おや、まあ!キノコ )アイスマンとアイヌを結ぶ「ホクチダケ」
今回は、5000年前に欧州アルプスを駆け巡っていたアイスマンと、北海道のアイヌ、そして東北のマタギたちをつなぐ、きのこの話です。 2011年06月12日のヤマレコ日記から。
tanigawa
火をおこすのに必須の「火口(ホクチ」に使われたきのこ
アイヌ出身の知里眞志保さんが、実地の調査と体験とからまとめた「分類アイヌ語辞典第一巻植物篇」のなかには、キノコとアイヌの人々の暮らしについての紹介もあります。
そのなかに出てくるのが、「ホクチダケ」です。
ホクチとは、「火口」のことで、マッチがなかった時代に、火打ち石から火を受けたり、火熾こし起こし器で摩擦熱で火を得るときに使う、燃えやすい繊維質のもの。アイヌは、キノコを乾燥させ、繊維をほぐして、火口に使いました。その材料となったのが、ホクチダケでした。
でも、知里氏が調査した1950年前後には、ホクチダケというものが何というキノコなのか、ずばり定まってはいなかったようです。同じように用いられる数種のキノコが、その名前で呼ばれ、使われてきた可能性もあった。
知里氏は、「ホクチダケ」の説明で、樺の木に生えるキノコを火を受けるのに使ったという話を紹介しています。
また、「エブリコ」というキノコの項でも、宮部金吾さん(ミヤベイワナの分類者)の説を紹介して、カラマツやエゾマツにつくサルノコシカケが、火起こしに使われたと、書いています。(樺太と屈斜路湖地方)
そのなかに出てくるのが、「ホクチダケ」です。
ホクチとは、「火口」のことで、マッチがなかった時代に、火打ち石から火を受けたり、火熾こし起こし器で摩擦熱で火を得るときに使う、燃えやすい繊維質のもの。アイヌは、キノコを乾燥させ、繊維をほぐして、火口に使いました。その材料となったのが、ホクチダケでした。
でも、知里氏が調査した1950年前後には、ホクチダケというものが何というキノコなのか、ずばり定まってはいなかったようです。同じように用いられる数種のキノコが、その名前で呼ばれ、使われてきた可能性もあった。
知里氏は、「ホクチダケ」の説明で、樺の木に生えるキノコを火を受けるのに使ったという話を紹介しています。
また、「エブリコ」というキノコの項でも、宮部金吾さん(ミヤベイワナの分類者)の説を紹介して、カラマツやエゾマツにつくサルノコシカケが、火起こしに使われたと、書いています。(樺太と屈斜路湖地方)
シロカイメンタケの仲間。「火口」として使われた
近年のきのこ図鑑では、この「ホクチダケ」とは、サルノコシカケ科(現在ではタコウキン科と改称)のシロカイメンタケのことではないか、という説が有力になっています。
シロカイメンタケは、秋田のマタギも火口として用いてきたことも、この説の強みです。
シロカイメンタケは、秋田のマタギも火口として用いてきたことも、この説の強みです。
アルプスで発見されたアイスマンが、「火口」に使ったツリガネタケ
そういう調査やいきさつがあったなかで、1991年にアイスマンが発見され、その持ち物が調べられて、話は一挙に国際的になりました。
アイスマンは、アルプスのイタリアとオーストラリアの国境の氷河が、温暖化で融けて、発見されたミイラです。
いまから5000年前のころ、クレバスに落ちるなどして、事故死し、氷漬けになっていたらしい。
アイスマンは、アルプスのイタリアとオーストラリアの国境の氷河が、温暖化で融けて、発見されたミイラです。
いまから5000年前のころ、クレバスに落ちるなどして、事故死し、氷漬けになっていたらしい。
ツリガネタケ。アイスマンはこれをほぐしたものを所持
そのアイスマンが所持していたのが、ツリガネタケを干し上げたものでした。彼は、ほぐして、綿のようにしたものを所持していました。火口として使ったことは、まちがいない。
当時の、野山での活動の必須装備です。
当時の、野山での活動の必須装備です。
カンバタケ。常備薬?としてアイスマンが携行
アイスマンは、キノコをもう一つもっていました。
それは、樺の木などに生えるカンバタケ。やはりタコウキン科のキノコです。
こちらも、知里さんがホクチダケの説明で書いた内容と重なります。
ただし、アイスマンはカンバタケを、当時の常備薬として使うために持ち歩いていた、という説が、現在は国際的には通っています。
江戸時代後期に和人にその生活を一変されるまで、北海道や千島、樺太で自然とともに暮らしたアイヌ。
日本の東北のマタギたち。
そして、5000年も昔のアイスマン。
時代と地域を大きく超えて、同じようなきのこを、同じように生活と活動のなかに生かしていたのは、興味深いです。
キノコが薬や火おこしに使われることがなくなり、食べられないきのこは見向きもされなくなった現代は、きのこと人間との関係が一番、薄くなってきつつある時代と言えるのかもしれません。
それは、樺の木などに生えるカンバタケ。やはりタコウキン科のキノコです。
こちらも、知里さんがホクチダケの説明で書いた内容と重なります。
ただし、アイスマンはカンバタケを、当時の常備薬として使うために持ち歩いていた、という説が、現在は国際的には通っています。
江戸時代後期に和人にその生活を一変されるまで、北海道や千島、樺太で自然とともに暮らしたアイヌ。
日本の東北のマタギたち。
そして、5000年も昔のアイスマン。
時代と地域を大きく超えて、同じようなきのこを、同じように生活と活動のなかに生かしていたのは、興味深いです。
キノコが薬や火おこしに使われることがなくなり、食べられないきのこは見向きもされなくなった現代は、きのこと人間との関係が一番、薄くなってきつつある時代と言えるのかもしれません。
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