懸垂下降時の事故は多い
懸垂下降の失敗は簡単な場所でも死亡事故に直結してしまいます。
本番(本チャン)で難易度の高い壁を登ったとしても、ごく簡単な場所で失敗して命を落としたら何にもなりません。
それらの事故を統計的に細かく分析した訳ではありませんが、支点の構築が悪くてロープがすっぽ抜けたり、下降器やロープの取り扱いを間違っていたり、バランスを崩してパニックになって握る場所を間違えたり、その他さまざまな要因で事故が発生していると思われます。
本番(本チャン)で難易度の高い壁を登ったとしても、ごく簡単な場所で失敗して命を落としたら何にもなりません。
それらの事故を統計的に細かく分析した訳ではありませんが、支点の構築が悪くてロープがすっぽ抜けたり、下降器やロープの取り扱いを間違っていたり、バランスを崩してパニックになって握る場所を間違えたり、その他さまざまな要因で事故が発生していると思われます。
やっぱりバックアップは必要
懸垂下降という技術はある程度やれば確立します(繰り返しの訓練は必要ですが)。
若くて元気で朝から晩まで登攀のことしか考えていない人なら、難易度の高い空中懸垂であろうとリッジ上での強風時であろうと降雪時であろうと「懸垂下降は簡単だ」と言ってもいいかも知れません。ゆえに、そういう人にとっては、「懸垂下降は最も安心できる登山技術」ですし、その意味では通常は「バックアップ」は必要ないかも知れません。まあ、ヨーロッパの山岳ガイドのようなレベルの人たちであればですが。
しかしながら、私のように昔山を真剣にやっていたけれど久しく遠ざかっている中高年であったりすれば、やっぱり懸垂下降のときの「バックアップ」は必要だと私は考えます。
この「バックアップ」というのは、いわば、「フェイルセーフ(fail safe)」とか「フールプルーフ(fool proof)」の具現化そのものです。
若くて元気で朝から晩まで登攀のことしか考えていない人なら、難易度の高い空中懸垂であろうとリッジ上での強風時であろうと降雪時であろうと「懸垂下降は簡単だ」と言ってもいいかも知れません。ゆえに、そういう人にとっては、「懸垂下降は最も安心できる登山技術」ですし、その意味では通常は「バックアップ」は必要ないかも知れません。まあ、ヨーロッパの山岳ガイドのようなレベルの人たちであればですが。
しかしながら、私のように昔山を真剣にやっていたけれど久しく遠ざかっている中高年であったりすれば、やっぱり懸垂下降のときの「バックアップ」は必要だと私は考えます。
この「バックアップ」というのは、いわば、「フェイルセーフ(fail safe)」とか「フールプルーフ(fool proof)」の具現化そのものです。
魔が差すということもある
山での事故は、「魔が差した」としか思えないこともあります。
しかしながら、それは、不可抗力ということではなく、人的要因を主体とした様々なことが複合的に結びついて事故に至らしめるという不幸を意味します。
最初にも書かせてもらったように、懸垂下降の失敗は簡単な場所でも死亡事故に直結してしまいます。つまり、失敗は許されません。どんなベテランでも「魔が差す」こともあり得ます。それらを防止する考え方が「バックアップ」です。「自分の命は自分で守る」と言い換えられると思います。
しかしながら、それは、不可抗力ということではなく、人的要因を主体とした様々なことが複合的に結びついて事故に至らしめるという不幸を意味します。
最初にも書かせてもらったように、懸垂下降の失敗は簡単な場所でも死亡事故に直結してしまいます。つまり、失敗は許されません。どんなベテランでも「魔が差す」こともあり得ます。それらを防止する考え方が「バックアップ」です。「自分の命は自分で守る」と言い換えられると思います。
■懸垂下降のバックアップの方法
前書きが長すぎますね(^-^;
ともあれ、正しい懸垂下降のバックアップはどういう方法なのか?
ともあれ、正しい懸垂下降のバックアップはどういう方法なのか?
バックアップは、下降器(ディッセンダー)と干渉しないような位置にする必要があります。
バックアップは、上図のようにシャントかフリクションノットのオートブロック(マッシャー)が良いと思います。
下降器を上に付けてバックアップを下に付けた場合、バックアップが下降器と干渉してしまえば嚙んでにっちもさっちも行かないという窮地に陥ることもあります。
そのために、下降器をシュリンゲなどで上の位置に設置するようにするか、フリクションノットのバックアップをレッグループに付けるという方法もあります。
※ゲレンデなどでは、8環やATCの上に長めのプルージックでバックアップを付けて練習したり指導している団体が多いように思います。しかしながら、傾斜が緩い斜面だからそれでいい場合が多いですが、本番で空中懸垂になってロックしてしまうと初心者なら脱出不能になってしまうケースも想定されます。つまり、最終的な本番を想定して自己脱出が可能な位置に下降器やバックアップをセッティングする必要があると思います。最終的な本番というのは、厳しい環境下での荷物を背負った状態での空中懸垂のことです。(※この部分は少し難しいことなので初心者の人はまだ完全理解されなくてもいいかと思います。)
バックアップは、上図のようにシャントかフリクションノットのオートブロック(マッシャー)が良いと思います。
下降器を上に付けてバックアップを下に付けた場合、バックアップが下降器と干渉してしまえば嚙んでにっちもさっちも行かないという窮地に陥ることもあります。
そのために、下降器をシュリンゲなどで上の位置に設置するようにするか、フリクションノットのバックアップをレッグループに付けるという方法もあります。
※ゲレンデなどでは、8環やATCの上に長めのプルージックでバックアップを付けて練習したり指導している団体が多いように思います。しかしながら、傾斜が緩い斜面だからそれでいい場合が多いですが、本番で空中懸垂になってロックしてしまうと初心者なら脱出不能になってしまうケースも想定されます。つまり、最終的な本番を想定して自己脱出が可能な位置に下降器やバックアップをセッティングする必要があると思います。最終的な本番というのは、厳しい環境下での荷物を背負った状態での空中懸垂のことです。(※この部分は少し難しいことなので初心者の人はまだ完全理解されなくてもいいかと思います。)
■シャントを使ったバックアップの方法
ペツルのシャントはものすごく古い道具です。私がもっている古い登攀教本にも載っていてビックリしました。それでも今もなお使われているということは完成された信頼性の高い道具だと思っていいと考えます。
懸垂下降は出来るならなるべく本番でも使うとよい
懸垂下降は慣れていれば難しい技術ではありませんが、間違えば死亡事故に直結してしまいます。
そのためには、ゲレンデなどで繰り返し色々な想定で練習するといいかと思います。
あるいは、実際にアルプスの山でも時間があればあえて懸垂下降で降りてみるような練習意識はあった方がいいと思います。
そのためには、ゲレンデなどで繰り返し色々な想定で練習するといいかと思います。
あるいは、実際にアルプスの山でも時間があればあえて懸垂下降で降りてみるような練習意識はあった方がいいと思います。
おまけ
おまけ2
↑オートブロックを利用したバックアップの方法
英語ですが、英語が分からなくても理解できる内容ですので追記してみました。
最後に
以上の方法は、シャントの取説にも載っている方法ですが、参考にされる場合は自己責任でお願いします。
また、自分の安全は自分で守るために、必ず目で確認して、違和感が少しでもあったらセッティングをし直すようにしてください。
初心者に指導される場合は、念のためにバックアップのロープで確保するぐらいの念を入れてください。
以上、事故のないようにお願い致します。
また、自分の安全は自分で守るために、必ず目で確認して、違和感が少しでもあったらセッティングをし直すようにしてください。
初心者に指導される場合は、念のためにバックアップのロープで確保するぐらいの念を入れてください。
以上、事故のないようにお願い致します。
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
さんの記事一覧
- シャントをバックアップに使った懸垂下降の方法(事故防止) 304 更新日:2014年08月28日
- 北アルプスの週間天気予報(Mountain forecast.comによる) 560 更新日:2014年08月16日
- ミニロースターを自作してみました!! 146 更新日:2014年08月17日
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!
murrenさん、とても参考になります。
私の場合は、もっぱら最初の説明図であるペツル方式で懸垂下降しています。蓬莱峡のゲレンデなどで、レッグループでバックアップをとっている方をよく見かけますが、危険だと感じています。
プルージックに関しては、ブリッジプルージックを多用しています。万能ではありませんが、かなり用途が広くて重宝しています。
クマ
kuma-sanさん、こんにちは。
蓬莱峡のゲレンデでのバックアップの方法は、どのような方法なのか想像だけですが、レスキュー講習で指導されている動画では、オートブロック(マッシャー)をレッグループにセッティングしています。
下の動画の3分前後あたりにその方法が紹介されています。
https://www.youtube.com/watch?v=y9w1iLrKQo8
私も試したことがありますが、下降器との干渉(距離間)の問題ですので、緩い傾斜ならこれでもいいかと思っています。時間があったら確認ください。蓬莱峡は違う方法ですかね?
この動画の後半はオートブロックとクレイムハイストの違いを利用した3分の1のシステムが紹介されていて参考になりますが実際にやってみたことは私はありません。
あと、ブリッジプルージックは確かに少し固まりにくいというメリットがありますね。私はどっちかというと普通のプルージックですが状況に応じて巻き数を考えて使っています(いました)。プルージックは片手でつくることができますのでその意味では重宝する結びですね。
コメントありがとうございました。
murrenさん、動画とても参考になりました。
特に前もってロープダウンしないで、徐々にロープを繰り出していく方法は、見知ってはいたものの、実際にはやったことがありませんでした。今後、練習して自分のやり方に取り込んでいければと思っています。
まず最初に確認したいのですが、ここで出てくるバックアップという意味ですが、意図している/意図していないにかかわらず、下降器の下側のロープを握る手が離れてもいいように補償する・・・という意味でよろしいでしょうか? もし、このバックアップなしで下降器の下側のロープを握る手を離せば、下降器を通るロープはS字型ではなく、U字型になってしまって、下降器とロープとのフリクションが得られず墜落してしまうということですね。
さて、私が最も危険だと思っているバックアップは、下降器より上側のロープにフリクションノットしたスリングをレッグループにセットしているケースです。下降器と干渉しそうで恐いです。動画では下降器より下側のロープにフリクションノットしたスリングをレッグループにセットしていますが、スリングの長さ次第では同様の干渉が発生します。また、いくらオートブロックであってもスリングのフリクション性能によっては、片脚のレッグループが持ち上げられるような不安定な感覚を何度か経験したこともあります。
懸垂下降時にカラダを安定させるという目的で、最近は下降器をエクステンション(下降器をカラダから離してセットする)させる場合が多いです。murrenさんが最初に紹介されているペツル方式もこのエクステンション方式で、私も採用しております。離しすぎると万一のトラブル時に操作できなくなるといったデメリットなども報告されていますが、カラダが安定するのは実感としてありますし、なによりもバックアップを下降器に干渉させずにビレイループにセットできるというメリットがあります。両手を離したときの安定感も、レッグループからとった場合と全然違います。これらの状況を総合的に考えた場合、レッグループにセットする方式は”過去の遺産”ではないでしょうか? ちょっと言いすぎだったかも知れません。原則は、各個人が最も慣れた安全な方式で懸垂下降することが一番大切なのだということを知ったうえで、あえて言わせていただきました。
クマ
kuma-sanさん、こんにちは。(しばらくヤマレコから離れるので最後のコメントになるかと思います。)
熱心に読んでいただいてありがとうございます。
確かに「バックアップ」は色々な意味で使いますね。パソコンの場合は内容を別の場所にコピーするとか、パラシュートやパラグライダーの場合は墜落時の予備のパラシュートを意味しますね。
kuma-sanさんが言われるように、懸垂下降のバックアップは、例えば落石が当たって意識を失っても「自動的に止まる」という意味で使っていますね。私は、中高年は脳卒中ということも考慮する必要があると思っております
kuma-sanさんが言われるように、シュリンゲなどで上方に伸ばして上方に下降器を設置した方が懸垂下降で重心が安定するのは確かですね。ただ、・・・
余談ですが、バックアップを使わない場合、私はハーネスのカラビナに直接下降器を付けて降りていました。傾斜が緩い場合は、昔はハーネスのカラビナにピッケルやハンマーのシャフトを差しただけでロープに制動をかけて降りていました。日暮れが迫り急がなければならない迅速な下降方法です。3秒でセットできますから。
下降器をシュリンゲなどでかなり上方に伸ばして設置した場合、イメージは空中懸垂ですが、登り返す場合とか何らかのトラブルで下降器を外さなければいけないとき、下降器が高い位置にありすぎると手が届きません。
下降器を空中懸垂の状態で外さなければならないとき、下降器の上にプルージックなどをセッティングして一旦体重をそこにあずけて下降器を取り外しますが、そういう想定だと、下降器はなるべくハーネスに近い所の方が都合がいいので、重心が安定することよりも、私はそういう感じを優先してイメージしています。
ここまで私の下手な説明で分かりますかね?
もう少し余談ですが、バックアップなしで両手ばなしで途中停止させる場合は、ミュールノットで仮固定しますが、その場合、レッグループに一旦カラビナを掛けて折り返してセッティングするととてもいい感じです。私がこの冬に撮った動画がありますので「レッグループにかける」という観点から時間があるときにでも見てください。
https://www.youtube.com/watch?v=yEwZdH2maVk
すこしこじつけていますが、レッグループを利用することにバランス的に違和感があるかどうかは「慣れ」の問題が大きいように思います。前時代的であるかどうかは問題ではありませんが、たとえば昔のグリップビレイは、ビレイディバイスを使うことは勿論ムンターヒッチでセカンドをビレイするよりも迅速だしロープも引っ張りやすいので、昔の技術も使える場所なら使える方がいいと思っています。上の私の動画もグリップビレイを利用しています。
ただ、中途半端な技術を数多く覚えていることよりも、種類は少なくても確実な技術をミスなくできる方が遥かに重要なことですね。
えっと、何か忘れたような気がしますが、そうそう、干渉の問題は大きいですね。
これ私も経験がありますが、ナイフがないと命取りになるケースもありますね。実際にナイフを使ってシュリンゲを切断したことがあります。
蓬莱峡の人たちの方法は何を根拠にしているのかメリットがさっぱり分からないですね。kuma-sanさんが言われるように危ないですね。懸垂下降一つでこうなら他にも間違っていることが多い可能性があるように思います。
https://www.youtube.com/watch?v=OodydJiaXUo
↑ヤマノート本文にも追加しておきましたが、英語でも分かりやすく説明されていましたので追記しておきます。
最後のコメントと書きましたが、気になったので追記させてもらいました。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する