早月尾根で山登りが初めての青年と歩いた

2021年08月21日 22:14未分類全体に公開

剣岳の早月尾根はなぜか天候に恵まれない。
４回行って登れたのは１回だけ。それも最初の時。
初日は雨だったが早月小屋で泊まって翌日は曇りの中頂上へ登れた。
それ以降は１日で登ろうと３回チャレンジしたが積雪、凍結、時間切れで敗退した。１０月や１１月に行ったのがまずかったのかもしれない。

私はここを登っているとき　出会った人からここへ来ている人は本当に山が好きな人が多いと聞かされたことがある。馬場島から剣岳まで２３００mほど登らないといけないが、途中に早月小屋があるだけで人工物はほとんどない。登っている人も少ないので静かに山を楽しめるルートなのかもしれない。
私は１人でここを登っているときある青年とひょんなことから一緒に歩くことになった。１０月半ばの早月小屋の戸閉の日だった。

私は１日で往復しようと必死で登っていた。途中で青年が追い付いてきて少し話をした。革ジャンを着た彼は今日が初めての山登りだと言っていた。お先にと追い越して行ったが、若くて馬力があるなと見送った。
私も頑張って早月小屋まで３時間２０分で登ったが少し休憩しないともたないなと歩みを止めた。
小屋では戸閉の最中で片づけをしていたが、小屋の主が登山者にここから先は凍結しているからここで折り返して下山するようにと注意をしていた。ほとんどの登山者はここから折り返すようだった。上の方を見上げると雪がついているがもう少し上までは問題がなさそうだったので様子を見る。その時革ジャンの青年が上へ行くのを見かけた。
私もどうせ頂上まで行けないのだったらここで折り返そうかと思っていたが、休憩して行動食を食べお茶を飲んだりしているうちにせっかく来たのだから行けるところまで行こうかという気になった。小屋主が登る人を見かけたらやめるように声をかけるので、面倒だなと思い、姿が見えなくなった時に上へ向かった。登る理由はもう一つあった、革ジャンの青年が気になったのです。
登っているうちに上の岩場に人影がみえたのであそこまでは行けるなとか考えながら登って行った。降りてくる人に２・３回出会った。皆　雪で引き返してきたとのことだった。少し登ると雪が出てきたがそのまま登っていく。１人若い人が降りてきたので革ジャンの青年を見かけなかったかと聞いてみると、ああ　あのスニーカを履いた人ですかと言った。　え！スニーカだったのか。が　その人には会っていないと言う。
私が　彼は今日が初めての山登りらしいので気になって見に来たんだという話をすると彼も一緒に見に行ってくれることになった。

登るにつれて傾斜はきつくなり雪のついた外傾斜の岩場で、ここからは無理なので申し訳ないけど降りるという。それはしようがないのでお礼を言って別れる。私もここで滑ったら左の谷底まで落ちてしまうなと思い、持ってきていたアイゼンをつける。
注意して登っていくがスニーカでここを登れるのだろうかと心配になる。もしかしたら左の谷底に滑落していないだろうかと注意しながら登っていく。しかし頼まれてもないのに１人でこんなところを歩いて滑ったら本当に遭難だなと思いながら登って行く。それに彼はどこかですれ違って下へ降りてしまっていたら会えないし、やめようかなという気にもなってきた。　と　急傾斜の場所で真新しい雪の崩れた場所があった。誰か歩いているようだった。
尚も登って傾斜の緩んだ場所へ上がると、少し先に人が立っていた。近づいて行くとにっこり笑って革ジャン青年が立っていた。私はへなへなと力が抜けた。無事でよかった。
しかし　心配していたなどということはおくびにも出さず、雪が積もって難しいけど大丈夫だったかいと聞いてみた。彼はここから少し先に凍っている場所があって僕の靴では登れませんでしたので引き返してきましたと。見れば手に２本の棒きれを持っている。
うーん　これで歩いていたのか。なかなかやるな。
こういう場所は登りより降りるほうが危ないから一緒に降りるかい。というとハイという。アイゼンを貸してあげたいがワンタッチ式なので彼のスニーカには無理なのでピッケルを貸してあげることにした。雪のあるところを注意しながら降り、雪が無くなったあたりから色々話しながら降りた。

私　山登りが初めてと言ってたけど、ここが始めてなのか山登りが初めてなのかどっちなの。
彼　山登りが初めてです。
私　はじめてで、難しいところに来たね。どうしてここへ来たの。
彼　山の写真を見て常念岳と剣岳の姿が良かったのでここにしました。
私　剣岳は室堂から登るほうが一般的だけどどうして距離があるここへ来たの。
彼　自分の足だけで登りたかったのです。
私　登って行くとき私を追い越していったけど早月小屋までどれくらいの時間で登ったの。
彼　２時間３０分ほどです。登りは好きです。
野球部出身の登りが好きだというこの青年がまぶしく見えました。

初めての山登りで無謀と思われる方が多いと思いますが。私もちょっと無謀だなと思いましたが。
２本の棒を使ったり手を雪に突っ込んで登ったというこの青年に、初めてでも私より登れるのではと思いました。
私の装備を彼に貸してあげたらたぶん私より上だと思います。

山登りはベテランも初心者もあまり差が出ないスポーツなのではと思っています。

また　早月尾根へ行って　成長した彼に会えないかな。
でも積雪期じゃないと会えないかも。

2021-08-18 山の本はいいけど　映画はどうし

2022-05-04 ダニにやられました

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