巻機山(ラッセル大会)
- GPS
- 03:54
- 距離
- 9.0km
- 登り
- 999m
- 下り
- 980m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2024年03月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
念願の全日本ラッセル選手権第1回大会。
誰のラッセルトレースが
・芸術点、綺麗か ・技術点、後続者にも優しいか(ジグを切る回数など)
・その他、野生動物に辿ってもらえるか etc...
前夜祭で熱いラッセル談義を1時まで交わしたのち、
各々、体調不良という好条件のもとスタート。
最初の林道の後半は、帰りの効率を考えた挙句、
悔しいながらもワントレースにすることに。
ラッセルするにはじゃんけんに勝利するしかなかったが、私は敗北。
涙を流しながら先頭を譲ったのは生涯忘れないであろう。
その後の井戸の壁バーティカルラッセル競技もまた最高だった。
森林限界ホワイトアウトで競技終了。
下山は、今年一の極上コンディション。
ラッセル大会にはもれなく最高のご褒美がついてきます。
第2回は来年も開催予定です。
有志による巻機山でのラッセル大会、昨年2023年は雪不足のためラッセルどころか地面が出た中での開催となり、エアラッセルによるプレ大会との位置づけとした。今季こそ本大会の開催を心待ちにしていたが、1月はおろか2月になっても真冬らしい降雪がなく開催が危ぶまれる状況に。ところが3月に入って冬が土俵際での粘り腰を見せ、積雪深も右肩上がり、前日にもしっかりとした降雪があり好条件で本大会当日を迎えることができた。
昼頃からの天候回復を期待して(前夜祭が盛り上がりすぎて、とも言う)かなり遅めのスタートとなったが、平日でまだ雪も降り止まない中ではさすがに他の入山者なし。ラッセルの深さはせいぜい足首の上程度で深いとは言えないものの贅沢は言えない(斜登高時の雪の深さを表す際、斜面上方と下方では深さにかなり差があるため、下方側の深さをもってラッセル深とすることが前日協議により取り決められた)。
私とkaise氏の板はポンツーン(前者169cm、後者179cm)で、ビンディングはどちらもスピードラジカル。S氏はセンター112mmの長さ180cm程度の板にSTラジカル。ポンツーンのラッセルでの強さは、その太さによる浮力とともにロッカーの大きさによるトップの雪面からの出やすさが効いており、それに加えてテールが相対的に細めであることもトップが上がりやすい要因となっている。トップが浮くということはそうでない板よりテールが下がることになるので、ヒールリフターが低いと足元の傾斜が強く足首に負担がかかる。ということでリフターが高めのラジカルシリーズはポンツーンに適したビンディングだと考えられる。なお私のポンツーンは最初に付けたビンディングのリフターが低く登りにくかったため、現在のものに交換した際に数cm後ろにセットバックしたこともあり、余計にトップの上がりやすいラッセル仕様になっているのではないかと。そんな能書きは垂れてみたものの、足首程度のラッセルではさすがにポンツーンのアドバンテージもさほど大きくはないと思われ。
1人1トレースで3人並走したり、場所によっては1列になったりしつつ序盤は進む。kaise氏、S氏ともにハイパーな領域にある山屋さんであり当然ながら強い。良いペースでラッセルしながらも足を止める素振りも見せず、息を荒げる様子もない。勝負は駆け引き、トップの後ろについていろいろ話し掛けて消耗させようとするが効果なし。こちらがトップのときに苦しくなって足を止めると「隙あり」の言葉とともに抜き去られる。ラッセルを奪われた悔しさに「ラッセル泥棒め!」と叫ぶのが精一杯。
井戸の壁はラッセルの総合力を競うのに格好の舞台である。井戸の壁バーティカルと称してそれぞれ独自のラインで5合目を目指す。今季一番の積雪量に喜びを隠せず斜面いっぱいを使って気持ちよくトレースを伸ばす者、直登が自分の信条だとジグを切らずに登る者、3本の自由なトレースが刻まれていく。
ラッセルはそのライン取りやジグの切り方、雪質や地形やヤブへの適応の仕方などに力量が現れ、後続者はそれを見て先行者が何者であるかを推し量ることができる。無駄なく美しいラインや絶妙で一定した勾配、必要最小限のキックターンを見るにつけ、これは強者に違いないと思わされる。ただし技術や美しさだけではない何かが現れるのもラッセルのトレースである。それはトレースの主の人柄やその時の気分のあり様であり、それぞれが雪山の自由を噛みしめた手応えがまっさらな雪面に残される。そのトレースは後続の誰かに利用されることもあれば、誰の目にも止まらずに、やがて風や降雪によって掻き消えていく一時の儚い自由の痕跡とも言える。同じ山でもラッセルのトレースに全く同じものはない一期一会の行為であり、今日この日この場所でしか生まれない(by上原ひろみ)時間的かつ空間的な表現行為とも言えるだろうか。それが我々がラッセルに全身全霊を傾ける一つの理由かもしれない。
普段はそれぞれ単独でトレースを刻む者達が会して励むラッセルには、何かしらの相互作用が生じるのかもしれない。いつもとは違う感じのラインを狙ってみたり、リズムに変化を持たせてみたり、今までにないライン取りが見えてきて楽しい(具体的には、負けないように高度を稼ごうと斜度を上げてズルズルしたり、直登を妨害しようと前方に回り込んだり(→スポーツマンシップに反するため却下))。
それぞれがソロを取りながらも時に調和を見せ、時に不協和音を奏でるラッセルセッションはこの日の大きな収穫だった。3本のトレースは5合目で1箇所に収束し、ついに美しき融合を迎えるかと思われたが、まとまることなくまたそれぞれの方向へ離散していった。kaise氏はラッセル競技の採点指標の1つとして男気という要素を提案していたが、それと同じものを私が言うならば「ラッセルは強がりと痩せ我慢」ということになるかも知れない。
白熱したラッセル大会も7合目で視界がなくなり終了。滑降は採点対象とはならない。kaise氏の先輩も合流して4人で素晴らしい雪を堪能しながら下山。井戸の壁のヤブもだいぶ埋まって爽快な滑りを各々楽しんだ。我々以外に入山者はおらず、登りのトレースがツボ脚でボコボコになることもなく、一切の苦労なく入山箇所まで戻った。
ただし、最後まで快適さしかないというのは巻機山らしくないとも言える。晴れた日であれば冬であっても、下山時には下部の雪は腐り始めて重湿雪に苦労するのが常であるはずなのだが。
「巻機のMはマゾヒストのM。深雪ラッセルに喘ぎ、腐った深重湿雪の滑降に悲鳴を上げ、やがて恍惚(トランス)状態に陥っていく。それが、トランス・マキハタ・ラッセル・レース(TMRR)」これは事前に提案した大会趣旨であるが、今回は楽しく気持ち良いことばかりで、辛さがほとんどなかったという点で、若干の心残りがあるのもまた事実と言えようか(きっと他2人も同意するに違いない?)。
これは強力なライバル出現!(笑)来年はぜひよろしくお願いします。
駄文を読んでくださりありがとうございます!ラッセルはやりがいがあって楽しいですね(笑)
年始までの藪に閉口して今年は巻機を避けていましたが、もう1降りするならぜひ行ってラッセルしたい!と思わせる熱い記録でした。
当日は今季一番の積雪量だったと思われ、ヤブも障害にならない感じでした。
ヤブラッセルもやりがいありますが、来季はしっかり積もってもらいたいですね。
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