石狩岳近くのキャンプ指定地に名をのこす、アレに、である。北国ほど獰猛という、アレである。地方によって呼び名が変わるけれど、ブで始まるのは同じなアレである。入力すると痒くなりそうなのでそろそろやめておくけれど、グローブの上から挑みかかるあいつには、ドクダミ抽出液ミントミックス液とキンカンで最悪の事態は免れた。だが、治療が遅れた一箇所のみ、少し腫れている。触れば、じんわりとした疼きを覚える。
思いがけず触れてしまったためにつきまとうこの感覚を消してしまえ、と暴力的な発想でステロイドを重ね塗りしてしまったが、痒みというのは、集中しているときには薄まるものではある。集中を装えば、脳もその気になって痒みを忘れるのではないか。忘れてしまえば、ステロイドを塗らなくてよくなる。いつしか、思考はおかしな方向に走り出す。私は集中しています。孤独な宇宙に漂いながら、あらゆる知識に繋がり、発想の瞬きを繰り返し、悩みつつも黙々と目標をこなし…
あ、はい、そうですか、ざっくりとやっておけばいいんですか、急ぎなら今すぐ。
話しかけられ、集中は途切れ、利き手は的確に腫れた箇所を捉えて皮膚の色が変わる。
集中は長くは続かない。うそんこ無痛治療やぶれたり。悪くないと思ったけれど、土台無理なのよねー、結果オーライで西洋医学に身を委ねるのが良いのよねー。
とはいえ、私は知っている。
痒みに耐えかねて皮膚に爪を立てた時、快感の電気が走る事を。痒みは不幸な出来事ではない。耳の下を掻いてあげると目を細めて悦に入る猫のように、安心な痺れがやってくる。完全に排除しなくても、それはそれで悪くないと思い始める。
そうそう、痒みって、掻ける場所にしか発生しない感覚だそうですよ。罪ですね。
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