はるか昔、光も影もまだ分かたれぬ混沌が渦巻く中、静かに三柱の神が現れた。 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)は、澄んだ声で告げた。 「天地を分け、秩序を与えよう」 その言葉が響いた瞬間、霧のような空間に天と地が芽吹くように広がっていく。
時が経ち、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の二神が、天の浮橋に立った。 「この槍で混沌をかき混ぜ、大地を作るのです」 と伊邪那岐命。 二人が天沼矛(あめのぬぼこ)を回し、滴り落ちた雫が渦を巻き、小さな島――淤能碁呂島(おのごろじま)が誕生した。 「我らの家、そして国の始まりです」伊邪那美命は微笑み、二人は島に降り立った。
やがて、八つの大島が生まれ、海や山、川の神々が次々と姿を現す。だが、火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)の誕生は悲劇を運び、伊邪那美命は炎に命を奪われる。 「伊邪那美…必ず連れ戻す」 嘆きの中、伊邪那岐命は黄泉国(よみのくに)へ向かった。しかし、そこにいたのは変わり果てた妻だった。 「もう振り返らないで…」 その声を振り切って逃げ帰った伊邪那岐命は、禊を行い、その浄めの水から天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)が生まれた。
光と嵐
高天原(たかまがはら)では、太陽神天照大御神が光を放ち、建速須佐之男命は嵐を司った。しかし、その荒々しさは次第に高天原を乱し、ついには地上へ追放される。 出雲国(いずものくに)の川辺で、老夫婦と泣く娘櫛名田比売(くしなだひめ)に出会った建速須佐之男命は尋ねた。 「何があった」 「八岐大蛇(やまたのおろち)が、毎年娘を奪っていくのです…」 智略と剣をもって八岐大蛇を討ち果たした須佐之男命は、尻尾の中から不思議な剣――草薙剣(くさなぎのつるぎ)を得た。
国譲りの誓い
時が流れ、大国主神(おおくにぬしのかみ)が葦原中国(あしはらのなかつくに)を治める時代が訪れる。天照大御神は使者を送り、国を譲るよう求めた。 「我が国を…天の御子に?」 静かな逡巡の末、大国主神は頷いた。 「この地を託そう。人々の幸を守るために」 こうして、天照大御神の孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天より降り、稲穂と神器を携えて地に降り立つ――天孫降臨(てんそんこうりん)である。
…(天孫降臨の場面)… 瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)は、稲穂と三種の神器を手に高天原から葦原中国(あしはらのなかつくに)へ降り立った。 その道すがら、駿河の国で美しい姫と出会う。名を木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)という。 その姿は、まるで山桜の花が一斉に咲き誇るように清らかで、尊の心を一瞬で奪った。
「私と共に歩んでほしい」 尊の求婚に、佐久夜毘売は頬を染め、こう答えた。 「父・大山津見神(おおやまづみのかみ)にお許しをいただければ…」
父神は快く承諾し、姉である石長比売(いわながひめ)も添えて嫁がせた。だが尊は、容姿の醜い石長比売を送り返してしまう。 これを知った大山津見神は嘆き、こう告げた。 「石長比売を娶れば、天孫の命は岩のように永く続いたであろう。だがそれを退けたゆえ、その寿命は花のように儚くなろう」
炎の試練
やがて佐久夜毘売は懐妊したが、尊は「一夜の契りで身籠もるとは、我が子ではあるまい」と疑いを向ける。 姫は怒りと悲しみに震え、誓いを立てた。 「もしこの子が天孫の御子であれば、火の中でも無事に生まれるでしょう」
こうして産屋に火を放ち、燃え盛る炎の中で三柱の御子――火照命(ほでりのみこと)、火須勢理命(ほすせりのみこと)、そして彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)を無事に出産した。 炎が鎮まった時、尊は己の疑いを恥じ、姫と御子たちを深く敬うようになった。
時は流れ
彦火火出見尊の子孫がやがて日向の地を治め、その末裔として神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)が生まれる。
神武東征
世代が巡り、日向国(ひゅうがのくに)に生まれた神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)(後の神武天皇)は、一族を率いて東へ進む決意を固めた。 「大和こそ、国を治める地だ」 幾多の戦い、嵐、そして仲間との別れを越え、ついに彼は橿原(かしはら)の地に都を開く。 朝日が昇り、新たな時代が始まる。神々の物語は、人の世の物語へとつながった。
はじめまして
こんばんは
開いてビックリ
古事記、久し振りに読みました
縄文人と弥生人の戦いの後の棲み分け
フォッサマグナを経ての日本の成り立ちみたいなものまで入っていて
深掘りしながら散策していくと面白いんですよ
良くあの時代にこんなの書けたなぁって
日本の神様って、凄く人間らしいですよね
喧嘩して仲直りして時々は怨んだり妬んだり
なので民俗学、私は好きです
日本書紀まだちゃんと読んでないの思い出しちゃいました💦
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