まさかのアイスクライミングデビュー★赤岳鉱泉アイスキャンディ体験会
- GPS
- 32:00
- 距離
- 12.5km
- 登り
- 740m
- 下り
- 732m
コースタイム
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
新宿方面→JR茅野茅野駅 中央線各駅 JR茅野茅野駅→美濃戸口 バス ■帰り 美濃戸口 JR茅野茅野駅バス JR茅野茅野駅→新宿方面 特急あずさ |
コース状況/ 危険箇所等 |
アイスクライミング体験会の参加料は テント泊2000円・小屋泊まり1000円、保険料410円(保険に入っていなければ) アックス、ヘルメット、ハーネス、アイゼンは無料でレンタル可能。アイゼンのつく冬山登山靴とウェアだけでもOK もちろんロープは不要。ビレイ(ロープで吊ってもらう)をしてもらえるので一人でも参加可能だ。 |
その他周辺情報 | アイスキャンディ体験会の後にミニイベントのマムートビーコン体験会に参加した。無料の体験会とはいえ、教科書に書いていないような現場での使い方がレクチャーされ、フィールドで実体験ができる。買ったけど教科書しか読んでいない人にはオススメ。後で自分で練習する必要があるが、その事前準備として充分だ。マムートストアの机上講習会を別途受けることを勧められた |
写真
装備
個人装備 |
ベースレイヤー
フリース
ソフトシェル
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
インサレーション
ゲイター
ネックゲイター
ニット帽
靴
ザック
チェーンアイゼン
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
テルモス
地図
コンパス
計画書
ヘッドランプ
スマートフォンGPS
予備バッテリー
筆記用具
保険証
時計(高度計)
サングラス
ストック
カメラ
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共同装備 |
レジャーシート
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ツェルト
スコップ
ガス
バーナー
コッフェル
カップ
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感想
■予言者あらわる
昨シーズンに冬用のシュラフを買いに登山用品店に行った時のことである。その頃は、スノーハイクに産毛が生えたようなレベルの冬山しか経験しておらず、厳冬期に命を危険を晒してまで本格登山やクライミングするなど、露ほどにも思っていなかった。ああいったものは、特別な人達が人生賭けてやるような特殊な趣味だと思っていたので、「雪山はせいぜい残雪期くらいまでですよ」なんて、店員と話をしていた。
しかし、その店員は驚くべきアドバイス?を授けてくれたのである。
「どんどん危ないことをしたくなってきますから」
え"ーーーー((((;゜Д゜)))))))
登山用品店で初めて雪山装備を買うときに店員と相談をすると、ほとんどの場合、根底に安全の二文字が潜んだ話になる。「お前、本当に大丈夫か?」と遠回しに諭す店員もたまにいるし、中には私の持っている買い物の内容と全く関連性のない装備を聞き出してチェックしてくれる者までいた。なのでこのような後押し系アドバイス?はかなり想定外だった。「こいつは危険を好む匂いがする」と思われたのだろうか?思い当たる節があるとすれば、そもそも冬用のシュラフを買いに行っている時点で既に「ヤマバカ」と顔に書いてあったことだろう。
かくして、その店員の予言は見事に的中することになる。その3ヶ月後にはツアーではあったが2月の悪天候の赤岳の山頂に立ち、今シーズンは厳冬期登山が当たり前になった。そして挙句の果てアイスクライミングにまで手を出すようになってしまったのだ。はたまたから見れば、危ないことをしたがっている様にしかみえないだろう。
もちろん好き好んで危ないことをしたいわけではない。雪山はフィールドの選択肢が少ないので、ある程度強制的にステップアップを強いられるのは仕方がないところがある。すると必然的に魔性とも言える雪山の光景に取り憑かれてしまい、ステップアップが加速してしまうのだ。
■クライミングとの再会
ちなみにクライミングについては当時全く興味がないどころか、トラウマだった。以前会社の人に誘われBampFilmFestivalというアウトドア系の映画祭に行き、アシマ・シライシという天才少女クライマーのドキュメンタリー作品を観た。クライミングが楽しくて楽しくて仕方がないと言う女の子の様子を描いたシンプルな内容なのだが、そんな小さな少女の純真に、30過ぎの野郎どもはみんな触発され、「よし、俺たちもやるぞ!」とボルダリングをやることになった。仲間が気合いを入れてProjectと言う名のあるジムを探してきたので行ってみた。
しかし、みな楽しそうに登り成長していく中、私は初心者コースでも腕がプルプル震え、ポトリと落ちてしまう。何度か行ったが成長の見込みもなく、仲間からは「センス無いよね」と言われる始末。「俺は水平移動専門なんだ」とヘソを曲げ、その後通うこともほぼなかった。しかし運命というものはわからないもので、そんな苦手なクライミングが復活するキッカケが訪れてしまう。
昨シーズンGWの奥穂高に登ろうと計画した時のことだ。傾斜70度の雪壁を安全に登下降する技術が不足していることが発覚し、蝶から燕に縦走する計画に渋々変更したのだが、来年までに「技術」を身につけ、再チャレンジすることを固く誓う。
雪山技術を身につける上で手っ取り早いのは山岳会に入ることだと聞くが、自分は6年ワンゲル部だったので集団行動はもう充分。しかしだからと言って技術を身につけたら「ハイサヨウナラ」というわけにもいかない。他の施策は無いものかと調べたところ、雪山に効くと言う岩登りの講習会というものを見つけた。
「まさにこれだ!」と解決の糸口の発見に喜んだのもつかの間「ん⁈岩登り=クライミング?」と過去のトラウマが頭によぎる。でも「岩登り」と言う響きもなんだか優しそうに聞こえるし、講習だし大丈夫だろう。穂高の誓いを果たすにはやるっきゃない。と思い切って申し込むことにする。当初は相棒と二人で参加する予定だったが、先の縦走で思いっきり岩を蹴ったのがたたり、親指の爪を丸ごと剥いでしまったので、私一人で参加することになった。
■試練の岩登り講習会
ガイドさんは元航空自衛隊の女性で、一体どんな怖い人が出てくるんだろうとドキドキしたが、可愛らしい手帳を広げているのを見て、ああ普通の人でよかったと思った、、、が甘かった。
レンタルした靴が足あわず、結構痛かったのもあるが、高所恐怖症気味の私にとって外岩は恐怖であった。足場のあるかないかの垂直に近い岩壁で、つま先立ちするなど、臨死体験以外の何物でもない。「ロープが付いているから大丈夫なので、思い切って足を出して!」と指示されたがその一歩が怖すぎる。登ることも降りることもできず、岩壁にへばりついて動けなくなっている者を業界用語で「セミ」というが、まさしくその状態だった。ただ、セミは6本も足があるのでグリップ力は違うと思うが・・。墜落する覚悟でいざ足を「おりゃ」と出したらやっぱり墜落し、ロープがピンと張って止まり、そのまま岩壁に正面から衝突した。
懸垂下降もなかなかであった。高さ10mくらいの壁の頂上で、体を後ろ向きに倒して降りるのだが、映画などで悪役がビルの屋上の縁から、仰向けに倒れてながら落ちていくようなシーンさながらである。死ぬ体勢で感じる高度感は半端ではなく、なかなか体を倒せず下降できない。そこに「もっと倒して!もっと!もっと!」と、無情な指示が飛ぶ。最後、自分は死ぬと覚悟を決めて体を倒したら、体重がかかりなんとか下降し始めた。人間死ぬ気になればなんでもできるというのは本当である。しかしその後、降下の途中でバランスを崩し、体が左右に揺られ岩に側面からぶつかった。そして指導をシャワーのごとく浴びて一日が終わった。
帰りの車の中で、足の形が特殊だから靴はちゃんと買うこと、最低でも週に1回はジムに通ったほうが良い。自分もはじめはセミだったがジムに通って上手くなったとアドバイスを受けた。四人の参加者がいたが、私は課題の半分もこなせず、またもや置いてかれてしまった。
■出来ないには理由がある
しかし不思議な事に、今回はなんかやれそうかも!と思えるふしがあった。正確には、なんか原因があって出来ていないという「できない理由」が見えたような気がしたのだ。実はそのガイドさん教え方が上手いことで有名で、強烈な学術的指導をシャワーのように浴びせられたことにより、突破口に気づけたのだ。
まずは靴から対策した。自分の"特殊な足"に合わないレンタルシューズは諸悪の根源である。会社に詳しい人間がいたので、カラファテという都内でも有名な店を紹介してもらった。いいものを買うには経験豊かな店員に聞くのが良い。"ひげの生えた、いかにもなおじさん"がいたので、捕まえて靴を合わせてもらったら、あれよあれよというまにピッタリの靴が見つかった。後で知ったのだがヤマケイなどによくでているジャック中根さんその人であった。達人にあわせてもらったマイシューズがあると、登れるようになった気分になるものである。
次はジムである。会社帰りに通える広い施設を探して入会した。以前Projectというジムに行ったことがあると言ったらすごく驚かれ、あそこはジムのトレーナーが行くようなところで、難易度が高いといわれた。私はそれを聞き「できなくて当然であった!」と開き直る。全く調子のいいものだ。そのジムは登りやすい壁だったこともあり、教わったことを思い出しながら登ったら簡単にクリアしたので、せんべいのように平らに打ちのめされていた自信が普通にもどった。
■誰にでも春は訪れる
その頃は夏山で忙しかったのでジムに2-3回通っただけで、10月くらいまで途絶えていた。しかし雪山に備えないといけないという話になり、相棒と2人でまたジムに通うことにした。剥がれた爪も再生したのでちょうど良い時期だった。さらに将来的にロープを使うようになるだろうと、ボルダリングでなくトップロープに挑戦してみた。(あらかじめてっぺんにロープを引っ掛けておいて、クライマーを常時吊るし、高いところまで登るやつ)
これが大正解だった。トップロープはスラブ壁(垂直より緩い角度)が多く、手掛かりや足がかりが大きいので登りやすい。ボルダリングに比べて登坂距離が長く、体力がいるため、やや甘いのである。ただスラブはその反面、重心移動が難しい課題が多い。後で実感したことだがこれはアイゼン歩行の重心移動のスキルに直結する。
よく雑誌や技術書を見ているとアイゼンの足の動かしかたばかり目に行ってしまうが、それだけでは不十分である。足にどう重心を乗せ、どう移動させるか?そのためにはどのように上体を動かすか、ピッケルを何処にどのくらいの角度で突くのか。そこまでやらないと歩行は完全には安定しない。
例えば、特に急な斜面をアイゼンで爪先で歩くとき(フロントポイント)、足に斜め方向に力をかけてしまうと滑りやすいので、なるべく真上から適切なタイミングで体重をのせてゆく必要がある。そのためには足に体重をかける角度が定まるまで軸足に体重を残し、さらに安定させるためにピッケルを軸足側の雪面に刺してバランスを取るようなことをする。他にもいろいろあるが、こんなことを言葉で説明されてもわからないし、現場で実体験しないとなかなか身につかない。唯一クライミングの重心移動はかなり近しい技術(応用編)になるため、そこが岩登り・クライミングが雪山に効くという所以だと私は理解している。
月に3-4回くらいのペースで、山に行けない雨の日や会社帰りにトップロープやボルダリングをやっていたら、あれよあれよとグレード(級)が上がり、「クライミング楽しいじゃん」と思えるようになった。頭を使って身体でパズルを解いていく感覚が面白いのである。そしてさらに嬉しいおまけがあった。自分は高所恐怖症(ぎみ)だと思っていたが、知らぬ間に高いところが平気になってしまっていたのだ。慣れもあるが、バランスがきちんと取れるようになったからだ。
その後、先のガイドさんの教室の別コースで初級雪山講習を受けたのだか、アイゼン歩行の講習の際、クライミングのあの動きをこう使えばいいという「結びつけ」だけで済んだのでアッサリと出来てしまい、しかも「バッチリです」と褒められた。雪山に岩登りが効くとはこういうことだっんだという実感と、技術が身についた(身についていた)という感触を得た。
■まさかのアイスクライミングデビュー★
冬季赤岳登山の計画を立てた時、今の技術があればアイスキャンディ(赤岳鉱泉にあるアイスクライミング練習用の人工氷瀑)がひょっとしたらできるじゃないの?とふと気づいた。アイスキャンディはトップロープである。みんな楽しそうだし、天気が悪くて赤岳に登れない時でも遊べる。しかもアイゼンワークの定着化にも繋がるからいいんじゃないくらいの軽い気持ちだった。
私の脳内計算だと、「アイゼンワーク」+「トップロープクライミング」=「アイスキャンディ」チーン!である。鎌のようなアックスを振る部分が足りないと言うツッコミもあるが、まぁやっていればなんとかなるだろうと思い、赤岳鉱泉の受付で「やったこと無いけどできますか?」とストレートに聞いてみた。案の定、困った顔で「トップロープやってるなら大丈夫だけど、ムーブ(身体の動きのパターン)が違いますよ」とアッサリ打ち返された。まぁそりゃそうだなということで、まずは体験会に参加することになったのだった!!!
しかし、まさか自分がアイスクライミングデビューをするなど全く夢にも思っていなかった。人生というヤツは全くもって予想のつかないものである。実際やってみた感想だが、良い。非常に良い。白い氷壁を透き通るような青空に向かって、登っていくと言うそれだけの行為は、純粋でなんと気持ちのいいものか!下からの「どうですかー!!!」という問いかけに思わず「サイッコーーでーす!!」と叫んでしまったのはあながち学生時代の悪ノリでもなかった。
■これから
あずさの回数券を買い、ロープ等の装備も一式揃っているので、今シーズンは何度か遊びに行こうと思っている。鉱泉の人もぜひやって下さいと言ってくれた。
最近では今年の夏はジャンダルムに行こうかとか、キレットに行こうかとか、相棒と危なげな会話をしているが、今の技量ならあながち手の届かない話でもない。先の雪山講習の時などは、ガイドさんにGWに奥穂に行くくらいなら劔に行ったほうがいいと言われてしまった。誓いの目標をちょっと通り越してしまっているのかもしれない。
来年、再来年は自分はいったい何をしているのだろうか?あの「予言」の賞味期限が切れないのであれば、きっと想像できないようなことをしているんだろう。いずれにせよ楽しみの選択肢が広がり、いろいろなことにチャレンジできる今があることは素晴らしい限りだと思う。
■お世話になった講習会や施設
最後にお世話になった講習会や施設を紹介する。参考になれば幸いである。
・赤岳鉱泉
言わずと知れた南八ヶ岳のベースキャンプとなる山小屋。アイスクライミング練習用の人工氷瀑は有名で、かなり良心的な値段で利用することができる。専用アイゼンやアックスのレンタルも可能で体験会や講習会も充実しているため、興味とやる気さえあれば、私のようにな無駄な苦労せずとも気軽に始めることができる。
・ミキヤツ登山教室
個人で登る登山者向けに雪山やクライミングの技術を教えてくれる。赤岳以上の雪山に登る人におすすめ。雪山初級コースは成功率の低い滑落停止より、そもそも滑落しないための極めて精度の高い歩行技術を習得することがゴールとされている。的確かつ論理的なわかりやすい指導は非常に手厚く、その評価は高く人気がある。なかなか空きがないのがネックだが、ホームページでキャンセル情報が出ていることがあるのでチェックするとよい。
・BASE CAMP
クライマー平山ユージ氏オーナーのクライミングジム。ボルダリングとロープクライミングができる。これでもか!と言うくらい緻密に考えられたルートは、登るだけでテクニックが覚えられるように設計されているため上達し易い。(壁に導かれている感じがする。)家族連れも多く、初心者でから熟練者まで楽しめるレベル設定も嬉しいところだ。最近BASE CAMP TOKYOというボルダリングのみの施設ができた。
・T WALL 江戸川橋店・錦糸町店
都内でボルダリングとロープクライミングができる貴重なクライミングジム。なぜか年齢層が高く、山やってるぽい人が多くて親近感があるので入りやすい。なお江戸川橋店は、ボルダリングエリアのスラブ壁が広いので、1人でも重心移動の基礎を身につけ易い。
・カラファテ
クライミング用品店。その品揃えはかなりのもの。経験豊かな(達人級!?)スタッフのアドバイスは非常にありがたい。
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