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ハイキング
奥多摩・高尾

梅雨の末期、水っぽかった馬頭刈山

2003年07月21日(月) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
6.2km
登り
744m
下り
745m
天候 霧、小雨
過去天気図(気象庁) 2003年07月の天気図
アクセス

感想

 奥多摩の大岳山から南東に伸びる尾根上にある、馬頭刈(まずかり)山に行ってきました。
 ある程度、雨に降られるのはわかっていました。夏山の本番が目前にせまり、大汗をかくトレーニングをしたかったのと、妻が山靴を新調してその調子を見るため、登ることに決め、家を午前10時半ごろ家を出ました。

 私の住む家のあたりからは、大岳山はもっとも身近な山です。もより駅から、JR五日市線の終点、五日市駅までは、わずか4駅。160円。10時45分着。

 西東京バスに乗って、11時07分に、十里木(じゅうりぎ)に着きました。270円。
 このあたり、周囲の尾根は数百メートルの高度しかないのに、その尾根の上部はすっぽり雨雲の中に入っています。あの雲の中に、これから入っていくと思うと、少し気が重い。

 秋川支流の養沢にそって20分ほど車道をすすむと、軍道(ぐんどう)という集落です。登山口の小宮小学校があります。
 ここから、小学校の背後の急斜面を大きなジグザグを描いて登っていきます。

 道は、斜面に体を寄せ合うように建つ民家を縫うように伸
び、上流の沢から水を引くホースが、道路わきに設置されています。うまい沢水を、このあたりの人たちはふんだんに使っているのでしょう。

 秋川上流部もそうですが、奥多摩では、谷底は日当たりが悪いために、民家は一般に山の中腹の高い位置に建てられています。
 道路を車で移動する現代の基準で考えれば、「あんな高い場所に家が!」とびっくりもさせられます。

 けれど、人の交流が限られ、畑で自給自足的な生活をしていた昔の人にとっては、
当たりの良さは得がたいものでした。谷沿いは淵や滝があり、傾斜もきつく、行き来
むしろ危険で、昔は人は尾根や峠をたどる山道を行き来にも使っていました。

 もちろん谷の底でも、沢幅が広がり、広い平地が得られる場所には、大きな集落が築かれました。
 そんな名残が、秋川近辺では、いまも民家や集落の様子に残っています。

 集落を抜け、小沢にそったやぶっぽい踏みあとに入ると、周囲は薄暗い樹林です。あちこちに家ごとの墓地が点在しています。白い山百合の大きな花が、ぽっかり浮かび上がって見えます。

 小沢を離れて、細い林道を横切る場所では、鮮やかなガクアジサイが咲いていまし
。花の色は濃い青と、次は白。雨が似合う花です。花がこんなに際立って見えるのは
暗い雨雲の中ゆえでしょう。

 急斜面を登りはじめます。馬頭刈尾根にせまったのでしょう。尾根通しの道に出ても、樹林は続き、周囲は暗いままでした。小さな花をつけるランのような花が、ちょうど見ごろで、山頂付近まで何百という株が花盛りでした。

 帰って図鑑で調べたら、「オオバジャノカミ」(大葉蛇の髪)という恐ろしげな名前がついていました。
 小雨の中とあって、大きなヒキガエル(アヅマヒキガエル、ヤマヒキガエル)もいました。体調14センチほど、太い体をしています。足を前後に伸ばせば25センチくらいにはなるでしょう。いったい何を食べて、こんなに大きな体になったのか?
 http://www.hkr.ne.jp/~rieokun/frog/azuma.htm

 馬頭刈山への尾根道は、山頂の手前にある高明神社への参道になっています。途中、鳥居をくぐる場所がありました(12時25分通過)。
 ここから神社までが意外に長い。35分もかかりました(12時59分通過)。

 着いてみれば、神社は基礎だけ残った跡があるだけ。残骸が道の脇に堆積して朽ちていました。「雨宿りができる」などという古いガイドブックの神社の手前には、地表の枯れ葉などが燃え、樹木の幹も焦がした山火事の後がありました。あとでガイドブックを見たら、去年の火事だったとのこと。その、すっかり表面が焦げた幹に、ニガクリタケ(毒)がびっしり生え出していて、元気がいい育ち方に見とれました。
 
 キノコはたくさん生え出しています。イグチの仲間はヤマイグチを初め大小いろいろ、クサウラベニタケ(毒)、ムラサキフウセンタケの立派な株、カレバタケ?、鮮やかな美しい黄色のカサタケ似のキノコなど、ずっと目を楽しませてくれました。
 梅雨明けに、熱暑・干天の真夏がくれば、このキノコたちも、いったん姿を消すのでしょう。
 
 神社跡から馬頭刈山の山頂までは、15分のはずですが、この尾根の特徴であるアップダウンが始まり、けっこう長い。空はいよいよ暗くなりだしました。発達した雨雲が頭上を覆ったのか? 展望どころか、数メートル先も霧でけぶって見えます。

 13時16分、馬頭刈山の山頂(884メートル)着。
 山頂は、直径8から10メートル余りの広さ。とりあえず、樹木の下に腰を下ろし、行動食と水分をとりました。
 南側の樹木が45度くらいにわたって開けています。富士山や丹沢方面が望める方角でしょうか。北西の大岳山の方角も、わずか15度くらいが開けています。それらの方角は、今日は濃いモヤと雨雲ばかりです。

 出発前に読んできたある山岳雑誌のコースガイドでは、馬頭刈山の頂には、トイレと、コンクリート造りの2階建ての展望台(ビバーク可能)があるとか。でも、山頂を示す立派な標柱以外は、構造物らしいものは見当たりません。「コンクリートの展望台が消えた?」。キツネにつままれたような気分になりました。

 私は、古い雑誌を捨てるときに、これ、というページは切り取ってファイル保存するのですが、普通は雑誌の発行日を記入していません。いったいあれは、何(十)年前のルートガイドだったのでしょう? 
 下山後、本屋で新しいガイドブックで調べても、展望台やトイレの記述は見つからなかったので、よほど古い発行日のものだったようです。
 データ更新はまめに、きちんと年月日入りでやるべきですね。こんなのをあてに登ってきたら、たいへんです。


 雨が強く降り始め、雨具をつけたところで土砂降り状態になりました。
 妻は、雨具のズボンもつけましたが、わたしは雨具は上衣だけ。2人とも傘を使って、下降開始。(13時31分)
 登山道を、沢のように濁った水が流れています。樹林のなかで風が弱い、と思っていたのに、飛び散った雨粒は下半身をどんどん濡らして行きました。涼しく
持ちいい。体温が下がるとまずいので、どんどん下りました。
 
 斜面全体を、雨水が流れ下るような状態になっているところもあります。
 さっきまでと別の世界のよう。
 驚いたのは、この流水にさそわれて、また大きなヤマヒキガエルが何匹も、登山道付近に現れてきたことです。

 前を行く妻が、悲鳴を上げました。恐ろしいものが、そこにいました。長さ17,8センチ、太さ1センチ。体色は黒茶色で、やや扁平な体の両側に鮮やかなオレンジ色のラインが入った生き物です。

 大きな「ヒル」のようです。動きが異様です。鎌首をもたげるように体をそらせ、口をあんぐりあけて、不規則に振動させながら、その口で周囲の石や枝の表面に吸い付き、その「吸い付き」を支えにして、今度は下半身部分を弓なりにしならせて、体を前に
すすめます。斜面をどろ水が流れ落ちるなかで、その動作はかなりの速さで繰り返され、移動していきます。
 こんなに大きく、鮮やかな色をし、激しい動きで移動するヒルを、初めてみました。

 これも帰って図鑑で調べて、どうやら「ヤツワクガビル」という「イシビル科」の巨大ヒルであることがわかりました。
http://members.jcom.home.ne.jp/kinoko.yama/yama01/y020.htm

 雨と流水が、ふだん見慣れない生き物たちを、一気に誘い出したのでしょうか。異次元空間が目の前に現れたような気持ちにさせられました。

 下にあった鳥居の先で、右折し、荷田子(にたご)のバス停方面へ下降しました。このコースは傾斜がきついものの40分でふもとに下り立つことことができます。樹林も、杉、檜のほかに雑木が混じります。キノコが一番多く生え出していたのも、このコースでした。

 ただ車道に出る手前で、浄水場脇の木材の作業場に下り立つあたりは、草が刈り払いされておらず、短い区間ながら道を失い、やぶこぎになりました。
 道標もなく、登りに使うのは、取り付きがまず判別できないでしょう。

 乙津という地名の場所から、車道を右、左ととると、なじみの喫茶「むべ」の前に出ました。(14時58分)
 コーヒーとチーズケーキで一休み。向かいの「おやきや」で、名物おばあちゃん(乙訓きよさん)に挨拶し、おやきを10枚、みやげに頼みました。1000円なり。「いま熱いうちに食べて」と、4枚がおまけに差し出され、「私の家は息子さんの床屋さんの近所だ」というと、もう2枚、おまけがつきました。10枚購入して、6枚もおまけとは。
 あんこが素朴な甘みの熱いおやきを頬張りながら、濁流うずまく秋川を橋で渡って、荷田子のバス停へ。
 
 オオマツヨイグサ(ツキミソウ)が、夏の盛りが迫ったことを感じさせます。雨が上がった空には、久しぶりの青空が広がり始めていました。
 (追分バス停まで歩いて、15時52分のバスに乗り、五日市駅へ。)
 
                 2003・7・23  

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