武尊山登山口〜1830m地点


- GPS
- 07:07
- 距離
- 8.8km
- 登り
- 755m
- 下り
- 746m
コースタイム
- 山行
- 7:02
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 7:07
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
武尊神社で林道は通行止めだった。 |
写真
感想
百名山の一つ、武尊山を目指したが、雪に阻まれて撤退。
何でも、慣れたころが一番危ない、と言うけれども、雪の斜面で初滑落してしまった。
雪の斜面にかなり慣れ、スキー場の上級者コース程度の斜面でも、アイゼンとピッケルで確保すれば普通に立ってられると思える位に、自信過剰になっていた。
水場から歩いて1時間弱で雪に覆われるようになったため、アイゼンとピッケルを準備して登るが、進行速度が遅くなったため、10時を目途に撤退することにして、行けるところまで行くことにした。
アイゼン装着後、滑落停止訓練の場所の傾斜前後の急登を30分程度登ったところで滑落。
剣が峰と武尊山の稜線につながる稜線を目前にして、一瞬気が緩み、雑にホールドしていたところで足元が崩れ、慌ててピッケルを掴んだがアッサリ雪から抜けてしまい、うつ伏せで足を下にして滑り出した。
反射的に、両手にピッケルを持って半分万歳のままピックを斜面に打ち込んだところ、スピードが緩みほっとしたが、何故か冷静に、正しい姿勢は胸の下でピックに体重を掛ける、と考え、ピッケルを胸に引き付けようとしたところ、肘を支点にしてピックが少し浮いてしまい、スピードアップ。
焦ってピックを再度打ち込むが、斜面が急になったのか、うまく刺さらなかったのか、減速しない。
冷静に少し膝を曲げてアイゼンを浮かすとともに、遠藤先生の、「急斜面で滑り出したら止まらないから、傾斜が緩むが何かにぶつかるのを待つしかない」という言葉を思い出す。
何かにぶつかると痛いな、と思い、下に岩や木が無いか気になり、上体を起こして少し振り返ったところ、そのまま仰向けに回転。
まだ少し冷静だったため、尻もちを着いた時の滑落停止動作用にピッケルを持ち変えるが、ザックが下になり、尻が雪面に着かず、亀がひっくり返ったようになり、うまく打ち込めない。
この地点で背面で足から落ちる時の滑落停止動作に入れば良かったのかもしれないが、変に動いたりピッケルが引っかかったりしたためにバランスを崩して、良く分からない回転に入ってしまった。
はっきり言って、自分がどっちに滑っているのかも分からず、雪が柔らかいため、特に頭や体を強く打ったりした訳では無いが、意識が朦朧とする中で、両手でピッケルを持ち、とにかく雪に向かってピックを押し付けようとしていたところ、気が付いたら頭を下にしたうつ伏せ姿勢で安定して滑っていた。
頭は重いから下になる、とは良く聞くが、全くその通りで、まさに、ウォータースライダー状態。
意識が朦朧としつつも、爽快感すら感じる状況に、一瞬思考停止に陥り、「もうどうすることも出来ない、このまま滑っていれば何とかなるだろう」、と諦めの境地と超楽観的思考に陥ったが、以前YouTubeで見た冬の剣岳の滑落救助の映像が頭をよぎり、「このままでは死ぬ」、と我に返る。
意識が朦朧とし、目の焦点も合わない中で、頭から滑るうつ伏せ姿勢の滑落停止動作のために、ピッケルを前に出そうとするが、胸の下にピッケルが入っていて体重が掛かり、滑落の摩擦で足の方に力が掛かっているために引き出せない。
次に、仰向けで頭から滑る時の滑落停止動作を思い出し、体を屈伸しながら捻って、滑る方向を頭から横に変える動作を思い出し、左上に体をエビぞりに捻り、ピックを頭の上に打つが、やはりピックがうまく刺さらず、体も回転しきれないまま、左側を斜面に着けたまま横向きで滑り続ける。
訓練中に、ザックが抵抗になったことを思い出して、仰向け側に力を入れて、ザックを雪面に押し付けつつ、ピックを顔の横に打つが、横に押し付けるのみでうまく刺さらない。
今冷静に考えると、ザックに拘らずに、うつ伏せ方向に回転する方法も有ったが、斜面下側への回転は、止まらなくなる可能性があるので、これで良かったはず。
意識は朦朧としたままだったが、下を見ると、ちょっとした藪が見えてきて、このままではぶつかる、止まってくれ、と思いながら横向きに滑り続けて、このまま衝突。
急な傾斜で少し段差のような窪地になっていたようで、雪の無いところに左側で着地するとともに、正面の小木を顔で受けて停止した。
停止したものの、着地の衝撃が体と顔に残ったまま、滑落したという事実に呆然自失となり、しばらく倒れていた。
滑落が見えたのか不明だが、下の方から「おーい」という叫び声が聞こえたが、ショックで声を出す気力も無かった。
5分位変な姿勢で倒れていたが、落ち着いたところで、木の枝や笹の中からもがきながら起き上がってけがを確認。
左腕と口の右側辺りに軽い打撲と、口の周りに3か所程度切り傷、口の中も少し切った程度で、骨折や脱臼は無いようだった。
まさしく、不幸中の幸いで、運良く軽傷で済んだ。
スピードが緩んでいたのか、藪に落ちたのが良かったのかは分からない。
何メートル滑ったのか分からないし、容易く復帰できたことを考えると、時間にしても10秒も無さそう。
滑落現場の写真を撮る気にもならなかった。
GPSログに残っていると思ったが、今回、別の新スマホを使っていて、記録精度を標準としたため、水平距離で20m程度離れないと記録されず、滑落の記録が残らなかった。
ヤマレコマップから標高1780mの声が聞こえた後に滑落し、滑落停止時に1680mの声が聞こえたので、100mも滑落したのか、と思ったが、50m登るのに15分のペースだったので、コース復帰状況から考えると、多分誤差か何かの間違いで、せいぜい標高差25m程度の滑落だったようだ。
藪の窪みからの脱出も、傾斜がきついため一苦労したが、何とか這い上がった。
下山するかどうか悩んだが、目の前の稜線までは登りたい、と思い、予定通り、10時までは頑張ることにした。
なんとか武尊山・剣が峰の稜線の一歩手前の稜線に上がることができたが、ここで10時となり、撤退を開始した。
滑落が無ければ、あと1時間30分有れば剣が峰に着けそうだったので進んだかもしれないが、さすがに気力が無かった。
下山の最中にも、別の場所で滑落しかけた。
この時は、すぐに滑落停止姿勢を取る事が出来て、すぐに止まったが、この時に、どのように滑落したかが分かった。
急斜面では、スピッチェを雪に刺してホールドしながら歩いているが、完全に固定されたかよく確認していない時が有る。
この時に、急斜面で次の一歩を踏み出したときに足元が崩れると、ピッケルで初期制動しようとしても、ピッケルが抜けてしまい、このまま滑る。
滑落停止は、やはり滑り初めのスピードが出ていない時に、冷静に素早く対処する必要が有る。
今回の滑落で、正しい滑落停止姿勢を取れれば、アイゼン・ピッケルだけで登れるような傾斜であれば、きちんと止められる、と思えた。
やはり、慣れは必要なので、やり方を覚えたとしても、安全な所で滑落停止姿勢の自己練習をするのが良い。
もちろん、意図せず傾斜がきついところに滑ったり、スピードが出てしまうとすぐに止めることが出来なくなるが、それでも少しでもスピードを落としたり、アイゼンを引っかけてケガをしたりしないような効果は有りそう。
但し、最大限努力したとしても、滑ってしまえば、後は運任せの面が強くなってしまう。
正直言って、体感上かなりのスピードで滑っている時に、何かにぶつかる事を気にせず滑落姿勢を取り続けるのは、かなりの精神力と根性がいる。
傾斜が緩くなるか、何かにぶつかるか、崖に落ちるかも運次第。
やはり、ピッケルを雪にしっかりとホールドして、滑らないようにするのが一番良い。
そして、いざという時には、スピードが出る前に、素早く滑落停止動作で止める。
何かとんでもない事になったが、誰もいなかったので、二次災害が無くて良かった。
こんな事があったが、引き返した稜線から見た須原尾根や周りの山々は、とても綺麗だった。
ここでも、誰かが叫んでいるのが聞こえたが、人は見えなかった。
滑落個所を登り切ってトラウマを払拭し、この風景を見なかったら、もう登山はやめようと思ったかもしれない。
しかしながら、登山は危険と隣り合わせだと実感した。
もう少し余裕があったら、写真を取れたのだが、取らずに下山してしまった。
次は一回無雪期に来たい。
下山中の水場では、何故か懐かしい雰囲気がする好青年に会った。
稜線手前からかなり雪が積もっていて、アイゼン・ピッケルが無いと死ぬ可能性が高いことと、滑落したけれど運良く軽傷で済んだ、という話をした。
滑落して記憶がこんがらがっていた事も有り、間違って、水場から10〜15分程度で雪と言ってしまったが、謝りたい。
とてもパワフルで元気そうだったので、彼は無事武尊山に着けたと思いたい。
子供の頃は、いろんな事して遊びまわって、無邪気に何でも楽しめたことを思い出した。
今回の件も、良い教訓にしたい。
※たまたま遭遇した妹さんから、彼も同じ地点で引き返したとの話を聞きました。
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