無我・悟り・涅槃が続いたら、生きる気力が無くなるか？
臨死体験によって生じた幸福感に満ちた状態が１週間で消えていったことに、『無我・悟り・涅槃が続いたら生きる気力はどうなるか』という質問をいただきました。私にはそのような経験が無いので、次に考察してみました。
臨死体験を伴う自由落下が停止した後に、確保して落下を停めてくれたＳ君に言った『クライミングを続行しよう』に付け加えることがあります。登り返したいという積極的な私の気力からではなく、『Ｓ君は登りたいだろう』と時間とお金を使って登りに来たＳ君の気持ちを推し量って出た言葉でした。実は自分としては、登り返しても懸垂下降で中途退去してもどちらでもよかったのです。周りに広がる岩壁は気高く、草木は鮮やか、真っ青な空は空、『今此処に居るだけで、すべてよし』でした。つまり、自分の思いとして登る気力は一切無く、他者であるＳ君の思いに添いたいという気力がありました。このことを考えると、生きる気力というのは決して無くなることはなく、気力の向かうところが違うと言えるかもしれません。
次に、無我・悟りが続いたら『生きる気力』が無くなるかについて考えてみます。禅では座禅を続けることしかないと言っています。続けるということは気力が無いとできませんので、気力は悟りの維持に常に必要だと解釈します。私の臨死体験は、座禅のような自力ではなく、５秒間の落下のみの完全な他力でした。この他力は続くことはあり得ないし、自力で自由落下もできません。そして元の自分に戻り、雑念と伴に気力も再び浮かんできました。
ここで、的外れな比喩かもしれませんが、化学反応式（A＋B＝C）で考えてみます。水素と酸素を混ぜ点火すると瞬時（爆発）に水が生成されます。一方で非常に遅い反応の化学変化もありますが、そこで触媒を使うと反応を速めることができます。凡夫から仏陀（悟った人）になる化学変化も困難で非常に遅く、仏陀になるために、自力のとても厳しい修行（禅，無償の愛、慈悲の実践など）に励んでいる方々がおられます。他力においても、そこには多少の自力が含まれているのではないでしょうか。天才親鸞の絶対他力も『南無阿弥陀仏を唱える』という多少自力行為があるのではないかなと思います。思いもしない自由落下は絶対他力で、とても稀有なことですが、それに伴う臨死体験も点火や触媒であったと思います。このように、仏陀になるための修行が化学反応を促進させる点火や触媒に相当すると考えてみます。仏陀になったとして修行（触媒）を止めたら、仏陀を維持できたでしょうか。仏陀が化学変化でできた生成物だとしたら、微細的な逆反応（元に戻る）も起り、完全な仏陀ではなくなります。修行（触媒）は気力がないと成り立ちません。悟っても諸行無常です。禅の考え方みたいになってしまいましたが、仏陀（無我で悟った人）になったからといって気力が無くなるわけではなく、修行の気力を失うと仏陀ではなくなると考えます。釈迦が仏陀になってから、布教に努めていたことや慈悲の実践を続ける気力が有ったからこそ、仏陀であり続けられたのではないか、そして自分の悟りなどどうでもよいことになっていたのではないかと、勝手な解釈をしています。
まとめとして、私の稚拙な考察を最後まで読んでいただきありがとうございます。また私は、このような考察に励むより、日常の大切なことに努めなければなりません。（笑）
訂正（Ｒ3/3/9）『南無妙法蓮華経を唱える』は間違えで、『南無阿弥陀を唱える』に訂正します。
★以上、私の根拠も確証もない考察を、宗教家や哲学者の方々には、どうぞお許しいただきたくお願いいたします。
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