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更新日:2021年03月05日 訪問者数:463
山スキー/ボード 技術・知識
八甲田モッコ沢の雪崩 気象データから雪崩の危険を気象予報士が解析。 原因は氷雨? (2021年2月21日)
taityoooo
北斜面。硬い融解凍結クラストの下の敏感な弱層はどうしてできたのか?
この動画の上から80cmの弱層
https://www.youtube.com/watch?v=PuJFFNUMF44
シャベルカットテスト(シャベルシアーテスト)

この動画の上から100cmの弱層
https://www.youtube.com/watch?v=5kSYj1eD2F4
ルッチブロックテスト

硬い融解凍結クラストの下の敏感な弱層はどうしてできたのか?
気象予報士隊長Oが気象庁過去のアメダスデータなどから解析。
八甲田モッコ沢の雪崩の発生地点の標高1160m北斜面
八甲田モッコ沢の雪崩の発生地点の標高1160m北斜面の日本雪崩ネットワーク調査データを引用します。
https://snow.nadare.jp/news/2021/000032.html
SPIN(断面図)の情報から融解凍結クラストに挟まれたザラメ系の層が雪崩を引き起こした弱層でした。
発生状況(日本雪崩ネットワーク調査データより)
尾根の縁辺の傾斜が変わる部分で破断。
破断線の右側には雪庇らしいものが見える。
南西風で吹き溜まりが出来る斜面。
積雪観測情報(日本雪崩ネットワーク調査データより)
調査位置は破断面より1m上部
SPIN積雪断面図(日本雪崩ネットワーク調査データより)
深さ80cmから90cmまでの硬い層(融解凍結クラスト)に挟まれた85cm附近に脆い弱層があります。
サンドイッチ構造です。
積雪観測位置
積雪観測情報の緯度経度よりプロット(赤印)
気象庁アメダス酸ヶ湯(標高890m)データ
この弱層が何時できたのかアメダス酸ヶ湯(標高890m)の気温、降水、積雪、風、日照のデータを見てみる。
気象庁アメダス酸ヶ湯のデータ
2月6日から2月21日まで
気象庁アメダス酸ヶ湯のデータ
2月15日の1時間情報、午後から雨が降り始めた。
気象庁アメダス酸ヶ湯の位置(赤印)
南西方向に山があるため南西風は西に偏向する位置にある。
2月12日から三日間、晴れた事は、日照時間よりわかる。12日8.9時間、13日9.1時間、14日4.7時間。(緑円)
気温も上昇し最高気温が13日5.3度、14日5.4度。(オレンジ円)13日10時から16日1時までプラス気温だった。270m標高が高い発生地点でもプラス気温で積雪の表面は融解した。
2月13日の天気図
高気圧に覆われ晴れて気温が上がった。
15日は発達した低気圧が通過、最高気温6.7度。(オレンジ円)降雪量0cmなのに降水量が23.5mm(赤円)で雨が降った。6.7度という気温から発生地点でも雨が降った事は間違いない。
雨は15日の昼過ぎから降り始めた、風が強まり、夜間には氷雨(強風により持ち上げられた過冷却水)に変わったと推測される。
この低気圧による氷雨の痕跡は北海道の山で何ヶ所も確認されている。
過冷却水は物にぶつかった瞬間凍りつくので雨で濡れた雪を閉じ込める。
2月15日の天気図
低気圧前面の南東風により暖気流入。
過冷却水は物にぶつかった瞬間凍りつくので雨で濡れた雪を閉じ込め。
その上16日の酸ヶ湯で最大風速は22.9m。(青円)発生地点では30mを超える西よりの風が吹いたと推定される。
強風によるウインドクラスト(融解凍結クラスト)が完全に濡れた雪を閉じ込めてしまったのだろう。

その後、アメダス酸ヶ湯の最低気温は16日11.3度、17日11.5度、18日11.1度(紫円)を記録しており雪表面の冷却による温度勾配により濡れた雪はザラメ状になったと考えられる。
また気温上昇で融解した層も凍結し下部の融解凍結クラストを形成し
融解凍結クラストにサンドイッチされて弱層が作られた。
2月16日の天気図
低気圧は猛烈に発達し寒気が流入。
ウインドクラスト(融解凍結クラスト)の上部の締まった雪の層はどうしてできたのか?
アメダス酸ヶ湯の降雪量は16日から20日まで87cm、発生地点付近は南西の風で吹き溜まり易い地形であることから1mの積雪になっても不思議ではない。
2月20日の天気図
低気圧が北海道の北を通過し暖気が入ったため雪面は締まって硬くなった。
20日に低気圧が通過し暖気により締まった硬い層ができ、21日午前中に寒気により15cmの新雪が積ったのは明らかです。
21日13時頃、雪崩死亡事故発生。新雪が雪崩たのではなく締まった硬い層が雪崩た。
2月21日天気図
寒気が流入し午前中、雪が降り15cmの新雪積雪となった。
硬い層(融解凍結クラスト)に挟まれたサンドイッチ構造の弱層が出来た原因は。
1.発達した低気圧がもたらした気温上昇と雨。
2.強烈な風による上昇気流で過冷却水が降ったこと(氷雨)で湿った雪を閉じ込めてパッキングした。「過冷却水(氷雨)が降ると木の枝が氷でパッキング」
3.強風によりウインドクラスト『融解凍結クラスト(強風の摩擦熱)』ができた。
4.寒気で雪の表面温度が下がり、雪の中の急な温度勾配により湿った雪がザラメ化(霜柱化)したと推定。
5.その後のまとまった降雪があり、時間経過と暖気による圧密でスラブ化(板状化)し危険状態になった。
あとがき
日本雪崩ネットワーク調査データを参考にさせていただきました。有難うございます。
この後、北海道でも雪崩事故が2件は発生している、この発達した低気圧(15〜16日)が関係すると思われます。

晴天の後の嵐、その後はしばらく注意が必要です。
寒気が入っていても雪崩は発生します。
ズボ足で歩ける硬い層だから安全ではありません。


硬い層の下の弱層チェックは掘らなきゃわかりません。
『弱層テスト』コンプレッションテストは手が痛い
シャベルカットテスト(シャベルシアーテスト)かルッチブロックテストが良いと思います。
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