「我々は必ずや疑いのこころを持っていなければならない。そこから吟味検討するということをしなければならない。仏陀の言葉も吟味するのです。」（ダライ・ラマ法王の言葉）
この言葉に林住期の既に後半にある私ではなく、できる限り若い時期に出合いたかったものです。若かりし頃から、なんと自意識過剰で未熟で愚かな選択が沢山あったことか！覆水盆に返らずの行いを続けてきたことか！つくづく想い返されます。大切なことを見失った損得意識の強力な殻が私を縛っていたように思います。その殻は年齢とともにだいぶ薄くなったとは言え、気を付けていないと、知らぬ間に厚くなってしまいます。ただ、その愚かな行為の積み重ねがあって、ダライ・ラマの金言も理解されると思うのです。本題からだいぶ脇道にそれてしまいました。ヤマレコ日記でも道に迷ってしまいました（笑）
滝子山アモウ沢の道迷いと東陵の滑落は、まさにダライ・ラマ法王の疑いのこころを欠いていたことが起因しているようです。
アモウ沢は一昨年前から山行候補にしていたのですが、遡行図が見当たらず、数少ないヤマレコからの情報では「ナメが多い」など大雑把な情報しか確認できなかったので躊躇していました。図書館にアモウ沢について掲載されている「ウォーターウォーキング２」（以下ではＷＷ２）をリクエストしていたのですがなかなか届きませんでした。しかし山行前日の午後に、準備（貸し出せる状態）ができたとの図書館からメールを見て、早速借りてきて、アモウ沢についての遡行図と遡行ガイドの情報を得ることができました。それによれば、３段２０ｍナメ滝は登攀グレード�卦蕕箸里海箸粘躙吋沺璽�がされていました。�卦蕕箸聾世─⇒遒鼠佞両�況やヌメリ具合など不確定要素に左右され難しくなる場合があることを何回も経験しているので、少し不安を感じました（反対に案外簡単な場合もあります）。それに加え「まき道が確認されなかった」という補足には「いやらしい」と思いました。一方で、前日直前に情報が届くということをとても不可思議に感じ、「アモウ沢へ行け」との啓示ではないかと非科学的考えに捉われたり、３段２０ｍもなんてこともないのではないかと楽観的な考えも浮かんだりしてきました。でもやっぱり行ったことが無い地域なので駐車できる場所はあるのか心配でしたが、ハイジが「アモウ沢がいいのでは」の一押しでアモウ沢に決定しました。
アモウ沢の本流である恵能野川が流れる恵能野に着くと、インターネットで掲載されていた写真にあった小さな神社があり、その脇に駐車できました。これで最初の不安はなくなり、歩きだしたら山行を粛々とこなすだけだと楽観的な気持ちになってきました。次は“山の神”を過ぎてからすんなりアモウ沢に入渓できるかが不確定要素でしたが、老木がご神体である“山の神“が現れた時は再び一安心しました。「ＷＷ２」ではそれから道が不明瞭になりアモウ沢沿いの道を進むと記されています。また遡行図から”山の神“を過ぎたら直に大堰堤が出現するように解しました。これが大間違い（思い込み）でした。歩を進めていくと水量の少ない沢が左右に二分されました。ここで左沢は枝沢と判断して右沢に進んでいくと、前方一面に大きな伐採地が広がってきました。そこでは遠望が利きましたが、大堰堤群は見えません。ガイド本にはこんな大きな伐採地の記載はありません。そして脚元の沢（右沢）の流れは益々細くなり、アモウ沢ではあらずと確信しました。一方で滝子山らしいピークが望めたので、伐採地を南側へ横断気味に進み、先にある左沢を超えて小尾根に登りました。ここに至って、沢登りは諦め、尾根（名も知らぬルート）登りに変更しました。少し登り後続（ハイジ、ペーター）を待つ間に地図読みをすると、Ｐ1241.6峰にある高圧ケーブルの鉄塔から、やっと現在登っている尾根がアモウ沢右岸尾根であることが分かりました。伐採地では、恥ずかしながら、鉄塔など目に入ってはいませんでした。ただ、「”山の神“から遠くない処に大堰堤がある」と思い込んでいたのですから、伐採地で鉄塔を確認しても不可解さは解消されず現在位置を正確に判断できたとは思えません。ダライ・ラマ法王が言うように、経典（今回の場合はガイド本）を正しいと思い込まず、疑い、落ち着いて冷静に吟味検討することが必要でした。実は横断した左沢がアモウ沢であったことが下山してきて確信しました。アモウ沢右岸尾根から達したピークに”沼ノ沢ノ頭“の標識を見て、やっと現在位置を地図上での定点として確認できました。そのピークから下山してもよかったのですが、諦めが悪くずるずると滝子山に登ってしまいました。そして下山時、意識していなかったけれど体力の消耗に加え道迷いよる精神的な疲労でだいぶ注意力が落ちていて、岩場での滑落に際しバランス保持力を発揮できなかったのだと思います。
滑落途中、後頭部を打ったのですが、岩と頭の間に運よくザックが挟まれたようで直撃を免れたようです。痛めたのは首・腰・左脇腹〜左臀部、左膝と左半身に全体に及びました。しかし何とかザックを背負い、時に転倒しながらも自力で下山できました。動けなかったら、重度知的障害を併せ持つ自閉障害者が非常事態を全く理解せず大混乱し緊急事態になってしまっていたと思います。障害者登山では、何事においても困難が増すことを骨身に知ることになりました。
アモウ沢右岸尾根の急な下降をしながら、大堰堤群が見えないかと注意していましたが視界に入ってきませんでした。ということは、大堰堤群が存在するとすればアモウ沢と右岸尾根が離れている処にあると思いました。自宅で地理院地図を詳しく検討してみた結果、“山の神“から左沢（アモウ沢のこと）を��kmほど辿り、沢の流れ上流に向かい西方向から南西方向に大きく屈曲する処に存在すると考察しています。道迷いした処からの視界には入らない位置だったなと思います。身体が回復してから、気が向いたら検証しに行ってみたいと思います。
なお、アモウ沢にすんなり入渓していたら、何事もなく楽しんで滑落も無くて楽しい山行になっていたと思います。事前検討と道迷いに遭った時、自分の思い込みを疑いもせず、吟味検討が足りなかったと悔やまれます。
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