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更新日:2023年08月02日 訪問者数:8394
登山・ハイキング その他
高校登山部の登山競技とは?
にっしー(べいびー)
日記のほうで標題に関してまとめてみたことを紹介していたが、ヤマノートに載せてもよい内容かと思われるので、ここに掲載してみることとする。
高校登山部で大きなウェートを占める登山大会および登山競技
高校登山部では、平生のクラブ活動で体力トレーニングなどを行うほか、休日や長期休暇中には、一般登山者や社会人山岳会同様、日帰りやテント泊などで山行を行っている。

ただ、高校登山部、特に高体連に加盟している高校登山部では、それらの通常の登山活動のほかに、大会への出場ということが大きなウェートを占めている。

高校生の登山大会は、通常1泊ないし2泊程度の山行で、単に各校が集まって一緒に登山をし、登山経験を豊富にするだけのものもあるが、登山競技なるものが行われる大会もある。毎年6月上旬頃に各都道府県で高校総体が行われ、それが8月に行われる全国高校総体(インターハイ)につながることになる。また、数県で構成されるブロックごとの大会もあり(広島県の場合は中国ブロック)、それの予選となる県大会も開催される。
登山競技とは?―かつての国体山岳競技
現在はスポーツクライミング競技に取って代わられたが、かつて国体(国民体育大会)に山岳競技なるものがあった。

成年種別にあっては縦走・踏査・登攀の3種目、少年種別(高校生)にあっては縦走・踏査の2種目で競われた競技で、縦走は一定の重量のザック(少年男子でおおむね1人平均13〜14kg)を背負い、通常山麓から山頂までといったような登りの標高差のあるコースの所要時間を競う競技、踏査は縦走よりは軽い重量のザックを担ぎ、アップダウンのある山間の一周コース中に設置されたポイントの場所を地図上で正確に記入し、なおかつ所要時間も競う競技、登攀は一定の高さの岩壁(最初は自然壁、後には人工壁)を登る所要時間を競う競技であった。いずれも団体競技で、3人あるいは2人のチームで競われた。
ちなみに、縦走上位チームの体力レベルは、らくルートまたはヤマプラ(山と高原地図)標準タイムの×0.25くらいであったかと思われる。

初期の頃には縦走種目における装備・記録書・天気図、踏査種目における読図テスト問題といったようなスポーツ競技には似つかわしくないものも含まれていたが、だんだんと純化されたスポーツ競技になっていった。

しかし国体のスリム化が求められる中で、コースの設定・整備や役員の配置に負担のかかる踏査・縦走が廃止され (2002年の高知大会以降、踏査競技が廃止されて少年種別にもリードクライミングが導入され、2008年の大分大会以降は縦走競技も廃止されてボルダリングが導入された)、現在はクライミング競技のみが残り、それもスピード種目のような所要時間を競う競技ではなく、リードとボルダリングの2種目で、一定の制限時間の中で到達ポイントの高さを競う競技となっている。
国体山岳競技とは異なる高体連大会での登山競技―具体的な審査基準
インターハイを頂点とする高体連の大会では、かつての国体山岳競技のように登山活動の一部を抽出して競技化するのではなく、日頃の登山活動の向上を目指して競技化が図られていると言ってよい。すなわち、登山に必要な体力・技術・知識のあらゆる面を考慮して、独自の採点基準を設けている。

具体的にはインターハイでは次のような審査基準に拠っている。(各ブロックの大会や都道府県の大会もこれに準拠しているであろう。)すなわち、体力40点・歩行技術10点・装備所持(医薬品を含む)5点・設営技術5点・炊事技術5点・天気図作成4点・自然観察(登山用語・地形図知識)テスト2点・救急法テスト2点・気象知識テスト2点・共通課題(山域概要)テスト2点×3人・計画書作成2点・記録書記入2点・読図技術10点・マナー5点の計100点満点で採点されている。

そして、大きな比重を占めている体力点は、かつての国体山岳競技の縦走種目のようにタイムレースをするのではなく、それをクリアすれば時間点としては満点になる規定時間を設けながら、各チームの行動を山中で審査員が観察しながら、A(普通に歩けている)・B(やや劣っている)・C(劣っている)のランク付けで審査するものとなっている。主観的と言えば主観的だが、複数の審査員が観察するので、おおむね妥当な審査になっている。

ただ、規定時間の設定に関しては、緩すぎればチーム間の差がつかないだろうし、きつすぎれば各チームの行動が駆けるのに近いような異常な登山行動になってしまうだろうから、ちょうどいい具合の時間に設定しなければならないだろう。

なお、都道府県レベルの大会では、審査員の負担も考慮し、体力点をタイムレースのタイムのみで評価する場合もある。広島県の場合は、インターハイ予選となる県総体では、代表校を1校に絞る必要から、トップ満点方式のタイムレースとし、中国大会の予選となる県大会では、複数の代表校を選べばよいので、規定時間内満点方式のタイムレースとしている。

審査基準の詳細は毎年全国高体連登山部から発行されている『登山部報』の中に『全国高等学校登山大会成績評価実施要領』(審査基準と指導目標、審査確認事例)として掲載されているが、Web上で閲覧できるものとしては、広島県高体連登山専門部ホームページ中の資料集に、2020年発行の『登山部報NO.63』掲載の上記要領ほかが掲載されている。
インターハイ登山大会審査基準の変遷、および登山競技の背後にある理念
上記審査基準は2015年の滋賀大会から実施されているもので、2014年以前は次のような審査基準となっていた。体力30点・歩行技術10点・装備所持10点・設営技術10点・炊事技術5点・天気図作成5点・気象知識テスト2点・読図4点・自然観察(山域概要・登山用語・地形図知識)テスト4点・救急法テスト2点・医薬品所持3点・計画書作成6点・記録書記入4点・マナー5点の計100点満点。

2015年の改定により、体力点や読図技術点の配点が大きくなり、また登山行動の在り方も、全チームが一緒に行動する隊行動から、各チームがそれぞれのペースで行動するチーム行動(このほうが実際の登山形態にも近い)に改められたので、スポーツとしての競技性が高められたと言える。

実際、私自身2014年以前に3回審査員を務めた(2004島根大会・2006奈良大会・2007佐賀大会)が、隊行動の中で各チームの体力を審査するのは苦労したし、私自身がチーム監督として出場した2002茨城大会では体力審査が十分でなかった(登山行動が大幅にカットされたり、隊のペースがあまりに遅かったりで、各チームの体力点の差がほとんどつかなかった)という苦い経験もある。
(2002茨城大会の状況については、末尾の山行記録を参照)

審査基準の改定に尽力された全国高体連登山部の役員諸氏には敬意を表するしだいである。

かつてはインターハイ登山大会でも、審査の客観性を高めるためにタイムレースを導入してはどうかという意見があったようであるが、昔の全国高体連登山部の会議においてそれは否決されたと聞いている。

高校登山部はあくまでも通常の登山活動の向上を指導するものであって、他のスポーツ種目のように勝ち負けのある競技を第一義とするものではない。高校生の登山活動を推進するために大会を開催し、その際により優れた登山活動ができるチームを選ぶ競技が行われるとしても、それはあくまでも通常の登山活動の向上に資するためである、といったような理念が先輩諸氏にはあったものと思われる。
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