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黒白の銀塩フィルムは、保存状態さえよければほゞ半永久的の保存できるというのが常識だった(実際に歴史的資料の複写に多用されている)が、撮影現像後のネガフィルムに常識を覆す異変が起きた。
小生は、撮影後のネガフィルムは冊子タイプのネガ・ホルダーに入れて湿度・温度共に良好と思われる場所に保管してきたが、思わぬ異変に襲われ、一部は全く印画紙に引き伸ばす、いや密着焼すら不可能なものが現れた。
その状況は次の通り…
2000年頃に保存したネガ・フィルムをチェックしたところ、大変な状態になったものを発見した。酷いものは膜面を外側にしてめくりあがり、まるで"牛蒡"のような状態のなっているものが出てきた。程度の軽いものでも縦横10%位は収縮していてベース面を内側に若干カールしている。
程度の軽いものは、1コマずつ切り離してポジ・フィルムのホルダーに無理矢理挟み込んで何とか使えるようにしたが、丸まってしまったものは最早どうにもならない。中には銀塩膜面が部分的に浮き上がったり、気泡が入っているものもある(過去レコの一部に見られます)。
原因は新しいフィルム・ベースが高温多湿の環境下で加水分解を起こし、生成した酢酸が更に劣化を早める問題からビネガー・シンドロームと呼ばれたそうだが1990年代頃からポリエステル・ベースに置換されて問題は解消している。
注) 写真フィルム(映画フィルムも同じ)のベースは、従来の割れやすいガラス乾板のガラスの代わりにセルロイド(ニトロセルロース)を使用したもので、巻き取りやすいことから映画用フィルムとしても用途が広がった。しかし、セルロイドは引火しやすく火事の原因ともなったために1950年代以降は、燃えにくいアセテート・セルロースをベースとするセーフティ・フィルムが発売されてセルロイド・ベースと置き換わった。小生が自分のカメラを持ち(1957年)、写真を始めた時には、すべて新しいタイプになっていた。
ここからが問題・・・もう半世紀以上以前のことだから、フィルム・メーカー名をオープンにしてもいいだろう。問題を起こしたフィルムはすべて富士フィルム製のネオパン。一方、小西六(当時の社名、後のコニカミノルタ…すでにフィルム事業から撤退)のコニパンは全く問題を起こしていない。日本のトップ・メーカーにおいて技術の検証不足があったのだ。
コダックなど海外のフィルムは使っていなかったので、小生には実情はわからないが、"ビネガーシンドローム"という呼称が残ったのだから海外製のフィルムにもこの種の問題はあったのではなかろうか?
写真用フィルムを愛した皆さんには、この種の経験はありましたでしょうか?
一日も早くディジタル化しておくことをお勧めします。勿論、ディジタル化してもデータは一瞬で消失するリスクがあるので、こちらはバックアップが大切です。
写真:左の一列は、フィルム・ホルダーに押し込んだもの:数枚。
tama-takeshiさん、はじめまして
ビネガーシンドローム、数年前に鉄道写真雑誌の記事で見た記憶があります。写真だけではなく、確か映画のフィルムでも同事象が起きていたんじゃないかと。
小生のフィルムでは未だ発生していませんが、昔のネガにはカビが生えてしまっています
足柄製作所というメーカーが、劣化対策剤を販売しています。
https://siglo.jp
残りのフィルム、未だ間に合うんじゃないでしょうか。
早速に有益な情報を有り難うございます。検討したいと思います(意外と安価なものですね)。
1990年代以降のものは、既にポリエステル・ベースに変わっているので、酢酸の発生はないので安全です。
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