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記録ID: 1314657
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ハイキング
四国

【北三方ヶ森】落葉を踏む音

2017年11月16日(木) [日帰り]
 - 拍手
体力度
2
日帰りが可能
GPS
04:45
距離
9.1km
登り
658m
下り
710m
歩くペース
速い
0.80.9
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
4:43
休憩
0:25
合計
5:08
距離 9.1km 登り 663m 下り 725m
10:30
49
スタート地点
11:19
11:27
105
13:12
13:25
93
14:58
15:02
36
15:38
ゴール地点
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2017年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
水ヶ峠登山口
澄んだ水の流れ
峠と石仏
心地いい尾根道
遠くに瀬戸内海
三等三角点
針葉樹の落葉
木漏れ日の影
広葉樹の落葉

感想

【落葉を踏む音】

 なにげない音が耳に残る。駅の発車メロディーやCM音楽は、意識していないのに自然と憶えている。いつかどこかで聴いた音は、忘れても消えない。

 北三方ヶ森を歩いていて一番印象的だったのは、紅葉の色でも山頂の風景でもなく、落葉を踏む音だった。よく「登山は五感をフルに使う」と言うけれど、この日は視覚でも味覚でもなく、間違いなく聴覚の一日だった。広葉樹の葉はさくさくと、針葉樹の葉はぱきぱきと鳴った。

 標高が1000mにも満たないから、山というより森と呼ぶほうがしっくりくる。そういえばこの付近は、瓶ヶ森、堂ヶ森、二ノ森と森の名のつく山が多い。この数日前、松山市の水瓶である石手川ダムの脇の公園に行った。そこでひとり弁当を食べつつ、ぼんやりとダム湖を眺めていたら、なんとなく源流の山に登りたくなった。自分が普段飲んでいる水がどんな山を水源にしているのか知りたかった。ミネラルウォーターのCMで、南アルプスや奥大山に登る宇多田ヒカルの姿と、彼女の透き通った歌声を思い出したからかもしれない。

 松山市内から道後の温泉街を抜けて、北東に50分ほど車で走る。登山口に駐車場はなく、邪魔にならないように路肩に駐車した。今回は前夜に入念に準備したから、おそらく忘れ物はない。最初の30分くらいは淡く期待していた通り、きれいな水流の脇に沿って登っていく。水ヶ峠を過ぎ、尾根道に入っても展望はなく、だからほとんど風も吹かない。人がいない低山は静寂そのもので、秋の澄んだ空気に自分の足音だけが響く。

 鬱蒼と茂る木々の中に、自分の身を溶かすように黙々と歩いていく。周りの山並みが見えないのを少し残念に思いながら、同時に森に包まれている感じも悪くないなと思う。日常の雑念が消えていく感覚が心地いい。

 何度かのアップダウンを繰り返した後、標高978mの山頂にたどり着いた。頂上付近には申し訳なさそうに、三等三角点がぽつりとある。ここにも人はいない。わりとしっかりした木のベンチに腰を下ろし、わずかに見える瀬戸内海を見ながら昼食をとった。

 高いか低いか、有名か無名かではなく、その山で心地いい時間を過ごせたかどうか、そんな自分だけの山の価値観があるといい。いつでも行ける距離に、いくつか友人のような山があることは、幸せな気がする。北三方ヶ森もそういう山だ。

 ライターを忘れてガスバーナーが使えなかったことを悔やみながら、いそいそと下山の準備をする。下りも同じ道だったから、また同じ音を聴きながら下山した。針葉樹の落葉があり、広葉樹の落葉があった。ゆく秋を惜しむように、登りの時よりも少しだけ念入りに地面を踏みしめた。きっとあの楽しげな秋の音は、どれだけ時が経っても耳から消えないと思う。


目に見えるものに価値を置く社会と、見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。夜の闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように。
 (星野道夫『森と氷河と鯨』)

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