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Yamareco

記録ID: 887534
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
飯豊山

【薮山レコ】湯の平〜実川山〜大日岳〜北股岳 (飯豊川源流域環状縦走)

2007年10月05日(金) 〜 2007年10月07日(日)
 - 拍手
GPS
56:00
距離
31.1km
登り
2,903m
下り
2,907m

コースタイム

1日目
山行
10:10
休憩
0:30
合計
10:40
6:35
45
スタート地点
7:20
7:30
230
飯豊川渡渉
11:20
11:30
140
二ツ倉(1188m)
13:50
14:00
195
マグソ穴峰の北肩
17:15
宿泊地(キンカ穴峰先)
2日目
山行
10:40
休憩
0:50
合計
11:30
5:50
195
宿泊地(キンカ穴峰先)
9:05
9:10
65
10:15
10:20
90
11:50
12:20
220
御西小屋
16:00
16:10
70
17:20
宿泊地(中峰)
3日目
山行
4:50
休憩
0:45
合計
5:35
3:10
160
宿泊地(中峰)
5:50
5:55
35
鳥居峰
6:30
7:10
95
8:45
ゴール地点
参考文献
 「岳神 第12号」新潟峡彩山岳会
     〜飯豊山系地域研究 烏帽子山周辺夏山合宿
 「越後の山旅」藤島玄著
 「秘境の山旅」大内尚樹 編
     烏帽子山 〜主稜線から離れた密薮の城塞〜 若林岩雄 著
天候 晴れのち雨
過去天気図(気象庁) 2007年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
コース状況/
危険箇所等
飯豊川〜オーサンカイ尾根〜西大日岳は登山道の無い区間
飯豊川流域環状縦走のルート(3D)
(元サイズ→拡大)
3
飯豊川流域環状縦走のルート(3D)
(元サイズ→拡大)
【1日目】
岩越平少し先のガレ場より望む飯豊川とオーサンカイ尾根末端部。
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【1日目】
岩越平少し先のガレ場より望む飯豊川とオーサンカイ尾根末端部。
ガレ場は沢筋からなんとかロープ使わずに降りれた。ガレ場の上に登山道が通っている。
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ガレ場は沢筋からなんとかロープ使わずに降りれた。ガレ場の上に登山道が通っている。
飯豊川本流の渡渉地点(パノラマサイズ)。水量の減る秋が渡渉に最適。尾根先端部(右)ほど岩崖になっているので取付けそうな斜面から這い上がる。
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飯豊川本流の渡渉地点(パノラマサイズ)。水量の減る秋が渡渉に最適。尾根先端部(右)ほど岩崖になっているので取付けそうな斜面から這い上がる。
尾根上はうっすらと踏み跡が続く。ブナの幹には先人達の切り付け有。
尾根上はうっすらと踏み跡が続く。ブナの幹には先人達の切り付け有。
対岸に鳥居峰が同じ高さに見える。その背後は北股岳。
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対岸に鳥居峰が同じ高さに見える。その背後は北股岳。
鳥居峰の手前には湯の平山荘が真下に見える。
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鳥居峰の手前には湯の平山荘が真下に見える。
踏み跡は地形や高木の有無で明瞭になったり薮に覆われたり。
踏み跡は地形や高木の有無で明瞭になったり薮に覆われたり。
オーサンカイ尾根上部を望む(パノラマ)。1188m越えるあたりから薮が優勢になる。
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オーサンカイ尾根上部を望む(パノラマ)。1188m越えるあたりから薮が優勢になる。
徐々に対岸のオーイン尾根から離れていく。
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徐々に対岸のオーイン尾根から離れていく。
1188m(二ツ倉)付近から登ってきたオーサンカイ尾根を振り返る。
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1188m(二ツ倉)付近から登ってきたオーサンカイ尾根を振り返る。
独特のオーラを漂わせる秘峰、烏帽子山。烏帽子山の右下に見える小突起を拡大すると↓
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独特のオーラを漂わせる秘峰、烏帽子山。烏帽子山の右下に見える小突起を拡大すると↓
山腹を貫通する穴がある。「岳神」や「秘境の山旅」に記述有り。飯豊の不思議。
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山腹を貫通する穴がある。「岳神」や「秘境の山旅」に記述有り。飯豊の不思議。
二ツ倉から望む、大日岳〜烏帽子山の稜線方向、地形が複雑。
二ツ倉から望む、大日岳〜烏帽子山の稜線方向、地形が複雑。
二ツ倉の先の鞍部から薮を避け、ホウジョウ沢へ入渓。
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二ツ倉の先の鞍部から薮を避け、ホウジョウ沢へ入渓。
小規模だが廊下状の地形が続く。
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小規模だが廊下状の地形が続く。
水量は少ないが小規模なゴルジュや小滝が現れ変化に富む。沢登りの対象となる沢であり、水がきれい。
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水量は少ないが小規模なゴルジュや小滝が現れ変化に富む。沢登りの対象となる沢であり、水がきれい。
小滝を越えて振り返る。幅が狭いので直登。
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小滝を越えて振り返る。幅が狭いので直登。
沢は折れ曲がり右から滝となって落ちている。
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沢は折れ曲がり右から滝となって落ちている。
滝を上がると連瀑帯へ。
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滝を上がると連瀑帯へ。
さらに上流も小滝と釜が続く。
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さらに上流も小滝と釜が続く。
自然の造形美、棚状になった釜。
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自然の造形美、棚状になった釜。
ようやく源流部の雰囲気に。
2
ようやく源流部の雰囲気に。
ドーム型の烏帽子山が大きく見える。
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ドーム型の烏帽子山が大きく見える。
源頭部に近づくと開けた草付きの斜面が現れ、最後は薮のトンネルを突破し稜線へ。
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源頭部に近づくと開けた草付きの斜面が現れ、最後は薮のトンネルを突破し稜線へ。
マグソ穴峰の北の肩で稜線に上がる。飯豊独特の潅木の密薮に覆われている。
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マグソ穴峰の北の肩で稜線に上がる。飯豊独特の潅木の密薮に覆われている。
稜線の最低鞍部付近は尾根が広がり一面の笹原。ここはまだ腰くらいの丈。(元サイズあり)
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稜線の最低鞍部付近は尾根が広がり一面の笹原。ここはまだ腰くらいの丈。(元サイズあり)
振り返ると岩峰のマグソ(馬糞)穴峰とその奥に烏帽子山が望まれる。
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振り返ると岩峰のマグソ(馬糞)穴峰とその奥に烏帽子山が望まれる。
この先、登り勾配になると背丈を越える笹・根曲がり竹の薮。進行方向さえ分からなくなる。最も苦労した区間。
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この先、登り勾配になると背丈を越える笹・根曲がり竹の薮。進行方向さえ分からなくなる。最も苦労した区間。
キンカ(金華)穴峰への登り。笹に潅木混じりで腰〜胸程度の丈でまだマシ。
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キンカ(金華)穴峰への登り。笹に潅木混じりで腰〜胸程度の丈でまだマシ。
メッケ穴沢の左岸尾根(薬師岳の西南西尾根)。会津盆地まで望まれる。
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メッケ穴沢の左岸尾根(薬師岳の西南西尾根)。会津盆地まで望まれる。
夕方になりガスが取れ薬師岳のピークが見えてきた。
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夕方になりガスが取れ薬師岳のピークが見えてきた。
金華穴峰より、登ってきた稜線を振り返る。烏帽子山まで薮の稜線が果てしなく続いているようだ。
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金華穴峰より、登ってきた稜線を振り返る。烏帽子山まで薮の稜線が果てしなく続いているようだ。
北股岳方面の展望。
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北股岳方面の展望。
金華穴峰より実川山、薬師岳方面を望む。(元サイズあり)
2
金華穴峰より実川山、薬師岳方面を望む。(元サイズあり)
夕日に染まる梅花皮岳、烏帽子岳方面。
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夕日に染まる梅花皮岳、烏帽子岳方面。
泊まり場にて辿ってきた稜線を振り返る。笹を刈り平坦に敷き詰めツェルトを張って寝床とする。暖かく快適。
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泊まり場にて辿ってきた稜線を振り返る。笹を刈り平坦に敷き詰めツェルトを張って寝床とする。暖かく快適。
日没後、放射状に広がる残光。
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日没後、放射状に広がる残光。
【2日目】
烏帽子山に陽が当たり始める。
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【2日目】
烏帽子山に陽が当たり始める。
烏帽子山を拡大。東側から見ると奇妙な形の岩峰だ。
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烏帽子山を拡大。東側から見ると奇妙な形の岩峰だ。
実川山(左)が近づくと徐々に薮の背丈は低くなり、稜線南側に草地が現れるようになる。(元サイズあり)
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実川山(左)が近づくと徐々に薮の背丈は低くなり、稜線南側に草地が現れるようになる。(元サイズあり)
烏帽子山がだいぶ低くなって見える。
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烏帽子山がだいぶ低くなって見える。
低い笹に覆われた実川山。
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低い笹に覆われた実川山。
実川山から望む烏帽子山方向。高度感のある眺めが広がる。
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実川山から望む烏帽子山方向。高度感のある眺めが広がる。
飯豊主稜線、北股岳〜烏帽子岳方面。
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飯豊主稜線、北股岳〜烏帽子岳方面。
実川山から薬師岳へ続く稜線。
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実川山から薬師岳へ続く稜線。
草原から実川山方面を振り返る。
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草原から実川山方面を振り返る。
飯豊川上流方面を見下ろす。左上は支流、洗濯沢。
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飯豊川上流方面を見下ろす。左上は支流、洗濯沢。
薬師岳の山頂。三角点も何もない。
薬師岳の山頂。三角点も何もない。
その先の西大日岳は広場に三角点がある。飯豊連峰最高峰の大日岳には何故か三角点がない。
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その先の西大日岳は広場に三角点がある。飯豊連峰最高峰の大日岳には何故か三角点がない。
大日岳直下の清水沢源頭部。毎年、秋まで雪渓が残るすり鉢状の地形。
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大日岳直下の清水沢源頭部。毎年、秋まで雪渓が残るすり鉢状の地形。
水の補給のため、清水沢源頭部を標高差100m少々下って湧水を得た。
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水の補給のため、清水沢源頭部を標高差100m少々下って湧水を得た。
大日岳の登りにて西大日岳を振り返る。
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大日岳の登りにて西大日岳を振り返る。
登山者で賑わう大日岳山頂広場。
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登山者で賑わう大日岳山頂広場。
オンベ松尾根、牛首山方面。
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オンベ松尾根、牛首山方面。
北股岳〜天狗岳の稜線。
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北股岳〜天狗岳の稜線。
文平の池(左上)へ続く紅葉の稜線。
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文平の池(左上)へ続く紅葉の稜線。
大日岳からの下りは紅葉が見ごろ。
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大日岳からの下りは紅葉が見ごろ。
北股岳方向。
御西岳方向。
大日岳を振り返る。
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大日岳を振り返る。
文平の池
御西小屋手前のチングルマの絨毯。
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御西小屋手前のチングルマの絨毯。
御西小屋で小休憩。
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御西小屋で小休憩。
小屋1階の様子。
小屋2階の様子。
御西小屋を後にする。長大なダイグラ尾根と桧山沢(駒形沢)源頭の草紅葉。(元サイズあり)
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御西小屋を後にする。長大なダイグラ尾根と桧山沢(駒形沢)源頭の草紅葉。(元サイズあり)
御西岳を振り返る。
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御西岳を振り返る。
目指す、烏帽子岳方面。
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目指す、烏帽子岳方面。
天狗岳を振り返る。地面が露出している部分は天狗の庭。
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天狗岳を振り返る。地面が露出している部分は天狗の庭。
御手洗の池を通過。
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御手洗の池を通過。
赤沢源流部。夏は雪渓で埋まっている沢。
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赤沢源流部。夏は雪渓で埋まっている沢。
烏帽子岳への辛い登り。
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烏帽子岳への辛い登り。
烏帽子岳にてクサイグラ尾根を見下ろす。
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烏帽子岳にてクサイグラ尾根を見下ろす。
紅葉の飯豊本山を拡大。
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紅葉の飯豊本山を拡大。
ロール状の雲。
烏帽子沢(飯豊川)源頭部の紅葉。
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烏帽子沢(飯豊川)源頭部の紅葉。
大きな大日岳と烏帽子沢源頭部。
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大きな大日岳と烏帽子沢源頭部。
北股岳と梅花皮小屋、水場に寄り小屋で小休憩。
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北股岳と梅花皮小屋、水場に寄り小屋で小休憩。
北股岳への登りにて梅花皮小屋を振り返る。
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北股岳への登りにて梅花皮小屋を振り返る。
既に誰もいない北股岳山頂。
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既に誰もいない北股岳山頂。
長大なオーイン尾根を下り始める。日没までに出来るだけ進んでおきたい
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長大なオーイン尾根を下り始める。日没までに出来るだけ進んでおきたい
登山道は幅2mほどに刈り払われ快適に歩ける。
登山道は幅2mほどに刈り払われ快適に歩ける。
北股岳を振り返る。
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北股岳を振り返る。
洗濯平の池塘。
夕日を浴びた烏帽子岳〜御西岳の稜線。
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夕日を浴びた烏帽子岳〜御西岳の稜線。
北股岳を振り返る。
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北股岳を振り返る。
とうとう中峰付近で日没を迎えた。雨量計の脇のスペースでツェルトを張ってビバーク。
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とうとう中峰付近で日没を迎えた。雨量計の脇のスペースでツェルトを張ってビバーク。
【3日目】
早朝から雨模様。鳥居峰からオーイン尾根を振り返る。
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【3日目】
早朝から雨模様。鳥居峰からオーイン尾根を振り返る。
土砂降りの中、鳥居峰から急登を下山し湯の平温泉へ。
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土砂降りの中、鳥居峰から急登を下山し湯の平温泉へ。
露天風呂に浸かり増水した飯豊川を眺めながら、雨足が弱くなるのを待つ。
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露天風呂に浸かり増水した飯豊川を眺めながら、雨足が弱くなるのを待つ。
北股沢の吊り橋を渡り登山口へ向かう。
 - おわり -
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北股沢の吊り橋を渡り登山口へ向かう。
 - おわり -

感想

無雪期にこだわり湯の平温泉から烏帽子山東方稜線を経由して大日岳、北股岳、湯の平と環状縦走を行った。烏帽子山は過去に踏破済みなので今回はパスした。

 加治川ダムの先から山の神平にかけて水位観測ケーブルの取替え工事中で登山道脇が掘り返されていた。ブナ林の岩越平を過ぎるとガレた斜面になり、適当な岩溝から下降し飯豊川の河原に立つ。靴を脱いで膝程度の水量で渡渉する。水中の石ころはヌメリがあってバランスを崩しやすく、水は足が痛くなるほどの冷たさだった。オーサンカイ尾根末端(450m)に取り付くため、枝につかまり急な岩壁を這い上がった。

 尾根上には以前と変わらぬ踏み跡が残っていて意外だった。670m付近の ブナの大木には古い切り付けが目を引いた。1070m付近は北五葉松の痩せた尾根で展望が良い。前方に目指す稜線、振り向けば北股岳へ続くオウイン尾根、二つ峰〜赤津山の尾根が望まれる。「岳神」によると烏帽子山の北方1212m付近の岩場を貫通する穴の記述があり、ここで実際に確認することが出来た。二ツ倉(1188m)の小ピークから先は潅木薮が優勢となり踏み跡は頼りなくなる。左下方にはホウジョウ沢の流れが上がってくるのを確認。

 薮から早く解放されたく二ツ倉を下った鞍部よりホウジョウ沢へ入渓した。幅2mほどの水量の少ない沢で、一見穏やかに見えるが進むにつれて深く抉れた釜や小滝が現れるようになり飯豊の沢の本性を現す。1150m付近の屈曲部は本格的な連瀑帯となり、巻くのに少し手間取った。その先も沢が蛇行する度に小滝が現れるが、1230mあたりからようやく優しい雰囲気となり、黒々としたドーム型の烏帽子山が樹林の上から頭を出していた。1240mで左股に入ると水量はかなり減り、源頭部のジャングルのような薮のトンネルを抜けるとマグソ穴峰の北の肩(1450m)に飛び出した。ここで初めて大日岳方面の展望が広がったが、まだ気の遠くなるほどの遠さに見えた。

 1520m峰までは腰以下の笹薮であったが最低鞍部からキンカ穴峰、さらに実川山にかけては断続的に背丈を越える根曲り竹の密薮に行く手を阻まれた。何度も気が滅入りそうになるが亀足で進み続けた。靴とスパッツは既にボロボロになっている気にする余裕はない。1日目は大して距離を稼げずキンカ穴峰の少し先(1640m地点)で日没のため行動中止とした。目標の実川山まで遠く及ばず、笹原でのビバークとなった。畳1枚ほどの広さに笹を刈り払い、上に刈った笹を敷き詰め天然のベッドとした。その上にツェルト張り潅木から支点をとったロープで固定した。見上げると、茜色の空に烏帽子山のシルエット、そして新潟平野に沈む夕日が印象的だった。やがて周囲は漆黒の闇に包まれていった。夜中は風は穏やかで新潟市街地の夜景と満天の星がきれいだった。

 2日目の朝を迎え多少体力は回復したが、いきなりの強烈な笹薮こぎからスタートし気が重かった。しばらく薮との格闘で実川山(1880m)に辿りつく。山頂部は薮の丈が低く素晴らしい展望が広がり、薮こぎの苦労からひと時解放された。この先は笹と潅木の混合薮で背丈を越えるような激薮は見られなくなる。また稜線の南側で薮が薄くなる傾向があり少し楽が出来た。1900m付近からは草原状となりメッケ穴沢源頭部から踏み跡が上がってきていた。裏川を沢登りした詰めの地点であろうか。薬師岳直下はハイマツの混合薮で北側の草原から迂回し山頂に出た。このあたりから飯豊独特の鮮やかなパッチワーク紅葉が見られるようになる。西大日岳にかけても踏み跡は不明瞭だが尾根南側が草原斜面で歩きやすかった。

 西大日岳からは、ようやく登山道を歩けるようになり薮から解放された。しかし昨日からの薮こぎで予想以上に水分消費量が激しく大日岳を目前にして水の残量が僅かになっていた。御西岳までは不安となり清水沢源頭の涸れ沢を下った。ゴーロ状の沢を標高差130m一気に下ると期待通り、花崗岩の隙間から清冽な水が湧きだしていた。ひと口飲むと冷たく身体に染み渡った。急に元気になり沢の登り返しは辛くなかった。大日岳山頂に来ると紅葉シーズンの休日ということで多くの登山者で賑わっていた。

 大日岳の北東側斜面は鮮やかなパッチワーク紅葉が広がり何度も振り返りながら下った。御西小屋手前の南斜面にはチングルマの真紅の絨毯が広がり白い綿毛が風に揺れていた。御西小屋前で昼の休憩をとり北股岳を目指した。時々ガスに覆われるが天狗岳や烏帽子岳南西斜面の紅葉は鮮やかで励まされた。烏帽子岳の登りはきつかったが、治ニ清水で補給し梅花皮小屋で小休憩すると少し回復した。北股岳へ登る途中、小屋泊まりの大パーティーとすれ違った。既に誰もいない北股岳に着いた。翌日は悪天候の予報なのでオーイン尾根を出来るだけ進んでおきたい。

 北股岳から下山を始めると幅2mくらいに刈り払われた快適な登山道が続いていた。夕日が北股岳〜烏帽子岳の稜線を赤く染めていたが、ゆっくり眺める余裕もなく下り続けた。日没と同時に中峰の雨量計にだどり着いた。早速、風よけとなりそうなカマボコ型の建物の脇にツェルトを張り2日目のビバークとなった。風がなく寝袋に入れば少し暑いくらいで夜は穏やかに更けていった。

 翌日は午前3時前に目が覚めたので支度を始めた。出発とほぼ同時に雨がパラツキ始めた。ヘッドランプを点けて急いでオーイン尾根を下山した。寅清水から滝見場にかけては根っこが邪魔で歩きにくかった。鳥居峰(884m)の急な北斜面のトラバースは雨に濡れて一層滑りやすかった。鳥居峰からの下山中で土砂降りの雨となり雨具を着ても徐々に濡れてくるほどだった。鎖場を慎重に通過し湯の平山荘へ降り立った。

 小屋裏の炊事場には缶ビールとジュースが冷やしてあった。山荘の人に顔を出してから、ずぶ濡れの身体を温めようと露天風呂へ向かった。天幕は無いがきれいに管理された浴槽からは源泉かけ流しの温泉が流れていた。少々ぬる目だが入ってみれば快適。増水した飯豊川を眺めながら雨足が弱くなるのを待った。20分ほどしても収まる気配はなく風呂から出た。着替えているうちにまた濡れになってしまったが、足の痛みは大分良くなり、足取り軽く登山口の加治川ダムへ向かった。

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