避難小屋の思い出

小学生低学年の頃、大人引率のもと親戚の子供ら何人かと久住に登った時のことです。

途中で天気が急変し、暴風雨が吹き荒れそこここで落雷のドーンという音と地響きが鳴り響き、もう怖くてたまりませんでした。
引率の大人の掛け声のもと、涙と雨でぐちょぐちょになりながら避難小屋まで転がるように走ったのを今でもよく覚えています。

小屋の中で震えていたら、隣にいた一つ上のくるま君（仮名）が、被っていたジャイアンツのキャップの折れたツバを見せてきて、走っていた時俺のこのツバにさっき雷が落ちたんだけどギリ助かったと自慢げに話すのを聞いて、ああ次は僕の番だ、僕は帽子を被っていないから今日雷に打たれて死ぬんだとさらに震えと涙が止まらなくなったものです。

それから数十年。昨日そのトラウマの避難小屋に行くことができました。
幼少期の強烈な体験だったこともあり、小屋に入ると過去の自分と邂逅するような不思議な感覚でした。

もしその避難小屋がタイムマシンになってあの時の小学生の自分に会うことができたら、今日死なないこと、残念ながら夢だった映画監督にはなれなかったけど、まぁほどほどに健康で、気楽にサラリーマンをやっていること、せっせと山に登ってることを伝えたかったです。

あと、キャップのツバに雷が落ちたという誰も得しない嘘で僕を震え上がらせたくるま君（仮名）は、数十年後、詐欺と恐喝で捕まって刑務所に入ったから安心しろと肩を抱いてあげたかったです。