檜岳〜涙の土砂降り山行
- GPS
- 07:31
- 距離
- 19.4km
- 登り
- 1,324m
- 下り
- 1,318m
コースタイム
天候 | 曇り時々晴れ&雷雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
寄沢筋の区間は渡渉地点に注意。鎖場の下で右岸へ渡るのが5回目の渡渉となる。全般に整備は今ひとつだが、川原を除けばきちんとした道形があるので、薄い足跡などに誤って誘導されないよう気をつけたい。 伊勢沢ノ頭から林道秦野峠は一部ヤブっぽくなっている。特に林道秦野峠からすぐの区間は道がえぐられている上、ススキが繁茂して歩きづらい。 用心して行ったが山蛭は見かけなかった。 ■弘法の里湯休業■ 檜岳とはぜんぜん関係ありませんが、鶴巻温泉駅近くの日帰り湯「弘法の里湯」が8月17日から工事で10月末まで休業するとのことです。ご注意を。 |
写真
感想
檜岳とは相性が合わないのだろうか? 1か月前の蒸し風呂山行では体力的に登頂を断念して転進。ルートを短縮して臨んだ今回は、頂上に着いたとたんに豪雨の洗礼を受けた。とどろく雷鳴と悲惨な雨に戦意も喪失、シダンゴ山に寄るどころではなく延々と林道歩きをして寄へ戻れば、バスは2分前に出たところだった。もちろん、あきらめの悪い当方はこんなことではメゲません。三度目の正直を目指してまた来るぞ!
寄バス停を下りた山客は他に2人。いずれも北へ寄沢に沿って歩き出したが、白髪頭の熟年男性は足が速い。一般車通行止めゲートのある水源林管理棟あたりで姿が見えなくなった。当方も先月の蒸し風呂山行に比べれば、いくらか風もあるのでまずまず快調だ。感じのいいログハウスを横目にほぼ予定時刻に登山口の林道終点に着いた。
西丹沢でも蛭が出始めたという噂におびえ、念のためディート剤を染みこませたスパッツを装着して再出発。成長の森やらボランティアの森やらへの道を分けて林の中をジグザグに登る。再び沢が見えると道端に「登山道」の標柱があった。その横を直進して(してはいけません!)左岸の踏み後を辿ったが、2年前に雨山峠から鍋割山に登った時と比べると道がかなり荒れている。「ずいぶん大雨もあったからなあ」などと考えながら川原に下りたところ、道がなくなった。
きょろきょろ探すと右の急斜面に足跡がある。やれやれ、最近の雨で道が崩れたのだろうと早合点してその足跡を辿るも、すぐに痕跡すらなくなり立ち往生。結局、川原へずり落ちるように戻って秘密兵器GPSを引っ張り出した。PG-S1というオモチャみたいな製品ながら有機EL画面は精細で、予定ルートを呼び出して(地図ではない)現在地とのずれを比較できる。それによると、正しい沢筋を遡行してはいるが、やや東、左岸側に寄っているようだ。
「あ…」。電撃のように前回の記憶が蘇った。先ほどの「登山道」の標識で左を見ると最初の渡渉地点があり、対岸にルートが見えたはずなのだ。前回、この先で余計な渡渉をして迷ったことを思い出す。今回は渡渉し忘れて迷子になった。進歩のない自分が嫌になる。
さて、とりあえず戻るか進むかだが、蘇った記憶によれば登山道はこの少し先で自分のいる左岸へ渡り返すはず。すぐ先の堰堤を偵察すると、どうやら簡単に越えられそうだ。ダメなら戻ろうという気持ちで脇をよじ登るとピンクテープが見え、正規のルートに戻ったことが分かってホッとした。
気を取り直してどんどん行く。第3、第4の渡渉地点は記憶の通りで、右の鹿柵に沿った道を辿れば第5の渡渉地点の鎖場に到着。さすがに汗が止まらないので、ここで大休止とした。この先、道はいったん沢筋を離れる。鎖をよじり、崩れかけた足場に注意して山腹の尾根道へ出たらジグザグに標高を稼ぐ。ほどなく鍋割峠へ至る寄コシバ沢の分岐に着いた。さらに一投足で「危険!」の看板到着。一月前の鍋割山頂付近で聞いたエゾハルゼミの大合唱に代わり、ヒグラシがやかましい。汗がとめどなく流れ、タオルを絞るのに消耗するのはいつもの夏登山のパターンだが、まだ十分頑張れそうだ。
道が沢筋と一体化し、冷たい水がいつでも補給できるのが良い。時々カエルを見かける。足元が白っぽい閃緑岩質のナメに代わり、深さ1センチほどの清流を踏んで行く沢歩きは実に気分が良かった。やがて空中に渡したワイヤに吊られた指導標が現れ、向こうに階段が見えれば雨山峠。最後の階段は取り付き部が登りにくそうだったので敬遠し、砂っぽい斜面をよじ登った。
峠には鍋割山方向からトレイルランの青年が現れたが、すぐユーシン方面へ走り去った。白髪の韋駄天熟年は影すら見えず、一人ぼっちの休憩だ。あいにくと雲が増えたようで、眺望は望めない。
後は雨山までの標高差200m余をこなせば檜岳への登り返しは大したことなく、伊勢沢ノ頭までは快適な稜線漫歩が待っている。息を整えつつ胸突き八丁を越すと南の視界が開けた。涼風が通り抜け、栗ノ木洞の向こうに相模湾が霞んでいる。辿り着いた雨山自体はガスもかかって視界が利かず、代わりに少し下がったザレ場が絶景だった。時に11時50分、雲が増えたなとは思ったものの、数分後に襲う大雷雨のことは、この時想像だにできていない。
間もなくラジオが正午を知らせ、檜岳の山頂も指呼の間に迫ったころ、ハラハラと木の葉の鳴る音を聞いた。「あれ、雨?」。やがてポツリポツリと雨粒が当たりだす。山頂に着き、おもむろにカメラを取り出すと、やにわに本降りの雨粒が落ちてきた。1枚だけシャッターを切り、すばやくケースに戻してこけ蒸したテーブルへリュックを下ろす。と、ほぼ同時にドーッとバケツをひっくり返したような土砂降りが始まった。慌てて取り出した折りたたみ傘を肩で支え、リュックカバーを引き出すのが精一杯。しばらく呆然と立ち尽くすしかなかった。昼飯はどうする? それどころじゃない、この雨の中をどうやって下山するんだ?
通り雨程度という期待は裏切られ、雨脚はいよいよ強まる。雷も鳴り出した。ポケットの食べかけのバナナバーを腹に収めて、とにかく先へ進むことにした。苦労してレインウエアをザックから出したが、靴を履いたままだからレインズボンは内側がドロドロ。しかも上下を着ると暑苦しいことこの上ないが仕方ない。幸い頂上にいたので、この先ほぼ下り基調なのが唯一の救いだった。
川のようになった登山道を辿る。左手で傘を差し、右手でストックを突く。傘をしまってもフードを被れば頭は濡れないが暑苦しい。それに以前、フード伝いにザックの背中側に雨水が回り、中が濡れて参ったことがある。よほどの急坂が来ない限り傘は閉じないで行くことにした。
幸い伊勢沢ノ頭までは起伏の少ない稜線で、傘を差すのにほとんど不安はないが、雷鳴が徐々に近づいてくるのが怖い。光って3秒、距離1キロほどの所に落ちているようだ。20分余り歩いて伊勢沢ノ頭を過ぎ、急斜面を下るころになってようやく雨は勢いを減じてきた。雷はなお30分ほど騒いでいたが、だんだん間遠になってようやく人心地ついた。
この間、道は両側から夏草が伸びて隠れそうになっている所もあった。道の真ん中にソフトボール大の丸い大きなカエルがいて、危うく踏んづけるところだった。ストックでつついても逃げもしない。思えば今日はカエルをよく見た。彼らは間もなく大雨が降ることを知っていて、はしゃぎ出てきていたのだろうか。やっと雨が上がったころ、秦野峠に到着した。
ひさびさに腰を下ろす。横に生えている真っ赤な毒々しいキノコは、その姿に反しておいしいというタマゴダケと見た。誰かがつついて傘が傷ついている。生でキノコを食べるわけにもいかないので、ゼリー飲料で空腹を紛らわせた。雨はあがったものの雲は残り、道もドロドロ。当初予定のシダンゴ山は中止と決め、林道伝いに水源林管理棟方向へ向かうことにした。ひとピークを越える林道秦野峠までの道が結構険しく、最後はススキの繁茂する急な下り坂に難儀した。
あとはひたすらアスファルトの林道を下るのみ。雨のおかげで気温は25度を切っており、時間的にギリギリで3時半過ぎのバスに間に合いそうだった。腹がすいたので歩きながらお握り2個を平らげる。途中、橋の上から見下ろす沢は濁流となり、山腹から湧き出す水で林道にもあちこち水が流れていた。
さて、結構なペースで急いだつもりなのだが、思ったより林道の屈曲が激しくて距離を見誤ったようだ。最後までペースを落とさず頑張ったものの、バスに間に合いそうもない。いくら涼しくなったと言っても走るなんて言葉は我が辞書にないから、案の定タッチの差で乗り遅れた。次のバスは1時間後。汗でも拭いながら待つより仕方ない。
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