あれは何時の何処の山やったかな。
まだ若かった頃。
登山道を登ってたわけ。
疲れてきてたんでそろそろ休憩しようかなと思ってたんよ。
そしたらさ。
前方に団体さんがいましてね。
俺の親位の御歳のお父さんお母さん方。
大体20人ぐらいやったかな。
登山道が少し広くなってる所で休憩なさってたわけですよ。
談笑されてる方。
疲れて下をジッと見られてる方。
水分補給をされてる方。
すると。
最後尾におられたお父さんが俺に気づかれましてね。
軽く会釈をされまして。
そしたらこっちも軽く会釈をしますよ。
『特急さんが来ましたぁ〜!』
は?特急さん?
今もそういう云い方をするのかな。
以前は足の速い人を『特急』『急行』と呼んだり遅い人を『普通』『鈍行』と呼んだりと列車みたいに云ってましてね。
『みんな各停ですから先にどうぞ♪』
最後尾のお父さんが笑顔でそう云うと皆さんも笑顔で道を俺に譲ってくれるわけ。
いや…俺…休憩したいんスけど…
皆さんの笑顔が俺を見てるわけ。
さぁ。早く行けと云わんばかりに。
あ…ありがとう…ございます……
もちろん俺にも選択肢はあるんですよ。
でも場の空気と云うんかな。
不本意にも一択になるときだってあるんよね。
『若いと速いわねぇ』
『元気やなぁ』
『先にどうぞどうぞ』
20人の列って結構長いんよ。
休憩を考えていた疲れた足で20人を抜いていくってキツいのよ。
…ありがとうございます。
1人抜く毎に一言云い頭をペコリ。✕20。
全員を抜いた所で振り返り最後のお礼の言葉を云い改めてペコリ。21回目。
休憩したいんやけどさぁ。
ここじゃ出来んでしょ。
皆さんの笑顔がまだ俺を見てるし。
お礼を云って喉も渇いたけど目の前でポカリも飲めんでしょう。
皆さんの笑顔がまだ俺を見てるし。
頭の何処かに『特急』と云われて無意識に浮かれてる俺がいたのかなぁ。
団体さんを抜くと平然とした足取りで登山道を登っていくフリをする俺。
しかも先程より少しペースを速めて。
団体さんが休憩を終えて歩き出したすぐの所で俺がポカリを飲みながら休憩してる所を見られたくない一心で。
若かったねぇ。
今はそんな状況に出くわすと『ありがとうございます。でもすぐそこでバテてますんで笑いながら抜いてって下さい』とか云って笑ってんやけどねぇ。
でも。
あの見栄のおかげで少しは足を鍛えることが出来たんかなぁ。
…ンなことねぇか。
「特急のプライド」、なんかわかる気がしますw
登山は基本的に「登り優先」といいますけど、下ってきた人がだいぶ上で足を止めてこちら通るのを待ってくれる場合がありますが、正直アレはやめてほしいです。
(譲れるスペースがそこしかないのなら仕方ないとは思いますけど)
だって、こちらはあまり待たせては悪いと思うからペースを上げてしまうんですよ。
待ってくれている人はゆっくりでいいですよって思ってくれているかもしれませんが。
気持ちすごくわかります。
しかも、こちらが少しバテ気味の時に限って「お先にどうぞ」と声をかけられる気がしますw
ちなみに私も見栄を張って「特急」に成り切るタイプです。
「鈍行」、「特急」と表現するなら、トレランの方は「のぞみ」か「リニア」ですね。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する