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2年ほど前のことです。この頃は、山での失敗がすっかり影を潜め、何となく物足りなさを感じながら山歩きをしていました。
たまには少し冒険してみようと、丹沢・宮ヶ瀬湖南側の鍋嵐(817m)に登ることにしました。手堅く土山峠〜辺室山〜鍋嵐と歩いてもよかったのですが、ちょっとひねって、土山峠〜宮ヶ瀬尾根〜鍋嵐と歩くルートに決めました。
松浦隆康さんの著書『バリエーションハイキング』に、このルートが紹介されています。その紹介文のコピーと「東丹沢登山詳細図」を持って出かけました。
土山峠でバスを降りて、村道を北に向かって進むと、左側に林道(堤川林道)がありました。この時は「ふ〜ん、林道があるんだ」と、何となく頭に留めておきました。
もう少し進むと道標があり、ここから山道に入りました。支尾根に取り付いて、赤テープに導かれながら、細尾根を慎重に進みました。
やがて617.2mの三角点(サルシマ沢ノ頭)に達し、宮ヶ瀬尾根に乗りました。ここから続く、険しい尾根道を我慢強く歩きました。
それからどのくらい歩いたでしょうか。いつの間にか尾根が広くなり、ルートが難しくなってきましたが、ひたすら上を目指して進みました。そして、尾根はますます広くなり、踏み跡はあまりはっきりしませんでしたが、かまわず登っていくと、そこに白い杭があり、マジックで「能ノ爪」と書いてありました。
すぐに地図と紹介文のコピーで確認しましたが、どちらにも「能ノ爪」の記載がありません。最新版の「東丹沢登山詳細図」には「能ノ爪」が記載されているのを、後日知ることになります。
ここから左方向に、明瞭な踏み跡が伸びています。この道を2回行ったり来たりしましたが、「いや待てよ、どう考えても鍋嵐とは反対方向だよな。」と思いました。そこで右方向への道を探すと、何とか進めそうでしたが、あまり自信がなく、その場で立往生してしまいました。
すると、急に不安に駆られて怖くなってきました。「能ノ爪」地点を地図で特定できない限り、これ以上進むことは危険だと思いました。ここまでほぼ完璧に正しいルートを辿っているのに・・・。臆病風に吹かれてしまったのです。
もちろん、ここまで歩いてきた道が本当に正しいルートだったのか、その時の自分には分かりません。ですから、そこで撤退を決めたのは、自分としては賢明な判断だったと思います。
ここから左方向の明瞭な踏み跡を辿れば、一般登山道に合流して物見峠から煤ヶ谷に下れるのですが、その時は来た道を戻ることしか考えられませんでした。
「全部戻るとなるとちょっとたいへんだな〜。」と思いながらトボトボ歩いてると、途中で右側に下っていく踏み跡があったのです。この踏み跡を辿って良いものか、しばらく考えました。すると、小さな手製の道標が木に括り付けられているではありませんか!地図で確認すると、どうやらこの道は、最初に見た林道に通じている作業道らしいのです。私は、これなら大丈夫と、自信を持って下っていきました。
その道はしっかりしていて、とても歩き易く、難なく林道終点に降り立つことができました。ここから林道をゆっくり歩いて村道に戻り、土山峠に無事帰り着きました。
今回は、これまで経験したことのない何とも言えない失敗でした。正しいルートに乗っていたのにも関わらず、慎重になり過ぎたのでした。しかし、「能ノ爪」地点がよく分からないまま一か八か前に進んで、道迷いにでもなったら、それこそ一大事です。この山域だけにやむを得ませんでした。潔く撤退して正解だったと思います。
戻る途中で、林道に通じる作業道があったのはラッキーでした。仮に全部戻っていたら、新たな難題が降りかかってきたかもしれません。
後日、最新版の「東丹沢登山詳細図」を持って、土山峠〜辺室山〜鍋嵐〜物見峠〜煤ヶ谷とルートを変更して歩き直しました。この時は、「能ノ爪」から鍋嵐に続く細尾根を難なく進み、最後の急斜面を登りきって、鍋嵐山頂に立つことができました。驚くほど狭い山頂でした。ここから先に続く踏み跡と赤テープが見えましたが、計画通りに引き返して、物見峠から煤ヶ谷に下りました。
今思えば、最初の計画自体に無理があったのかもしれません。やっぱり、山では無理をしてはいけませんね。それではまた。
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