八海山(熱中症遭難)


- GPS
- 08:02
- 距離
- 18.0km
- 登り
- 1,400m
- 下り
- 1,709m
コースタイム
- 山行
- 6:33
- 休憩
- 1:24
- 合計
- 7:57
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口に登山ポストあり。鎖やロープが豊富でよく整備されているが、灌木帯は藪が登山道を覆っている箇所がある。 |
写真
感想
結論から書きますと、下山中に熱中症のため自力下山が困難になり県警ヘリで救助されました。
新潟県警察、南魚沼消防の方々、南魚沼市民病院の方々には心からお礼申し上げます。感謝してもしきれません。
二度と同じ過ちを繰り返さないよう、当時の状況を記録します。
前日20時頃、千葉県の自宅を出発。
・夜勤明け休みの為、日中は概ね睡眠。
2時15分 六日町のコンビニで食料と飲料を補給。
2時50分 屏風道二合目登山口着。軽く夜食(スパゲティ、塩分4.6g)と仮眠。
4時45分 起床
5時10分 登山開始
・この時点で、ソルティライチ0.2ℓ、スポーツドリンク0.5ℓ、きりっと果実0.6ℓ、天然水系飲料0.54ℓの計1.84ℓで入山。
6時00分 清滝分岐に到着。休憩。
・水場(屏風沢)で水を飲み、0.5ℓを補充。
8時00分 ノゾキの松(七合目)到着。休憩。
・登山口から汗をかいていたが、調子は悪くない。山体の陰となり、止まると涼しい。
・ここでゼリー飲料(180g)を1袋摂取。ミネラル補給(カリウム56mg、塩分0.2g)
・梅雨時期のため湧水があり、0.5ℓほど飲み、0.5ℓを補充。想定よりも水の消費はやや多かったが、このおかげで小屋での補給は不要と判断。
8時50分 千本檜小屋到着。休憩。
・ノゾキの松付近から時々日差しが当たるようになる。呼吸がいつもより浅く感じ、息があがる。少しクラっとくる。意図して深い呼吸を心がける。先日の甘利・千頭星山登山でも似たようなことがあり、体力の低下と認識する。が、ここで引き返す判断は難しい。屏風道は下山禁止のコースである。
・薬師岳を空身で往復し、休憩。稜線は風速5m/s前後で風がある場所は涼しく、まだ食欲もあり、ポテチ菓子(塩分0.3g)とたらこおにぎり(塩分1.4g)を食べる。
10時30分 八海山大日岳登頂。休憩。
・稜線は気温19℃、風速5m/s程度で快適。日の当たる鎖や岩は40~50℃ぐらいに過熱されていたが、ほぼ暑さは感じず、汗もかかなかったように思える。よく寝ている間の扇風機で脱水症状、というのがあるが、そういう仕組みは働いていたのかもしれない。
・鎖場は久々(去年10月の鶏冠山以来)で、数も多く最後の山頂直下の下りでは腕や指に疲労を覚えた。
11時20分 入道岳到着。休憩。
・入道岳への登りで風が吹かない場所が続き、暑い。ゆっくり進むが、息が苦しい。暑さには弱い自覚はあり、いつも顔を赤くしてゼーゼーハーハー言いながら登っている。ただし、今回は感じる暑さのレベルに比べて、息苦しさが強い感じがした。ほんの少し、指がチクチク感じた。軽い酸欠かなと思い、呼吸を整える。あとは下るだけである。
・スポドリを飲み始める。この時点で残り1.0ℓ程度。下り基調が続き、2時間ほど下れば水場があるため、足りると考える。
12時00分 巻道、新開道分岐。休憩。
・休むことが多くなる。足の汗で靴が不快で、脱いで少し乾かす。(Xのフォロワーさんの熱中症撤退投稿を思い出す。大量発汗が前兆と言うことだった。自分はそこまで汗はかいていない感じで、ほんの少し頭が痛い程度。脚の異常もない。予定通り新開道からの下山を開始。
12時20分 新開道最上部
・へつり箇所や急な段差が多い。そして灌木帯で日影がない。風は微風、熱気がこもり、気温は30℃に達した。それに反して、少しの風でも涼しく感じ、「良かった。意外と暑くないぞ」と思った。今考えれば悪寒のようなものだったのかもしれない。
12時30分 新開道標高1520m付近 罹患
・急に来た。昔、登山を始める前、電車に間に合わせるために走って酸欠失神したことが一度ある。その時と同じく、血の気が引いていく感覚をおぼえる。「あ、倒れる」と思ったがこんな灼熱地獄で倒れるわけにはいかない。気張る。幸い木陰になっている箇所があり、そこにへたり込む。
スポドリをがぶ飲みし、休めばよくなるだろう。と思ってスマホを触ろうとするが、指がいうことをきかない。みるみるうちに両手の指はピンとそり返って硬直してしまう。
12時35分 救助要請
・これはまずい。せめて、状況だけでも伝えなければ…と思い、110番通報を決意。「事故ですか、事件ですか?」「山岳遭難です」というやりとりを、自分のためにするとは思わなかった。画面に落ちた汗ですぐに切れてしまう。動かない指で難儀しながら汗を拭き取り、もう一度かけ、状況を説明。
口元もしびれて呂律が回らず、八海山が言えず「ひゃっかいさんの…」「百戒山ですか!?」というやり取りは笑い事ではないが、笑ってしまった。老人かと。
しかし人と話していると安心する。少しづつ症状が緩和してきて、普通に喋れるようになり、ヤマレコを見つつ緯度経度を伝え、「そこから動かないで下さい」という通りにした。バッテリーの有無と水の有無をよく聞かれた記憶がある。
12時53分 救助。
・待っている間、ブヨに噛まれたり、どうやって助けられるのかと考えたり、最悪自力下山になるから、日が暮れて涼しくなるまで長いなあ、小屋の人が水持ってきてくれたら耐えれそうだなあなどと考えていたら南魚沼消防から連絡が入る。
・「ヘリの音が聞こえませんか?」
そういえばさっきから聞こえている。そんなGTAじゃあるまいしそんな救助ヘリなんてすぐに…
「近くにいた県警ヘリが救助に向かっています」
たまげた。通報の電話を切ってから10分ぐらいしか経ってない。こんな軽症で(通報時点は死にそうだったが)申し訳ない感が押し寄せる。
荷物をまとめ、よく見える場所に移動。
ヘリが近づく、強い風が吹き、思わず灌木を掴む。
隊員が下降し、着陸。こんな急斜面に降りれるんだと驚く。ヘリは少し離れ、風が弱まるが音が凄い。「○○さんですか!」「はい!」「怪我はないですか!」「はい!」というやりとりをして、ベストのようなハーネスを着て、吊り上げられる。
ポケットの中のものや眼鏡は、落下の恐れがあるためザックの中に入れるよう指示される。
隊員と2人同時に上がる。そのためか、全く怖さを感じない。凄い。
ヘリの中でOS1を一本一気飲みさせてもらう(させられる)。ひたすら感謝。住所や氏名を書くが指が震えてほとんど書けなかった。
消防署にヘリは降り、そこから救急車で市民病院へ搬送。歩ける状態なのに申し訳ない気持ちだった。警察官も、救助隊も終始優しかった。バタバタしてちゃんとお礼ができなかったので、今度お礼をしに行きたい。
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原因は脱水(脱塩、脱ミネラル)という診断。
腕や手の筋肉のこむら返り、一時的な熱失神が中心の症状だったので、熱中症としては"軽症"ということになる。
・ALTや尿酸値が50IU/L、8.7mg/dlとやや高い
・マグネシウム1.7mg/dl、カリウム3.5mg/dlとやや低ミネラル傾向。
・CKやWBCは基準値より高かったが、特に問題ないらしい。運動後で疲れている時の数値だった。
ただ、いつもの山行に比べて摂取した水が足りなかったとか、塩分が足りなかったということはない。
※この日の塩分摂取量はおよそ7.5g(成人男性の1日摂取量目安は7.5g未満)、水分は3ℓほど。
暑さ慣れ、暑熱順化の不足により、脱塩が加速したり、自律神経が対応できなかったり。というのが大きいと思う。
https://www.netsuzero.jp/learning/le15
今年の梅雨時期は苗場山や山梨の甘利、千頭星山には行っていた。いずれも今回よりは気温が低かったり、雲がかかったりで暑い状態にはならなかった。普段の生活でクーラーに頼り切り、汗を流すことをせずにこうした山行をしたことが、最大の原因のように思う。5月ExW Tokyo100の足首の捻挫からの安静による根本的な体力不足もあった。
遭難予防に一番効果的なのは自らの体の力を高めることと考えているが…
塩分タブレット、OS1はこの時期、必携品になってきているかもしれない。いつもは大丈夫でも、ふとしたきっかけで熱中症は起こる。
装備、体力、双方に過信は禁物で、どちらも備えておく必要があることを再認識した。
p.s
ヘリ搬送時の体温は36.9℃
体温を上げないように心がけましたが、脱水症状は平熱でも起きるので注意が必要ですね。
いつもX見て「鉄人」と思っていたのでビックリしました。やはり過信は禁物ですね。自分も気をつけます
暑熱順化の重要性を感じますね
後遺症もなかなかつらそうですね。お大事にしてください
貴重なレポート、ありがとうございます。ご無事で本当に良かったです
自分も直近の山行で違和感を覚えることがありました。
たまたま低山だったのでエスケープできましたが、今思えば紙一重だったかもと思います。
報告ありがとうございました。
今後もお互い気をつけていきましょう!
ご無事で何よりです。
準備も万全で、経験や体力技術もある方でも、この様な事態になってしまった。
又、余り前兆がなくいきなり熱中症に陥ってしまった事に驚きました。
貴重なレコをありがとうございました。
私はあまり水分を取らずに、登ってしまうので見直します。
後遺症の回復を祈ってます。
御無事で生還できて何よりですね・・・・・。can(交代勤務経験者)
熱中症になった大きな原因は
「夜勤明け休みの為、日中は概ね睡眠。2時15分 六日町のコンビニで食料と飲料を補給。
2時50分 屏風道二合目登山口着。軽く夜食(スパゲティ、塩分4.6g)と仮眠。
4時45分 起床 5時10分 登山開始」
と上記にあるように睡眠不足にあるのではないでしょうか?
医療のサイトを見ると、水分、塩分などの摂取のほかに、からだの状態
として
「激しい運動などにより体内でたくさん熱が産生された
暑さにからだが慣れていない
疲れや寝不足、病気などで体調がよくない」などがあげられています。
私も寝不足で山に登り、途中で下山した経験があり、寝不足は侮れません。
救助までの記録を共有していただいてありがとうございます。
ご無事で何よりです。
経験豊富な方でも、このような症状になり得るということが、とても参考になりました。
今後の登山の参考にさせて頂きます
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