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更新日:2017年05月06日 訪問者数:24273
雪山登山 IT
雪山でスマホを使う場合の傾向と対策
keizi666
冬は電子機器に厳しい季節です。冬はどうしてもバッテリーの性能が落ちてしまい、特にiPhoneは電源が落ちてしまうことがあります。

ただしこれはスマホに限ったことではなく、GPS専用機だって厳冬期は2本で500円もするようなリチウムイオン乾電池(使い捨て)を使います。アルカリやニッケル水素は冬は使い物にならないからです(さすがにいきなりシャットダウンはしないが稼働時間は短くなる)。

冬山でもスマホを使えないわけではありません。特性を理解して冷えに注意すれば雪山で役立てることも可能です。

当方は夏も冬もスマホに『ジオグラフィカ』を入れて使っています。厳冬期だって使えます。
先に結論を
■Android
大抵の端末は低温に強く、厳冬期でも電源が落ちることは少ないでしょう。手持ちの端末だとHUAWEI P9だけが低温時に動作がおかしくなることがありましたが、XPERIAやAscendG6、Galaxy、arrowsM03などは冷凍しても問題ありませんでした。

■iPhone
冷凍庫で1時間冷凍しただけでは電源は落ちませんが、写真撮影など負荷が大きい処理をするとシャットダウンします。対策としては、
・できるだけ冷やさない(ミドルウェアのポケットなどに入れる)
・写真を撮るときは1枚撮ったら温め、長々と冷気に晒さない
・冷えているときは一度に負荷をかけない(写真を撮るときは10秒程度あける)
・バッテリーの残量を多く保つ。朝一の段階で100%にしておく。出来るだけ50%を下回らないようにする
・iPhone7はこれまでのiPhoneより寒さに強い様で、-15℃程度ならガンガン使ってもシャットダウンしませんでした。

という感じです。

以下、詳細。
低温でスマホの電源が落ちてしまうメカニズム
バッテリー残量100%のiPhoneを30分間冷凍庫で-20℃以下に冷やしてみました。でも電源は落ちませんでした。Xperia Z5 Compactは防水で強かろうと思い、同様に残量100%で1時間冷凍しましたが平気でした。

一方で、バッテリー残量20%程度になったiPhoneを気温5℃くらいで使っていたらシャットダウンしてしまいました。-20℃で平気だったのに5℃で落ちるのはなぜか?

実は単純に気温で電源が落ちるわけではありません。温度センサーで電源を落としてるんだと思ってる人もいますが、違います。温度センサーなら5℃で落ちることがあったり冷凍しても落ちなかったりする現象の説明がつきません。

正解はこうです。
『低温と高負荷によってバッテリーの電圧が一定より下がるとシャットダウンします』

リチウムイオン電池の電圧は電力を消費すると緩やかに下がっていき、一定まで下がるとバッテリーの保護回路が働いて給電を止めます。本当に空にしてしまうと壊れてしまうからです(リチウムイオン電池の性質です)。

壊れない限界の電圧(例えば3.0V)が残量0%で、それをちょっとでも下回ると自動シャットダウンします。

また、温度が低い状態では電圧低下が早まります。リチウムイオン電池はニッケル水素やアルカリと比べて低温に強いのですが、それでも-20℃では33%速く減ります。低温になると電圧が下がってしまうのです。

常温で残量が20%あっても、低温によってバッテリーの電圧が下がればシャットダウンしてしまいます。

低温環境でiPhoneをシャットダウンさせない為にはバッテリー残量を多く残しておく事が重要です。例えば50%以上。トラックログを記録してバッテリー残量が10%くらいになると、残り少ないバッテリーの電圧は規定ギリギリかも知れません。そこで外気に晒してバッテリーが冷えてしまうと電圧が下がってシャットダウンしてしまうわけです。充電する余裕があるなら長めの休憩時や行動中でも充電してください(濡れに注意)。

バッテリー残量を多めに保てば、低温でもシャットダウンしにくくなります。
それでもiPhoneは低温に弱いですけどね
iPhoneを-20℃で30分冷凍する実験をバッテリー残量別に3回行ないました。
機種はiPhone5と5sです。残量50%でも単に冷凍しただけでは電源は落ちませんでした。

残量100%
冷凍後も100%でした。電源は生きていましたが写真を5枚撮った後にジオグラフィカを起動したら途中で電源が落ちました。
保温後に再起動したら残量は100%ありました。

残量90%
83%に低下後、写真を3枚撮ったら電源が落ちました。
すぐに再起動したら61%と表示されました。保温後の再起動で88%に戻りました。

残量50%
5%に低下したけど冷凍だけでは落ちませんでした。
ジオグラフィカの操作をしたらシャットダウンしました。
体温で保温して3分後に起動→35%。でもすぐまたシャットダウンしました。
再度保温して起動したら47%に戻りました。

・残量が多い方が低温耐性は高いのですが、100%でも-20℃で凍らせてしまうと写真撮影などでシャットダウンしてしまいます。
・0℃、-5℃、-10℃くらいだと残量による落ちる落ちないが出てくると思います。残量は多めに保ってください。
・iPhoneは冷やさないのが大事です。もし冷やしてしまったらカメラ撮影など負荷を掛ける前に温めましょう。寒いときは写真は連写せず、少し間をあけて撮ってください。

・冷えてしまったiPhoneはバッテリーから電気を取り出すのが遅くなってしまう為に、負荷を掛けると一時的に電圧が下がってシャットダウンしてしまうと考えられます。

なお、Androidの場合はXPERIAやarrowsで試しましたが-20℃で1時間冷凍しても全く問題なく動作します。Androidの方が低温耐性は高い様です(機種によるとは思いますが)。

Androidはバッテリー容量が大きいのでiPhoneより低温に対して電圧低下の耐性があります。それでも残量が少なければ電圧が規定を下回りますから、多く保つのは大事です。
低温によるシャットダウンを避けるには
・リチウムイオン電池とはいえ冷やさないようにしましょう。
・残量が少なくなると電源が落ちてしまうので、残量は多めに保ちましょう。
・写真を撮るときは連写せず間をあけて撮ってください。1枚撮ったら少し温めてから撮りましょう。
・Androidは低温に強いので厳冬期はAndroidを使うのもおすすめ。
・iPhone7はこれまでのiPhoneより低温に強いようです。-15℃くらいなら問題なく連写なども出来ました。

ただし、一般的なスマホの動作可能温度は0〜35℃です。保管可能な温度(電源を切った状態)は-20〜45℃となっています。低温環境での充電や、45℃を越えるような高温はバッテリーそのものを劣化させます。

いくら使えても、その様な環境で長時間使うのは避けた方がいいのは確かです。
耐低温、MIL規格なスマホ
MIL規格という米軍の軍用品規格がありまして、スマホでも対応製品がいくつかあります。登山に使う場合はMIL規格対応製品を選ぶというのもよいでしょう。防水防塵のスマホはよくありますが、MIL規格の場合は耐衝撃と耐寒耐高温などにも対応しています。

以下、MIL規格に対応している主なスマホです。価格は2016年12月現在のものです。

TORQUE G02
http://www.kyocera.co.jp/prdct/telecom/consumer/g02/
au版です。MIL規格19項目と独自試験2項目に対応し海水に浸しても大丈夫なスマホです。ホームや戻るボタンがハードウェアキーになっている為手袋でも使いやすいそうです。白ROM価格で65000円前後となっています。Android 5.1。

TORQUE G01
G02の前のモデルです。Android 4.4。白ROMがおよそ25000円前後です。これもau版です。MVNOで使いたい場合はmineoになります。

arrows M03
http://www.fmworld.net/product/phone/m03/
SIMフリー。MIL規格14項目に対応しています。いくつかのMVNOで販売されています。デザイン的にTORQUEほどごつくないので普段使いしやすいでしょう。Android 6.0搭載でMVNO価格は3万円弱と安めです。ただしGPS精度はそれなりです。

Galaxy Active Neo SC-01H
https://www.nttdocomo.co.jp/product/smart_phone/sc01h/
docomo版です。MIL規格21項目と独自試験4項目の25項目に対応しています。Android 5.1搭載。白ROM価格は65000円弱みたいです。docomo版なのでMVNOの場合はIIJ mioなどから選べます。

GALAXY S5 Active
https://www.nttdocomo.co.jp/product/smart_phone/sc02g/
docomo版。MIL規格18項目対応です。Android 5.0搭載。価格は5万〜6万円程度です。

arrowsM03を持っていますが、耐久性については文句はありません。本体もがっちりしており頑丈そうです。主にお風呂で動画を見るのに使っています。

ただ、GPS精度は値段なりで谷間で測位しにくかったり、位置がずれることがあります。スマホのGPS精度は端末価格次第なので仕方ないかもしれません。そこそこの精度と理解して使うなら十分使えるレベルだと思います。

また、わざわざMIL規格とは言ってませんがXPERIAはなかなか堅牢な機種で、-20℃でも問題ないし防水防塵です。GPS精度も高いので登山に使うにはおすすめの機種です。
実際に使った最低気温はマイナス20℃
私がiPhoneを使った環境で一番寒かったのは、厳冬期(1月)の八ヶ岳ですが気温は-20℃で風速15m以上の強風が吹いていました。体感温度は-35℃。

オーバーグローブを付けていても指先が冷え、バラクラバなしだと顔が凍傷になる気温です。

その環境でもサブザックに入れたiPhone6plusやウェアの内ポケットに入れたiPhone5sでトラックログを記録する事が出来ました。朝十分に充電しておいた為と思われます。
ただし、ある程度行動した後に写真を撮るためiPhone5sを外気に晒したところ1分もたずに電源が落ちてしまいました。7月のモンブラン(4808m)でも使いましたが、山頂で写真を撮っていたら電源が落ちてしまいました。

どちらの場合もポケットにしまってしばらく温めた後は起動しました。起動後にGeographicaを再起動してトラックログの記録も再開しています。

外気の気温が5℃未満になってきたらウェアのポケットなどあたたかいところに仕舞うのが無難です。
三種の神器
冬山でスマホを使う場合は防水ケース、ストラップ、タッチペンが必要です。

・防水ケース
iPhone6s以前など防水でない機種の場合は融けた雪や結露で濡れて壊れるのを防ぐ為に防水ケースが必須です。多少は保温性も高まります。

・ストラップ
オーバーグローブをしてポケットの中にあるスマホを取り出すのは難しいです。ストラップを付けていれば引っ張り出す事が出来るので便利です。
また、パウダースノーにスマホを落とすと沈んで探すのが大変です。落とさないようにストラップを付けておくとよいでしょう。
・タッチペン
スマホ対応の手袋やオーバーグローブもありますが、感度が悪かったり細かいタッチが出来なかったりして使い勝手が悪いです。タッチペンならオーバーグローブをしていても使えますし細かい操作もできます。5cmくらいの短いタッチペンを紐でストラップの金具に結んでおくと紛失防止になります。

上記対策をした上で、内ポケットに入れておけば冬山でもスマホでGPSを使えます。冷えて電源が落ちたら、慌てず騒がずしばらく温めてから再度電源を入れて、可能なら充電してください。
充電してしまうのも有効
バッテリーの残量があるのに電源が落ちてしまった場合は、携帯充電器に繋いで充電してしまうのも有効です。充電中は本体が少しあたたかくなるので速く復活します。

ただ、極度に冷え切った電池をいきなり充電すると事故や故障の原因になる事もあるそうです。素手で触れないくらい冷え切ってしまった場合は一度ポケットに入れるなどして、体温で適度に温めてから充電してください。
謎の高温現象
1年ほど前の話なので現在の機種やOSでどうかは判りませんが。防水ケースに入れたiPhone5を雪山で使ったところ、『高温注意』と表示されて操作ができなくなってしまいました。後で確認したらトラックログは記録されていたのでアプリ自体は動いていたようですが、操作出来ないのは困ってしまいます。

実際にiPhoneが高温になっているかというとそんな事もなく冷え冷えでしたので、意味がよくわかりません。もしかしたら気温が低いときはiPhone自体が発熱して電源を落ちなくする、みたいな機能があるのかも知れません。または動作範囲外の温度になっているのを、高温でも低温でも『高温注意』と表記しているだけか。

いずれにせよ高温注意現象が起きたら正常な温度になるまで放置しておくしかありません。
まとめ
・気温が0℃を下回る晩秋以降、山でスマホを使うときは冷やさないように注意してください。バッテリーの残量も多め(50%以上)を保ちましょう。

・もしバッテリー残量があるのに電源が落ちてしまったら、慌てずに温めてから再起動してください。

・電源が落ちてしまった場合、充電して再起動するのも有効です。充電中はコネクタ周辺の濡れに注意してください。濡れているとショートして壊れます。

・防水ケース、ストラップ、タッチペンは必須です。

・スマホは登山用の道具ではありません。ただ、低温や衝撃、水分から守るための工夫をすれば使えます。

・-30℃を下回るような厳冬期は行動中に何度か電源が落ちる事があると思いますし、最悪故障することも考えられます。その辺は覚悟の上自己責任で使って下さい。
・スマホが壊れたり使えなくなったりしたときのために、地図とコンパスを携行し、概念図や計画を頭に入れておくなどスマホだけに頼り切らないようにしましょう。

特性を理解した上でお使い下さい。
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登録日: 2012/10/28
投稿数: 167
2015/11/12 22:03
 高温注意
こんにちは
DIY GPSを愛用しているものです。
同じ経験を冬の四阿山で経験しました。
iPhoneを外に出した瞬間に「高温注意」
吹雪で道をロストしている中で本当に焦りました。
なんとか地図見て下山することができました。

スマホは本当に寒さが課題ですね
登録日: 2010/12/2
投稿数: 154
2015/11/13 11:16
 Re: 高温注意
ご使用ありがとうございます。高温注意の場合、再起動してもすぐには直らないのが困りものですね。僕はテスト用に2,3台持って行くのでダメなら他のを使おう、みたいに気楽ですが1台だけだと焦ると思います。

本来は0℃以上が動作温度のものを無理に使おうって事なので、問題が出るのは当然なんでしょうけど。

ただ、それで慌てたり恐怖を感じたりするともっと危険なので、慌てず騒がず落ち着いて復帰を待つ余裕が大事だと思います。もしくは耐低温をスペックで謳っているAndroid端末を使うか、ガーミンでしょうか。
登録日: 2013/7/4
投稿数: 209
2015/11/14 18:18
 タッチペン
こんにちわ。

山スマホをこよなく愛する者の一人です
コチラの記事を拝見して、「タッチペン」は目からウロコでした。

以来、雪山には縁遠い低山徘徊なのに、百円ショップでタッチペンを3本も買ってしまいました。伸縮式やボールペン兼用など、あれこれ見つけては購入しています。

最近スマホを買い替えたので、旧端末でGeographicaを試してみようと思っています。今はYAMAPを試してますので、次は必ず。フィードバックできればと思っています。(あ、Kamolandさんには、内緒ですよ。)
登録日: 2010/12/2
投稿数: 154
2015/11/19 13:50
 Re: タッチペン
Kamolandさんは地図ロイドですねw。YAMAPはセフリだったと思います。
タッチペンがあれば手袋をしていても使いやすいのでおすすめです。
登録日: 2009/1/31
投稿数: 7
2016/3/7 15:35
 手袋ごしのiphoneの操作
いまアイフォンをいじっていて気が付きました。OSは9.2.1です。ロック状態でホームボタン長押し。Siriが起動し「じおぐらふぃか」と発声するとアプリが起動しました。手袋ごしでもホームボタンは押せるので地図と現在地の確認はタッチパネルなしでいけそうです。パスコードオフの設定です。カメラでも使えます。シャッターを+ボタンに設定しておくと、+ボタンで撮影できました。
登録日: 2010/12/2
投稿数: 154
2016/9/20 15:12
 Re: 手袋ごしのiphoneの操作
ただ、残念ながらsiriはオフラインになると使えないんです。
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