小屋泊りで北鎌へ行こうとすると 合戦尾根から登って 大天井の小屋へ泊って貧乏沢経由で行くことになる。
私も初めて行った時 このルートを使った。
貧乏沢と言う ちょっと残念な名前を付けられた沢を下って北鎌沢へたどり着く。
朝 暗いうちに出発するので貧乏沢の入口がどこかというのが一番の関心事であるが 特に難しい場所があるわけではないので皆さんあまり注意を払っていないのではないかと思う。
ところが思わぬ危険個所がここにあるのです。
自然界の中では思わぬ危険が音もなく忍び寄ってすべてを奪い去ってしまうということが時々ありますが、ここにはたいていの人が危険個所と気づきにくい危険個所があるのです。
実は私がその罠（わな）に落ちてしまったのです。
私達がここを歩いたときは朝早くですが 夜は明け 歩くのに何も問題はない時間でした。
土砂で埋もれたような沢を下って行くのですが特に難しい場所はなく長い道中を考えて なるべく早く北鎌沢へ取り付きたいと急ぎ足で歩いていました
何ということもない川原状の所を歩いていました。
前に２〜３ｍの段差のダムの堰堤のような場所にやってきました。
太い流木が流れを横にふさいでちょうど堰堤のような形になっていました。水の流れがあるので石の上を歩いていたのですがちょうどいい場所に石がなかったのであまり深く考えることなくこの流木へ右足を載せました。
あッ と思った瞬間 私は空を飛んでいました。
スロ−モーションで再現します。
右足が滑って、足先が先頭へ出ます。
体は伸びたまま、右太ももが流木のつるつるの面で痛打します。
そして、次に右脇腹も同じようにこすれながら痛打します。
右腕は当たったのかどうかわかりませんでしたが、痛みはなかったのでたいしたことはありませんでした。
頭も無事でした。
そして着地は 幸いなことに割と平らな場所でした。
３ｍほど落ちましたが セーフのタイミングです。
右太ももの痛みを強く感じたので しばらくそのままの体勢で様子を見ます。呼吸が苦しいと言うこともなく頭も無事だが足の痛みがどの程度の損傷なのか分からない。
しばらく座って呼吸を整え立ち上がってみる。
大丈夫そうに思える。
ゆっくり歩いてみる。
右太ももの痛みはこすれたための痛みのようで骨は大丈夫のようだった。
気分を立て直して慎重に下って行くと、前から登ってきた２人組に衛星電話を持っていませんかと聞かれた。
事情を聞いてみると救助要請をしたいのだが電波が飛んでないらしい。我々は衛星電話は持ってないと伝えると大天井の小屋まで登るしか方法がないと登って行かれた。
さらに下ると、ツエルトに包まった遭難者と心配そうに見守る人たちがいた。
聞いてみると流木で滑ったという話だった。
骨折なのか、頭を打ったのか状態は分からない。
同じ日に２人も同じような事故に会うというのは、
貧乏沢で一番注意すべきことは 『流木で滑って転倒する』 ということだった。
私はこの後 無事に北鎌尾根を踏破したのですが、登っているうちに足の痛みはだんだんと薄れていくが、肋骨が呼吸をするたびに痛くなった。
肋骨にひびが入っていたのかもしれないがどうせそのまま放置して直すのだからと 無理はしないが あまり気にしないようにした。
危ない岩場を通過しないといけないので、一つの事故にとらわれて注意力が落ちるのは最も避けたいことだった。
山登りではいろんな予想外のことに遭遇することがありますがすべて自分たちで解決して無事に（あるいは多少の怪我をしても）下山しなければなりません。
冷静な判断と いろんな経験の積み重ねが役に立って最適な答えを見いだせるのではないかと考えています。
何も起こらない山登りが理想ですが、降りかかってくるいろんな問題をうまく解決する というのも山登りをするうえでの最も重要な考えなのではないかと思っています。
はじめまして。
致命的な事故とならず何よりでしたね。
貴重な体験談をありがとうございます。
コメントありがとうございます。
私がアルプスへ行くときに 特に注意しているのは
１に雷 ２に落石 ３に雪崩 です。
あと 危険地帯を過ぎた後の ちょっと危ない場所とかです。
自分が経験した危ない事は 体が覚えていますので 自然と反応できるのではと思いますが、他人の経験談は あまり長くは覚えていられないと思います。
自分で経験を積み重ねるしかないと思います。
私が危険地帯で実行していることは 耳を澄ます です。
前は目で 後ろは耳で 危険を察知しようとしています。
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