４０数年前、谷川岳・一ノ倉沢・一ノ沢から東尾根のシンセンのコルに登り東尾根を辿りオキノ耳（谷川岳）に単独で登った時のことです。季節は定かに記憶がないのですが、東尾根の雪稜がズタズタに崩壊中、まだ小さな雪庇も残っていたので４月ではないかと思います。（登山禁止期間であったかも）
一ノ倉沢に踏み込むと、危険地帯に自分ひとりという状況からの妄想だったのだろうか、この場所で亡くなった登山者の霊たちが傍にいるような気配を感じていました。どこかで学んだ物理学でいう「時間は逆行する」などと思い起こし、眼には見えないだけで今踏んでいる処にも亡くなった登山者がいるのではないかという妄想が浮かび、その気配が消えませんでした。今なら、慰霊を込めて般若心経を心の中で唱え自分を取り戻そうとすると思います。しかしこの時は、心で唱えたら、もっと沢山の霊を呼び寄せてしまうような気がして読経はしませんでした。それだけ、弱気と言うか恐ろしくて堪らなかったのだと思います。
やがて、霊なのか、もう一人の自分なのか、はっきり言えませんが、『なんで登る』『お前おかしいぞ』『危ないよ』『止めとけ』などなど一字一句は思い出せませんが、この山行を否定する反対する言葉が頭の中に浮かんできました。聞いている真の自分も、ただでさえ不安であるのにだんだん不安が増幅していきましたが、一ノ沢に入って行く頃には、何故かその声も聞こえなくなりました。座禅でいう「思い浮かぶことは追わずにほっとけ」と本で読んだことがありますが、それと同じように歩行を止めず登り続けたのが良かったのかと思います。それ以降、岩峰やズタズタの雪稜などがありました。それほど難しくはないものの落ちれば死ぬような処を進むので緊張の連続でしたが、アプローチでの霊たちの再登場もなく無事登れました。
あの声が霊の声ではなく、妄想だったとしたら、もう一人の自分の存在だったのか、または霊たちの存在に感応したもう一人の自分がいたのか、何だったのだろうと不思議に思ってきました。心理学者や宗教者の方々に聞けば明快なことを伺えそうですが、勝手に次のように解釈したいと思います。
�� 心は意思と意志をする処、変わり易く ぼんやりと（アナログ的）
「東尾根を登ろう」と思いついた（意思）
�� 頭は思考する処、 やるのかやらないのか？ぼんやりしていられない （明確でデジタル的）
「一ノ倉⇒危険⇒単独⇒なおさら危険⇒登攀は止めとけ」
最終的に是非の結果（続行/中退）をデジタル的に決める頭（脳）は、「なおさら危険」で終わらない
で「登攀は止めとけ」の結論まで導いた
�� 「登攀は止めとけ」の声（もう一人の自分の客観的考え）が心に圧力を加えた
�� しかし、葛藤と不安を思いながらも立ち止まらず歩いた
�� 心はもう一人の自分と折り合いをつけ（客観的考えを考慮）
「慎重に注意して登る、危なかったら中退する」とアナログ的に意志を固めた
�� 新たに意志することによって、自然と妄想（もう一人の自分）
は消えていた
yasuji-さんの山でのご体験を興味深く読ませて頂きました。
不思議な体験ですが、これがまさに自然界での第六感であったり「勘」なのではないかと信じています。
少し違いますが、私も不思議な体験があります。
大峯山脈は山上ヶ岳登拝の折、駐車場で仮眠していると明け方に「ドン・ドン・ドン」と車の窓をたたく音で目が覚めたことがあります。
周囲を見渡しても誰もいないのです。
不思議と怖さはなかったのですが、気持ちが引き締まりました。
特に単独山行では「胆力」が必要ですものね。
実は私が体験した場所に近い場所で似た体験をヤマレコ記録で読んだことがあります。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2144494.html
↑これが私と同じような体験をされた方の記録です。
大峰も役行者が開山されてから1300年以上たつ神域ですから、きっと先達が声掛けをしてくれたのかと思っています。
「恐怖心」のみが私たちを守ってくれると思っています。
そしてそれは謙虚さそのものではないのかと。
コメントありがとうございます。
若い頃、単身縦走した大峰山脈を思いだしてみると、私にも恐怖心が謙虚さに繋がっていると思えました。とても良い気づきのコメントを頂きありがとうございます。心が恐怖にかられるより謙虚さで満ちていた方がいいですね。私の場合も自己の慢心を諫めようと”もう一人の自分”を登場させていただいたのかもしれません。
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