若い頃、修行というものにとても関心があって自己流で滝行をしたことがあります。
厳冬の丹沢マイナー沢で、凍るような水に打たれた時は流石に頭から足先までブルブルと震えが止まりませんでした。暗い谷の中で独りよがりに打たれる姿は、もし他人から見たら変人としか映りませんが、私本人にとっては身心が引き締まり気分爽快でした。これは、雑念が入り込む余地がないほど水が冷く痛かったので否が応でも滝行に意識を集中しなければならなかったからだと思います。
真夏の四国八十八寺巡礼を自家用車で回っていた３６番青龍寺、平日で誰も居なかったので滝行を試みることにしました。簡素な脱衣場でパンツ１枚になり打たれました。お寺やご本尊に許可を得ることなくお礼もしないというのは、考えてみれば、とても礼を失していました。落差も小さく水も温く水量も少なかったので臨場感も感じず集中を欠き、かえって「悪霊がいるのではないか」と雑念が湧いて、「こんなものか」と思いました。ところが、服を着てから、どうも左肩が重い感じがし、首を回すと右周りは何でもないのに、左回りをすると痛くて曲げられなくなっていました。「夏とはいえ、冷えたのだろう」と安易に考えましたが、その後も治らず、左回りをすると痛くて曲がらないのが半年以上続きました。それでも一年ほど経ったら、自然と治ったらしく痛みが無く回せるようになりました。
命題『何故、首が回らなくなったのか？』
やはりお寺の滝行場は危険があるのかもしれません。真冬の滝では何事もなかったのに真夏の行場では起こった首の痛みを考えると、とても不可解です（自然の滝と比べると行場の滝は安楽な条件だったのに、起こった現象は比べ物にならない苦痛だったこと）。そう考えると首の痛みは悪霊（悪因縁）の仕業に見えてしまいます。いったい霊はあるのかないのか、凡夫でしかない私には分からないことです。霊はいるとしたら滝行は恐ろしいことですが、霊はいないとしても自分自身が作り出した幻想が実体化するのではないかとも考えられます。昔からある日本人の霊性意識や風習が私にも無意識の中にしっかりあって、それが「お寺などにある行場では修行者が置いていった悪因縁が沢山漂っているのではないか」、「行場でない自然の中にある滝には動物霊がいるのではないか」と雑念が湧き、不安と恐れを生み出し、そしてそれらの思惟が身心の上に実体としてリアルに現れたのではないかと思います。こう考えると、霊が存在しようが存在しないにせよ、どっちみち霊現象に見舞われそうで、特にお寺などに行場として利用されている行場は不用意に立ち入るととんでもないことが待ち受けていそうで、以後自己流での滝行をしたことはありません。先達というのは「悪霊落とし」などの法力（これも幻想としても）をもってして守ってくれるので、皆様もそれなりの行場で滝行をする場合は、それなりの先達に先導してもらうことをお勧めします。
ＰＳ：
沢登りのシャワークライミングや滝行は遊び心１００％なので、上記の懸念はないと考えています。
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