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更新日:2024年03月21日 訪問者数:447
山スキー/ボード 技術・知識
また起きたガイドツアーの雪崩事故 気象予報士解説 利尻 2024年
taityoooo
また起きたバックカントリーガイドツアーの雪崩事故なぜ?
ゲストが亡くなられた。ご冥福をお祈りいたします。
8名滑走して雪崩に遭遇、1名逃げ、7名流され、3名埋没、内1名死亡、1名重症。(直前に別グループ4名滑走)
冬山登山のできない客はガイドツアーを選ぶ傾向にあり、客はゲレンデ感覚で高速で新雪滑走する事を望んでいるので、ツアー側もそのような斜面を選定する。

一方、登山の道具としてスキーを使う事は100年前から続けられており自衛隊もスキー訓練をしており。ラッセルが容易なためで、重装備で安全滑走をする事が目的であり、前者とは違う。

今回の雪崩事故の斜面は正に客が喜ぶ斜面であるが、気象的地形の罠があったので、気象予報士が解析説明いたします。
(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム「以下調査チームという」はこのように解説しています。
「雪崩が発生した斜面では、2月12〜20日までの暖気と降水、その後の気温0℃以下による融解再凍結に伴い、ざらめ雪の硬い表面が形成されたと推定された。その上に堆積した不安定な積雪層が雪崩となったものと考えられる。雪崩最上部の破断面は、尾根の風下側に吹きだまる形で堆積したこしまり雪層が破断し、傾斜の強いざらめ雪層の上を流下したことで形成されたものである。」WEB 2024年3月18日10時00分
【融解(再)凍結層(滑り面)の真上にあった弱層が弱層テスト(シャベルコンプレッションテスト)で反応しなかった訳】
調査チームはこのように解説しています。
「※シャベルコンプレッションテストについて
本テストは、積雪内の弱層を確認するために、縦横30cm高さ90cm(雪面からすべり面までの高さ)の雪柱を作成のうえ、 その上面(この場合は雪面)にショベルのブレードを乗せ、 10回ごとに強さを変化させながら最大30回手で叩いて刺激を与えることで、雪柱内に存在する弱層を破壊させるものです。
今回の弱層の破壊しやすさは、弱層2(11回で破壊)>弱層3(20回で破壊)>弱層1(破壊なし)となった。」WEB 2024年3月18日10時00分
気象庁過去の天気図
2月19日6時、日本海にいる北岸低気圧に向かって南寄りの強風が吹き暖気移流が顕著
気象庁過去の天気図に記入
2月19日18時ごろ寒冷前線が利尻島を通過する。
気象庁過去の天気図
2月19日21時ごろ寒冷前線通過が終わり寒気移流が始まる。
まず2月12〜20日の間、融解、凍結は一回ではなかったので再々々と言うのも変なので「融解凍結層」と言う。
この層は最終的には19日〜20日の雨によるものである。風が伴わない場合、雨水が積雪面に浸透し凹凸になるので一般的でその上層の積雪と接合が良く安定する。
しかし強風により雨水が積雪表面を流れると凹凸はなくなり、面つるアイスバーンが形成される。
地理院地形図に記入
雪崩場所(赤印)
南西の風が利尻山を回りこみ南ないし南南東風の強風が吹く。
地理院地形図に記入
雪崩発生区の斜面をなめるように強風が吹き
濡れた融解凍結層に磨きをかける。
今回19日〜20日の雨は北岸低気圧によるもので、この低気圧の特徴は南側では南寄りの強風が吹く、アメダス気象庁観測地点の瞬間最大風速は本泊で南南西24.2m、礼文で南22.6mの爆風が吹いており、この南寄りの強風が南向き斜面を吹き抜け、容易にアイスバーンになったと思慮できる。
19日18時寒冷前線通過後、現地では、みぞれから雪に変わり、アイスバーンとその後の積雪である上層が接着されたと推定できる、そのため2週間、落ちずに温存された。
日本気象協会の過去のアメダスデータ
2月19日本泊(利尻空港)の1時間毎の気温、降水量、風向、風速。
気象庁の過去のアメダスデータに記入
本泊、沓形、礼文、稚内の瞬間最大風速、風向。
瞬間20mを超える南よりの爆風。
調査チームの弱層テストで、融解凍結層(滑り面)とその上の層との境(調査チームは弱層1と呼ぶ)で反応が無かった訳は、自然はアバウトでばらつきが多い、弱層テストを一ヵ所に頼ったのは間違いである。
原因として上部の雪庇、強風の主流は斜面を駆け上がり、雪庇の先端を通過しており、雪庇直下はエアーポケットが存在して風が弱かった、ことが考えられる。
【まとめ】
雪庇直下では滑り面(融解凍結層)の上層に約90cmの積雪があり滑走者の刺激が到達しにくい深さである。
アイスバーンとなった滑り面(融解凍結層)と、その後の積雪がこしまり雪(板状雪塊)となった上層の薄い所を、多く(12名)の滑走者が高速でターン(落下荷重が大きい)を何度もした為、その刺激が滑り面(融解凍結層)を伝搬し、上層(板状雪塊)の間に剥離が拡がり、上層(板状雪塊)が重力に耐えきれず、雪庇直下で破断してもので、誘発による面発生表層雪崩と推定する。
【安全対策】
ゲレンデ感覚で高速で新雪滑走する事を望んでいるのであれば、雪崩エアーバックは必要装備。雪崩に流されても木に激突しないため木の無い斜面、ラインを選ぶ事が条件となるが、雪崩に巻き込まれても生存確率が上がる事は確かだろう。
参考WEB(文献)
(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム 事例/2024/03-04-利尻山
(2024年3月18日10時00分 引用)
https://avalanche.seppyo.org/snow/modules/bwiki/index.php?%BB%F6%CE%E3%2F2024%2F03-04-%CD%F8%BF%AC%BB%B3
(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム撮影
破断面写真。
(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム作成
破断面観測結果。
(公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム撮影
破断面観測写真。
公社)日本雪氷学会北海道支部雪氷災害調査チーム作成
雪崩位置図。
※批評は世の中の進歩につながる。雪崩研究が進み、誰もが安全にバックカントリーを楽しめる事を願っています。
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コメント

とても興味深い内容でじっくり読ませてもらいました。ありがとうございます。
ただ「冬山登山のできない客はガイドツアーを選ぶ傾向にあり、客はゲレンデ感覚で高速で新雪滑走する事を望んでいるので、ツアー側もそのような斜面を選定する。」の内容にはどうしても同意出来ません。
ガイドであれ一般登山者であれ、雪崩予測は不確実な状況認知や不確実な人間が判断して行動するしかありません。
ここは雪崩ると分かっていて入る人はいないように、彼らはリスクが低いと判断した何かしらの理由があったハズです。
あとから雪崩やすいコンディションだったというのは認知バイアスのなにものでもありません。

生意気なこと書いて申し訳ございません。
2024/4/8 14:46
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