天理岳-禿岩-そして滑落
- GPS
- 10:03
- 距離
- 8.5km
- 登り
- 907m
- 下り
- 872m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
雨具
日よけ帽子
靴
ザック
ザックカバー
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
ライター
計画書
ヘッドランプ
予備電池
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
タオル
ツェルト
ストック
カメラ
ヘルメット
|
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感想
今回の滑落の顛末を書き残します。
不注意による滑落ですが、何かの参考になればと。
・・・と書きながらもこっそり公開します。
【両神山】
友人との2021年最初の登山は両神山にへ行くことにしました。
ルートは日向大谷からのピストンよりは周回の方が楽しいだろうと、日向大谷の駐車場から天理岳を経て両神山山頂へ行く周回としました。
(現在は天理岳の辺が通行禁止です)
2021年5月8日6:56に入山。
この日は雲ひとつない快晴で、気温も上がり歩き始めてすぐに汗ばんできます。
順調に歩き、天理岳を越えて10時頃に禿岩付近(入山から約4.5km地点)に差し掛かります。
禿岩というだけあって、左手の山側は岩山、右手の谷側は岩と杉の木が混在する場所でした。
ここで前を歩く友人が足を止めたため、私も特に危険と思うこともなく足を止めます。
友人は現在地を確認する為にヤマレコを見たのですが、GPSが狂ってるらしく変な位置を示しているとのこと。
それなら私のヤマレコで現在地を確認しようかと、左の胸ポケットからスマホを出すため右手を動かした時でした。
突然右側へ体を捻るように頭を後方に向けて倒れたのです。
【滑落】
私の右手側は谷で、弾かれたような感じで倒れた私はうつ伏せで落下しました。
正直なところ何故倒れたのかわかりません。
「バキッ」と木の折れるような音が聞こえたので、左手で無意識に掴んでいた木が折れたのかもしれません。
何かに掴まらなければいけないような場所ではないので、本当に掴んでいたのかどうかもわかりません。
足を動かしたら踏み外すというような場所でもなく、気の緩みとしか言い様がありません。
最初の衝撃は道から2m位下にある杉の倒木に、うつ伏せで落ちて右半身を打ちつけた時です。
衝撃と書きましたが痛みは感じません。
「とん」と当たったような、体育のマットに倒れ込んだような印象でした。
体に何かが当たったの感じ「掴まらなきゃ」と思って右手を伸ばしたのですが、伸ばした手が空振りしたような感覚だけが残りました。
そのことに「えっ?」と疑問符が浮かびますが、再び体が宙に浮いてる感覚があります。
倒木で跳ねて飛ばされたようです。
目を瞑っていましたが、瞼に光が当たり白くなるのと暗くなるのが交互に繰り返し、体が回転してることがわかりました。
3・4回ほど回転したところで意識が遠くなりかけたのですが、再び体に衝撃を感じて意識がはっきりします。
ここでも痛みは感じず、「どさっ」という感じで着地しました。
運良くその一画だけは岩や石、倒木などない枯葉の積もった柔らかい場所で、右半身を下にして着地し、2~3m滑って止まりました。
谷の踊り場のような場所で、あと2~3m滑っていたら底の見えない谷へ落ちて死んでいたかもしれませんね。
すぐに体を起こして左膝を抱え込むように座り込みます。
右手右足は動きません。
冷たい汗が吹き出すとともに、痺れる感覚が胸から喉、唇へとせり上がってきます。
呼吸ができていないのかと思い、必死で大きく呼吸をしていたら、急に痺れが消え楽になりました。
右の手足が動かないのはわかりましたが、痛みはまったく感じていません。
上から呼びかける友人の声に左手を挙げて応えましたが、振り向いて見た友人の居る転落地点はかなり遠くに感じました。
【ケガの状況】
大きくは3カ所、右太腿、右胸、右手首です。
すべて右側なのは倒木へも地面へも、右半身が当たったからだと思われます。
- 右太腿 -
右太腿が今までに見たことが無いくらいに腫れてます。
特に太腿正面は角が生えているのかのような腫れ方をしてます。
骨が折れて飛び出てるのかと思い目を背けたくなりました。
しかし落ちた当初は動かなかったのですが、暫くすると動かすことができるようになり、折れていないことが確認できました。
幸いなことに、膝を90°まで曲げると太腿に強い痛みがでますが、そこまで曲げなければ歩くことができました。
後日、太ももからお尻にかけて青く染まります。
これだけ広範囲に青くなったのは初めてですが、病院の看護師さんが平然としていたので大した事ではないのかと安心しました。
- 右胸 -
右胸に軽く痛みがあるけど、普通にしていれば問題無い程度の痛みでした。
ザックを背負ってみましたが、ベルトで圧迫されることもなかったです。
しかし、後の病院での診察で肋骨が4本折れてることがわかりました。
歩いているときに呼吸が苦しかった原因はこれだと思われます。
胸にはザックのベルトに固定していた「ナルゲンOTF 650ml ボトル」がありました。
このボトルがかなり硬くて、倒木と胸の間にはさまったのが骨折の原因の一つではないかと思っています。
ちなみに「ナルゲンOTF 650ml ボトル」は全くの無傷でしたが、友人が私のザックを背負った際にホルダーから外れて谷へ落ちてしまいました。
回収不能です。
私の身代わりかな。。。
今回の怪我では肋骨骨折が一番苦しくて、うつ伏せでも仰向けでも寝ることができず、1ヶ月くらいは積み上げた布団により掛かかって眠りました。
- 右手首 -
右手首は全く動かず、指もピクリともしません。
手首は折れてると思い、ザックに入れていた三つ折りストックを添え木にしてテーピングテープで固定します。
一人でテープを巻くのは難しく、私のところまで降りてきてくれた友人に巻いてもらいました。
また、テーピングテープで首から右手を吊るようにすると手首に痛みがでました。
なので首から吊ることはせずに、添え木しただけにしました。
この三つ折りストックの添え木とテーピングテープが優秀で、多少腕を振り回しても平気なくらいがっちりと固定され、手首が痛むことはなかったです。
- その他 -
それ以外は左右両足首の捻挫程度で、左腕やお腹、腰回りに痛みはありません。
出血を伴う切り傷などは全く無く、薄皮がむけた程度のすり傷が右太腿や脛に若干ある程度。
頭も打ってないようで、意識もしっかりしていました。
【下山】
落ちた直後は呼吸が苦しい中、救助依頼を考えました。
しかし1時間もたつと普通に立ち上がれるし歩けます。
これなら自力で下山できそうだと思い、ヤマレコの地図を見ながらルートを考えます。
途中わずかに歩いた形跡(オレンジの点)のある近道(道では無い?)が在るようですが、今の私に降りられるかわからないので、遠回りですが状況のわかる来た道を戻ることにしました。
唯一の難所は天理岳から降りる鎖場です。
迂回することも考えましたが、確認に行った友人が怪我をした私では滑り落ちるかもしれないと判断し、天理岳から鎖場を降りることにしました。
鎖場は私のザックを友人に持って先に降りてもらい、下から足場の指示をもらいながら降りました。
このときほど三点支持の大切さを感じたことは無いですね。
右手は肘から先が全く動かないので、左手で鎖にしがみつくようにして無事降りました。
その後、岩場などでは自分でザックを背負い、傾斜のゆるい道では友人にザックを持ってもらいました。
岩場でザックを背負ったのは、友人が2つザックを持って岩場を通るのが危ないからです。
胸の骨折の影響だと思いますが、登りはすぐに呼吸が荒くなり、大量の冷たい汗がでます。
しかし平地やゆるい下りは比較的苦もなく歩けました。
それでも駐車場までの5kmの道を約6時間かけて下山し、駐車場に着いたのは16時53分でした。
下山後、群馬県内にある友人宅近くの救急外来で手当をしてもらい、翌日に自宅へ帰ります。
なお、整形外科の先生がいる夜間の救急外来は、消防署へ電話(119ではない消防署の電話番号へ電話)をすると教えてくれます。
教えてもらった病院へあらかじめ電話をしてから向かいました。
【治療】
自宅近くの病院で診察してもらったところ、橈骨遠位端骨折で手術が必要と診断されました。
(救急外来でも手術になるだろうといわれていました)
折れたところをプレートで固定するそうです。
肋骨は救急外来では折れてないと言われましたが、改めてレントゲンを撮ってもらうと折れていました。
しかし肋骨はバンドを巻くだけで治療は無いようです。
プレートで固定する手術は全身麻酔のため、当日と翌日の2日入院となりました。
少し骨が砕けていたため、プレートを外せる状態になるまで1年かかり、翌年4月にプレートを取る手術を実施しました。
以下は病院で支払った費用です。
救急外来 7,600円
掛かり付けの整形外科 3,390円
手術のできる病院への転院 8,120円
プレート入れる手術 82,429円
プレートを取る手術 18,060円
上記以外の通院16回分合計 18,970円
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合計 138,569円
治療費はすべて生命保険で賄えました。
また「チーム安全登山」のプラス会員だったので、やまきふ共済会にも問い合わせをしてみました。
遭難時の救助費用等や怪我での入院手術等が対象となりますが、今回の件では入院手術が対象となります。
しかし治療費として10,000円の支給なので、怪我などは生命保険等の加入が必要でしょう。
遭難時の救助費用がメインですからね。
【その他】
ヤマレコ-iPhoneの記録を見ると、標高差で8m前後、水平距離で15m前後くらいのところに落ちたことになってます。
岩のある現場でしたが、狙ったように倒木の上に落ち、さらに岩を飛び越えるように落ちたのが幸いでした。
おかげで出血もなく、歩いて下山ができました。
原因についてははっきりしませんが、油断、気の緩み、慢心であろうことは間違いありません。
今回のことは天からの警告だと思って、気を引き締め登山を楽しみたいと思います。
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