過去の記録:伝えねばならない。危険な山行・大雪山+十勝岳
- GPS
- --:--
- 距離
- 13.7km
- 登り
- 1,126m
- 下り
- 1,431m
コースタイム
10:45 頂上
13:30 下山
9/25 6:30 旭岳ロープウェイ
7:00 出発(旭岳登山口)
9:15 旭岳山頂
10:45 間宮岳山頂
11:45 中岳山頂
12:15 北鎮岳山頂
12:50 お鉢平展望台
13:30 黒岳石室小屋前で…大休止(45分)
14:30 黒岳山頂
15:10 リフト駅
…… ロープウェイにて下山
天候 | 9/24 十勝岳:初冠雪→ホワイトアウト (生命の危険を覚える) 9/25 大雪山:曇(雨/雪の心配は無し)→(初めて見てしまった…) |
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過去天気図(気象庁) | 2010年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト) 飛行機
9/24 望岳台登山口→山頂→望岳台登山口→旭岳近郊宿泊施設 9/25 旭岳ロープウェイ→旭岳→間宮岳→中岳→北鎮岳→黒岳→黒岳ロープウェイ→層雲峡近郊宿泊施設(レンタカー回送) 9/26 層雲峡近郊宿泊施設→旭川空港→羽田空港→一路帰宅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・いずれの登山口までも車道は整備されています ・トイレも完備 ・駐車場は無料です ・天候さえよければ危険な個所はありません |
写真
感想
感想:一日目:十勝岳(凍てつく寒さを乗り越えて)
山程の仕事が課せられていたため当初今回の山行に行けない旨、師匠に伝えていたのですが直前に目途が着き飛び入り参加をさせて戴くことになりました。
師匠からは「紅葉を見にのんびり行こう」と言うお誘いで、十勝岳は行ったことないし、大雪山は黒岳に観光気分で一度上がっただけで、今回は車を回送
しての縦走のプラン。(←こう言うの一人だと中々出来ません)マイルを使って無料の航空券をゲットし師匠+山仲間Tチャン2名と現地旭川空港で待ち合わせ。
レンタカーと送った荷物をピックアップして参ります。初日は登山口近くの宿までのドライブですから、観光を兼ねてあちらこちらに立ちより、望岳台登山口を下見に。
少し雲は出ていますが、まずまずの天気です。麓からも十勝岳の雄姿と紅葉も綺麗に望めます。明日の山行も期待大です。
宿に入り天気予報を見ると…曇…山の天気とはそんなもんです。ただ、大雪山系には初冠雪の便りも聞かれる可能性があります…と。「聞いてないよ〜」と思わずつ込んでしまいました。
紅葉を見に来たのに…まぁ雪化粧した紅葉も綺麗かと皆前向きに捉え就寝。
朝ご飯はキャンセルして一路登山口へ…すると…昨日の綺麗な紅葉は姿を消し、一夜にして雪山と化した十勝岳がそこには在りました。
こう言う時に遠征先では装備が不安になります。それなりに持っては来ましたが山頂まで行くとなると…少々心もとなくも。
しかし、皆行く気満々!そりゃ師匠はこれで100名山99座目で、T氏は私よりも若く一番油が乗っているスピードマスターです。私は…64座目…紅葉を見にのんびり行く気だったのですが…
一同、他の人の装備を確認し皆それなりに合格。師匠は耳あて付きの帽子も用意している…そんなの「聞いてないよ〜」と心の中でつぶやいてしまいました。(私はニット帽でアタックです)
9月22日東京では35度を超えていたの、目の前の登山口は氷点下を切っています。でも行きます。ちなみに防寒着は薄手ですが温かいスエットと、ダウンジャケットを最終兵器に忍ばせ
ソックスは冬用の厚手の物と薄い靴下のコンビに。手袋は発熱用の薄手のニット+軍手+合成皮の3点セットを用意。そしてホッカイロ数個。念のためアイゼン(6本刃)
登山口では普段めったに着けないスパッツとカッパを着こみ出発です。
十勝岳避難小屋までは、雪もまばらで普通の山行です。ここから先は…真っ白です。上空の雲も厚く風の強いことで有名な十勝岳のことです、どうなっているのか?心配は募ります。
しかし、仲間が居ると言うことは安心感が違います。師匠からは何の根拠も無い「大丈夫」と言う高らかなメッセージが届けられます。この時点でスエットを着用。手袋を合成皮に変えます。
寒さは差ほど感じません。温度計は氷点下5度を指しています。つづら折りの比較的緩やかな登山道に先行者の踏み後(トレース)が着いていますのでそれを頼りの高度を上げていきます。
ガスがドンドン濃くなります。先行者のパーティが次々と下山して行きます。「稜線付近は凄いよ」と教えてくれます。ここで作戦会議です。どうだ大丈夫か?と。この中で私が一番雪に弱いことを
一番ビビりなのを師匠はよく知っています。私一人ならこの時点で撤退と判断したことでしょう。おそらくその判断が本当は正解だと思います。すでに山行を続けているのは私たちだけのようでしたし。
ただ、今回は師匠も一緒ですしGPSもT氏が持っています。「行ける処までもう少し行ってみましょう」二人から勇気をもらって続けます。
するとトレースが途中で消え、T氏が先頭でラッセルもどきでルートを確保してくれます。一番雪が深い処に差し掛かったようです。「これが続いたらまずいな」と言う思いがよぎります。
しばらく進むと、雪も太ももからひざ下くらいになり、徐々に少なくなって足元は楽になります。その反面風が強く視界がほとんど効かなくなったり、数メートルまで見えるか見えないかという世界に
私が経験した中で一番ひどい「ホワイトアウト」に。気がつくとそこは稜線で尾根筋との合流分岐でした。GPSと地図とコンパスで現在地を確認しながら方向を見据えます。少し水平気味にあがります
スタンディングで休むと寒さを感じますが、動いていれば問題ありません。二人ともまだまだ余裕があるようです。途中行動食を口にします。止まっての食事は危険を感じました。
しかし、風が強いのなんのと何度か体ごと持って行かれる間隔になります。サングラスとタオルそしてニット帽で露出を最小限にしているつもりですが雪が顔にあたり痛いです。
尾根筋を進むと急登に差し掛かります。風が弱くなると足元には雪が溜まって来きます。夏道の鉄製の柵が出ては消えてを繰り返しますが、間違いなく山頂に近付いているのがGPSで確認できます。
ゴロゴロの急な石場を(少々ホントの登山道をはずれたようです)夢中で登ると風がまた強く体をゆすります。すると…山頂に到着です。風は半端なく強いのですが、師匠から「こっち」と声が飛びます
反対側の斜面を数メートル下ると不思議と風が止んでいます。頂上に出ると強風が吹き荒れています。温度計は…氷点下10度を下回っていますが風が無いと温かい感覚に包まれます。
我に帰りると、この間全く余裕が無く写真を撮れずにひたすら登っていた自分に気づきます。温かいからと言っても長居は無用です。ポットから暖かいお茶をいただきホカロンを数枚貼り付け下山準備をしていると
猛者二人が山頂に現れました。「皆スキものです」何でも昨日幌尻岳を日帰りで攻略し今日は十勝で明日は大雪山に行くそうです。「じゃ」とさっさと写真撮って降りていきます。
我々も後を追いかけますが…直ぐに消えてしまいました。(早!)来た道を引き返すだけですが、稜線の風は先程より強く感じます。しかし、登りと違い恐怖は感じません。どのくらい歩けばいいのか
尾根までの分岐につけばもう怖い処は無いことを知っています。分岐が近づくとあたりが少しだけ明るくなり、風もおさまりかけて行くのが解ります。分岐を来た方角に降りると風が更に弱まり
新雪を滑り下りるように楽しみながら降りて行けます。もう遭難の心配など微塵もありません。
避難小屋で大休止です。お湯を沸かしカップめんを戴きます。メチャクチャ上手い!3人に安堵と達成感が共有されます。
もう下山口まで雪はありません。来た道を振り返ると山腹から山頂までは雲の中です。
一時はどうなるかと思いましたが、仲間に助けられながらどうにか無事下山できました。
また、自分が持ってきた装備がどのような環境で役に立つかも再度解りましたし、防寒用具が何か一つでも足りなかったら、登頂することは出来なかったことも解りました。
ホント怖かったですが、仲間との山行の楽しさ、有難さも感じた忘れられない思い出になりました。
感想:二日目:大雪山縦走(自然の厳しさを痛感…見たくないものを見てしまいました)
今日も朝食をキャンセルして旭岳ロープウエーの始発に乗ります。今日は曇っているものの風も無く太陽の位置が常に解るハナグモリ様相です。
昨日とは比べものにならない登山日和です。遠望もそれなりに効き、目の前の旭岳が大きくそして噴煙があちらこちらで吹きあげてとても綺麗です。
ただ、朝一番は非常に冷え込み雪の無い木道は凍りついて危険です。登山道、雪道に出るまでは慎重に歩を進めます。
師匠が「ハイキング・ハイキングゆっくり行こう」と(そうは言ってもそれなりに二人とも早いのですが)昨日雪化粧された綺麗な景色を、カメラにたくさん納めます。
談笑しながら、3人でワイワイガヤガヤの登山は久しぶりです。その横をス〜腕章を付けた監視員?が通り過ぎて行きました。朝一番の偵察でしょうか?(しかし早かったな〜)
新雪は非常に歩きやすいです。適度にグリップもききます。サラサラのパウダースノーですから氷の塊に成らずに滑りません。
道だけはしっかり確認しながら、山頂までは休憩なしでポンと着きました。紅葉のはずがモノトーン調の美しい景色が360度見渡せます。
昨日爆風に鳴いた十勝岳や、トムラウシ、この先の縦走路などよく見えテンションがあがりまくります。
新雪の下りは富士山の須走状態ですごく楽です。吹きだまりをわざと狙いまさに滑る感じで師匠をおいて行きます(笑)
間宮岳山頂もあっという間に着く感覚です。じつにに楽しいです↑ここで雪遊びをしながら少し休憩をします。晴ませんが風が穏やかで雪山も天候さえ恵まれれば悪くありませんね(雪は…基本苦手でして)
次は5つの峰々を巡る縦走の中間点の中岳を目指します。ここの谷が一番雪深かったでしょうか?
谷の底辺から登りに差し掛かる少し広いなだらかな場所を通り過ぎようとすると、「こんにちは」と元気な声で挨拶を受けます。挨拶を返し見上げると、先程疾風のごとく駆け抜けていた
監視員のお二人でした。大きな赤いシートが横に広げられています。何だろう?と見ていると人が横になっているようです。それも裸足で!!!
師匠が「写真撮るな!」「もたもたするな」と。。。その場をスーと立ち去ります。もう皆様もお気づきのようにお仏様の横を通り過ぎたのです。
すると、間もなく「バラバラバラ…」と爆音が近付いて来ます。監視員が手招きをし誘導しています。まるで映画のワンシーンを見ているようです。
しかしこれは現実です。昨日の風雪で名古屋から来られた単独登山の方がこの中間点で遭難したと下山後ネットや、山岳雑誌で知りました。
昨日十勝岳で一歩間違えれば、仏様になっていたのは私たちだったかもしれません。
登山は自己責任とは言いますが、現実を突きつけられるとこみ上げてくるものがあります。このことを多くの人々に伝えなければと思い、約1年前のレコを同じ時節に計画をされている皆さんにお伝えできたらばと。この季節の北海道の山々は冬山装備を忍ばさせて出かけてください。そうすればきっと楽しい山行になることでしょう。
その後、北海道第二の高峰北鎮岳を廻り、黒岳までは何の問題もなく昇り降りできました。せっかく来たからと無理をすると山の厳しさの洗礼を容赦なく受けます。山は逃げません。その気になれば何度でも挑戦することができます。命がけで行きたい気持ちもわからないではありませんが、たった一つしか無い命を粗末に扱ってはいけないと、この年になって教わった大変貴重な山行となりました。
山は楽しい。楽しむために皆様のレコが参考になると思います。
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