弔辞で『「命」を賭けた挑戦で散る』なんて語られ、反論はしなかったが…
実際には小さなミスが引き起こした事故である。
写真は今から34年前の夏、彼とともに登った時のもの。その年の秋に彼は別の人とペアを組んで岩壁に挑戦し、事故で帰らぬ人となった。
私も命を落しそうになった事故に何度か遭っている。いずれも判断ミスかちょっとした不注意が原因である。
11月に標高差800mの岩壁の600m地点で天候が急変し吹雪となったことがある。残り200mを登り切ろうとして、雪の付いた岩壁で足を滑らせて15m墜落した。このときは「死ぬ」と思ったが、相棒が止めてくれた。しかし左スネにヒビが入る怪我を負ってしまった。動かない左足でその岩壁から降りて生還するのに10数時間以上かかった。
クライマーという種族は「怖いモノ知らず」ではない。非常に「臆病」で「用心深い」のが身上でなければならない。自分の力量で次の1歩を踏み出せそうに無ければ、潔く引き上げる。それができないと命がいくつあっても足りないのである。
「挑戦」とは命を賭けることではない。「挑戦」とは、十分に時間をかけて準備し、シミュレーションし、自分の能力を見極めて、やれると自信を持てたら、自分の力量の上限を確認するために細心の注意を払って実行することなのだ。
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