み出す。三連の鎖の下段は一見垂直の一枚岩。岩登りができれば脇のいくらか緩いルートを選ぶだろうが、あいにくそんな技術は持ち合わせないので、仕方なく力任せに登る。上の2段はどうということもなく、次の難所はリッジ上の鎖。これは鎖を補助的に使えば登りやすい。三つ目の「危」の鎖のない岩場は、聞きかじりの三点支持に留意して乗り越えた。いずれも転落の恐怖を感じるほどの難所ではなかったが、逆コースは遠慮したいところ。当分、下りには使えないコースと覚えておこう。
本日前半の山場は越えて、後はいつもの山と同じような雑木林の尾根道を辿る。正面に見える丁須の頭がだんだん大きくなり、手前の岩壁が迫ってきた。どうやって登るのだろうと思案し始めた頃、籠沢のコルに到着。籠沢から一気に上がって来るザレ場の鎖が見える。登山口からここまで2時間半余り、出発が１時間半遅れたのに山と高原地図を参考にした予定到着時刻より既に30分近く早い。
ただ、丁須の頭に至るにはまだ最後に強烈な鎖場が待っていた。鎖のルートは複数あって、しかし、いずれも濡れていたり垂直の壁のトラバースがあったりと厳しそう。一番手前の鎖に取り付き、恐る恐るトラバースして次の鎖へ。その上がようやく岩の基部で、さらに一枚岩を力任せに登って「L字型」の岩の直下の部分に辿り着いた。二人いた先客の一人が立った後に腰を落ち着け、弁当を広げる。４ｍ×２ｍほどの広さで、南側と西側は下の見えない断崖絶壁、今登ってきた北側も落ちればタダではすまない。
それにしても景色は言うことない。北西に浅間山、南東に表妙義の奇峰群、そして南西にこれから辿る赤岩、烏帽子岩。出遅れのせいで籠沢を下りるルートに変えるつもりだったが、早く着いたので当初計画通りで行くことにした。ただ、赤岩の中腹の岩場に桟道のトラバースらしいルートが見えるのが恐ろしい。あんな所を歩くのか。その手前には掛け値なしの垂直の岩場も見える。あの辺りもトラバースするはずなのだが･･･。
まあ、悩んでも仕方ない。同じ御岳ルートで来た先客の男性が、ここまでと技術的には変わらないルートだと教えてくれたので一安心。最後に空身で丁須の頭に挨拶してここを辞すことにした。といっても、てっぺんなどとんでもないので中段、L字の下の辺までだ。ほんの４ｍ上がるだけだが、そこでも立つと足がすくむ。とにかく幅が狭い。せめてLの底辺の端に立ちたかったが、這ってまでして行くのは嫌なのでやめておいた。
長い鎖をたぐり下り、登り返す。振り返ると、空をバックにポスターで見るような丁須の頭のシルエットが浮かんでいた。無名岩峰は南へ巻いてパスし、間もなく黄色く塗った鎖が下へ伸びる所に出た。逡巡していると、追いついてきた男性が「こっちでしょう」と迷いなく鎖に取り付き、垂直のルンゼ状の溝の下に消えていく。そう、20mのチムニーの鎖場だった。男性が下り切るのを待って鎖にすがる。�校�状の溝の反対側にリュックが当たらないよう体の向きに気を配りつつ、両足を左右に突っ張りながら下りていく。ステップは豊富だが角度が急で見づらいので、素人はどうしても腕に力が入る。いささか疲れた。
先ほど軽々と丁須の頭に登っていた男女を追い越し、すべすべの岩を鎖につかまって下りる。ステップ用の穴が開けてあるので助かった。断崖に咲く山桜などに目をやりながら進んでいくと、いよいよ赤岩のトラバース。丁須の頭から遠望した垂直の断崖は基部を通り、右へ折れれば桟道のトラバースという手前で、足場が横に渡した細い丸木1本だけという“丸木のトラバース”を渡った。鎖と足場の関係が難しく、少々肝を冷やす。桟道の方は、見た目はともかく鎖に右手を掛けながら普通に歩けるので、「もし桟道が落ちたら」なんてことさえ想像しなければ大丈夫だ。
長いトラバースの最後は一枚岩を斜めに登る鎖場。ホールドは豊富なので鎖なしでも登れそうで、実際試してもみたが、スリップしたらシャレにならないので後半は右手を鎖に添えて登り切った。稜線に出るとやがて視界が開け、上信越道のアーチ橋を従えた浅間山が映える。その先はルートを外さないことだけに気をつけて、もう慣れっこになった岩場を次々と越えた。おかげで七人星や星穴といった奇岩には全く気づかず、惜しいことをしたが。
烏帽子岩の脇をトラバースしたら、ひと登りで風穴尾根の頭。振り向けばはるか遠く丁須の頭をはじめ、お世話になった裏妙義の岩峰が並んでいる。それらに別れを告げ、芽吹いたばかりのやせた広葉樹林をジグザグに下りて行けばやがて杉林となり、間もなく三方境に着いた。4人いた先客はみな並木沢コースへと向かい、一人巡視道を行く。
杉林を縫ってゆるゆる降りる道は面白味がないが、疲れの出てきた足には好都合。途中、全く難所もなく、1時間足らずで中木川の河原に出た。左岸沿いにも踏み跡はあるが、「下山はこちら」と示す道標が渡渉を促している。大した水量ではないものの、飛び石で渡るには少々気後れする程度には流れている。左岸伝いに道があれば、200ｍほど下流で籠沢コースに合流するはずなのだが。
それでも何とか沢に落ちずに石を跳び、御岳口から約6時間で無事に三方境口に帰着した。バーベキューを楽しむ家族であふれる国民宿舎前を通り過ぎ、妙義湖畔をひたすら歩く。国民宿舎から横川駅まで約5キロ、１時間ほどの道のりだ。のどかな農村地帯に出て、蔵を２つも持つ豪邸の鯉のぼりに季節を感じながら碓氷川の橋を渡ると、釜飯「おぎのや」のドライブインの喧騒に包み込まれた。
さて、これで本編は一件落着となるはずが、駐車場の手前で飛んだ番外編が待っていた。なんと車のキーがないのだ！ すべてのポケットを探り、リュックを探りしても出てこない。いつもキーはウエストポーチのポケットにしまっており、出発時に確かに入れた記憶はある。となれば、途中落としたとしか考えられない。
さあ、どうする。幸い金目のものは持ち歩いていたので、とりあえず電車で帰り、明日、合鍵持参で取りに来るしかない。それにしてもどこで落ちたのか。ポーチのポケットにはキーしか入れないので、山で開けることはない。駐車場か、その近くで落とした可能性が高い･･･。くよくよ考えながら、一縷の望みを託して朝歩いたルートを鉄道文化むらの端まで辿ってみたが、成果無し。後は交番に届いていれば助かるのだが。
駐車場に戻って松井田警察署に電話した。駅前駐在は出かけていたが、まだ鍵の届け物はないとのこと。失意のうちに遺失物届けを作成してもらい、電話を切った。万事休す。茫然自失の態でふと前を見やると、そこにはにぎやかな鉄道文化むらの入場券売り場があった。歩いたルートは文化むら駐車場の前を横切っている。「もしや」と、ダメ元で窓口の女性に「あのう、車のキーの落し物なんて届いてないでしょうかねえ」と切り出すと、得たりとばかり「良かった、どうされたのかと思っていたところなんですよ」という返事。
差し出されたキーは間違いなく自分のもの。くだんの女性が女神のように見えた。今度、鉄道文化むらに遊びに来よう。
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